はしもと・けいこ/千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも5.2万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
YouTube 「Kay garden」
はしもと・けいこ/千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも5.2万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
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はしもと・けいこ/千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも5.2万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
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今年もパンジー&ビオラは白熱! サトウ園芸の人気品種ヌーヴェルヴァーグ、ローブ・ドゥ・アントワネット …
クレール・ドゥ・リュンヌなどレア品種は個数制限あり! 個性的な花姿で大ブームを巻き起こしているブランドと呼ばれるパンジー&ビオラ。今年も店頭に並び始めると同時に、開店前からのウェイティング組が待機する姿が見られ、パンジー&ビオラは白熱ムード! サトウ園芸のローブ・ドゥ・アントワネット シリーズの新品種‘クレール・ドゥ・リュンヌ’(フランス語で月明かりという意味)は入荷数が限られており、1人1株の個数制限になっているので、入荷予定をお店に確認してから早めに行くのが吉です。また、ヌーヴェルヴァーグシリーズの‘ラピスラズリ’など魅力的な品種が今年も満載です! パンジー&ビオラが巻き起こす園芸大ブーム パンジー&ビオラは晩秋から翌年の初夏まで半年以上咲き続け、色幅も豊富な可愛らしい一年草です。丈夫で育てやすいことから、初心者がまず挑戦してみる花の一つですが、この「誰もが育てる初級編の花」が今、園芸界に大ブームを巻き起こしています。 「最初に私のパンジー&ビオラに目をつけてくれたのは、バラやクレマチスといった花を育てている、どちらかといえば上級者の方だったんです」と話すのは、群馬県のナーセリー「サトウ園芸」の佐藤勲さん。ガーデニング上級者も虜にした佐藤さんのパンジー&ビオラの特徴は、それまでにはなかった世にも複雑な色と形、そしてファンタジックな名前。 パンジー&ビオラの世界観をひっくり返したサトウ園芸‘ドラキュラ’ 例えば、「サトウ園芸」の最初の代表作は、パンジー‘ドラキュラ’。花形をほとんど球体に見せるほど躍動的にうねり、ひるがえる花弁は、ダークカラーで裏と表がバイカラーになっていたり、血管のように浮き上がる鮮やかな筋が入っていたり。まさしくマントをひるがえすドラキュラ伯爵のような妖しく強烈な個性は、それまでのパンジーの「可愛らしい」世界観とはまったく異なり、パンジー&ビオラの美しさの可能性を押し広げました。 また、ビオラ‘ヌーヴェルヴァーグ’は、まるで花弁に水彩絵の具で色をつけたかのような、にじむような滴るような色合いで、多くのガーデナーの目を釘付けにしました。同様に、夢見るように甘く繊細なパステルカラーの‘ローブ・ドゥ・アントワネット’、明るい黄色に白の覆輪、波打つ花弁の‘エッグタルト’など、「サトウ園芸」のパンジー&ビオラは唯一無二の個性で、「誰もが育てる初級編の花」を、1苗1,000円近い値がつくほどのブランドへと押し上げました。 「私が値段をつけているわけではないので、自分でも園芸店で値段を見てびっくりすることがあります(笑)。おかげさまで愛好家の方々がSNSで宣伝してくれたりして、とても人気になっているのですが、そんなに大量には作れないんですよ。だから、希少価値も上がっていくのでしょうが、それでも欲しいと言ってくださる方がいるのは、本当にありがたいですね」(佐藤さん) 個性派パンジー&ビオラを生み出す苦労 パンジー&ビオラの一般的な価格が100〜300円程度というこれまでの市場と比較すると、「サトウ園芸」のパンジー&ビオラは価格の面でも革命を起こしたといえます。ただし、価格はこうした個性的な花を作り上げるまでに費やされた時間と技術の積み重ねへの、市場の客観的な評価でもあります。