やざわ・ひでなる/園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
矢澤秀成

やざわ・ひでなる/園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
矢澤秀成の記事
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育て方
【プロに学ぶ】秋植え球根の時期が到来! チューリップの正しい植え方 10月24日(火)にはオンラインサロンを開催!
これだけは知っておきたい、よい球根の選び方 小指の先ぐらいの球根や細長い球根、握り拳ほどの球根。大きさも形もさまざまな球根は、秋植え球根と春植え球根に大別されます。チューリップやラナンキュラスなど春の庭に咲くものは、10~11月に植えつける秋植え球根です。 球根を購入する際は、ラベルの写真だけに惑わされず、球根の状態をよく見て選ぶようにします。柔らかい球根は避け、張りのあるしっかりしたものを選びましょう。 球根は、花を咲かせる栄養を自分で蓄えています。そのため、鉢植え、地植えともに、肥料はやや少なめがよいでしょう。用土は鉢植えの場合、市販の球根用培養土、もしくは草花用培養土を使います。 地植えの場合は、日本の土がやや酸性のため、アルカリ性の苦土石灰などを加えて中和させます。堆肥や腐葉土などを混ぜ、水はけのよい用土を作ります。 チューリップの球根を植えるときは向きが大切 球根を植えつけるときには、深さと向きに気をつけます。鉢植えは球根2個分(約10㎝)、地植えは球根3個分(10~20㎝)の深さに植えます。鉢植えと地植えで深さは変わるので、注意してください。 球根を植える向きは、尖った部分を上にします。上下を間違えると、芽が出ないことも。 植える前の準備 1 チューリップは植えつけ前に皮をむきます。硬い皮は、新芽を傷つけることがあるからです。また、皮をむくと、発芽や開花が揃いやすい、球根が腐敗しているかがわかるといった利点があります。 2 皮をむく前(左)と、皮をむいたあと。硬い皮がなくなると、発根しやすくなります。 3 球根の腹と尻を確認します。平らな面(写真左側)が腹、丸みのある面が尻と呼ばれます。 鉢植え 1 球根は寒さに当てないと花が咲きにくいので、11月末までに植えましょう。 2 丸い深鉢の場合は、皮をむいた球根の腹側を外へ、尻側を中心に向けて置きます。1枚目の大きな葉は腹側から出るため、鉢の外側に腹を向けます。 3 球根の約2個分の深さの土をかぶせます。ウォータースペースを取ることも忘れずに。 地植え 1 植えつけの穴を掘ります。隣の球根との間隔は、15㎝以上はあけましょう。 2 球根3個分の深さに植えつけます。このとき、球根を同じ向きで植えると、葉の向きが揃い、美しく見えます。 3 穴に球根を植えたら、土をかぶせていきます。*本来は皮をむいてから植えつけます。 春に花咲く風景をイメージして植えつけましょう! ⚫︎チューリップの育て方などは、下記のページを参考に。 『チューリップの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します』 『秋植え球根植物と一緒に植えたい宿根草8種』 328ページという多頁で、園芸に関する基本をすべて収録した、植物の育て方が体系的に分かる1冊。詳しくはこちら。 今回、球根の植え方について教えてくれたのは、NHKあさイチや趣味の園芸などで活躍する園芸家、矢澤秀成(やざわひでなる)さん。矢澤さんの近著『植物を育てる楽しみとコツがわかる 「園芸」の基本帖』(KADOKAWA刊)から、一部、抜粋してお届けしました。ガーデンストーリークラブでは、この書籍のプレゼント企画も開催中! 「園芸家・矢澤秀成さんとバーチャル軽井沢ガーデン散策」オンラインサロン開催! 2023年10月24日(火)15時より、ガーデンストーリークラブ会員さまと一般の方に向けて、「園芸家・矢澤秀成さんとバーチャル軽井沢ガーデン散策」のオンラインサロンを開催します。 バーチャル散策の場は、矢澤さんが手がける軽井沢にある旧スイス公使館の庭園。生中継でお届けします。実際に庭を散策しながら、秋の様子をご案内するほか、秋から冬にかけての庭作業、矢澤さんが育種するパンジービオラのこと、軽井沢の落ち葉を使った腐葉土のことなど、この時期知っていると嬉しいお手入れのコツを紹介します。 全編閲覧ご希望の方は、クラブ会員サイトよりお申し込みください。 ●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。 YouTubeライブ配信URLはこちら→https://www.youtube.com/watch?v=uzP6e7tEzDw 多くの方のご参加を、お待ちしています。
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育て方
【プロに学ぶ】種まきを楽しもう! 採取と保存の方法をチェック 10月24日(火)にはオンラインサロンを開催!
見ているだけで楽しくなるタネの世界 植物を増やす方法で、代表的なのはタネを採って増やす、種子繁殖です。花が咲き終わったら、花がらを一部残してタネをつけさせ、採種すると、翌年はもっと多くの植物が育てられます。 タネの形はさまざま。大きさは、指の先にのせられるほど小さなものが多いです。そのタネから、草花や樹木が生まれるのです。 ここではどんなタネがあるか、いくつか実際に見てみましょう。 コスモス。繁殖力が強く、こぼれダネから芽を出します。そのため、空き地などがコスモス畑になることも。 秋に黒く熟すヤブランのタネ。野鳥に食べられてしまう前に、採取しておきましょう。 シソの実。こぼれダネから発芽し、とてもよく増えます。花穂を収穫してシソの実を塩漬けにして美味しく食べることもできますね。 サルスベリの実。9月に若い実をたわわにつけます。徐々に熟し、黒くなります。こぼれダネからも発芽します。 花と同様に大きなタイサンボクの実。赤く熟したタネを播くと、発芽します。 11月頃に赤く熟すノイバラの実。野鳥が好きな実の一つです。野鳥はついばんで、タネを運びます。 ナンキンハゼの白い実。割ると中にタネが収まっていて、晩秋に採取できます。 知っておきたい、タネの採種と保存方法 タネを採るためには、タイミングが大切です。草花はタネざやが枯れてきたら採種時期。樹木の実は、熟すのを待って収穫します。こぼれ落ちたり、風で飛んだりする植物は、花にネットをかけておきます。 一年草や多年草の小さな植物は、庭や鉢植えから茎ごと切り取ります。熟したタネは、紙袋や封筒に入れて、風通しのよい日陰で1週間ほど乾燥させましょう。天気が悪いときは、乾燥剤を入れた瓶や缶に入れて乾かします。あとは、密封できるビニール袋や瓶、缶などに入れて冷蔵庫の野菜室へ。袋には植物の名前、採種した日付を必ず書き込んでおきます。 一例として、クリスマスローズのタネ採りを紹介します。 クリスマスローズは、実が膨らんできたら、確実にタネを採取できるよう、花がらにネットをかけておくと安心です。お茶パックなどの不織布の袋を利用するのも一つの方法。 しばらくしてネットをはずすと、写真のようにタネ袋の口が開いて黒いタネが見えます。 タネ袋からは手でタネを取り出します。このとき、土の上に落ちてしまわないよう注意。色が黒いので、土の上では見つけにくいのです。 乾燥させたタネは密封保存が鉄則です タネは水分と適当な温度が揃い、はじめて発芽します。多くの草花のタネは、乾燥した状態では活動を停止。乾燥させて密封し、低温に置くと、タネは発芽力をもったまま保存できるということです。播き残したタネも、同様に保管します。 「植物に触れる楽しい時間 草花のタネを観察しよう!」 タネを集めたら、コレクションボックスを作ってみるのもおすすめです。 ただし、タネには寿命があります。アスターやニチニチソウなどのタネは寿命が1年と短命。コスモス、インパチェンスは1~2年、ジニアやペチュニアは2~3年、ケイトウやアサガオは5~6年と、種類によってまちまち。長もちするタネも、新鮮で発芽率が高いうちに播くことが肝心です。 328ページという多頁で、園芸に関する基本をすべて収録した、植物の育て方が体系的に分かる1冊。詳しくはこちら。 今回、タネについて教えてくれたのは、NHKあさイチや趣味の園芸などで活躍する園芸家、矢澤秀成(やざわひでなる)さん。矢澤さんの近著『植物を育てる楽しみとコツがわかる 「園芸」の基本帖』(KADOKAWA刊)から、一部、抜粋してお届けしました。ガーデンストーリークラブでは、この書籍のプレゼント企画も開催中! 「園芸家・矢澤秀成さんとバーチャル軽井沢ガーデン散策」オンラインサロン開催! 2023年10月24日(火)15時より、ガーデンストーリークラブ会員さまと一般の方に向けて、「園芸家・矢澤秀成さんとバーチャル軽井沢ガーデン散策」のオンラインサロンを開催します。 バーチャル散策の場は、矢澤さんが手がける軽井沢にある旧スイス公使館の庭園。生中継でお届けします。実際に庭を散策しながら、秋の様子をご案内するほか、秋から冬にかけての庭作業、矢澤さんが育種するパンジービオラのこと、軽井沢の落ち葉を使った腐葉土のことなど、この時期知っていると嬉しいお手入れのコツを紹介します。 全編閲覧ご希望の方は、クラブ会員サイトよりお申し込みください。 ●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。 YouTubeライブ配信URLはこちら→https://www.youtube.com/watch?v=uzP6e7tEzDw 多くの方のご参加を、お待ちしています。
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宿根草・多年草
キルタンサスを元気に育てるには、適した土作りが必要です
キルタンサスを育てる前に知っておきたいこと キルタンサスは、南アフリカに45~50種が自生する球根植物です。種によって形態や性質が大きく異なり、変化に富んでいます。そのため、開花期は大きく分けると、冬咲きと初夏・夏咲きがありますが、なかには春に花を咲かせる品種もあります。花の形は、細い筒形から壺形、盃状に大きく開くものがあり、下垂するものから上向きに咲くものまで多彩です。 キルタンサスの基本データ 学名:Cyrtanthus 科名:ヒガンバナ科 属名:キルタンサス属 原産地:南アフリカ 和名: 角笛草(ツノブエソウ)、 笛吹水仙(フエフキスイセン) 英名:Fire lily 開花期:12月~2月(冬咲き種)、5月~8月(初夏・夏咲き種) 花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、複色 発芽適温:20~25℃ 生育適温:10~20℃ 切り花の出回り時期:11~5月 花もち:7~14日 種類が多いキルタンサスのなかで、もっとも一般的で代表的なのは、「マッケニー」とその交配種です。特に断りなくキルタンサスと呼ぶ場合は、このマッケニーのことを指すことがほとんどです。主な開花期は、冬から早春。ほかにも初夏・夏咲きの「エラタス」や「サンギネウス」があります。 植えつけ適期は、夏咲き種は3月中旬~4月中旬、冬咲き種は9月中旬~10月下旬です。 種類によっては球根を3月に植えると、暑くなる前に葉よりも先に花茎だけを伸ばして開花するものがあります。 南アフリカ原産のキルタンサスは、寒さにはそれほど強くありません。しかし、半耐寒性なので、通常の球根植物のように掘り上げて“冬越し”させる必要はありません。手間をかけなくてもどんどん増えていく生命力に溢れた多年草なので、栽培難易度の低いガーデニング初心者向けの植物といえるでしょう。 よい土は、水はけ、水もちに優れています 土は“植物のベッド”とよくいわれます。フカフカと柔らかく、湿りすぎでも乾きすぎでもなく、快適に呼吸できる――それが“よいベッド”です。 具体的には、栄養分に富み、水はけ(排水性)、水もち(保水性)、通気性、保肥性に優れた土が「よい土」です。 そして、このような土は、“団粒構造”になっています。団粒構造とは、小さな土の粒子が集まり固まって、団子のような小さな固まり(団粒)を形成して重なっている状態を指します。団粒の中には小さな隙間が、団粒と団粒の間には大きな隙間があります。それらの隙間が、排水、通気、保水、保肥に役立つのです。 