神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
元木はるみ -「日本ローズライフコーディネーター協会」代表-

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
元木はるみ -「日本ローズライフコーディネーター協会」代表-の記事
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育て方
実録! バラがメインの庭づくり第16話「早咲きのバラと一番花の楽しみ方」
これまでで一番早いバラの開花 3月も4月も高温の日が多く、今年のバラの一番花は、今までで最も早い開花となりました。 関東に住む私の周辺でのバラの開花は、例年、4月下旬~5月上旬頃に早咲きが咲き始め、5月中旬頃にほとんどのバラが満開となり、そして、5月中旬以降は遅咲きのバラが咲き始めるというスケジュールでした。 しかしここ数年は、毎年開花が早くなっているようで、特に今年は、4月中旬頃には関東地方では早咲きのバラが満開となるなど、その傾向が顕著となりました。 今回は、特に早い開花となった早咲きのバラにスポットを当てて、どんな品種があるかを、ご紹介します。 バラの季節の始まりを告げる早咲きのバラたち 1.ロサ・バンクシアエ・ルテア キモッコウバラでお馴染みのこちらの黄色の八重咲き種は、白のモッコウバラより数日早く開花し、あちらこちらで、日本のバラの季節の始まりを告げてくれます。 2.ロサ・バンクシアエ・バンクシアエ 白の八重咲き種のこちらのバラは、1807年に、英国のキュー王立植物園園長ジョセフ・バンクスの下で働くウィリアム・カーが、中国広東省付近で発見し、ヨーロッパに初めて紹介しました。 3.ロサ・バンクシアエ・ルテスケンス 黄色の一重咲き種のこちらのバラは、ロサ・バンクシアエ・ルテアの枝変わり品種といわれています。 4.ロサ・バンクシアエ・ノルマリス 5.ロサ・ラエウィガータ 中国原産で、一説には、難波商人によって日本へ持ち込まれたために「ナニワイバラ」と呼ばれるようになったとのことです。花は大輪の白の一重で、株は大変大きく育ちます。大きな艶のある葉は常緑で、冬には落葉しませんが、春に花が散る同じ頃、古い葉を落とします。 6.ロサ・ラエウィガータ・ロゼア 花は大輪のピンクの一重咲きで、ナニワイバラの変種といわれています。主に、埼玉県鳩ケ谷市で生産販売されたために「ハトヤバラ」と呼ばれます。 7.ロサ・キネンシス・スポンタネア 長い間、「幻のバラ」であったこちらのバラは、日本人植物学者の荻巣樹徳氏によって、1983年、中国四川省で発見され、中国のバラの基本種の一つとして野生種の意味である「スポンタネア」が名前になりました。上写真のような濃い赤橙色のものや、以下の写真のように薄いピンク色のもの、また他にもさまざまな花色があります。 8.ロサ・キネンシス・オールドブラッシュ 18世紀後半から19世紀前半にかけて、中国からヨーロッパに渡った代表的な4品種のうちの一つで、このバラが主に四季咲き性をヨーロッパのバラにもたらしました。英国人のジョン・パーソンズが栽培に成功し、‘パーソンズ・ピンク・チャイナ’と呼ばれ、‘オールド・ブラッシュ’の名で広まりました。 9.‘マイカイ’ 香りの素晴らしい‘マイカイ’の花が咲くと、その花弁を利用したローズティーをいつも楽しんでいます。中国では、「マイカイ」という名称はバラの代名詞としても使われ、古くから観賞だけでなく食用や薬用に利用されてきました。 10.‘サフラノ’ 剣弁のセミダブルの花は、細い枝によくマッチして、優し気な雰囲気です。明治時代、日本で「西王母」という名で流通していました。 11.リージャン・ロード・クライマー 1993年に、イギリス人によって中国雲南省の麗江路 (リージャン・ロード)で発見されました。大株に成長し、開花時期は圧巻の風景です。 12.‘ソンブレイユ’ 中~大輪のアイボリー色のロゼット咲きの花は大変美しく、秋にも返り咲きます。 13.ロサ・ユーゴニス アメリカの絵本作家で挿絵画家、園芸家でもあったターシャ・テューダーが、3歳の時、電話を発明したベルの庭で見かけ、植物に惹かれるきっかけとなったバラです。レモン~クリームイエローの一重の花を、枝に並ぶように咲かせます。1899年、ヒューゴー神父が中国北中部から、イギリスのキュー王立植物園に種子を送ったといわれています。 14.‘カナリーバード’ 謎の起源のバラですが、交配親は、13番に紹介したのロサ・ユーゴニスと、ロサ・クサンティナではないかと推測されています。枝に並ぶように咲く、明るい一重のレモンイエローの花が一際目を引く品種です。 15.ロサ・ムルティフローラ 淡いピンクがかったつぼみから白い小輪の5弁の花を咲かせます。日本各地の山野に自生し、バラの台木として利用されています。 16.ロサ・アシクラリス 花径5cm程の紅紫色の一重咲きで、東アジアの冷涼な場所や高山に自生します。 17.‘スパニッシュ・ビューティー’ 大輪の花を俯き加減に咲かせる姿は、まるでドレスのようでエレガントです。 やや早く咲き出すバラたち 18.‘ベルベティ・トワイライト’ 光沢のある波状弁のワインレッドの美しい花は、ガーデン&プロダクトデザイナーの吉谷桂子さんへ捧げられ、命名されました。豊かなダマスク香も魅力的。 19.‘ローズ・ポンパドール’ ロココ時代のルイ15世の公妾、ポンパドール夫人に捧げられたバラ。豊かなフルーティーな香りで、ボリュームのある花を咲かせます。我が家では、フェンスを支えにして咲かせています。 