というのも、繊細かつ複雑な姿の花は、交配初期は発芽率が悪かったり、耐病性が弱かったり、クリアしなければならない課題が山積していることが少なくありません。そうした課題を一つひとつクリアし、育てやすく長く楽しめるパンジー&ビオラ本来の魅力に個性的なビジュアルを付加し、「新品種」として世に送り出すまでには、さまざまな改良が重ねられているのです。 「まあ、簡単にいえば生産効率が悪いんですね。だから、あまり人が作りたがらない。そこをついた隙間産業的な感じでしょうか(笑)。でも、難しいからこそやりがいがあるし、想像もしなかった息をのむような美しい花が出ることがあって、何年やっていても感動せずにはいられない瞬間があるんです。だから、うちの花を自慢してくれているSNSを見つけたりすると、私と同じ思いで見てくれている人がいると思って、本当に嬉しい。皆さんの声は私のモチベーションですね」 個性派パンジー&ビオラは園芸店のスター選手 「サトウ園芸」の‘ドラキュラ’や‘ヌーヴェルヴァーグ’同様、各地のナーセリーでは個性派のパンジー&ビオラが誕生しており、ガーデニングブームに拍車をかけています。コロナ禍以前からそうした品種は希少性が高く人気があったものの、ガーデニングが「ニューノーマル」のライフスタイルとして注目される昨今、個性派パンジー・ビオラは上級者のみならず、若い世代のガーデニング初心者の心もあっという間に捉えました。「サトウ園芸」の苗を仕入れている関東のある園芸店では、開店前に200人の行列ができることも。人気のあまり、買える数を「一人3苗まで」というように限定している店も少なくありません。 園芸店側にとっても、こうしたブランド苗や良質な苗を仕入れられるかどうかは店のステータスでもあり、個性派パンジー&ビオラは集客の要としてスター選手的な役割も担います。スターに追随するように、パンジー&ビオラのみならず、ガーデンシクラメンなど、この季節の他の花苗も個性派といわれる品種からこぞってなくなる傾向にあります。古参の園芸ファンからは「近年はとにかくいい花は手に入れにくくなった」というため息も聞かれますが、人気の花、素敵な花、いい花を手に入れるには、買う側にも工夫が必要な時代になってきました。 上質な園芸店を選んでガーデニングを楽しもう! まずは、店を選ぶことが大切。実店舗でもオンラインショップでも、どんな花を仕入れているか、また花苗の管理状態など店の質は千差万別で、どこから買うかで、同じ種類の花でもパフォーマンスは確実に変わります。店員さんと話してみたり、苗を比較して、信頼のおける店を選びましょう。個性派パンジー&ビオラに限っては入手が困難になってきており、来年以降は出合うことがまれなので、入手したい場合は、買える店を前もって調べておきましょう。入荷日を確認したら、並ぶ覚悟で店へ。行列には同士がいっぱいいるので、花の情報交換ができたり、楽しくお話ししているうちに意外とあっという間、と話す愛好家もいます。今年、入手しそびれたという方は、来年をぜひ楽しみに。佐藤さんや他の育種家たちも、競い合いながら個性的な新品種を毎年生み出しているので、まだまだ存分にパンジー&ビオラの世界は堪能できそうです。 サトウ園芸の花が買える販売店リスト https://satoengei.jp/partner (*2020年時点のリストですので、取り扱いについては各店舗にお問い合わせください) 「『サトウ園芸』の場合、新品種は私一人で生み出しているんではないんですよ。古くから付き合いのある園芸店さんや、ベテランガーデナーさんなど、業界のいろんな人たちにうちの花を見てもらい、これは素敵だというものを選んでもらっているんです。『サトウ園芸』の花には、複数のプロデューサーがいるのも強みです。さまざまな人の感性を反映させて生まれてくるユニークな花を、ぜひこれからも楽しみにしていてください!」(佐藤さん)
人気の花レッスン「deuxR/デュエール」と金沢旅案内