園芸店やホームセンターには、あらかじめブレンドされた培養土のほかに、赤玉土や黒土、腐葉土など、さまざまな用土が販売されています。初めてガーデニングに挑戦する場合は、どの用土を買えばいいのか、途方に暮れてしまうかもしれません。次の項で紹介する用土の特性を参考に、育てる植物や環境に合わせて、よい土を作ってください。 種類を知ることが、適した土作りへの近道 土の種類やその特徴を知ることは、植物栽培に必要な「よい土」作りに役立ちます。ここでは、園芸店やホームセンターでよく見かける用土について紹介します。 【基本用土】 土をブレンドするときに、ベースになるものです。 黒土 一般的に畑用の土として知られている、黒い土。柔らかく、保水性と保肥性に富みますが、排水性と通気性はやや劣るため、単体で使うことはあまりありません。 赤玉土 関東ローム層の赤土を玉状に乾燥させたもので、粒の大きさも大・中・小があります。通気性、保水性、保肥性に優れているため、ガーデニング用の基本の土として親しまれています。 鹿沼土 その名のとおり、栃木県鹿沼地方でとれる、火山性の玉土。通気性、保水性、保肥性に富んでいます。酸性なので、山野草やブルーベリー、サツキ、ツツジなどと相性がよいとされています。 【改良用土】 基本用土をよりよい性質にするために、加えるものです。 腐葉土 広葉樹の落ち葉を腐熟させたもの。有機質に富んでいるため、土中の微生物の働きを高め、土を肥えさせてくれます。また、排水性、保水性、保肥性も高めてくれるので、土質改良に有効です。 ピートモス 水ゴケなどが泥炭化したもので、腐葉土とよく似た性質。軽くて、排水性、保水性、保肥性に富むため、室内園芸によく使われます。酸度が強いので、酸性の土を好む植物には「酸度未調整」のもの、一般的な草花には「酸度調整済み」と袋などに表記されたものを使い分けるようにしましょう。 堆肥 わらや落ち葉、枯れ草などを腐熟させたもので、通気性、排水性をよくする働きがあります。腐葉土よりも有機質の肥料分が含まれているので、花壇や畑によく用いられます。 【調整用土】 バーミキュライト 蛭石(ひるいし)を焼いて発泡させたもので、軽いのが特徴。通気性、保肥性に優れ、保水性もよいとされています。 パーライト 真珠岩(しんじゅがん)を高温高圧で焼成したもので、軽くて無菌。通気性と排水性に富むため、水はけの悪い用土に混ぜて使います。 砂 排水性や通気性を高めるために使います。桐生砂(きりゅうすな)、矢作砂(やはぎすな)、富士川砂など種類はいろいろありますが、川砂が一般的。 【特殊用土】 水ゴケ 湿地に自生する水ゴケを乾燥させたもので、保水性と通気性に優れています。水をたっぷり含ませてから使います。 ※「○○用」として市販されている培養土は、これらの用土の特性を生かして、配合割合を各社で研究してブレンドしたものです。 元気に育てるための、キルタンサスの土作り キルタンサスは水はけがよく、適度な保水性のある土を好みます。その点さえ注意すれば、痩せた土地でも育つ花なので、土作りにそれほど神経質になる必要はありません。 基本的には、市販の草花用培養土を選べば大丈夫です。自分で土をブレンドして作る場合は、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜるとよいでしょう。 地植えの場合は、川砂、パーライトなどを混ぜるなどして、水はけをよくして植えてください。 いずれの場合も、可能であれば2割程度の鹿沼土や軽石、くん炭などを混ぜ込むとなおよいでしょう。 キルタンサスの植え替えの時期と頻度 種を鉢で育てる場合や、市販の苗から育て始めるときは、植え替え作業(定植)が必要になります。 鉢植えでも地植えでも栽培できるキルタンサスは、球根またはポット苗(芽出し球根)から育てるのが一般的で、植えつけ適期は、夏咲き種は3月中旬~4月中旬、冬咲き種は9月中旬~10月下旬です。 いちど植えつけたキルタンサスは、まめに植え替える必要はありません。寒さにはそれほど強くありませんが、ある程度は耐えられる半耐寒性なので、通常の球根植物のように掘り上げて“冬越し”させる必要はありません。植えっぱなしで大丈夫です。むしろ、2~3年は植え替えせず、根をしっかり張らせることが大切です。 もとの球根(親球)から自然に新しい球根(子球)が増えて、株は大きくなっていきます。鉢植えで育てる場合は、芽が込み合ってきたら、根詰まりを起こす前に、ひと回り大きい鉢に植え替える必要があります。地植えの場合も球根が増えすぎるとギューギューになり、ひとつひとつの球根が小さくなって花が咲きにくくなるので、2~3年にいちどは植え替えます。 いずれも植え替えの適期は、植えつけと同じ夏咲き種は3月中旬~4月中旬、冬咲き種は9月中旬~10月下旬です。古い土を落として、球根の頭が1/3くらい上に出るように、新しい用土に植えつけます。根を傷めないよう慎重に扱い、植え替え後はたっぷり水を与えてください。 土のほか、植え替え時に準備したいもの 前述したように、キルタンサスは基本、植え替えの必要がありません。ここでは、キルタンサスが立派に生長して、植え替えが必要になったときの、土以外に必要なものをまとめました。事前に以下のものを用意しておきましょう。 準備するもの(鉢植え、地植え共通) ・適した土(前述のとおり) ・キルタンサスの株 ・土入れ、またはスコップ ・剪定バサミ ・ジョウロ ・ラベル *鉢植えの場合は、下記のものも用意 ・ひと回り大きな鉢、または横長プランター ・鉢底ネット ・鉢底石 キルタンサスの植え替え方法が知りたい 実際に、植え替えの手順を見ていきましょう。以下に出てくる「根鉢」とは、鉢の中で根と土がひとまとまりになったものを指します。園芸用語ではよく使われる言葉なので、ぜひ覚えておいてください。 鉢植えの場合の手順 ①ひと回り大きな鉢、もしくはプランターと、新しい土を用意します。 ②古い鉢から株を、根が傷つかないようにやさしく抜き出します。根がつまって抜きにくいときは、鉢の縁をたたくと抜きやすくなります。 ③細い棒で、株の下のほうから土を落としていきます。根鉢の上部も周囲から丁寧に土を落とします。 ④新しい鉢に鉢底ネットを入れ、鉢底石を敷き、培養土を鉢の高さ1/3ほどまで入れます。 ⑤株を鉢に入れ、手で支えながら土を入れていきます。途中、土の中に棒を入れて軽く振動させながら、根の間にも土がしっかり入るようにしましょう。 ⑥枯れた葉を剪定バサミで切り取り、最後に水をたっぷりあげれば完了です。 地植えの場合の手順 ①植え替える場所が決まったら、根鉢の2倍以上の大きさの植え穴を掘ります。 ②キルタンサスの周りの土を広めにシャベルで掘り起こして、土中からやさしく株を抜き出します。 ③株の下のほうから、細い棒で土を落としていきます。上部も周囲から丁寧に土を落とします。 ④根が土に深く埋まらないよう気をつけながら、株を置きます。 ⑤周りに土を足して、株を安定させます。枯れた葉を剪定バサミで切り取れば、完了です。 どちらも植え替え後は、根がしっかり張るようにたっぷりと水を与え、1週間ほど風が当たらない日陰に置きます。 植え替えをするときの注意点はこちらです キルタンサスは、基本的に植え替えを好まないことを、前提として覚えておきましょう。大きく育ちすぎてしまってどうしても植え替えが必要な場合のみ、根の扱いに注意して行います。移し替えた株の周囲に土を寄せるときは、株が安定する程度に土をやさしく押さえるくらいで大丈夫です。ギュッと力を入れて土を押しつけると、土中の空気が抜けてしまうと同時に、根を傷つけかねません。 元気に育てるための植え替え時こそ、根がしっかり張って元気に生長できるかどうかの分かれ目。根を傷つけないようにやさしく扱うことが大切です。そして、土もやさしく扱ってキルタンサスにとって快適な環境を作りましょう。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 構成と文・岸田直子
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育て方
アジサイ(紫陽花)を増やしたい! 最適な時期と方法、注意点を知っておきましょう
アジサイ(紫陽花)を育てる前に知っておきたいこと アジサイはガーデニング初心者におすすめの花木のひとつ。上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 アジサイ(紫陽花)の基本データ 学名:Hydrangea 科名:アジサイ科(ユキノシタ科) 属名:アジサイ属 原産地:東アジア、南北アメリカ 和名:アジサイ(紫陽花)、シチヘンゲ(七変化) 英名:Hydrangea 開花期:6~7月 花色:青、紫、ピンク、赤、白、緑 切り花の出回り時期:4~7月 花もち:5日程度 アジサイは、樹高1~2mの落葉低木です。開花期は6~7月で、4月頃から鉢花が出回ります。額(がく)咲き、手まり咲きなどがあり、花色も豊富で、世界的に人気の高い花木です。 葉は先のとがった楕円形で、多くは光沢があり、秋から冬に落葉します。若枝の先にたくさんの小花が集まった半球形の花をつけますが、花びらに見えるのは、じつは「装飾花(中性花)」という実を結ばない花のガク。本当の花は、装飾花の中心にある小さな点のような部分で、額咲きのものは装飾花に取り囲まれた中央部におしべとめしべのある「両性花」がついています。 手まり咲きのものは装飾花のみ、または両性花が装飾花の陰の目立たないところについています。 アジサイは種から育てることもできますが、挿し木や取り木をした苗や、園芸店などで鉢植えを購入して育てるのが一般的です。 植物を増やすには、いくつかの方法があります アジサイ(紫陽花)の増やし方を説明する前に、植物を増やす一般的な方法を紹介します。 挿し木 植物の一部を切り取って土や水に挿し、発根させて新しい個体を作る方法です。枝挿し、葉挿し、根挿しなどがあり、枝挿しには緑枝挿し、休眠枝挿しなどがあります。 取り木 枝の一部を土に埋めたり、枝などの樹皮をはぎ取ってミズゴケを巻いたりし、発根したら親株から切り離して新しい個体を作る方法です。 接ぎ木 枝や芽を切り取って、同種や近縁の台木に接着させ、癒合させて増やす方法です。 株分け 大きくなった株を、ナイフなどを使って根をつけた状態で切り離し、いくつかの株に分ける方法です。 分球 球根を分離して増やす方法です。チューリップやスイセンなど自然に子球ができるものは「自然分球」といい、ハナショウブやカラーなどの根茎を切り分けて増やす場合は「切断分球」といいます。 実生(みしょう) 種をとり、土にまいて増やす方法です。 アジサイ(紫陽花)を増やす、最適な方法と時期 アジサイを増やす場合は、前述の方法のうち、「挿し木」「取り木」「株分け」を使います。実生も可能ですが、一般的ではありません。最適な時期は方法ごとに異なります。 挿し木の適期 アジサイの挿し木は、「緑枝挿し」または「休眠枝挿し」で行います。「緑枝挿し」の適期は、5~7月、または9月です。なかでも湿度を保ちやすい梅雨の時期は、成功率が高くなります。「休眠枝挿し」の適期は3月です。ただし、カシワバアジサイは発根に時間がかかるため、2月が適期です。 取り木の適期 4~9月です。、もっとも適しているのは、梅雨時の6月です。 株分けの適期 休眠期の11~3月が適期です。ただし、寒冷地は暖かくなる3月まで待ったほうがいいでしょう。 知りたい! アジサイ(紫陽花)の増やし方「緑枝挿し」 「緑枝挿し」は、アジサイを増やすもっとも一般的な方法です。 準備するもの ・アジサイの枝 ・剪定バサミ ・花器やコップなど(水揚げ用) ・浅い駄温鉢 ・鉢底ネット ・鹿沼土(小粒)または赤玉土(小粒)またはバーミキュライト ・割り箸などの棒 ・ジョウロ ・3~5号ポット(鉢上げ用) ・用土(鉢上げ用) 緑枝挿しの手順 ①挿し穂の準備 今年伸びた枝で花芽のついていない枝を、葉を2枚つけて切ります。切り取った枝は葉をすべて3分の1程度にカットし、30分ほど切り口を水につけておきます。 ②挿し床の準備 浅い駄温鉢に鉢底ネットを敷き、清潔な新しい土(鹿沼土小粒、または赤玉土小粒、またはバーミキュライトを1種類のみ)を入れ、ジョウロで水をかけて十分に湿らせます。市販の挿木用培養土でも可能です。 ③挿し穂を挿す 割り箸などで挿し床に穴をあけ、挿し穂を2㎝ほど挿します。複数の挿し穂を挿すときは、葉が触れ合わないように間隔をあけましょう。ジョウロでたっぷり水やりをしたら、明るい日陰に置き、乾燥させないように管理します。 ④鉢上げ 1か月ほどして発根したら、3~5号ポットや鉢に鉢上げします。用土は赤玉土小粒7、腐葉土3などの割合の培養土を用い、半日以上日に当たる場所で水切れに注意しながら育てます。植えつけは翌春以降に行います。 知りたい! アジサイ(紫陽花)の増やし方「休眠枝挿し」 アジサイは、冬に行う「休眠枝挿し」で増やすことも可能です。緑枝挿しに比べて発根に時間がかかりますが、失敗が少ないといわれています。 準備するもの ・アジサイの枝 ・剪定バサミ ・花器やコップなど(水揚げ用) ・浅い駄温鉢 ・鉢底ネット ・鹿沼土(小粒)または赤玉土(小粒)またはバーミキュライト ・割り箸などの棒 ・ジョウロ ・3~5号ポット(鉢上げ用) ・用土(鉢上げ用) 休眠枝挿しの手順 ①挿し穂の準備 昨年伸びた充実した枝を2~3芽つけて切り、切り口を30分~1時間、水につけておきます。数本用意します。 ②挿し床の準備 浅い駄温鉢に鉢底ネットを敷き、鹿沼土(小粒)または赤玉土(小粒)、またはバーミキュライトを単用で入れ、ジョウロで水をかけて十分に湿らせます。 ③挿し穂を挿す 挿し穂を2㎝ほど挿し床に挿します。ジョウロでたっぷり水やりをしたら、日当たりのよい場所に置き、発根(4月頃)まで乾燥させないように注意します。 ④鉢上げ 3か月ほど経って発根したら、3~5号ポットや鉢に鉢上げします。用土は赤玉土小粒7、腐葉土3などの割合培養土を用い、水切れに注意しながら管理します。植え付けは翌春以降に行います。 知りたい! アジサイ(紫陽花)の増やし方「取り木」 地植えのアジサイにおすすめの方法です。枝を誘引し、土をかぶせるだけなので、もっとも簡単で確実な方法といわれています。 準備するもの ・長さ10~15㎝ほどの針金 ・スコップ ・剪定バサミ 取り木の手順 ①枝の誘引 長く伸びた枝を選び、芽のある部分が地面につくように枝を折り曲げて、針金をU字状に折り曲げたUピンで固定します。 ②土をかぶせる 芽のある部分に土をかけ、軽く押さえます。 ③親株から切り離す 数か月後、十分に根が伸びたら親株から切り離します。 知りたい! アジサイ(紫陽花)の増やし方「株分け」 一般的ではありませんが、ある程度大きくなったアジサイは株分けが可能です。ただし、地植えの大株などは非常に力がいるので、あまり大きくなりすぎないうちに行いましょう。 準備するもの ・スコップ ・剪定バサミ ・ナイフ ・ノコギリ *大株の場合 ・割り箸などの棒 ・ジョウロ ・鉢 *鉢植えの場合 ・鉢底ネット *鉢植えの場合 ・鉢底石 *鉢植えの場合 ・用土 *鉢植えの場合 鉢植えの場合の手順 ①新しい鉢に用土を入れておく 新しい鉢の鉢穴に鉢底ネットをかけ、鉢底石を平らに敷いて、用土を少し入れておきます。用土は元の鉢と同じものがいいでしょう。 ②根鉢を崩す 鉢からアジサイを抜いて根鉢を崩し、傷んだ根を取り除きます。 ③根をつけて切り分ける 根をつけて剪定バサミやナイフで切り分けます。 ④植えつける 切り分けた株を置き、ウォータースペースを確保できる高さに調節しながら隙間に土を入れます。根の部分は割り箸などの棒でつつき、土を密着させましょう。 ⑤水やりをする ジョウロで鉢底から水が流れ出るまで、たっぷり水やりをします。 地植えの場合の手順 ①植え場所の準備 あらかじめ株分けして増えた、株の植え場所を準備しておきましょう。地植えにする場合は穴を掘り、穴が30%ほど埋まるまで腐葉土を入れ、穴底の土と混ぜ合わせておきます。 ②株を掘り上げる スコップを使って株を掘り上げます。なるべく根を傷めないように、株元から20~30㎝離れたところにスコップを差し込み、円形に掘り上げます。 ③根鉢を崩す 根鉢を崩し、傷んだ根を取り除きます。 ④根をつけて切り分ける 根をつけて剪定バサミやナイフで切り分けます。大株の場合はノコギリを使ってもいいでしょう。 ⑤植えつける 切り分けた株は、すぐに植えつけます。 ⑥水やりをする 植えつけが終わったら、ジョウロでたっぷり水やりをします。 アジサイ(紫陽花)を増やすときのコツと注意点 アジサイを増やすのは楽しい作業ですが、品種登録されたアジサイを営利目的・譲渡目的で増やすことは法律で禁止されています。事前に確認しておきましょう。 構成と文・中村麻由美 併せて読みたい ・【憧れの花】アジサイ‘アナベル’の魅力が深まる早春のお手入れ&新品種をチェック! ・アジサイ(紫陽花)の育て方。コツとお手入れ、植え替えなどを一挙公開します ・アジサイ(紫陽花)の育て方にプロの技あり!300種のアジサイが咲く「横浜イングリッシュガーデン」
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育て方
アジサイ(紫陽花)剪定は時期が大切!いつ、どこを切るかコツを知れば初心者でも簡単
アジサイ(紫陽花)を育てる前に知っておきたいこと アジサイはガーデニング初心者におすすめの花木のひとつ。上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 アジサイ(紫陽花)の基本データ 学名:Hydrangea 科名:アジサイ科(ユキノシタ科) 属名:アジサイ属 原産地:東アジア、南北アメリカ 和名:アジサイ(紫陽花)、シチヘンゲ(七変化) 英名:Hydrangea 開花期:6月~7月 花色:青、紫、ピンク、赤、白、緑 切り花の出回り時期:4~7月 花もち:5日程度 アジサイは、樹高1~2mの落葉低木です。日本では4月頃から鉢花が出回りますが、本来の開花期は梅雨時の6~7月です。額(がく)咲き、手まり咲きなどがあり、花色も豊富で、世界的に人気の高い花木です。 葉は先のとがった楕円形で、多くは光沢があり、秋から冬に落葉します。若枝の先にたくさんの小花が集まった半球形の花をつけますが、花びらに見えるのは、実は「装飾花(中性花)」という実を結ばない花のガク。本当の花は、装飾花の中心にある小さな点のような部分で、額咲きのものは装飾花に取り囲まれた中央部におしべとめしべのある「両性花」がついています。手まり咲きのものは装飾花のみ、または両性花が装飾花の陰の目立たないところについています。 アジサイは種子から育てることもできますが、挿し木や取り木をして増やした苗や、園芸店などで鉢植えを購入して育てるのが一般的です。 アジサイ(紫陽花)には剪定が必要なの? アジサイは剪定しなくても花を咲かせる花木です。しかし、放任するとだんだん背が高くなり、上の方にばかり花が咲くようになってしまいます。そのため、適切な樹高を保つように毎年剪定を行うのが一般的です。 アジサイには、以下のような剪定(せんてい)を行います(剪定とは、枝を剪定鋏などを使って切り落とすことです)。 花後の剪定 花が咲いた後に、枝を切り戻す剪定です。 休眠期の剪定 晩秋から冬の間に混み合った枝を整理する剪定です。 強剪定 大きくなりすぎたアジサイをコンパクトに低く仕立て直す剪定です。数年に一度、必要な株にだけ行います。 知りたい! アジサイ(紫陽花)を剪定する目的とメリット ここでは具体的に、アジサイにとって必要な剪定を詳しく紹介します。 花後の剪定の目的とメリット 来年もきれいに花を咲かせるための剪定で、アジサイ栽培で最も大切な剪定といえます。 アジサイは10月頃、今年伸びた枝の先端部に花芽ができます。この花芽は翌年に開花します。花が咲き終わってすぐに剪定を行うと、切った枝のいちばん上の新芽が伸長しますが、この芽は翌年大きく伸長して花芽をつけます。花は翌々年となります。花後の剪定を行わなくても花は咲きますが、枯れた花や枝を切ることで、翌年以降の生育を促し、より美しい位置で花を咲かすために剪定します。 ただし「アナベル」などのアメリカアジサイは、春に伸びた枝に花芽をつけるため、春までに剪定をすればOKです。 休眠期の剪定の目的とメリット 大きくなったアジサイに施す剪定です。必須ではありませんが、枯れた枝や混み合った枝を整理することで、剪定後にすっきりとした姿になり、葉が展開したときの日当たりを改善し、蒸れにくくするメリットもあります。次年の花芽を切らないように注意しましょう。 強剪定の目的とメリット 大きくなりすぎたアジサイを小さくしたいときに行う剪定で、すべての枝を株元近くで大胆に切ります。するとその後、脇芽が展開して翌年に枝が伸び、さらに1年経つと再び花を咲かせます。翌年の花はあきらめなくてはなりませんが、数年に一度強剪定を行うことでコンパクトな株に仕立て直すことができます。 アジサイ(紫陽花)の剪定に適した時期はいつ? アジサイの剪定は、その目的によって、適した時期が異なります。言い換えれば、適期ではない時期に剪定をしてはいけないということになります。 花後の剪定 花が咲き終わった後、7~9月初旬までが適期です。花が咲き終わっているかどうかは、花をよく見て判断します。額咲きタイプは両性花が開花し、装飾花が裏返っていたら、手まり咲きタイプは装飾花の中心にある小さな花が開ききり、全体に色褪せてきたら終わりのサインです。 基本的な方法 ①花から2節目の芽を確認する アジサイの花の2節目に芽があることを確認します。樹高が高くなっているアジサイなら、3~4芽下でもいいでしょう。 ②芽の約2cm上でカットする ①で確認した芽の2cmほど上で切り、花がらを取り去ります。 休眠期の剪定 アジサイが葉を落とし、休眠期に入る11月から翌年3月までに行います。 基本的な方法 ①枯れ枝を切り取る 色が白っぽくなり乾燥した枯れ枝を切り取ります。全体が枯れている枝は剪定バサミを使って地際でカットし、一部が枯れている枝は枯れた部分をカットします。枯れているかどうかわからないときは、芽が動き出す春まで待ってもかまいません。 ②混み合った枝を整理する 株全体を見て、枝が混み合っている場所があったら、風通しがよくなるように適宜間引きます。新しい枝は残し、古い枝を地際でカットするか、混み合っている部分のみカットしましょう。 強剪定 花後になるべく早く行います。 基本的な方法 ①枝元近くで切る すべての枝を、枝元から1~2節の脇芽の上でカットします。ただし、実際には根元付近に葉がなく、何節目かは判断できません。根元からの高さ30cm前後の付近でバッサリと切ります。 カシワバアジサイは葉をなくすと枯れることがあるので、いちばん下の葉の付け根の芽の上で切り、葉を少し残すようにします。 アジサイ(紫陽花)の剪定、枝の選び方は? 花後の剪定では、剪定するのは花が咲いた枝のみにします。花が咲かなかった枝は翌年花が咲くので、そのまま残しましょう。 休眠期の剪定では、基本的に色が白っぽくなり乾燥した枯れ枝を切り取ります。手で曲げるとポキッと折れる枝は完全に枯れていますが、折れない場合はまだ生きている可能性があるため、芽が動き始める春まで様子をみてもいいでしょう。 強剪定は枝を選ばず、すべての枝を大胆に切り詰めます。翌年も花を見たいからと何本か枝を残すと、樹勢がアンバランスになり、短くした枝が枯れてしまうことがあるので注意しましょう。 アジサイ(紫陽花)の剪定には、コツがあります なんといっても適期を逃さないことです。もし花後の剪定をせずに秋を迎えてしまったら、冬季にアジサイは花から二節目までを枯らします。無理に剪定しなくても、自ら枝葉を落とします。花後の剪定はあくまでも翌年の株を少しでも充実させるために行います。 「アナベル」などのアメリカアジサイは、春に伸びた新しい枝に花芽をつけるので、3月までに剪定を行えば、枝のどこで切ってもかまいません。ただし、ある枝は強剪定、ほかの枝は弱剪定などとすると樹勢が乱れるおそれがあるので、バランスよく剪定しましょう。強剪定をするとコンパクトに育ち、花数は少なくなりますが、大きな花を楽しめます。一方、弱剪定にすると、翌年は枝がたくさん出て、大きな株に育ちます。そのぶん花数が多くなりますが、ひとつひとつの花は小さめになることが多いようです。地植えや鉢植えの育てているスペースに合わせて、翌年の株の大きさを想像しながら剪定を行うといいでしょう。また、年数が経った鉢植えは植え替えなども必要です。 構成と文・中村麻由美 併せて読みたい ・ヤマアジサイ(山紫陽花)の 育て方&特徴などを徹底解説! ・アジサイ(紫陽花)の育て方。コツとお手入れ、植え替えなどを一挙公開します ・アジサイ(紫陽花)の育て方にプロの技あり!300種のアジサイが咲く「横浜イングリッシュガーデン」
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育て方
アジサイ(紫陽花)に必要な肥料、正しい与え方と注意点は?