20.‘ナディーナ・エクセラリッシ’ 花は、アプリコットイエローの中心から外側に向かってアイボリーの花弁が重なり、美しいロゼット咲きに変化します。爽やかなフルーティー香です。 21.‘オリビア・ローズ・オースチン’ 愛らしいピンクの花色に、育てやすい樹形、今の庭では花壇の前側を優しく彩ってくれていますが、鉢植えでもよく咲いてくれました。 22.‘ウィンチェスター・キャシードラル’ ピンクがかるつぼみから、アイボリーの緩やかなロゼット咲きの花を咲かせます。1983年に作出された‘メアリーローズ’の枝変わりです。同じく枝変わりの‘ルドゥーテ’とこちらのバラの3品種とも、他のバラに比べてやや早くに咲き出します。 早く咲いた一番花の楽しみ方 早いとはいえ、待ちに待ったバラの季節の始まりを告げてくれる庭の一番花の開花は、本当に嬉しい気持ちにさせてくれます。 そのまま、咲いている姿を眺めたり、写真を撮ったり、絵を描いたりとさまざまな楽しみ方があるかと思いますが、もし部屋に飾る場合は、これから咲くつぼみを株に残して、咲いた花と花茎部分だけを切り取って飾るようにしたいものです。 飾り方1 水を張ったトレイに、置いて並べるだけの簡単アレンジ 庭で咲いている草花をプラスし、2段重ねにしてみました。写真のバラは、‘ウィンチェスター・キャシードラル’、‘レーヌ・デ・ヴィオレッタ’。 飾り方2 ティーカップに浮かべる カップに持ち手がついているので、バラを顔の近くまで運び、香りや花色を間近で楽しむのにとても便利です。写真のバラは、‘エレン・ウィルモット’。 飾り方3 器に浮かべる 自分の感性に合った器とのマッチングを自由に楽しみましょう。写真は、コデマリとバラ‘レーヌ・デ・ヴィオレッタ’。 飾り方4 リース形のオアシスに挿す バラの一番花と庭の草花を詰め込んで、植物が与えてくれる幸せな一時を味わいましょう。写真のバラと庭の草花は、飾り方1と同じです。 早く始まった今年のバラの季節、心ゆくまで楽しみたいですね。 5月12日(水)15時〜 オンラインオープンガーデン配信! 5月12日(水)15時より、神奈川県にある元木はるみさんのバラ咲く庭から中継でお届けします。無農薬~低農薬栽培でバラを育てて、花びらやローズヒップを暮らしに活用している元木さん。仕立て方のテクニックやお気に入りの品種などをご紹介いただきます。また、当日はサンルームにバラのプチパーティーのテーブルセッティングも登場! バラのおもてなしのこだわりも教えていただきます。 参加をご希望の方は、下記のクラブ会員サイトよりお申し込みください。 ●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。 また、ガーデンストーリークラブ会員以外の方も、オンラインオープンガーデンの様子をYouTubeの同時ライブ配信でご覧いただけますので、どうぞお楽しみに! YouTubeライブ配信URLはこちら→https://youtu.be/CNwc1siema0
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育て方
実録! バラがメインの庭づくり第15話「美しいバラの新緑の時期と鉢植えギフトローズの管理方法」
3月の庭の様子 写真は、現在の庭の様子です。今年は3月に気温の高い日が多く、昨年に並んで桜が観測史上最も早く開花し、バラの展開も早いように思います。 テラス前の四角いアーチに誘引しているバラ‘フランソワ・ジュランヴィル’(R/仏 1906年/Barbier Frres & Compagnie作出)も、葉が茂り始めました。 今年は、バラが植わる花壇の縁取りに、コンパクトな株で花付きのよいマーガレットの‘スマッシュ’と、斑入り葉のアベリア‘コンフェティ’を交互に植栽しました。 鉢植えのバラの縁取りは、芝地との境界線が馴染むよう昨年から植えているカレックスの間に、バーベナやセダムなどを追加しました。 すでに小さなつぼみを見せてくれているバラもいくつか現れています。 欠かせない毎日の見回り時に、ゾウムシによる被害を発見することもあります。 上写真のように、新芽がカサカサした状態になっていたら、新芽の基部をゾウムシに食害されているサインです。 これが、ゾウムシ(クロケシツブチョッキリ)です。3mmほどの小さな甲虫ですが、新芽やつぼみに与える被害は甚大です。 ゾウムシは、新芽の基部に潜んでいることが多く、また捕らえようとすると、自ら地面に落ちて逃げてしまいます。捕獲する際は、写真のような箱の蓋などを利用すると逃さず受けやすいです。 バラの新緑が美しい季節! 葉の特徴を見比べましょう ‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’ 白いフェンスに、鮮やかなグリーンの小葉を展開する‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’。 ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ 爽やかな黄緑色の葉を展開する丈夫なバラ。九州に自生し、温暖な気候や日当たりを好みます。 ‘マリー・アントワネット’ 光を受けて輝く、艶のある照り葉の‘マリー・アントワネット’ 。 食香バラ‘豊華’ 中国山東省平陰のバラの村からやってきた食香バラ‘豊華’(日本名)。ロサ・ルゴサの縮んだシワのような特徴の葉を持ちます。こちらのバラは、花を食用に使用しますので、ずっと無農薬で育てていますが、病害虫で特に困ったことはありません。 ‘サフラノ’ ティーローズの多くの品種が、赤茶色の新芽や新緑を見せてくれますが、こちらの‘サフラノ’も、現在とても美しい葉色を見せてくれています。 ‘ヴィウー・ローズ’ 葉色のみでも存在感のある赤茶色の新芽は、艶のある紫を帯びたグリーンへ。その後、花の咲く頃には、特徴的な黒色を帯びた艶のある深いダークな濃緑色へと葉色が変化します。 ‘オデュッセイア’ 鉢植えで管理している ‘オデュッセイア’。赤紫の新芽は、徐々にグレーがかり、モダンな雰囲気を纏いながら美しい新緑を見せてくれます。 ロサ・ルキアエ・ヴァリエガータ ピンク色の新芽は、やがて白い斑入りの美しい小葉に変化します。この新芽の色は、今の時期しか見られない貴重な一瞬です。 人気の鉢植えギフトローズの管理方法 2月、3月のバレンタインデーやホワイトデー、卒業や退職や移転、また、5月の母の日やバースデーなどのギフト、それに加えて、おうち時間の増加による自分へのギフトとしても、鉢植えのギフトローズが最近人気を集めています。 私も、ホームセンターに行った際、お洒落なラッピングに包まれ、花が綺麗に咲いていたコンパクトな鉢植えのギフトローズを、一つ自分用に買って帰りました。 鉢植えギフトローズは、一番きれいな時に販売されていることが多く、生き物ですから、次第に花は枯れて、葉は茶色くなったり落葉します。 今回は、花を楽しんだ後の、鉢植えギフトローズの簡単な管理方法をご紹介します。 バラの品種名は記されておらず、名前が解らないのは残念でしたが、ダークな濃緑色の葉に、オレンジの花色がマッチし、モダンな印象です。 株は小さく、花はミニバラとフロリバンダの中間のパティオローズのような大きさです。このような鉢植えギフトローズが家にやってきたら、まずは、ラッピングを外し、鉢が小さい場合が多いので、毎日水やりをし、なるべく日光が当たる場所に置いてあげましょう。 現在、花はほとんど終わり、葉はまだ茂っている状態です。株元を見ると、1株ではなく挿し木が6本ほど植栽されていることが分かります。 鉢が小さく、このままだと根詰まりを起こしたり、またウォータースペースが少ないため、バラが育ちにくく、弱ってしまうかもしれません。 きっと四季咲き性のバラだと思いますので、一回り大きな鉢に植え替え、肥料や水を与えることで、また次の花を咲かせたいと思います。 *挿し木を1本ずつ鉢に分ける作業は、冬の休眠期に行います。 ギフトローズの植え替えの方法 <用意するもの>バラの用土と肥料(肥料は元肥用で、根に触れても安心なものに限ります)、現在植わっている鉢より一回り大きい鉢、鉢底石、鉢底用ネット 鉢底にネットを敷き、鉢底用の土を入れ、その上にバラの用土とバラの肥料を適量入れます。 用土と肥料を軽く混ぜ合わせておきます。 植え替え時には、咲き残っていた花や枯れ葉を取り除き、枝を少し詰めて整えておきましょう。 根鉢を崩さないように、引っ張って抜くのではなく、鉢を逆さにしてからやさしく抜き取ります。 根鉢を崩さずに、元の鉢より一回り大きな鉢に植え付けます。 なお、鉢植えの場合は、いきなり大きすぎる鉢に植え付けず、徐々に鉢を大きくしていくほうが生育がよく、花付きもよくなります。 植え付け後、株元にたっぷりと水を与えます。屋外に置き、雨天以外には水を与えましょう。 このように少しの手間で、バラは、また暮らしに癒やしや潤いをもたらしてくれるはずです。
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育て方
実録!バラがメインの庭づくり第14話「芽吹きの季節のお手入れ&バラに合う植物」
芽吹きの季節のお手入れ ①新芽の管理A「芽かき」 冬の間に元肥を施して本剪定が終わった枝には、今の時期、元気よく新芽が出ていることでしょう。よく芽を観察し、1カ所からいくつかの新芽が発生している場合は、手(指)で、新芽をつまみ取る「芽かき」を行います。そのままにしておくとエネルギーが分散されてしまうので、こうして新芽を間引き、よい枝やよい花に繋げましょう。 上写真は、芽かき前の様子。同じ所から3芽出ています。 上写真は、芽かき後の様子。中央の一番しっかりした1芽を残し、両側の2芽を手(指)でつまんで取り除きました。 これらは、ハイブリッド・ティー・ローズ、クライミング・ローズ、シュラブ・ローズなどに行います。フロリバンダ・ローズや、ミニチュア・ローズ、ポリアンサ・ローズなどは、2芽残しても構いません。 ①新芽の管理B「切り戻し」 本剪定を終えた枝で、強い寒気に当たって頂芽がうまく育たなかったり、あるいは、間違ってぶつかり頂芽を落としてしまった場合などは、その下のよい芽のところまで枝をカットします。これを「切り戻し」といいます。 ②肥料を施す「追肥(ついひ)」 芽吹いた新芽が順調に育ち、無事5月の開花シーズンを迎えられるよう、バラの生育期に施す肥料を「追肥」といいます。冬の間に施した元肥(もとごえ)だけでも、5月になれば花は咲きますが、よりたくさん、美しく、しかもボリュームのある花が咲くように、私は毎年3月になると、花肥である「リン酸」分の多い肥料を与えています。 追肥の与え方は、袋に記載されている規定量をパラパラと株の周囲にまくだけです(与えすぎに注意)。 【注意】 ・ご紹介の肥料は、冬に元肥を施し、新芽が順調に発育している苗に与えてください。 ・バラの苗を植え付ける際は、元肥用の肥料を必ず使用してください。 ・全ての施肥は、バラのつぼみが色付き始めたら、ストップしてください。 ③ 病害虫の予防 3月は、アブラムシやバラの新芽を食害するゾウムシの発生の時期です。見回りを強化し、見つけ次第捕殺します。