レッスン前日は地元観光へ 市場や生産者さんから直接仕入れた新鮮なバラや季節の花を乾燥させたり、生産地から厳選して取り寄せてリースやドライフラワーの教室が、とても人気の「deuxR/デュエール」。毎月教室に通ってはいるものの、今回渡部裕美先生の里帰り講座が春の金沢で開催されると聞き、即日参加を決めた受講生の私たち。 4月某日、羽田から早朝の飛行機で小松空港に飛び立ちました。 旅は、早朝、快晴のフライトからスタート。窓から見えるのは、まだたくさんの雪が残る日本アルプスの峰々。 レッスンの前日に到着した私たちは、ホテルに荷物を預けて、まず近江町市場を目指しました。 金沢の中心地、武蔵ヶ辻にある近江町市場は金沢市民の台所として藩政時代から約300年の歴史を持ち、入り組んだ小路に170軒もの小さなお店がひしめき、新鮮な野菜や海の幸などが豊富に並ぶ、観光客にもとても人気の観光スポットです。 まずは、みんなで金沢の味で腹ごしらえです(笑)。 腹ごしらえが終わり、お店のお兄さんにたくさんの情報をいただいたので、いざ観光へ。 まずは、市場から歩いて数分の加賀藩祖・前田利家公と正室お松の方を祀る由緒ある尾山神社へ。和漢洋の3つの建築様式を取り入れた珍しい形の「神門」は、カラフルなステンドグラスや赤煉瓦を用い、東洋と西洋の文化が融合された不思議な佇まいでした。 尾山神社と桜 尾山神社の境内で目を引いたのは、2本の「菊桜」。 これは加賀前田藩が京都御所から江戸時代に授かった、由緒正しき天然記念物の「ケンロクエン キクザクラ」の子孫とされるもので、1935年に積雪のために折れた枝から接ぎ木され、大切に育てられた株です。一つの花に数百枚の花弁がつく様子が菊に似ていることから名づけられました。花色は、真紅から薄紅、最後は白色に変化していき、ソメイヨシノが終わった後に楽しめる桜です。 尾山神社から最近復元された鼠多門橋(ねずみたもんばし)を渡り、鼠多門へ。 金沢城公園は、明治以降終戦までは陸軍の拠点として、その後平成7年までは金沢大学のキャンパスとして利用されていたところ。広大な敷地の整備が順次進められています。 兼六園の必見スポット 金沢城公園に隣接する兼六園では、桜はすっかり散り始めていましたが、兼六園のシンボルとして必ず登場する徽軫灯籠(ことじとうろう)や、2mほどの高さまで50本近くの根がせり上がった見事な根上松(ねあがりまつ)など、ほかにもたくさんの必見ポイントが、約11.7ヘクタールの広大な回遊式の日本庭園に点在しています。水戸偕楽園や岡山後楽園と並ぶ日本三名園の一つですから、一度は訪れたい場所です。 次回は、雪吊りを見に、ぜひ雪の時期に行きたいと思います。 ウィリアム・モリスにまつわる金澤モリス教会 翌朝も快晴です。 この日開催される裕美先生のレッスンの会場である、金澤モリス教会へ向かいます。 犀川のほとりにある金澤モリス教会は、イギリスでのアーツ・アンド・クラフツ運動の創始者であり、植物をモチーフにした壁紙やステンドグラスなどでも有名なウィリアム・モリスが、妻と新婚生活を送ったレッドハウスを忠実に復元した教会です。赤レンガの外観やウィリアム・モリスデザインの壁紙、美しいステンドグラスなど、クラシックで重厚な印象を受けました。 裕美先生のワークショップを受けられるだけでも素敵な時間が過ごせるのに、こんな美しい教会が会場になるなんて、とってもテンションが上がりました。 「deuxR/デュエール」渡部裕美先生の春のワークショップ 会場に到着すると、パーテーションで区切られた机には、すでに材料が配置されていました。では、少し制作過程をご紹介しましょう。 土台になるオアシスを、モスで周りを包むように巻き、アジサイを散りばめます。 ドライの花を配置したら、仕上げに入ります。 このパターンは、花材の違うもので以前作ったことがあるので、今回は復習するつもりで制作しました。 「菫色のタルト」は、そのネーミングの通り、紫のバラやラナンキュラスをメインに、薄ピンクやグリーンなどを合わせた、裕美先生ならではのセンスを感じるもの。記憶に残る素晴らしいワークショップでした。 数々の花が詰まった作品「菫色のタルト」完成 ドライのライムなどの細かいパーツを最後に追加し、ピンクのリボンを巻いたら、シーリングスタンプで飾りをつけて完成です。 作品が完成したら、教会内のあちこちで撮影タイムです。ウィリアム・モリスの壁紙やアンティーク家具と作品がぴったり合って、どの場所でも写真映えしました。 金澤モリス教会は、現在、金沢の老舗料亭「つば甚」さんが結婚式場として利用しながら、伝統ある建築物を守っています。この日、そのつば甚さんのお弁当をランチとして準備していただきました。 尾頭つきの鯛をはじめ、たくさんの食材が使われた豪華なお弁当。目にもお腹にも至福でした。 近江市場で見つけた春の山菜を土産に ワークショップがあった日も1泊。最終日は、金沢ならではの美味しいものをたくさんいただきつつ、美術館を巡り、武家屋敷を歩き、最後はもちろん近江市場でお買い物をして……。という楽しい旅でした。 