アジサイ(紫陽花)を育てる前に知っておきたいこと アジサイはガーデニング初心者におすすめの花木のひとつ。上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 アジサイの基本データ 学名:Hydrangea 科名:アジサイ科(ユキノシタ科) 属名:アジサイ属 原産地:東アジア、南北アメリカ 和名:アジサイ(紫陽花)、シチヘンゲ(七変化) 英名:Hydrangea 開花期:6~7月 花色:青、紫、ピンク、赤、白、緑 切り花の出回り時期:4~7月 花もち:5日程度 アジサイは、樹高1~2mの落葉低木です。日本では4月頃から鉢花が出回りますが、本来の開花期は6~7月です。額(がく)咲き、手まり咲きなどがあり、花色も豊富で、世界的に人気の高い花木です。葉は先のとがった楕円形で、多くは光沢があり、秋から冬に落葉します。 若枝の先にたくさんの小花が集まった半球形の花をつけますが、花びらに見えるのは、実は「装飾花(中性花)」という実を結ばない花のガク。本当の花は、装飾花の中心にある小さな点のような部分で、額咲きのものは装飾花に取り囲まれた中央部におしべとめしべのある「両性花」がついています。手まり咲きのものは装飾花のみ、または両性花が装飾花の陰の目立たないところについています。 アジサイは種から育てることもできますが、挿し木や取り木をした苗や、園芸店などで鉢植えを購入して育てるのが一般的です。 アジサイ(紫陽花)には栄養を補うための肥料が必要です 植物は、太陽の光のエネルギーを利用して、根から吸収した水分と無機物(肥料分)、葉の気孔を通して取り入れた二酸化炭素から、生長に必要な有機物を合成する「光合成」を行っています。土の中にはある程度の栄養分が含まれていますが、植物を元気に育て、きれいな花を咲かせるには、どうしても不足する成分があります。また、たとえ植え付けの際に栄養たっぷりの土を用意したとしても、植物が生長するにつれ必要なものをどんどん使っていくため、時間が経つと栄養分が枯渇してしまうのです。それを補うために施すのが、肥料です。 もし肥料をやらずに栄養分が足りなくなると、植物全体の元気がなくなり、生育が悪くなったり、花の数が減ったり、葉の色が悪くなってうまく光合成を行えなくなったりするほか、病気にもかかりやすくなってしまいます。植物を育てるうえで、肥料は欠かせないものといえます。 種類を知ることが、適した種類選びの近道 肥料はいくつかの分類方法があります。代表的なものを覚えておきましょう。 原料による分類 有機質肥料 植物や動物など天然の素材からつくられた肥料です。油かす、牛ふん、鶏ふん、骨粉などがあります。 無機質肥料 鉱物などを原料にしたり、動植物を焼いたりしてつくられた、成分が無機質の肥料です。硫安(りゅうあん)、尿素、過リン酸石灰などの化学肥料のほか、草木灰(そうもくばい)などがあります。 配合肥料 後述する三大要素のうち2種以上を含むようにブレンドした肥料です。有機質肥料と無機質肥料をバランスよく混ぜたものが多いようです。 化成肥料 後述する植物の三大要素を2種以上含むように化学的に製造した肥料です。単に混ぜ合わせた配合肥料と違い、化学的につくられているぶん、含有成分量が高くなっています。最も手軽に使え、数多くの化成肥料が市販されています。 形状による分類 固形肥料 だんご状、ペレット状、錠剤状、粒状、粉状などの肥料です。油かすや骨粉を固めてつくった有機質肥料タイプと、成分を化学的に合成した化成肥料タイプがあります。 液体肥料 液状の肥料で、即効性があります。水で薄めて使う希釈タイプとそのまま使えるストレートタイプがあります。 効き方による分類 遅効性肥料 土の中でゆっくり分解され、効果があらわれるまでに日数のかかる肥料です。有機質肥料の多くが遅効性です。 緩効性(かんこうせい)肥料 少しずつ長く効果が続く肥料です。発酵済み有機質肥料や化成肥料の多くが緩効性です。 速効性肥料 すぐに効き目があらわれる肥料です。無機質肥料や液体肥料の多くが速効性で、粒状の化成肥料もあります。 植物に必要な、肥料の三大要素 肥料で補う必要のある成分はチッソ(N)、リン酸(P)、カリ(K)で、「肥料の三大要素」と呼ばれています。 チッソ(N) 「葉肥え」ともいわれる、植物の体を育てる成分です。 リン酸(P) 別名「花肥え」で、花や実をつけさせる成分です。 カリ(K) 耐寒性や耐病性を高める成分で、「茎肥え」「根肥え」とも呼ばれます。 チッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)は、育てる植物や生育状態などにより必要な割合が異なります。初心者はあらかじめバランスよく配合された化成肥料を利用するといいでしょう。 N-P-K以外に必要な要素は? チッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)にカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)が加わると「五大要素」になります。この2成分は、人間に必要な栄養素にたとえるとビタミンやミネラルにあたるといわれています。酸性土壌を中性化する苦土石灰(くどせっかい)などで補えます。そのほかに、微量でよいものとしてはマンガン(Mn)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、塩素(Cl)などがあり、これらは腐葉土や堆肥などの有機質肥料で補うことができます。 こんなタイプの肥料が、アジサイ(紫陽花)におすすめ アジサイには年に2回、肥料を施します。基本的に発酵油かすの固形タイプなどの有機質肥料がおすすめですが、時期によってはN-P-K=10:10:10の緩効性化成肥料や液体肥料を施してもいいでしょう。また、青花用・赤花用といった花色別のアジサイ専用肥料も市販されています。 肥料を与える時期とタイミング 肥料には、与える時期・タイミングにより「元肥」と「追肥」があります。 元肥の時期とタイミング 元肥は、苗木の植え付けや植え替えの際に施す肥料です。即効性は必要ないため、遅効性肥料や緩効性肥料を使うのが一般的です。ただしアジサイの場合、鉢植えも地植えも、基本的に元肥は必要ありません。 追肥の時期とタイミング 追肥は、植物の生育中に施す肥料です。冬季に施す「寒肥」、花が咲き終わった後に施す「お礼肥」などがあります。寒肥は、春先からの生育に備えるもので、ゆっくり効き目があらわれる有機質肥料や緩効性化成肥料が使われます。お礼肥は、花後の枝葉の生育を目的としたもので、有機質肥料、化成肥料のほか、鉢植えには液体肥料が使われることもあります。アジサイにも、この寒肥とお礼肥を施します。 アジサイ(紫陽花)への肥料の与え方 実際にアジサイを育てる過程での肥料の与え方を見てみましょう。 夏(鉢植え、地植え) 花後1か月ほど経ったら、お礼肥として固形の油かす肥料や緩効性肥料を施します。施肥量は、肥料の説明書きより少なめでかまいません。ただし、真夏の施肥は避けましょう。鉢植えには固形肥料の代わりに2週間に1度の割合で液体肥料を施してもいいでしょう。 冬(鉢植え、地植え) 休眠期の1~2月に寒肥として固形の発酵油かすなどの有機質肥料を施します。地植えは一度の施肥でOKですが、鉢植えは土の量が限られているため、月に1度の割合で2回に分けて施すようにします。鉢植えは5~6号鉢で1回5~10g、地植えは成株で100gが目安です。 アジサイ(紫陽花)に肥料を与えるときの注意点は? 肥料を与えるのにも少々コツがあります。まず固形肥料は、根の広がっている範囲にまんべんなく施すようにします。団子状・ペレット状・錠剤状の肥料は鉢植えの場合、数か所に軽く埋め込むか、置き肥にするといいでしょう。地植えの場合、根は枝先の範囲まで広がっているといわれるので、枝先の範囲の地面に数か所に分けて埋め込みましょう。粒状の肥料は、鉢植え・地植えとも株元にばらまき、軽く耕すようにします。希釈タイプの液体肥料は、必ず指示通りに水で薄めることが大切です。 肥料をあげすぎると「肥料やけ」が起きます 初心者は肥料を多めに与えたほうがよく育つと考えがちですが、肥料過多は植物にとって逆効果。根を傷めて生育不良になる、いわゆる「肥料やけ」を起こして、枯れてしまうこともあります。肥料は適期に適量を施すのが原則です。施肥量を迷ったときは、多めより少なめを心がけましょう。 構成と文・中村麻由美 併せて読みたい ・ヤマアジサイ(山紫陽花)の 育て方&特徴などを徹底解説! ・アジサイ(紫陽花)の育て方。コツとお手入れ、植え替えなどを一挙公開します ・アジサイ(紫陽花)が300種咲く!プロが育てるから花数が違う「横浜イングリッシュガーデン」アジサイ最盛期
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育て方
アジサイ(紫陽花)の水やり方法。適切なタイミングと頻度で、水切れを防ぎます
アジサイ(紫陽花)を育てる前に知っておきたいこと アジサイはガーデニング初心者におすすめの花木のひとつ。上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 アジサイ(紫陽花)の基本データ 学名:Hydrangea 科名:アジサイ科(ユキノシタ科) 属名:アジサイ属 原産地:東アジア、南北アメリカ 和名:アジサイ(紫陽花)、シチヘンゲ(七変化) 英名:Hydrangea 開花期:6~7月 花色:青、紫、ピンク、赤、白、緑 切り花の出回り時期:4~7月 花もち:5日程度 アジサイは、樹高1~2mの落葉低木です。日本では4月頃から鉢花が出回りますが、本来の開花期は6~7月です。額(がく)咲き、手まり咲きなどがあり、花色も豊富で、世界的に人気の高い花木です。葉は先のとがった楕円形で、多くは光沢があり、秋から冬に落葉します。 若枝の先にたくさんの小花が集まった半球形の花をつけますが、花びらに見えるのは、実は「装飾花(中性花)」という実を結ばない花のガク。本当の花は、装飾花の中心にある小さな点のような部分で、額咲きのものは装飾花に取り囲まれた中央部におしべとめしべのある「両性花」がついています。手まり咲きのものは装飾花のみ、または両性花が装飾花の陰の目立たないところについています。 アジサイは種から育てることもできますが、挿し木や取り木をした苗や、園芸店などで鉢植えを購入して育てるのが一般的です。 アジサイ(紫陽花)の水やりのコツと、タイミング アジサイは、水を好む花木です。水切れに弱く、乾燥したまま放っておくと花が咲かなくなったり、枯れてしまったりすることもあるので注意が必要です。 アジサイ(紫陽花)の水やりの基本 アジサイの水やりは、土の表面が乾いたらたっぷり、が基本です。表面の土を湿らせる程度では、土の中は乾燥したままで、アジサイは必要な水分を吸収することができません。これを何度繰り返しても水やりをしたことにならないので、必ず十分に水を与えましょう。 また、水やりの際には、ホースから勢いよく水を注いだりすると、土の目を壊してしまうなど、悪影響を与えることがあります。ジョウロや水やりに適した散水ノズルを使って、やさしく水を与えるようにしましょう。 