農薬を散布する場合は、使用方法をよく読んで使ってください。 ④水やり この時期は、新芽が旺盛に成長しますので、水切れには注意しましょう。私は、雨天以外は、地植えも鉢植えも、たっぷりと水やりをしています(ただし、バラに適した水はけのよい用土に植え付けてあることが前提)。 バラに合う植物のセレクトと植え付け 2020年は、新しい庭へ引っ越して、まず移植したバラや他の植物が枯れることなく根付いてくれることが第1の目標で最優先事項でした。なんとかバラが根付き、バラの近くに他の植物も植えることができました。そして、現在も試行錯誤を繰り返しながら、理想の庭を目指しています。 新しい庭で育てているバラは、現在100品種を超え、さまざまな花色が集まってきました。多彩な花色が揃ったバラと合わせる植物を考える時、まずは開花時期が同じ白や青、紫の花。葉物では、シルバーや銅色、斑入りのもの。そして、バラの花色と同系色、あるいは補色となる花や葉、また、ハーブ類などが合わせやすいかと思います。 以下は、2020年の5月に、バラと組み合わせた植物です。 【白花】デルフィニウム、ベロニカ、シャスターデイジー、オルレア他 【青や紫】ジャーマンアイリス、デルフィニウム、リナリア、クレマチス他 【葉物】シルバーレース、シルバープリペット、アベリア・コンフィティ、斑入りのシャガ、ニューサイラン、ヒューケラ、カレックス他 【ハーブ類】ヤロウ、ミント、レモンバーム、カモミール他 【その他】リナリア・ピンク、ラナンキュラス・ラックス他 淡いピンク色のリナリア・ピンクや、ラナンキュラス・ラックスは、優しい雰囲気を庭に運んでくれました。 昨年植栽したこれらの植物は、この春、株を増やしたり、思いがけない場所から芽を出しているものも見られます。植え替える場合は、根が張る前に行いましょう。 人も、温かな陽射しを受けながら、ガーデニングがしやすい季節となりました。 バラやさまざまな植物たちの成長を見守りながら、お手入れを楽しみましょう。
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育て方
実録! バラがメインの庭づくり第13話 「冬のバラ仕事第2弾~元肥から病害虫予防まで5つの作業」
仮剪定が終わった冬の庭より 新しい庭に引っ越して、2020年の2月に植え付けたバラ苗たちも、ほとんどが無事に根を張り、2年目を迎えることができました。 冬は、バラの1年間を見通した作業を行う大切なお手入れシーズンです。今回は、先月ご紹介した『冬のバラ仕事第1弾~仮剪定と誘引』に続き、冬のバラ仕事第2弾として、「元肥(寒肥)・植え替え・鉢植えの土替え・本剪定・病害虫予防」についてご説明します。 バラは落葉が始まり、生育期から休眠期に入ります。冬の元肥(寒肥)のすき込みや、植え替え、鉢植えの土替えなど、この時期にしか行えない作業を少しずつ終わらせましょう。 温暖化が原因なのか品種の特性か定かではありませんが、近年、落葉する時期が遅れていると感じるバラが増えてきたように思います。 上写真の‘マリア・テレジア’も、我が家ではなかなか落葉せず、つぼみを上げ続けていましたが、落葉しない葉やつぼみを取り除き、仮剪定を行い、強制的に休眠期に入らせました。 作業1.地植えのバラに元肥(寒肥)を与える 「元肥(寒肥)」とは、すでに植えられているバラに、冬の休眠期間中に施す肥料のことをいいます。また、バラを植え付ける際に、用土に混ぜる肥料も同様に「元肥」といいます。 有機質系肥料をすき込むことで、土の団粒構造と有用土壌微生物の繁殖を促し、土をフカフカな状態に近づけます。それによって根張りが促進され、株の生育や花付きがよくなります。 【元肥(寒肥)を与える適期/1月上旬~2月上旬】 地中の温度が徐々に上がり始める2月中旬前には、元肥(寒肥)をすませておきましょう。なぜなら、地中の温度が上がり始めると根の生育が活発になり、栄養分や水分を吸い上げる大切な根の先端部分の成長も盛んになるからです。せっかく成長し始めた大切な根の先端部分を、元肥を遅くすき込んだばかりに切って傷めてしまってはもったいないことです。 【元肥(寒肥)の与え方】 今回使用する元肥(寒肥)は、昨年から使い始めた「特選有機バラのたい肥」と「特選有機濃いバラの肥料」(両商品とも販売/花ごころ)です。 バケツに、「特選有機バラのたい肥」5ℓと「特選有機濃いバラの肥料」200gを入れ、よく混ぜ合わせておきます。 株元から約20cmほど離れた所にスコップなどで円を描き、その外側に溝を作ります。 溝に、①をすき込みます。 シャベルで、すき込んだ①に庭土をかぶせ、軽く混ぜ合わせます。 最後に、水をたっぷり与えます。この際、根の生育を促す活性液「高濃度フルボ酸 微生物活力液 アタックT-1」を、10ℓの水にキャップ6杯(200mLボトル)入れ、株元に与えると、なお効果的です。 *鉢植えの場合、冬は基本的に鉢の土替えを行い、同時に元肥(寒肥)を施します(詳細は、【作業3.鉢植えの土替え作業】参照)。 作業2.地植えのバラの植え替え作業 【バラを植え替える際の注意点】 どんなに植栽計画を練り、その通りに植栽しても、全てが納得いくようになるとは限らないのが、庭づくりの大変さでもあり、面白さでもあります。 より納得できるデザインに近付けたいという思いから、すぐに植え替えをしたい衝動に駆られるものですが、バラは、冬以外に植え替えを行うと株が弱って枯れてしまうことが多いものです。そのために、ずっと我慢し、ようやく植え替えのできる時期が到来しました。 