旅の締めくくりに市場に寄ると、この時期並ぶ山菜の中からカタクリを見つけてビックリ! 思わず「カタクリは咲くまで8年もかかるんですよ! 金沢の方たちはそれを食べるのですか?」と問い詰める私。八百屋のおじさんは「山で採ってくるわけじゃないよ、栽培しているんだ」と教えてくれました。ですが、こんなに美しく貴重な山野草を食べるということが、私にはやっぱり想像しづらいのでした。 「天ぷらにすると花が開いてきれいだよ」と教えてもらいつつ、カタクリのパックを買って帰りました。でも、もちろん食べずに観賞用に。 Credit 写真・文/橋本景子 千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.9万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。 YouTube 「Kay garden」 Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/ インスタグラム kay_hashimoto
今人気急増中のパンジー「ドラキュラ」を作るサトウ園芸さんをレポート
パンジー「ドラキュラ」との出会い 今やサトウ園芸さんが作るパンジーの代表的な品種となっているパンジー「ドラキュラ」ですが、私が初めて見たのは2016年のこと。宮崎の園芸店「アナーセン」さんで開催されていた「個人育種家 パンジー・ビオラ作品展」を見に行った時でした。 この年にデビューしたパンジー「ドラキュラ」は、園芸業界に大きなセンセーションを巻き起こしたと記憶していますが、それまで私が好きだったのは、“可愛くて優しい色の小ぶりなビオラ”。その時、初めて見たパンジー「ドラキュラ」は、造形の面白さや色の鮮やかさ、独特なネーミング、そして花弁は5枚だけなのに、まるで球体のような花形という驚きや感動はあったものの、正直言って、ビオラ派の私には色も形もサイズもがあまりにも男性的で、自分で育ててみたいという気持ちにはなれなかったのです。まさか、「ドラキュラ」とのお付き合いが、この後これほど深くなるとは、当時は思ってもいなかったのでした。 佐藤さんのハウスで花のパワーに衝撃 この後、ご縁があって見せていただいた広大な佐藤さんのハウスには、大好きな「ヌーヴェルヴァーグ」の素晴らしい親株がたくさん並んでいて、圧巻! もちろん、パンジー「ドラキュラ」もハウスの中でその独特な存在感を見せつけていて、キラキラと眩しく輝く「ドラキュラ」が、そのネーミングのごとく、ちょっと近寄りがたいけれど、スペシャルなパンジーであることに、やっとこの時気がついた私でした。 佐藤勲さんによる苗作りの技術 野菜農家に生まれた佐藤さんは、農業研修生としてアメリカ・コロラド州のプラグ苗の会社でポインセチアやパンジー、観葉植物などの花壇苗の生産を2年間学び、1988年に帰国してからハウスを新設。アメリカで学んできた生産技術を生かした花苗作りを始めました。 高崎市の市街地にある1,300坪のハウスでは、ペチュニアをはじめ、カリブラコア、ニチニチソウ、マーガレット、パンジー、ビオラなどの花苗を年間を通して約50品目生産しています。 その中でもいま特に大人気のパンジー&ビオラのオリジナル品種の生産は、8月上旬に種まきした苗を9月に植え替え、早いものでは10月下旬から順次出荷されますが、生育期である夏場は、暑さによって株が弱り、湿度が高ければ病気が出るので、防虫や殺菌に気をつけながら、遮光をするなどといった地道な作業を重ねています。その労力は多大で、例えば、花苗管理で大きなウェイトを占める灌水作業についていえば、苗が小さいうちは根鉢の深さまで水が浸み込む程度にとどめ、生育するに従って水の量を増やしていきます。出荷される頃には上層部から下層部までまんべんなく根鉢が形成されるように加減する、その絶妙な灌水技術を取得するまでには、15年かかったといいます。 「1日1回の水やりとしても、一人で数万鉢に灌水するには6時間から8時間もかかります。それは、僕の人生の3分の1は水やりということですね」と笑う佐藤さんですが、ポットから根鉢を取り出すと、まるで毛細血管のように美しく広がる根の様子を見れば、佐藤さんの技術の素晴らしさは一目瞭然です。 佐藤さんのパンジー&ビオラの一ファンとして いまや佐藤さんが生産するオリジナルのパンジーやビオラの大ファンとなってしまった私ですが、ここ数年、シーズン中に数回ハウスにお邪魔しては、巷の流行や人気の色・形など、パンジー、ビオラ好きな一般人としての正直な意見をお伝えしています。 