アジサイは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの頻度は異なります。次の項からは、植え付け別の水やりを紹介しましょう。 鉢植えのアジサイ(紫陽花)の水やり 水やりの頻度 鉢植えのアジサイは水切れしやすいので、1年中水やりが必要です。頻度は季節により異なりますが、何日に1回といった目安にとらわれず、毎日土の表面をチェックして、乾いていたら水を与えることが大切です。ベランダで鉢植えを育てている場合は、特に乾燥しやすいので注意しましょう。 水やりのコツ 鉢植えは、水さし口をつけたジョウロで株元にやさしく水を与えます。ウォータースペースがいっぱいになるまで水を注ぎ、鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと与えましょう。挿し木で生育中の鉢やポットには、はす口をつけたジョウロで、よりやさしく水をやりしましょう。 地植えのアジサイ(紫陽花)の水やり 水やりの頻度 地植えのアジサイは、植え付けの際にたっぷり水を与えたら、その後基本的に水やりは必要ありません。ただし、夏場に乾燥した日が長く続くときなどは、時々水を与えてもいいでしょう。 水やりのコツ 株元に、水さし口をつけたジョウロでやさしく水を与えます。ホースを使う場合は、直接勢いよく水を注ぐと株元の土が掘られ、根を傷めてしまうおそれがあるので、ジョウロ散水機能のついたノズルなどを取り付けて、水の出をやわらかくすると安心です。 アジサイ(紫陽花)の水やりは、季節によっても多少変わります 水やりの具合は、天候のほか、アジサイの生育状態や季節で変える必要があります。そこで、この項では季節ごとの違いを見ていきましょう。 春(鉢植え) 園芸店に開花鉢が並び、アジサイ栽培をスタートすることが多い春は、アジサイがぐんぐん生長するシーズンです。葉を展開し、花を咲かせるのにたくさんの水を必要とするため、水切れに注意が必要です。水やりは朝か夕方、土の表面が乾いていたら行います。 夏(鉢植え、地植え) アジサイが最も水切れを起こしやすいシーズンです。この時期に水分が不足すると、葉焼けを起こし、株全体がダメージを受けてしまうこともあります。 鉢植えは、梅雨の時期も雨が降ったからと油断せずに乾き具合をチェックしましょう。なぜなら、花や葉は雨に濡れていても、その陰になった土は乾いていることがあるからです。梅雨明け後、盛夏になったら、鉢植えのアジサイは早朝と夕方の1日2回を基本に、土の表面が乾いていたら、たとえ日中でも水やりを行いましょう。 地植えのアジサイは基本的に必要ありませんが、乾燥した日が続き、葉がしおれかけているときなどは、水を与えてもいいでしょう。 秋(鉢植え、地植え) 9月半ば頃までは暑さが続くため、引き続き水切れに注意が必要です。鉢植えは1日1回、地植えは乾燥が目立つようなら水やりを行いましょう。季節が進むとアジサイは葉を落として休眠期に入ります。葉がなくなると葉からの蒸散がなくなるため乾きにくくなりますが、鉢植えには水やりが必要です。表面の土が乾いていたら、午前中に水を与えましょう。 冬(鉢植え) 休眠中とはいえ、鉢植えのアジサイは水切れした状態で放っておくと枯れてしまいます。土の表面が乾いたら、午前中にたっぷり水を与えましょう。なお、夕方以降の水やりは、土中に残った水分が凍って根を傷めるおそれがあるため、控えましょう。また、寒風に吹きさらされる場所に置いておくと、乾燥しやすいだけでなく、芽を傷めてしまうので、軒下などの風のあたりにくい場所に鉢を移動させましょう。 アジサイ(紫陽花)の水やり、注意点が知りたい! 鉢植えの場合の注意点 再三お伝えした通り、アジサイの水やりは、水切れを起こさないように、1年を通して表面の土が乾いたら、たっぷりと水を与えることがポイントです。ただし、水切れを恐れるあまり、土の表面が乾かないうちから水やりを行ったり、水受け皿に水をためて鉢底から水を吸わせたりするのはNG。根腐れを起こしてしまいます。 また、正しく水やりをしているのに元気がなくなってきたという場合は、根詰まりを起こして水をうまく吸えなくなっているのかもしれません。鉢底から根が見えていたら、根詰まりを起こしているサインなので、植え替えを行いましょう。 万一、アジサイが水切れを起こして花や葉がしおれてしまったときは、バケツなどに水を入れて鉢ごと浸し、涼しいところに1時間ほど置くと、元気を取り戻すかもしれません。 地植えの場合の注意点 地植えのアジサイは基本的に水やり不要で、水の管理が鉢植えに比べて楽なのが大きな魅力です。しかし、夏場に猛暑日が続くときなどは、まめに葉や土の状態をチェックして、乾燥が目立つ場合は水やりを行ったほうがいいでしょう。しかし、毎日のように水を与えると、アジサイがその状況に慣れてしまい、かえって乾燥に弱くなってしまうことがあります。株を甘やかすことになるので、回数はほどほどに、様子を見ながら行うようにしましょう。 構成と文・中村麻由美 併せて読みたい ・ヤマアジサイ(山紫陽花)の 育て方&特徴などを徹底解説! ・アジサイ(紫陽花)の育て方。コツとお手入れ、植え替えなどを一挙公開します ・アジサイ(紫陽花)が300種咲く!プロが育てるから花数が違う「横浜イングリッシュガーデン」アジサイ最盛期
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育て方
アジサイ(紫陽花)の育て方。コツとお手入れ、植え替えなどを一挙公開します
アジサイ(紫陽花)を育てる前に知っておきたいこと アジサイはガーデニング初心者におすすめの花木のひとつ。上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 アジサイの基本データ 学名:Hydrangea 科名:アジサイ科(ユキノシタ科) 属名:アジサイ属 原産地:東アジア、南北アメリカ 和名:アジサイ(紫陽花)、シチヘンゲ(七変化) 英名:Hydrangea 開花期:6~7月 花色:青、紫、ピンク、赤、白、緑 切り花の出回り時期:4~7月 花もち:5日程度 アジサイは、樹高1~2mの落葉低木です。日本では4月頃から鉢花が出回りますが、本来の開花期は6~7月です。額(がく)咲き、手まり咲きなどがあり、花色も豊富で、世界的に人気の高い花木です。 葉は先のとがった楕円形で、多くは光沢があり、秋から冬に落葉します。若枝の先にたくさんの小花が集まった半球形の花をつけますが、花びらに見えるのは、実は「装飾花(中性花)」という実を結ばない花のガク。本当の花は、装飾花の中心にある小さな点のような部分で、額咲きのものは装飾花に取り囲まれた中央部におしべとめしべのある「両性花」がついています。 手まり咲きのものは装飾花のみ、または両性花が装飾花の陰の目立たないところについています。アジサイは種から育てることもできますが、挿し木や取り木をした苗や、園芸店などで鉢植えを購入して育てるのが一般的です。 アジサイ(紫陽花)の種類と選び方 アジサイの種類 ①ガクアジサイ(額咲き) おしべとめしべのある小さな両性花のまわりを装飾花が彩るタイプのアジサイです。アジサイの原種で、まるで額縁のように装飾花がついていることから「ガクアジサイ」と呼ばれます。 ②アジサイ(手まり咲き) ガクアジサイの両性花が装飾花になった変種で、手まりのような丸い花形のアジサイです。ほかのタイプのアジサイと区別するため、まれに「ホンアジサイ」と呼ばれることもあります。最もポピュラーなアジサイです。 ③ヤマアジサイ 関東以西の山地に自生するアジサイで、「サワアジサイ」とも呼ばれます。ガクアジサイやアジサイよりも枝が細く、葉の光沢もないのが特徴です。繊細な雰囲気で、愛好家に人気があります。 ④ハイドランジア(西洋アジサイ) 日本のアジサイがヨーロッパやアメリカに持ち込まれ、品種改良されたもの。母の日などの贈呈用に販売されている鉢植えの多くが、ハイドランジアの園芸品種です。 ⑤外国種アジサイ 北アメリカ原産のアジサイで、洋風のガーデンによく使われます。円錐形の花をつける「カシワバアジサイ」、アメリカアジサイ(アメリカノリノキ)の「アナベル」などが有名です。 アジサイ(紫陽花)を育てるときに必要な準備は? アジサイは鉢植えでも地植えでも楽しめます。以下のものを準備しましょう。 準備するもの ・アジサイの苗木 ・今よりひとまわり大きな鉢 *鉢植えの場合 ・鉢底ネット *鉢植えの場合 ・鉢底石 *鉢植えの場合 ・ラベル ・適した用土(赤玉土小粒+腐葉土など) ・剪定バサミ ・土入れまたはスコップ ・割り箸などの棒 ・ジョウロ 地植えの場合は、今の鉢よりひとまわり大きな植え穴を掘り、植え穴の3割程度の量の腐葉土を入れ、スコップで穴底の土とよく混ぜ合わせてから植え付けるとよいでしょう。 適した土作りが、アジサイ(紫陽花)を育てる第一歩 アジサイは、水はけと水もちのよい土を好みます。鉢植えは赤玉土の小粒をベースに、腐葉土などをブレンドしましょう(たとえば赤玉土小粒7、腐葉土3など)。 また、アジサイは土が酸性なら青色に、アルカリ性ならピンクに花色が変わることで知られています。すべての品種がそうなるわけではありませんが、用土や肥料を工夫して、花色をコントロールしてみるのも一興です。 アジサイ(紫陽花)の育て方にはポイントがあります アジサイは日陰でもよく育つと思われることが多いようですが、本来は日光を好む植物です。日の当たらない場所で育てると花つきが悪くなるので、特に地植えの場合は植え付ける場所をよく考えましょう。少なくとも半日以上日光の当たる場所が理想的です。 また、アジサイは水切れに弱い植物です。特に鉢植えは真夏に水切れを起こしやすく、1日2回水やりが必要なこともあります。乾燥したままだと葉がしおれ、枯れてしまうこともあります。冬場は寒風に吹きさらされないように、鉢植えは風の当たらない場所に移動させましょう。寒さには比較的強いですが、寒冷地では地植えのアジサイに寒冷紗をかけるなど、寒風対策を行うとよいでしょう。 そしてアジサイを楽しむいちばんのポイントは、剪定です。花が終わったら2節目の上で剪定を行います。 アジサイの育て方 苗の選び方のコツ アジサイは4月頃から開花鉢が店頭に並びます。こうした開花鉢で気に入った花色・咲き方のものを購入し、育てるのが一般的です。選ぶときは、アジサイか、ヤマアジサイか、外国種アジサイかといった種類も確認しておくと、のちのお手入れがしやすくなります。 購入鉢の植え替え・植え付け時期と方法 アジサイの開花鉢は、花が終わったら剪定して植え替え(地植えにするなら植え付け)をします。鉢花のアジサイは、樹高が低く花をたくさんつけた状態で出荷するために「矮化剤(わいかざい)」が使われ、小さな鉢に植えられていることが多いからです。そのままにしておくと、小さな鉢の中に根が回り、寝詰まりを起こしたり、水切れしたりするおそれが高くなります。タイミングを逃さず、5~6月に済ませましょう。 ◆鉢植えにする場合 ①剪定 花から2節目の上2cmほど上で茎をカットします。 ②用土の準備 ひとまわり大きな鉢を用意し、鉢底穴に鉢底ネットをかけ、鉢底石を平らに敷いておきます。赤玉土、腐葉土などの用土をよく混ぜ合わせます。 ③根鉢を崩す 鉢から苗木を抜き、剪定バサミで根鉢を崩しながらひとまわり小さくカットします。 ④植え付け 新しい鉢に用土を少し入れ、ウォータースペース(水やりのときに少しのあいだ水をためられるスペース)を確保できるように高さを調節して苗木を置き、隙間に用土を入れていきます。割り箸などの棒でつつきながら用土を入れると、しっかりと植え付けることができます。 ⑤水やり 最後に鉢底から水が流れ出るまで、ジョウロでたっぷり水やりをします。 ◆地植えにする場合 ①剪定 花から2節目の上の芽の2cmほど上で茎をカットします。 ②植え穴を掘り、腐葉土を入れる 今の鉢よりひとまわり大きなサイズに穴を掘り、植え穴の30%を目安に腐葉土を入れ、穴底の土とよく混ぜ合わせます。 ③根鉢を崩す 鉢から苗木を抜き、剪定バサミで根鉢を崩しながらひとまわり小さくカットします。 ④植え付け 地表と苗木の根もとが同じ高さになるように調節し、掘り上げた土を埋め戻します。根と根の間は割り箸などの棒でつつきながら隙間なく土を入れましょう。 ⑤水やり 苗木のまわりの土を少し盛り上げてウォータースペースを作り、ジョウロでたっぷりと水をやります。土が水を吸い込んだら、苗木がぐらつかないように、靴底で盛り上げた土を崩しながら軽く踏み固めます。 なお、2年目以降の鉢植えを植え替えるときや庭におろすときは、11月から3月の休眠期に②以降の作業を行います。 アジサイ(紫陽花)と仲よくなる日々のお手入れ 水やりのタイミング アジサイは、水はけがよく湿潤な土を好みます。鉢植えは年間を通して表面の土が乾いたら水やりをします。乾燥しやすい夏場は特に注意が必要で、1日2回行う必要がある日もあるでしょう。地植えは特に必要ありませんが、夏場に土が乾いているようであれば、適宜水やりを行いましょう。 肥料の施し方 休眠期の冬と花後に施します。冬の肥料は春からしっかりと生長させて、きれいな花を咲かせるためのもので、12月の終わりから2月半ば頃までに、発酵油かすの固形肥料などを根の広がっている範囲に数か所穴を掘って埋めます。青花用・赤花用のアジサイ専用肥料を利用してもいいでしょう。花後の肥料は、新芽を育てるための肥料です。花が終わって1か月ほどしたら、発酵油かすの固形肥料や化成肥料を施肥します。鉢植えには10日に1度、液肥を施してもいいでしょう。 花が咲いたら 花びらが散ることのないアジサイは、花の終わりが見極めにくいもの。まだきれいに咲いているように見えても、花をつけたままだと枝が十分に充実せず、来年の花に影響が出てしまったり、剪定の時期を逃して来年の花が咲かなくなったりしてしまいます。額咲きタイプは両性花が開花し、装飾花が裏返ったら終わりのサイン。手まり咲きタイプは、装飾花の中心にある小さな花が開ききり、全体に色褪せてきたら剪定の頃合いです。花が終わる前に剪定を兼ねて花を切り、切り花として楽しむのもおすすめです。 植え替えの時期や方法は、目的で異なります 鉢植えのアジサイは、根詰まりを起こしやすいので、2~3年に一度は植え替えるようにします。植え替えの適期は、暖地なら落葉して休眠期に入る11月から翌年の3月まで。寒冷地は、寒さで株が傷まないように、3月に入ってから行いましょう。鉢植えのアジサイを庭におろしたいときや、庭植えのアジサイを移植したいときも、同じ時期に行います。植え替え、植え付けの方法は、5の「購入鉢の植え替え・植え付け時期と方法」の②以降と同様です。 アジサイ(紫陽花)の剪定、時期と方法は? アジサイ栽培で最も大切なのは「花後の剪定」です。アジサイの花芽は、秋に今年伸びた枝の先端部にできます。剪定が遅れると、せっかくできた花芽を切り落としてしまうこともあり、その場合は翌年は花が咲きません。また、よい花芽に作るには秋までに枝を充実させる必要があるので、花が咲き終わったら早めに剪定を行った方がいいのです。 ただし「アナベル」などのアメリカアジサイ(アメリカノリノキ)は、春に伸びた枝に花芽をつけるため、春までに剪定をすればOKです。 剪定の方法 ①花の2節目の芽を確認する アジサイの花の2節目に芽があることを確認します。樹高が高くなっているアジサイなら、3~4芽下でもいいでしょう。 ②芽の約2cm上でカットする ①で確認した芽の2cmほど上で切り、花がらを取り去ります。 アジサイが大きく育ってきたら、「休眠期の剪定」も行います。必ずしなければいけない剪定ではありませんが、葉を落とした冬に枯れ枝や混み合った枝を整理すると、すっきりした姿になり、風通しもよくなります。 知りたい! アジサイ(紫陽花)の増やし方 アジサイは、「挿し木」「取り木」「株分け」などの方法で増やすことができます。 「挿し木」の時期と方法 アジサイの挿し木には、「緑枝挿し」と「休眠枝挿し」があります。 緑枝挿し(5~7月、9月) ①挿し穂の準備 今年伸びた枝で花芽のついていない枝を、葉を4枚つけて切ります。切り取った枝は葉をすべて3分の1程度にカットし、30分ほど切り口を水につけておきます。 ②挿し床の準備 浅い駄温鉢に鉢底ネットを敷き、鹿沼土(小粒)または赤玉土(小粒)、またはバーミキュライトを単用で入れ、ジョウロで水をかけて十分に湿らせます。市販の挿木用培養土でも可能です。 ③挿し穂を挿す 割り箸などで挿し床に穴をあけ、挿し穂を2cmほど挿します。複数の挿し穂を挿すときは、葉が触れ合わないように間隔をあけましょう。ジョウロでたっぷり水やりをしたら、明るい日陰に置き、乾燥させないように管理します。 ④鉢上げ 1か月ほどして発根したら、3~5号ポットや鉢に鉢上げします。用土は赤玉土小粒7、腐葉土3などの割合で混ぜ合わせるか培養土を用い、半日以上日に当たる場所で水切れに注意しながら育てます。植え付けは翌春以降に行います。 休眠枝挿し(2~3月) ①挿し穂の準備 昨年伸びた充実した枝を2~3芽つけて切り、切り口を30分から1時間水につけておきます。 ②挿し床の準備 浅い駄温鉢に鉢底ネットを敷き、鹿沼土(小粒)または赤玉土(小粒)、またはバーミキュライトを単用で入れ、ジョウロで水をかけて十分に湿らせます。 ③挿し穂を挿す 挿し穂を2cmほど挿し床に挿します。ジョウロでたっぷり水やりをしたら、日当たりのよい場所に置き、乾燥させないように管理します。 ④鉢上げ 3か月ほどして発根したら、3~5号ポットや鉢に鉢上げします。用土は赤玉土小粒7、腐葉土3などの割合で混ぜ合わせるか培養土を用い、水切れに注意しながら管理します。植え付けは翌春以降に行います。 「取り木」の時期と方法 取り木とは、庭植えの花木の枝を地面に誘引し、土をかけて枝の一部から発根させる方法です。アジサイは4~9月に行えますが、最も失敗がないのは梅雨時の6月です。 ①枝の誘引 長く伸びた枝を選び、芽のある部分が地面につくように枝を折り曲げて、針金をU字状に折り曲げたUピンで固定します。 ②土をかぶせる 芽のある部分に土をかけ、軽く押さえます。 ③親株から切り離す 数か月後、十分に根が伸びたら親株から切り離します。 「株分け」の時期と方法 あまり一般的ではありませんが、大きくなったアジサイは株分けも可能です。適期は11~3月で、寒冷地は暖かくなる3月に行います。地植えの大株は力仕事になるので、あまり大きくなりすぎないうちに行いましょう。 ①植え場所の準備 あらかじめ株分けして増えた株を植えるところを準備しておきます。地植えにするなら穴を掘り、穴が30%ほど埋まるまで腐葉土を入れ、穴底の土と混ぜ合わせておきます。鉢植えにする場合は、新しい鉢に用土を少し入れておきます。 ②株の準備 鉢植えは株を鉢から抜き、庭植えはスコップを使って株を掘り上げます。 ③根鉢を崩す 根鉢を崩し、傷んだ根を取り除きます。 ④根をつけて切り分ける 根をつけて剪定バサミやナイフで切り分けます。庭植えの大株はノコギリを使ってもいいでしょう。 ⑤植え付ける 切り分けた株はすぐに植え付けます。 ⑥水やりをする 植え付けが終わったらジョウロでたっぷり水やりをします。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです 育てるときに注意したい病気 灰色かび病 ボトリティス・シネレアという不完全菌によって起こる病気で、花や葉が褐色に変色し、灰色のかびが密生します。風通しが悪く、湿気が多い場所で発生しやすいので、植え場所・置き場所の風通しをよくしましょう。病気に侵された部分はすぐに切り取り、周囲への感染を防ぎましょう。 炭そ病 糸状菌(かび)が原因で起こる病気で、中央が灰色、まわりが紫色や暗褐色の小さな斑点が多数出現します。梅雨時にかかりやすく、雨のしずくで感染します。発生初期に適応薬剤を散布するか、枝ごと切りって処分しましょう。 モザイク病 ウイルスが原因の病気で、葉にモザイクのようなまだら模様が出て、ちぢれるように委縮します。アブラムシが媒介するといわれています。一度かかると治療できないため、残念ながら株ごと処分するしかありません。 うどんこ病 糸状菌(かび)が原因で発生し、葉や茎に白い粉をふりかけたようなかびが生えます。湿度の高い時期にかかりやすい病気です。事前に適用薬剤を散布して予防するか、発生初期に適用薬剤を散布します。 育てるときに注意したい害虫 アブラムシ 体長1~3mmの黄緑色の虫で、新芽や葉、茎に集団でつき、汁を吸います。春から秋まで発生します。見つけ次第つぶすか、適用薬剤を散布します。事前に適用薬剤を散布して発生を予防するのも効果的です。 ハダニ ダニの仲間で、葉の裏に潜んで汁を吸います。葉は白い斑点状に色抜けし、ひどい場合は枯れてしまいます。ハダニは高温で乾燥した状態を好むので、夏場は特に注意が必要です。時々葉裏に霧吹きで水をかけるか、発生初期に適用薬剤を散布します。 コウモリガの幼虫 枝の中に侵入し、食害する害虫です。被害個所には木くずのような糞の塊がつきます。被害が見られたら、枝ごと切って処分します。 アジサイ(紫陽花)を切り花として楽しみたいときには? アジサイがきれいに咲いたら、切り花として楽しみたい人も多いことでしょう。ただ、アジサイは水揚げが難しく、水切りしただけではすぐにしおれてしまうことが多いようです。アジサイの水揚げ方法はいくつもありますが、比較的簡単なのは「切り口を焼く」「湯揚げ」「切り口にミョウバンをつける」方法です。これらの方法で水揚げ後、切り花延命剤を入れた水にいけると花もちがよくなります。 切り口を焼く アジサイは茎の切り口から10cmほどを残して水に濡らした新聞紙で包み、ガスコンロの火で切り口が真っ黒に炭化するまで焼きます。すぐ深めの水につけて1時間以上置き、炭化した部分をカットします。 湯揚げ 茎の切り口から10cmほどを残して新聞紙で包み、切り口を熱湯に20~30秒つけます。すぐに深めの水につけて1時間以上置き、熱湯で変色した茎の先をカットします。 切り口にミョウバンをつける 斜めに大きく切った茎の切り口にミョウバンをたっぷりこすりつけ、茎先を残して新聞紙で包み、深めの水に1時間以上つけます。 アジサイを切り花にして楽しみたいときは「アジサイ(紫陽花)のおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ」、ドライフラワーにしたいときは「アジサイ(紫陽花)の、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」をご覧ください。 