ここで注意しなくてはならないのは、一度バラを植えた場所に別のバラを植えると生育が悪くなることです。この現象を「嫌地現象」と呼び、このような場合は、その場所の土を新しく入れ替えないといけません。新しい用土は、バラ用にブレンドされた上写真のようなものを使用すると便利です。 【植え替え作業の適期/1月~2月上旬】 掘り上げた株は、土を落とし、水を張ったバケツに浸けておきます(この際、根の生育を促す活性液を水に入れて使用するとなおよいでしょう)。 根鉢や根元付近などに癌腫病などが無いか、またコガネムシの幼虫などが潜んでいないか、根をチェックします。 枯れた根や、極端に長く伸びた根を少しカットし、長さを整えます。 枝も、根とのバランスを考え、長すぎるようならカットします。 植え付ける場所に、深さ、幅、約40cmの穴を掘ります。 1株(1穴)につき、「特選有機バラのたい肥」10ℓ+「特選有機濃いバラの肥料」400gを用意します。 ⑥の約半量を穴に入れ、穴の土とよく混ぜ合わせます。 ⑥の残りと掘り上げた土をバケツの中で混ぜ合わせておきます。 ⑦の上に、根を広げて株を置き、株の接ぎ口が地表に出るよう調整しながら➇を入れ、植え付けます。 水をたっぷり与えます(この際、根の生育を促す活性液を水に入れて使用するとなおよいでしょう)。 作業3.鉢植えの土替え作業 【鉢植えの土替え作業の必要性】 限られた鉢の中の用土は、1年も経つと栄養分が不足したり、バランスが悪くなったりします。また根詰まりを起こしていたり、害虫による被害を受けているかもしれません。冬の休眠期間中に、根の病害虫をチェックし、新しい用土に取り替えてバラが元気に育つよう促してあげましょう。 【鉢植えの土替え作業の適期/1月~2月上旬】 鉢から抜いた株は、土を落とし、水を張ったバケツに浸けます(この際、根の生育を促す活性液を水に入れて使用するとなおよいでしょう)。 根鉢や根元付近などに癌腫病などが無いか、またコガネムシの幼虫などが潜んでいないか、根をチェックします。 枯れた根や、極端に長い根を少しカットして整えます。 枝も、根とのバランスを考えカットします。 バケツに、体積比、赤玉小粒5:完熟堆肥5を入れ、炭の小粒1握りと、根に触れても安心な発酵済み有機質肥料を適量プラスしたら、よく混ぜ合わせます。 *または、先にご紹介した「特選有機バラの土」など、バラ専用にブレンドされた市販の用土を使用すると便利です。 *鉢植えの場合、用土の中に混ぜる肥料は、必ず根に触れても安心な発酵済み有機質肥料を選びましょう。 鉢底に防虫ネットや鉢底網を敷いたら、赤玉土大粒または、炭の小粒を入れます。私は長年、炭の小粒を使用しています。炭の小粒を入れると、根(白根)の発生がより促進されます。 ⑥の上に、⑤の用土を少し入れます。 ⑦の上に、根を広げた株を置き、株の接ぎ口が地表の上に出るよう調整しながら残りの⑤の用土を入れ、植え付けます。 鉢底から流れ出すくらい、たっぷり水を与えます(この際、根の生育を促す活性液を水に入れて使用するとなおよいでしょう)。 作業4.本剪定について 「本剪定」とは、「冬の強剪定」のことで、一年で最も枝を深くカットし、株を若返らせ、リセットできる剪定でもあります。本剪定は、充実した枝の芽(外芽)の上で切ることがポイントです。 【本剪定の適期/2月下旬まで】 私は、12月中旬~1月上旬に「仮剪定」を行った株に、1月上旬~2月上旬に「元肥(寒肥)」を与え、2月下旬頃に「本剪定」を行います。 *まだ小さな株やコンパクトな樹形の株、鉢植えにしてコンパクトに育てている株などは、仮剪定は行わず、本剪定のみで大丈夫です。 【本剪定時の切り詰める長さの目安】 本剪定時の枝のカットの目安の位置は、 ・ハイブリッドティーローズなら1/2~1/3 ・シュラブローズなら2/3~1/2 ・ミニチュアローズやフロリバンダローズなら1/2~1/3 といわれます。ただし、仮剪定を行った株は、すでに枝先を少しカットしてあること、また植栽場所や思い描くバラの風景も考慮しながら、一番よい位置を決めてください。 本剪定は、約2/3を残しました。 *既に誘引したつる性のバラは、特に本剪定は必要ありません。もう少しカットしたほうがよいと思ったら、必要に応じてハサミを入れてください。 【切り戻し】 「本剪定」後、雪が降ったり強い寒さにあって新芽が傷むこともあります。何らかの理由で先端の芽がうまく成長しない場合は、その下の元気な外芽の上で枝をカットし「切り戻し」を行います。 作業5.病害虫予防について 病気や虫の被害を次の季節に持ち越さないためにも、冬のお手入れは大切です。特に、葉を取り除くことは、新芽を病気から守ることにも繋がりますので、落葉せず残っている葉は、全て取り除いておくことをおすすめします。 枝に付いた「カイガラムシ」は、葉を取り除いた時に発見することも。退治するのは簡単ですので、見つけたら歯ブラシでこすり落としておきましょう。 地中に潜む「コガネムシの幼虫」は、バラの白根を食害します。放置すると、いくらバラに肥料や水を与えても、根がほとんど食害され枯れてしまいます。見つけ次第、駆除することが大切です。 ご紹介した冬のバラのお手入れは、寒空の下での作業が多く、大変ではありますが、春のバラ咲く季節を楽しみに、お手入れをがんばりましょう。
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育て方
実録! バラがメインの庭づくり第12話 冬のバラ仕事第1弾~誘引・仮剪定