どんな意見にも、いつも頷きながら耳を傾けてくださる佐藤さんの穏やかで真面目なお人柄には、お会いするたびに尊敬の念が深まります。 左/パンジー「ドラキュラ」だけの寄せ植え。右/「エッグタルト」とワイヤープランツなどの寄せ植え、どちらもローザンベリー多和田にて(2017年)。 自宅で育てた「ドラキュラ」の鉢植えは、花は小さくなりましたが、こんもりと美しくまとまりました。晩秋に植えて、5月末まで約半年間も楽しめるのですから、とってもコスパのよいパンジーです。バラとの競演も可能です。 左/ピンクの可愛い「ヌーヴェルヴァーグ」には、渋い色の葉牡丹をチョイス。右/色が可愛い「エッグタルト」は、ターコイズ色のカップに活けてみました。 パープル系の「ヌーヴェルヴァーグ」を寄せ植えに。寄せ植えにする場合も、私は脇役には地味な植物を使います。 佐藤さんの苗はポットに単植することが多く、この渋いカラーの「ヌーヴェルヴァーグ」はBizen&Whichfordのワークショップで作ったポットにぴったりでした。 左/バードバスに浮かべた「ヌーヴェルヴァーグ」と秋のバラ。右/ガラスの器の中にもたくさんの花を浮かべて楽しみます。 たくさん摘んだ花を小さなグラスに入れて楽しむことも。真冬でもこんなに華やかなガーデンになるのは、パンジー&ビオラのおかげ。 佐藤さんが作る人気シリーズをご紹介 佐藤さんが現在生産しているパンジーやビオラの中でも、特に人気なのはビオラ「ヌーヴェルヴァーグ」や「エッグタルト」、パンジー「ドラキュラ」、「ローブ ドゥ アントワネット」など。これらは偶然に変わった色や形が出現したものをコツコツと掛け合わせ、世に無いものを生み出してきたのです。数年かけて商品化するという、佐藤さんの弛まぬ努力と技術から生まれた苗は、色や花の形、花付き、性質、株張り、耐病性などを厳しく吟味しながら、育てやすい品質を維持し、佐藤さんのオリジナルの素晴らしい品種として全国に販売されています。 佐藤さんのハウスで親株として、来年度用の種子を採るために維持されている美しい「ヌーヴェルヴァーグ」は、花色のバリエーションだけでなく、絞りや丸弁、フリル、切弁など多彩で、その組み合わせにより出現する花の数は無限です。一期一会であることもビオラの魅力の一つですね。 パステルカラーからアンティークカラー、ラテカラー、モーブカラーへと変身し続けて来た「ローブ ドゥ アントワネット」は、今年ついに夜会に相応しいダークなカラーバリエーションが出現! 「ソワレ」という名前で来年からの本格販売を目指しています。 大人気なのに、なかなか種子がつきにくいことに加え発芽率が悪いために、入手困難で幻となっているパンジー「ドラキュラ」ですが、今年も量産のための工夫を惜しまず、来年はたくさんの方のもとに届くようにと努力を続けています。 「開発に年月を費やしても、2、3年で飽きられることもある園芸業界ですが、定番の花苗の生産を軸にしながら、常に新しい品種を生み出したいと思っています。でも自然が相手ですから思い通りにいかないことだらけです。でも、園芸業界を盛り上げる一端を担いたいという思いは強く持っています。奥が深い世界ですが、そのためには何よりも下積みをしっかりと、底辺が広ければ広いほど頂上は高いのです」という素晴らしいプロ意識も、佐藤さんのパンジーやビオラが大人気である理由なのでしょう。 Credit 写真・文/橋本景子 千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.1万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。 Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/ インスタグラム kay_hashimoto
シンガポールの最新花みどり旅案内〜植物園編〜