構成と文・中村麻由美 併せて読みたい ・テーブルをアジサイで華やかに、海野美規さんのアレンジメントレッスン! ・ガーデナーに大人気のアジサイ‘アナベル’の楽しみ方 ・アジサイ(紫陽花)が300種咲く!育て方が違うから、すごいアジサイが咲く「横浜イングリッシュガーデン」 アジサイについてよくある質問 アジサイの花後剪定の時期はいつ頃ですか? 花を長くつけたままにしておくと、株に負担がかかってしまいます。しかし、アジサイのようにがくを観賞する装飾花は、花びらが落ちないためにいつが花後なのかわかりづらく、花後の剪定時期に悩みがち。花後を見分ける一つの目安が、装飾花が色あせて裏返ることです。また、ガクアジサイなら、装飾花に囲まれて咲く小さな花から、めしべやおしべが落ちるのも花が終わった合図になります。これらのサインを見かけたら花後剪定として、花の下2節目の節を目安に切り戻しましょう。切った花はドライフラワーなどにすれば長く楽しむことができます。ちなみに、白い花が咲くアナベルは、春に花芽が作られるので、花芽を落とす心配なく剪定できる咲かせやすいアジサイです。 枯れたアジサイの花はそのまま放っておいて大丈夫ですか? アジサイの花はそのまま放っておいても、落ちずにドライフラワーのようになります。花が枯れないのは、花のように見えているのが実は萼片(がくへん)だからです。これを修飾花と呼び、実際の花は中央にあるごく小さいもので夏前に枯れますが、修飾花は残っているためずっと咲いているように見えるのです。修飾花は夏になると、少し枯れたような秋色に変化します。そんな秋色アジサイを楽しむ人もいますが、放置すると翌年の花に悪影響が出るので、花が乾燥してきたら早めに剪定するのがおすすめです。切る位置は花の2~3節下で切るのが基本ですが、品種によってタイミングや切る位置も変わります。注意しないと翌年の花芽を切り落としてしまうので、よく調べて剪定しましょう。 カシワバアジサイが大株になってしまいました。あまり切ると来年咲かないと聞きましたが、コンパクトに咲かせる方法教えてください。 カシワバアジサイは育てやすくて、大きな花も咲き、秋には紅葉も素敵な花木ですよね。丈夫なので、どんどん大きくなって気がつけば背丈を越しているなんてこともあります。秋の紅葉を楽しんだら冬になる前までに剪定を終わらせましょう。通常、2節くらい軽く切ると翌年もその枝に花が咲きますが、毎年2節程度切っただけでは、徐々に株は大きくなってしまいます。そこで、数年に一度は、例えば10本の内、5本は短く切り込んで丈をリセットし、5本は咲かせる方法がオススメです。または、花が純白から退色してきた7月下旬ごろ、花茎の下方にある、今年花が咲かなかったけど新芽が伸びたのかなと思う枝を大事に残し、他の枝を希望の丈に切るのも方法です。今年伸びた新芽が翌年に花芽をつける枝になるので、低い位置にある新芽を残すとよいでしょう。剪定は秋以降でも良いのですが、花後なら新芽と古い枝を区別しやすいです。株があまり大きくなりすぎると花が咲く位置が高くて鑑賞しにくいですし、春の強風や台風で思いがけない場所で折れてしまうので、思い切った剪定も時には必要。ぜひ挑戦してみてください。 アジサイの剪定は冬にしても大丈夫ですか? アジサイの剪定の適期は7~8月頃の花後の時期。大きくなりすぎてコンパクトにしたい場合でも、冬に剪定したいというときには注意が必要です。なぜなら、翌年に花が咲かないことがあるため。アジサイの花芽は、気温が下がり始める前年の秋に形成され、その年に伸びた枝には花は咲きません。そのため、秋以降に枝を深く切ると、翌年の花芽を落としてしまい、花が咲かなくなることがあります。秋以降にどうしてもコンパクトに仕立て直したいという場合、翌年に咲かない可能性も考慮して作業しましょう。10月頃になると、ふっくらとした花芽が葉の付け根に見えるようになるので、それを確認しながら剪定してもいいでしょう。ちなみに、アジサイの仲間であるアナベルは、春に伸びた枝の先に花が咲くので、冬にバッサリ切ってしまっても大丈夫。花が咲かない心配をせず、初心者でも気軽に剪定ができます。
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宿根草・多年草
グロリオサに必要な肥料について、正しい与え方と注意点を知りましょう
グロリオサを育てる前に知っておきたいこと グロリオサは、半蔓性の球根植物です。鉢植え、地植え、どちらにも向いていて、巻きひげ状になった葉先が他のものに絡んで伸びていきます。蔓が伸びてきたら、鉢植えの場合はアサガオなどによく使われる円筒形の器具に、地植えの場合は支柱やフェンスなどに誘引する必要があります。 グロリオサの基本データ 学名:Gloriosa 科名:イヌサフラン科 属名:グロリオサ属(キツネユリ属) 原産地:熱帯アジア、アフリカ 和名:狐百合(キツネユリ)、百合車(ユリグルマ) 英名:Gloriosa lily、Glory lily 開花期:6~9月 花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、複色 発芽適温:20~30℃ 生育適温:20~30℃ 切り花の出回り時期:オールシーズン 花もち:7~10日 グロリオサを育てるのは、それほど難しくはありません。熱帯原産のため高温を好む植物なので、植えつけは少し暖かくなってから、4月下旬~5月下旬が適期です。植えてから約2か月で花が楽しめます。 グロリオサには栄養を補うための肥料が必要です 植物が生きていくためには、光、水、そして栄養が必要です。 植物は動物のように、栄養を得るために動き回ることができません。そのため、生きるための栄養を自分で作る必要があります。それが光合成です。光合成によって、植物は酸素と炭水化物を作っています。しかし、植物の体を作るためにはこれだけでは足りません。タンパク質、チッ素、リン酸、カリなど、自分で生み出せない数多くの養分を、他から得なければいけないのです。植物は、こうした必要な養分を、根を通して土から吸収しています。 とはいえ、どこの土にもこうした養分が十分にあるわけではありません。土の種類にもよりますが、いくつかの養分が足りない場合がほとんどです。こうなると、足りない養分を補う必要が出てきます。これが植物に肥料を与える理由です。 不足しがちなのは、チッ素、リン酸、カリという3つの要素です。これらは多量に必要な養分です。植物が生長する間は必要に応じて、これらを肥料として与える必要があります。 種類を知ることが、適した肥料選びの近道 肥料にはさまざまな種類があり、それぞれに特性があります。グロリオサへの肥料の与え方を説明する前に、肥料について、基本的なことを知っておきましょう。 ホームセンターや園芸店には、たくさんの肥料が売られています。「草花用」や「花と野菜の肥料」などと書かれているものです。こう書かれていると、植物によっては、どの肥料を買ったらよいか迷ってしまいます。しかし、肥料の種類と特性を知っておけば、自分が何を選ぶべきか判断することができますし、不必要にいくつもの肥料を買い込んでしまうことはありません。 肥料は、有機質肥料、無機質肥料(化学肥料)のふたつに大別されます。 有機質肥料 油かす、魚かす、骨粉、鶏ふん、牛ふんなど動植物を原料とするものを「有機質肥料」といいます。天然肥料と呼ばれることもあります。有機質肥料には、肥料成分以外のさまざまな要素も、微量に含まれているのが特徴です。土壌中の微生物によって分解されたあと植物に吸収されるため、効果が出るまでには時間がかかります。 無機質肥料 石油や硫酸などの原料から化学的に合成したものや、鉱物、貝殻などの天然資源から製造された肥料を「無機質肥料」といいます。前述のチッ素、リン酸、カリのうち、1種だけのものを単肥、2種以上をバランスよく含むものを化成肥料といいます。肥料の効き方や期間が、コントロールされているので初心者でも扱いやすく、効果が早く現れるものが多いです。 肥料は、その効き方でも、緩効性肥料、遅効性肥料、速効性肥料と、3種類に分類されます。 緩効性肥料 肥料の効果が緩やかに持続するタイプが「緩効性肥料」です。適切に施せば、成分が一気に溶けることはないので、肥料やけをおこす心配はありません。後述する元肥、追肥のどちらにも使えます。 遅効性肥料 肥料を与えたあと、ゆっくりと効果が出ます。有機質肥料の大部分が、この遅効性肥料です。効き始めるのは遅いですが、効果は長もちします。主に元肥として使用します。 速効性肥料 肥料を与えると素早く吸収され、効きめがすぐに出るのが「速効性肥料」です。ただし、効果の持続性はありません。定期的に施す追肥として使われます。 肥料はその形状によっても分類されます。土に置いたり混ぜ込んだりして使用するタイプの固形肥料と、規定倍率に水で希釈して使用するタイプの液体肥料(液肥)とがあります。 液体肥料に似たもので、活力剤があります。活力剤は人間の食事にたとえると、サプリメントや栄養ドリンクのような補助的な役割をする製品。肥料の代わりにはなりません。 植物に必要な、肥料の三大要素 植物が育つためには、さまざまな栄養素が必要です。なかでも必要量が多いのに不足しやすく、特に重要な3種類を「肥料の三大要素(三要素とも)」といいます。それが、チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)です。市販されている肥料の袋に、大きく「10-8-7」などと数字が記載されているのを、見たことがありませんか? この数字は、肥料全体を100としたときの、そこに含まれる三大要素「N-P-K」の割合(重量%)を表しています。書かれた数字が「10-8-7」であれば、この肥料はチッ素、リン酸、カリがそれぞれ10%、8%、7%という割合で配合された肥料であることを示しているのです。 N:窒素(nitrogenous) 一般に「チッ素」と呼ばれています。枝や葉を茂らせる働きがあり、“葉肥(はごえ)”ともいいます。 P:リン酸(phosphate) 一般に「リン」あるいは「リン酸」と呼ばれています。花や実のつきをよくする働きがあり、“花肥(はなごえ)、実肥(みごえ)”とも。 K:カリウム(kalium) 一般に「カリ」と呼ばれています。茎や根を丈夫にする働きがあり、“根肥(ねごえ)”ともいわれます。 N-P-K以外に必要な要素は? 三大要素に対し、必要量は少ないものの極端に不足すると生育に影響するものとして、ミネラル類があります。中量要素と微量要素に分類され、中量要素にはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg・苦土)、イオウ(S)が、微量要素には亜鉛(Zn)、塩素(Cl)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)があります。先の三大要素に、これらの中量要素、微量要素を加えた肥料がいろいろ市販されています。 こんなタイプの肥料が、グロリオサにはおすすめ グロリオサは、花が咲くまでは長期間効果が続く緩効性化成肥料を与えます。草丈が伸びてきたら、さらに追肥(下記参照)として速効性の液体肥料を与えます。