まずは、枝が徒長するバラたちの誘引をスタート 今年も12月に入り、だいぶ冬らしい寒さがやってきました。毎年この時期の四季咲き性のバラは、寒さに耐えながらも、まるで今年一年の名残りを惜しむかのように、長く花を茎に留めています。 しかし、12月頃から枝が伸長するバラ、特にクライミングローズやランブラーローズ、シュラブローズ、つる性のオールドローズや原種のバラたちは、誘引を始める時期でもあります。 私も、新居で初めて迎える冬のバラ仕事を頑張りつつ、今回は、その第1弾となる「誘引」と「仮剪定」の2つについてご説明します。 冬のバラ栽培お手入れ1 バラの誘引 バラの誘引とは 思い描く「バラの花咲く風景」を作るために、バラの枝を整理して、ワイヤーなどで、構造物や支柱、樹木に固定していく作業のことです。 誘引を行わないと、枝が暴れて、思い描く風景は実現できないことが多く、花数や花の大きさにも影響します。 頂芽優勢と誘引作業 多くの植物は、茎の先端にある頂芽の成長のほうが、側芽の成長よりも優先される「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」の性質を持っています。バラも同じで、枝が上に向いていると、その先端ばかりに花が咲いてしまいます。 枝が伸長するつる性のバラは、枝を横や斜めに誘引することで、たくさんの花芽をつけ、「バラの花咲く風景」を作ることができます。 誘引作業の時期 これからさらに寒くなり、気温の低い日が続くと、枝がしまって硬くなり、曲げると折れやすくなるなど、誘引しにくくなってきます。また、2月下旬や3月の新芽が動き始める時期に誘引をすると、頂芽優勢の性質から芽の向きがバラバラで、揃うまで時間がかかってしまうことも。逆に、気温が低くなる前に早く誘引作業を行うと、新芽が動いてしまい、その後の冷気によって傷んで駄目になってしまうことがあります。 ですので、地域差はありますが、誘引作業はおおむね12月中旬~1月下旬頃が適期となります。 誘引作業の実例 私が誘引作業で使用しているものは、直径1.6mmのワイヤー、ペンチ、剪定鋏です。 ワイヤーを利用する理由は、フェンスの隙間があまりないことと、枝に軽く巻いて、誘引したい方向に向けながら固定できるからです。 誘引作業実例1 隣地との境にあるフェンスに、今年5月に咲いた‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R)の様子。 その後、12月になると誘引前の枝が暴れてしまっています。 今年新しく発生した勢いのよいサイドシュートを残し、その先をカットしているところ。 他に、赤線部分の細く弱々しい小枝や、同じ所から2本発生している枝は、充実していないほうをカットします。 残っている葉や花を取り除くと枝がよく見えるようになり、残す枝とカットする枝の判断がしやすくなります。また、古い葉に付いた病害虫を新芽にうつさないためにも、葉はきれいに取り除きます。 冬に葉を取り去り整枝されたバラは、今まで通りの光合成ができなくなり、休眠します。この冬の休眠期間には、土を掘ったりして多少根を傷つけても大丈夫なので、元肥の施肥や植え替えなど、ほかの時期にはできない作業が可能となります。 誘引作業実例2 コンサバトリー前の細めのアーチに誘引した‘フランソワ・ジュランビル’(R)。 誘引作業実例3 オベリスクに誘引した、まだ小さな株の‘クリスティアーナ’(Cl)。 誘引作業実例4 庭を囲む鋳物のフェンスに誘引したツクシイバラ(Sp)。 誘引と剪定でバラが咲く景色を作ろう 自分自身が思い描く「バラの花咲く風景」に沿って、これからも誘引作業を進めていきます。以下は、2020年春の「バラの花咲く風景」の一コマです。 愛らしさと洗練を併せ持つ可憐な花が鈴なりに咲いて、新居の庭で初めて迎えた春を優しく飾ってくれました。 しなやかに枝垂れる枝先に咲くピンクの房咲きのバラ。少しラベンダーがかる優しい色が、白いフェンスに映えて。 25年以上、毎年冬に誘引し、春になるとたわわに咲いた姿を見せてくれましたが、残念ながら地域の区画整理のために、これが最後の開花でした。 冬のバラ栽培お手入れ2 バラの仮剪定作業 仮剪定とは ここまでご紹介したつる性のバラ以外も、特に地植えのバラたちは、12月になると枝が伸長し、樹形が乱れてきている頃かと思います。これから冬の元肥を与えますが、余分な枝に栄養分が取られないためにも、枝先を軽く剪定します。これは、本剪定前の浅めの剪定ですので、「仮剪定」と呼んで区別しています。さらには不要な枝、つまり枯れた枝や内側に向かって伸びたふところ枝、細く弱々しい枝、古い枝、害虫の被害にあった枝などを取り除く整枝も行います。 *ただし、まだ小さな株、鉢植えにしてコンパクトに育てている株などは、仮剪定は行わず、本剪定のみで大丈夫です。 *くれぐれも枝を短くしすぎないよう、切りすぎに注意します。 本剪定との違い 本剪定とは、2月下旬~3月上旬頃に行う「冬の強剪定」のことで、春の樹形や花の位置、花数に大きく影響する大切な剪定です。一年を通して最も枝を深くカットするもので、株を若返らせ、リセットできる剪定でもあります。本剪定は、充実した枝や芽の上で切ることがポイントです。その充実した枝や芽の準備のためにも、仮剪定や元肥、水分が大切になります。 仮剪定作業の時期 冬の元肥と本剪定をする前に行いますので、地域差はありますが、12月中旬~1月上旬頃が適期となります。私は、毎年、四季咲き性のバラをお正月頃まで楽しみ、花が終わった株から順次、仮剪定をしていきます。 仮剪定作業の実例 四季咲き性の鉢植えのバラは、花が咲き終わり、玄関先で冬の落葉が始まって枝も乱れています。 枝先を軽く切り、枝葉を整えました。 何かと慌ただしい師走ですが、毎日少しずつでも、バラとの時間を楽しんでください。誘引作業や仮剪定作業は、綺麗に決まると、とても気持ちのよいものです。最初はうまくできなくても、実際に自分自身で行う経験がとても大切です。 来春の「バラの花咲く風景」の準備は、もう始まっています。 来年はどうなるか、今からとても楽しみです。