シンガポールの日常を感じる朝 シンガポールの私の朝は、毎日決まったこのメニューで始まりました。 「カヤトースト」は薄く切ってこんがり焼いたトーストに、ココナッツミルクを煮詰めて作ったカヤジャムと呼ばれるジャムを塗ったもので、これに半熟玉子をつけて、「コピ」というコンデンスミルク入りのコーヒーをお供にいただく、シンガポールのソウルフードです。毎朝違うお店を選び、通勤途中のサラリーマンの列に並んでみたり、英語ではない現地の言葉での対応に戸惑ったり、今でももう一度食べてみたいと思える懐かしい味になりました。 この日、カヤトーストの朝食を済ませ、地下鉄で向かったのは「シンガポール植物園」。 Singapore Botanic Garden 駅から歩いてもすぐの便利な立地です。 さあ、シンガポール植物園へGo! 「シンガポール植物園」は1859年に開設され、2015年にシンガポール初の世界遺産に認定されています。敷地は東京ドーム13個分にもなる64ヘクタールで、なんと早朝午前5時から深夜の12時まで無休で営業されている、園内の国立洋蘭園以外は無料の施設です。 しかし、この広さを全て見て回るのはとても無理(笑) 写真は、熱帯や亜熱帯地方の代表的な植物であるブーゲンビリア。斑入り葉や八重のものなど多様です。 ブーゲンビリアだけで、こんな景色を作れるガーデンはシンガポールならではかも。 9月末のことですので、最低気温が25℃、最高気温も30℃ほどで、最近の日本の夏の最高気温と数値だけを比べれば、大したことはなさそうだと思うのですが、じつは大敵なのは気温よりも湿度です。年間の平均湿度が84%、9月だと最高湿度が96%、晴れた日の日中でやっと60%程度まで下がります。 早朝からの蒸し暑さで、屋外の植物園は歩くのも嫌になるくらいでした。 背中にTシャツがへばりつくような汗をかきかき歩いて、次は農作物のコーナーへ。 タピオカの原料に遭遇 今人気のタピオカ。じつはこのキャッサバ(Manihot esculenta)の木の塊根のデンプンを加工したものです。 「Ipomoea batatas」Sweet Potato とのことですが、日本では「イポメア‘テラスライム’」として流通している品種と同じかと思います。ここは食用として、栽培が簡単で早く収穫できる植物のコーナーですから、「イポメア‘テラスライム’」も食べてみれば美味しいのかもしれません。味はともかく、食用だということは確かですね。 こちらも同じ場所のイポメアの違うタイプ。花が咲いていました。 園内には所々に休憩所があり、ここで暑さをしのいだり、ストームから避難したり、風景を楽しんだりできる場所になっています。 そこからすぐのヒーリングガーデンの中にある薬用植物ガーデンには、薬用になる植物が植えられていて、昔から、乾燥させた植物を医療に使っていた様子を示す壁画がありました。 名札が付いていなかったので、植え替えの作業をしていた男性に聞いたら 「オイスタープランツだよ、花がオイスターみたいでしょう?」 葉の付け根の辺りが、花を包む紫の牡蠣のように見えなくもありません。西洋おもとでしょうか? これも薬用植物の一つの「Dragon's Tongue」。肺によい植物なのだとか。 他にもいろいろ名前が分からない植物があって、先の男性に聞いていたのですが、ここで私の足元から小さい蟻が上がってきてチクチクと攻撃されてしまいました。それが痛いのなんのって。 「いま植え替えしてるから、蟻がたくさん出て来てるんだよ。違う場所に移動したほうがいいよ!」と男性。 もしかして、私、お仕事のお邪魔だったかもですね(笑) このまま植栽の参考にしたいほど素敵だけど、名前の分からない植物をカメラに収めながら、次の場所に向かっているうちに、風が吹き、雨が降り始めました。 突然の雨と落とし物(?)発見 用意していた傘をさしたけれど、どんどん強まる雨脚に、傘は全く役に立たず、靴どころかパンツまでずぶ濡れに。 これがスコールというものだったのかと、スコール対策の読みの甘さを反省しました。シンガポールの人たちがサンダルで歩いてる理由もうなずけます。長靴でも履かない限り、通常の靴だと間違いなく中まで濡れてしまうからです。 さっきの薬草園の男性が、私が歩き始めようとした時に、室内に入って来た理由も分かりました、変な風が吹いていたのは、スコールの前兆だったのですね。何か私に言いたそうな様子でしたもの。 ずぶ濡れになりながら、オーキッドガーデンまで歩き、そこで雨をしのぎました。かなり長い時間だった気がしますが、ほんの30分ほどだったようです。 雨が上がり、付近を歩いていると、地面に落ちていたのはイチジクのような小さな実でした。 どこかにイチジクの木があるのかしら? と見上げると…… 「ジャボチカバ?」と思えるくらい、幹にみっしり小さな果実がついているじゃないですか! 私の知っているイチジクとは全く違うけれど、これは「Common Red-Stem Fig」と呼ばれる、イチジクの仲間だそうです。 