株の全体的な生育を促すために、10-10-10の肥料が基本です。 花が終わったあとは、球根を太らせるためにカリが多い液体肥料を施しましょう。 肥料を与え始める、時期とタイミング 肥料は与える時期によって、「元肥」「追肥」のふたつに大別されます。 元肥 植物を植えつけるときや植え替えるときに、あらかじめ土に施しておく肥料のこと。植物の初期生長を促します。長く穏やかな効果が続く、粒状の緩効性肥料を使うのが一般的です。 追肥 植物の生育途中で施す肥料のこと。植物は生育するにつれて多くの栄養を必要とします。元肥の栄養分だけでは途中で足りなくなってしまうので、不足分を補うために与えるのが追肥です。速効性または緩効性肥料を使います。 肥料は植物の生育期に与えるのが原則で、元肥も追肥もそのための肥料です。ほかに、生育するための準備として、休眠している樹木や多年草に与える「寒肥」、新芽が出る前に与えるチッ素をメインにした「芽だし肥」、花や果実の収穫後に与える「お礼肥」などがあります。 お礼肥は、果樹、球根植物、多年草など、数年にわたって栽培する植物に、消費した養分を補う目的で与えます。グロリオサなどの球根植物の場合は、特に球根の肥大を促すカリが多めで、速効性のある肥料を選びましょう。 グロリオサへの肥料の与え方が知りたい それでは実際に、グロリオサを育てる過程での肥料の与え方を、季節ごとに見てみましょう。 春(鉢植え、地植え) グロリオサの球根は、4月下旬~5月が植えつけの適期です。グロリオサは球根植物なので、発芽に必要な養分はすでに球根に蓄えられています。植えつけの際は元肥として、暖効性化成肥料を施すといいでしょう。 鉢植えの場合は、暖効性化成肥料を土の表面にばらまきます。地植えの場合は、土に混ぜて施すか、発芽点の近くに半分埋めるようにします。芽が出ていない球根の場合は、芽が出てから肥料を与えてください。 夏~初秋(鉢植え、地植え) グロリオサはたくさんの肥料を好む植物です。生育中に肥料が不足すると花も球根も育ちが悪くなるので、草丈が伸びてきたら2週間に1回くらい追肥として、速効性の液体肥料を与えます。最初に施した緩効性化成肥料は、45~60日程度で効果が切れるので、9月いっぱいくらいまでは追肥を与え、肥料を切らさないようにします。 グロリオサに肥料をあげるときの注意点 花が咲いている間はもちろん、咲き終わっても、9月いっぱいくらいまでは肥料を与えておいてください。グロリオサは肥料が切れると、花が咲いている途中でも葉が黄色くなって枯れてきて、通常より早く休眠に入ってしまいます。株が早く休眠に入ると、新しくできる球根が十分太らない可能性があります。球根のための肥料も、忘れないようにしたいものです。 ただし、グロリオサに肥料を与えるときは必ず、正しい使用量と使い方を守ってください。市販肥料には、袋や添付されている説明書に、その肥料の成分や効果、使用量の目安、使い方(土に混ぜる、水で希釈するなど)が記載されています。これを守らずに植物に肥料を与えると、健康的に育つどころか、かえって成長を妨げることがあります。 肥料をあげすぎると「肥料やけ」が起きます 「肥料やけ」とは、肥料を多く与えすぎることで起こる現象です。土中の肥料成分が高濃度になり過ぎると根が傷み、株が元気をなくしたり、根腐れを起こして枯れてしまったりすることがあります。肥料は、使用量の目安と使い方を守ること。特に、鉢植えの場合は土の量が限られており、肥料成分が高濃度になりやすいので、肥やけが起きやすくなります。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 構成と文・高梨奈々
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一年草
知りたい! プリムラの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方
プリムラって、どんな花? プリムラは耐寒性に優れ、初心者でも比較的育てやすい花です。 プリムラの基本データ 学名:Primula 科名:サクラソウ科 属名:サクラソウ属 原産地:欧州からアジアにかけた広範囲 和名:桜草(サクラソウ、またはセイヨウサクラソウ) 英名:Primrose 開花期:11~4月※品種により若干異なる 花色:赤、ピンク、白、黄、オレンジ、青、紫、複色 発芽適温:15~20℃ 生育適温:15~20℃ 初秋の9月ごろからさまざまな品種の苗が園芸店に並び、年末ごろには多くの品種が一斉に出回ります。まずは苗から育ててみましょう。種から育てる場合は、品種によって若干異なりますが、その多くが5~6月に種まきを行います。 プリムラの原種について知りたい! プリムラの原種は、ヨーロッパからアジアにかけての広い範囲で自生し、その数は50種以上におよぶといわれています。日本にもサクラソウやカッコウソウ、クリンソウなど、約20種が自生。これらの原種をもとに品種改良が進み、現在では世界になんと500種以上ものプリムラが分布しています。 多くの園芸品種を生み出した原種のなかから主な4種を、紹介しましょう。 プリムラ・エラチオール ヨーロッパ原産で、赤や黄、紫色の花を咲かせます。草丈は本来20~30㎝ほどですが、小さな鉢で栽培するとそれほど大きくならず、10㎝ぐらいでかわいらしく咲きます。 プリムラ・ベリス ヨーロッパ原産で、別名カウスリップ。広がるように生育し、春に伸びた花茎の上部に、黄花を房状に咲かせます。芳香があるのが魅力。 プリムラ・ブルガリス ヨーロッパ原産。イギリスでは、プリムローズと呼ばれ、古くから親しまれてきました。早春にレモンイエローのやさしい色合いの花を咲かせます。 プリムラ・ジュリエ 南コーカサス原産。草丈は低く(草丈5㎝ほど)で、カーペット状に広がるのが特徴です。春に紫色がかったピンクの小さな花を咲かせます。 特徴で、5つのタイプに分けられます 古くから品種改良が進められたプリムラは、前述のとおり、現在に至るまで、じつにたくさんの園芸品種が誕生しています。それらは、地中海性気候のヨーロッパから西アジアに分布。このため、プリムラは、ヨーロッパ系とアジア系に大別されます。現在、日本で市販されているプリムラの品種は、主に、ヨーロッパ系の「ジュリアン」と「ポリアンサ」、アジア系の「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」の5タイプです。この項では、それぞれがもつ特徴と魅力をまとめました。 ヨーロッパ系 プリムラ・ジュリアン ジュリアンは花色も花形も、非常に豊富なのが特徴です。後述する、ポリアンサ系統に比べ、株がコンパクトなことから、寄せ植えなどのガーデニングに適しています。早咲きのものが多く、プリムラのなかでも特に早く開花します。もっとも早い品種は9月中下旬から開花します。南コーカサス原産のジュリエと、ポリアンサ系との交配によって誕生しました。 プリムラ・ポリアンサ エラチオール、べリス、ブルガリスの3種の原種をベースに改良された、種間雑種です。ポリアンサは、先のジュリアンに比べ、花も葉もひと回りほど大きく、花弁に厚みがあります。色はピンク、黄、オレンジ、白、青、紫、複色など多彩。ひと重咲きのほか、華やかな八重咲きやフリル咲きのものが揃います。花苗は11月下旬ごろから、花店やホームセンターの店頭に並びます。 アジア系 プリムラ・マラコイデス 中国原産のマラコイデスは、ガクや葉の裏などに白い粉をつけるため、和名で化粧桜(ケショウザクラ)とも呼ばれています。色はピンク、白、青紫、紫が主流です。花はポリアンサに比べると小さく、小粒の花が段を作るようにたくさん開花するのが特徴。12月上旬頃から店頭に並び始めます。耐寒性が強い一方、夏の暑さや日本の湿気に弱いことから、一年草として扱います。翌年も楽しみたい場合は、種を採取しておきましょう。 プリムラ・シネンシス 中国原産種のシネンシスは、気品溢れる花姿が人気の品種です。色は赤、白、青などが主流です。葉の裏側が、赤みを帯びた銅葉となるのが、このタイプならでは。冬の寒さにも夏の暑さにも非常に強く、育てやすいプリムラです。 プリムラ・オブコニカ オブコニカは、ガクの形がすり鉢状になることから、その名前には「円錐形」という意味があります。和名は、常盤桜(トキワザクラ)。ピンク、アプリコット、白など、淡くかわいらしい色が揃います。ほかのプリムラより、やや大ぶりな花が葉の間から伸びる茎に咲きます。 オブコニカの花や葉は、プリミンというアルカロイド成分を分泌し、これに触れると皮膚がかぶれることがあるので注意しましょう。最近は、プリミンフリーの品種も販売される様になりました。 プリムラの、種類ごとの違いと見分け方 プリムラの花のつき方(草姿)は、以下の3種です。「ジュリアン」、「ポリアンサ」、「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」の5タイプが、それぞれどの草姿にあたるのか、見分け方を覚えておきましょう。 ポリアンサ(茎立ち) 株元から太い主茎を伸ばし、その先端にいくつもの花をつけます。ポリアンサ、シネンシス、オブコニカが、こちらになります。 アコーリス 根元からたくさんの花茎を伸ばし、先端にひとつだけ花を咲かせます。ジュリアンのほか、ポリアンサにも、この花のつき方をするものがあります。 段咲き マコライデスが、この咲き方です。花茎を伸ばしながら、数段の花を咲かせます。 ※ポリアンサの草姿は2種あります。近年、ポリアンサとジュリアンの草姿が類似して、見分け方が非常に難しくなってきました。購入の際は、株についているラベルを参考にして、好みの花姿のプリムラを選ぶのがいいでしょう。 育てたいのはどれ? プリムラの人気品種 品種改良が進み、どんどん新しい園芸品種が誕生しているプリムラ。そのなかでも人気が高く、比較的手に入りやすい品種はこちらです。 プリムラ・ジュリアン系 まるでバラのような花弁と豊かな色合いをもつ「ピーチフロマージュ」。香りが強いのも特徴です。同じく、バラをイメージした、愛らしい花と草姿のバランスがよい「プリムレット」も人気があります。 プリムラ・ポリアンサ系 花弁の端から中心に向けて、ベールのようなフリルが美しい「マリアベール」、八重咲き品種で、ダイナミックな花姿が目を引く「パロマ」、7~10㎝の大輪「オーシャン」などがあります。 プリムラ・マラコイデス系 半八重咲きの白い小輪が咲く「メローシャワー」は、葉からほんのりメロンの香りがするという特徴があります。ピンク、白、赤紫色のミックスの花をつける「うぐいす」は、寒さに弱いマラコイデスのなかでも、耐寒性の強い品種。鉢ごと手のひらにのってしまうミニサイズ「ジョリーコビット」も人気です。 プリムラ・シネンシス系 花つきがよく育てやすい「サーティーワン」は、花弁の1枚1枚がハート形に見えるのが独特。 プリムラ・オブコニカ系 コスモスのような花姿の「タッチ・ミー」は、オブコニカのなかでもプリミンを含まず、肌が触れてもかぶれる心配がありません。鮮やかなピンクが特徴の人気種です。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 構成と文・角山奈保子