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実録! バラがメインの庭づくり第11話 晩秋に咲くバラで「クリスタライズドローズ」作り
2020年秋咲きバラの開花 今年初旬、引っ越し準備を進めて新居の庭にバラを移植し、初めて迎えた秋。我が家の秋バラは、例年よりだいぶ遅れて咲き出しました。公共のバラ園でも、今年は遅く開花したところが多かったようです。 その原因は、10月の低温。9月の剪定を例年通りに行ったところ、10月になり気温の低い日が続いたために、つぼみはできていても開花までに時間がかかってしまったのです。 秋のバラは品種にもよりますが、9月に剪定し、花が見頃を迎えるまで約50日かかるといわれています。例年でしたら、9月1日に剪定すれば、10月20日前後が見頃となるところ、今年は10月末が見頃となり、11月に入ってもたくさん花を咲かせています。 剪定を早めに行った場合は、例年と同じ時期に見頃を迎えたようですが、自然が相手なので、見頃が前後するのは仕方ないのかと思います。 すでに晩秋となってしまいましたが、私の庭のバラたちはまだ咲き続けています。 今回は、初めて迎えた新しい庭での晩秋に咲くバラと、暮らしの中での楽しみ方として、バラの花弁で作る「クリスタライズドローズ」もご紹介します。 今年の秋バラの様子をご紹介します 写真は、秋の七草の一つ、フジバカマを背景に、‘ローズ・ポンパドール’(S)(2009年 仏 デルバール作出)と‘ザ・ダークレディ’(S)(1991年 英 D.オースチン作出)に、庭の草花を組み合わせたアレンジメントのある風景です。 気品のあるダイヤモンドリリー(ネリネ)と‘スーヴニール・ドゥ・ラ・メゾン’(B)(1843年 仏 ベルーゼ作出)が寄り添い咲きました。 春に咲き、秋にも返り咲いたピンクのリナリア・パープレア‘キャノンJウェント’。 リナリア・パープレアのそばには、‘ザ・ダークレディ’(S)が真紅の花を咲かせて、調和を見せています。 今年の2月に以前の庭から移植したものの、春にあまり元気がなかったバラが、晩秋になって元気に復活してくれました。 その中の一つ、切れ込みのある優しい色合いの大きな花弁の花をふっさりと咲かせ、濃厚なフルーティー香を漂わせる‘ソフィー・ロシャス’(Cl)(2019年 仏 デルバール作出)。 特徴のある美しい花を、来年にはたくさん咲かせたいと思います。 ‘ゴールデン・セレブレーション’(S)(1992年 英 D.オースチン作出)も、大きな株だったため、新しい庭に移植した時は元気がなく、春には花が一つも見られませんでしたが、晩秋になって、秋の青空に美しく映える姿を見せてくれました。 春~晩秋にかけて元気に咲き続けたバラたち マリー・アントワネットが愛した離宮プチ・トリアノンの名を冠したフロリバンダの‘プチ・トリアノン’(2006年 仏 メイアン作出)は、四季を通して、表情を少し変えながらも、優しいピンクの美しい花を咲かせてくれました。 花もちに優れる和バラの‘雅(みやび)’(HT)(2014年 日 Rose Farm keiji 作出)は、一つ花が終わると、次の花がまた長く楽しめるという、とても観賞期間の長いバラです。写真は、色が褪せても、花形を美しく保ったままの秋の姿です。 無農薬で栽培していても、つやのある元気な葉を落とさず、春~晩秋にかけて次々と丸いピンクのつぼみを上げて愛らしい花を咲かせたフロリバンダの‘ラリッサ・バルコニア’(2014年 独 コルデス作出)。コンパクトな樹形で、花壇の最前列で元気な姿を見せてくれました。 「クリスタライズドローズ」の作り方 晩秋になると、バラの花の中にいる害虫、スリップスもだいぶ減り、空気が乾燥しやすくなりますので、植物をドライにするには最適な時期です。 この時期、よく作るのは、花弁を利用した砂糖菓子「クリスタライズドローズ」です。 今回使用する花弁は、ダマスク香に、ティーの香りが混ざるイングリッシュローズの‘プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント’(2007年 英 D.オースチン作出)です。 火を通して作るローズジャムや、生でそのままいただく場合は、ダマスク香で柔らかい花弁が美味しくておすすめです。でも「クリスタライズドローズ」は、ダマスク香以外のバラでも、また多少、花弁が硬めであっても美味しくいただくことができます。作る際も、うねりがあったり、反り返ったりする柔らかい花弁より、多少硬めでも形が整った花弁のほうが作りやすいと感じます(*花弁は、無農薬で栽培したバラ、または、食べても安全な方法で育てられたものに限ります)。 <材料> 軽く水洗いして、水気を取った花弁(1輪分)と、卵白(1個分)にレモン汁小さじ1を混ぜたもの。そしてグラニュー糖を用意。 フォークや指を使って、花弁にレモン汁を混ぜた卵白を薄く塗ります。 そして、グラニュー糖を表裏に付けます(グラニュー糖が乾燥剤の役目となりますので、均一に付くようにします)。 平らなお皿にクッキングシートを敷き、間隔を離して並べます。そして、風通しのよい室内か冷蔵庫に入れて、5日~1週間ほど。パリっと乾燥したら完成です。 なお、室内だと雨天が続く場合は乾燥するまでもう少し時間がかかります。 