イチジクは漢字では「無花果」と書きますが、この小さい実の中にびっしりと花を咲かせていると説明に書かれていました。美味しくはないけれど食べられるとも書いてあったので、中を割って、味見してみればよかったなぁと後悔。 レポーターとしては、もっと突っ込んだ行動が必要でしたね(笑) ここでオーキッドガーデンに入場したのですが、過去にレポートされているのでそこは省略して、ジンジャーガーデン方面へ進みます。 滝のエリアからスワンレイクに育つ植物をチェック ジンジャー系の植物を集めたガーデンを過ぎ、滝のそばにはこんな素敵な植栽が。滝の飛沫の湿り気と大きな木の陰のちょうどよい環境にピッタリな、ベゴニア類やシダのハーモニー。何枚も写真を撮ってしまいました。 どなたかが寄贈されたという、18mにもなる石の彫刻は、熱帯雨林に育つ200種類の植物を刻んだ素晴らしいものでした。 ウソのように雨が上がり、日差しも出て暑いけれど、どんどん歩きます。 しゃれたレストランもあるのですが、なにしろお高い。そこで、売店のアイスとポテチとジュースで空腹をごまかしつつ、白鳥がいるスワンレイクに着きました。 水面に白鳥が泳ぎ、涼しげに見えますが、やはりここも暑く、そろそろかなりの疲労感が(笑) 朝からずっと暑い中を歩き続けていますから、しばし木陰にあるベンチで休憩し、再び足を進めます。 これは、大砲の木(キャノンボールツリー)です。 遠くからでも目に飛び込んでくる独特の樹形と、赤い花びらにまるでつけまつげをしたかのような雄しべ。これは虫を呼び寄せるためのダミーの雄しべで、本物の雄しべはその奥にあるのだとか。 このモジャモジャしている枝のようなものは、幹から直接出ている花芽で、右下に茶色のものがぶら下がっていますが、これが果実です。キャノンボールとは大砲のことで、ここまで大きくなるのには1~2年かかるそうです。 そして、この実も食べられるそうですが……熟すとたいへん臭いを放つそうです。 さすがにそれを試すのは勇気が必要です。 ここには「ヘリテージツリー」という天然記念物が11本植わっていて、それらをたどるのも面白いのですが、その中の一つが「カポック」の木です。 1933年にここに植えられたもので、高さ43m、幹周り6.2mというサイズ感。パンヤといわれる綿毛が、布団や枕などの詰め物に利用されることから、コットンツリーとも呼ばれます。 ほぼ一日を過ごしたガーデンですが、まだまだ見残したところがたくさん! 次回はまず、完璧なスコール対策をして、もっと効率よく回りたいと思っています。
シンガポールの最新花みどり旅案内
植物目線がキャッチしたシンガポールの今 先日、ディズニー映画の『アラジン』を見ていて、突然ちょっとエキゾチックな異国を旅したくなってしまった私。こっそりと旅行の計画を立て、当日の夕方まで集まってワイワイしていた友人達にも内緒で、その帰り道にみんなと別れて羽田で途中下車。深夜発の便に乗って、初めて訪れる国、シンガポールに降り立ちました。 7時間という中距離の飛行時間ですが、機内では軽食や朝食のサービスがあるため、到着した日はやや寝不足気味。でも幸いにもシンガポールは日本との時差が1時間のため、身体は楽でした。 今回は、久しぶりの海外一人旅を、私の植物目線で3回に分けてレポートします。 まずはシンガポール チャンギ国際空港のご案内から。 JAL便が到着するターミナルには、多肉や観葉植物でできた昆虫のオブジェが。深夜便の利用だったので到着時はまだ夜が明けてなくてちょっと写りが暗いのですが、「あぁ、これがシンガポールの植生を代表するものなのだな」と思ったのでした。 4つもある大きな空港ターミナルは、スカイトレインでも移動できますが、歩いて移動中に見かけた巨大な球形のオブジェは、エアープランツのチランジア・キセログラフィカやチランジア‘コットンキャンディー’、胡蝶蘭などの大集合体でした。思わずフェイクかしらと二度見してしまったけど、そんな訳はないですよね。私の1カ月後にここを歩いた知人の報告では、シダを使った違う形のオブジェに変わっていたそうです。 ターミナルによっては、従来の航空会社のカウンターは置かれておらず、“チェックインキオスク”と呼ばれるこんなマシーンでの自動チェックインができ、まるで宇宙ステーションのようなチャンギ国際空港でした。 ドーム型の商業施設「JEWEL」の植物 2019年4月に、4年間の工期と1,400億の費用をかけて完成したばかりの新しい施設が「JEWEL」と呼ばれるドーム型の商業施設です。 5階建てという高さのドームの中には、数千株の熱帯植物が植え込まれていて、シンガポールで最大級の屋内庭園となっています。 「資生堂フォレストバリー」と呼ばれるこの植物園の中央には「Rain Vortex」(雨の渦)が流れます。40mという高さは、室内としては世界最大のスケールの滝だとか。 滝の周りをぐるりと取り囲むように、地下2階から地上5階までは大型ショッピングセンターとして営業していて、この植物園はなんと無料の施設です。 5階には、植物の生け垣でつくられた迷路や鏡の迷路があったり、高さ23mの場所に設置されている「キャノピーブリッジ」という強化ガラスの橋の上から滝を見下ろすこともできます。 シンガポールの街路樹と緑の風景 シンガポールで街路樹として一番たくさん植えられているという「レインツリー」です。モンキーポッド、アメリカネム、アメフリノキなどとも呼ばれ、日本で見かけるネムの木と花はよく似ていますが、同じマメ科のフリーシア(ニセアカシア)のように葉が丸みをおびています。 『この木なんの木』のCMで知られる大きな木が、じつはこの木です。 他にもテンブスやサガと呼ばれる木が街路樹として植栽されていて、高さが10mを超えるような樹木が、広い道路の両サイドからゆったりと枝葉を広げている様子は圧巻でした。 ホテルが入っているビルの出入り口に植栽されていたのは、モンステラやシンゴニウム、ポトスなど、どれも日本では室内で越冬させるいわゆる観葉植物類でした。 いずれもすくすくと大きく育ち、屋外に観葉植物の植え込みがあるなんて、私にはやっぱりとても不思議な光景です。 建物付近には、マドカズラ、クシフィディウム・カエルレウム、コスツス・プロデュクツス(ドワーフ・オレンジ・ジンジャーとか、ドワーフ・スパイラル・ジンジャーなどと呼ばれるオレンジの花)などの植物がたくさん広がっていて、ここで休憩をしている人もいました。 シンガポールのインスタ映えスポット そこからほんの3分も歩けばアラブストリートです。イスラム教を信仰するアラブの諸国とマレーシアやインドネシアなどの東南の諸国の文化が混じりあい、若手アーティストによる個性的なウォールアートが目立つ楽しい店やおしゃれなカフェが路地裏にオープンし、インスタ映えする発信地として人気を集めています。 シンガポール最古で最大のイスラム教の寺院「サルタンモスク」の前のブッソーラ通りを歩いていて、ふと足元の植え込みに気がつきました。 植え込みと呼ばれるほどのたいそうなものではなく、勝手に繁殖していたのかもしれませんが、シンプルに「ヤブラン」だけ。シンガポールの暑さにも大丈夫なヤブランは日本でも活用できますね。こうして何かつる系のものと合わせれば、何だか「ヤブラン」がとってもスタイリッシュに見えます。 ヤブランは、「ロイヤルパーム」といわれるこのダイオウヤシの株元で育っていました。 シンガポールの樹木探訪 モスクの敷地の周りに密に植栽されていた樹木の仕立てが面白くて、何の木なのかを確認しようと思ったのですが、これは「シルバープリペット」に似ている木でしたが、正しい名前は残念ながら不明。 これもモスクの前のお土産物屋さんの前に植わっていた樹木ですが、これは「大花サルスベリ」。 実が残っていましたが、花は日本で咲く一般的なサルスベリの何十倍もあるそうですから、ハイビスカスくらいあるのでしょうか? 咲いているところを見てみたいものです。 モスクからの帰り道、お店の前のこの植物に水やりをしているおじさんと目が合って立ち話。赤いリボンがついたままだったので「誰かからのプレゼントなの?」と聞くと「お正月のお祝いの飾りだよ」とおじさん。 「なんという名前の植物?」「ミカンの仲間だと思うけど分からない」 不思議に思って何度も確認したけれど、青い実を食用にして、黄色く色づいたのは食べないそうで……。でも、どう見てもこれは「金柑」なので、教えてあげようかと思ったけれど「金柑」を英語でなんというのかを知らなかった私でした(笑) チャイニーズ系の人種が多いシンガポールの旧正月には、金運を呼び込むために飾るラッキーアイテムの一つだそうです。 今度シンガポールに行くことがあったら、おじさんに名前と食べ方を教えてあげようと思います。 ホテルの部屋からの眺めは、近代的な建築と金色のサルタンモスクの玉ねぎのような形の屋根、アラブ・ストリートに並ぶショップハウスの赤茶色い屋根。新旧の文化が入り混じった景色をグリーンの木々が引き締めていました。 次回は、世界遺産でもある、シンガポール植物園をご紹介したいと思います。