その後保存する場合は、乾燥剤を入れた密封容器に。約3カ月以内で、香りが残っているうちに食べきりましょう。 冬に花が見られなくなっても、「クリスタライズドローズ」を手作りしておけば、バラの香りや味わいを楽しむことができます。 来月12月は、つるバラの誘引など、来春に向けての準備の始まりの時期となります。 今年一年間のバラや庭を振り返って、残念ながら思うように咲いてくれなかったバラ、春と秋の宿根草との組み合わせでうまくいったことや、いかなかったことなど、今から情報を整理して、新たな一年のプランニングに役立てましょう。 バラを育てることや庭づくりは、失敗から学ぶことが多く、その経験を生かしながら進めていくものです。うまくいかなかったとしても落ち込む必要はなく、楽しみながら続けていくことが大切です。 新しく迎えるバラたちの植栽場所や鉢、用土や肥料、資材なども、今のうちに準備しておきましょう。
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実録! バラがメインの庭づくり第10話~秋バラ開花~秋に咲くティーローズに魅せられて
私の庭に咲く秋バラ「ティーローズ」 10月になり、楽しみな秋バラの開花シーズンに入りました。 秋に咲くバラは、花色が冴え、花もちもよく、春に比べるとボリュームや花数は少ないとはいえ、秋ならではの静寂な空気の中に佇む凛とした姿に、魅力を感じる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。 今回は、私も庭で育てている秋にいっそう美しく見える「ティーローズ」の魅力を、古い文献とともに、ご紹介させていただきたいと思います。 まずティーローズとは、中国からヨーロッパに渡った‘ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・センティッド・チャイナ’、もしくは、つる性の‘パークス・イエロー・ティー・センティッド・チャイナ’をもとに、新しく誕生したバラのことで、その品種群を「ティー系統」といいます。 上記の2品種は、花から紅茶の香りを感じることからティーローズと呼ばれ、その香りと剣弁となる花弁の性質を、大輪で白い5弁の剣弁花を咲かせるロサ・ギガンティアから引き継いでいるといわれています。 ‘ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・センティッド・チャイナ’は、1808~1809年にかけて、イギリス在住のエイブラハム・ヒューム(1749-1838)が、東インド会社を通して広東の育苗商から入手し、イギリスに持ち帰ったといわれています。 ‘パークス・イエロー・ティー・センティッド・チャイナ’は、1823年、英国王立園芸協会からキク類とバラ類の調査のために中国へ派遣されたジョン・ダンパー・パークス(1792-1866)が、広東省の育苗商から入手し、英国王立園芸協会に送ったといわれています。花色が淡黄色の大輪で芳香のあるこのバラが、後に「パークス・イエロー・ティー・ センティッド・チャイナ」と呼ばれ、クリームから黄色系のティーローズの祖となりました。 150年以上前の欧米人をも魅了したティーローズの‘サフラノ’ 秋も春も、他のバラよりひと足先に開花し、しなやかな枝先に、剣弁のセミダブルの中輪の花を咲かせます。うっすらとピンクを乗せた光沢のある黄色い花弁は、ソフトなクリーム色へと退色し、優しく控えめな印象です。 ティーローズ特有の、枝を斜め横に伸ばす性質で、我が家では‘サフラノ’を鉢植えで育てています。 ‘サフラノ’と‘アンナ・オリビエ’は、どちらも大好きなバラですが、花瓶に挿してみると、枝が斜め横向きですので、いつもとても活けにくいと感じます。 ですが、細い枝にうつむき加減に咲く花や細長いつぼみ、華奢な雰囲気がどことなく古風で優し気なイメージと重なり、とても魅力的です。 ‘サフラノ’は、明治時代に日本国内で「西王母(せいおうぼ)」と和名が付けられ流通していました。西王母とは、中国古代の仙女のこと。不老不死の薬をもつ神仙で、世界最高位の仙女ともいわれています。 現代のお花屋さんでは、ティーローズの切り花や、ティーローズを使用したアレンジメントやブーケなどは滅多にお目にかかれませんが、かつて1869年当時のアメリカ・ニューヨークのお花屋さんでは、この‘サフラノ’が、冬の切り花としても人気品種であったとのことで、とても驚きました。 ‘サフラノ’以外では、‘イサベラ・スプロント’、‘マルシャル・ナイル’などのティーローズ、‘ラマルク’などのノワゼットローズ、‘ヘルモサ’などのブルボンローズも切り花として人気だったそうです。その後、ティーローズが片親となり誕生したハイブリッド・ティー・ローズの品種が増え、切り花におけるバラの人気系統は、枝が真っすぐに伸び、花首がしっかりとして上を向いて咲くハイブリッド・ティー系統へと変わっていくこととなりました。 古書に記された‘サフラノ’ 以前にもご紹介させていただきましたが、こちらは、アメリカで園芸会社を経営し「園芸の父」と呼ばれたピーター・ヘンダースン(1822-1890)の1869年の著書『Practical Floriculture』の中で、バラの栽培について書かれた第15章を、水品梅處が日本語に翻訳した、日本で最初の西洋バラについての栽培書です。 この中で、‘サフラノ’に関する記述があり、「濃黄色、花多く、茶の香気あり」また、「深黄色の蕾、セミダブルの花」などと書かれています。 こちらも、アメリカで園芸会社を経営し、ヨーロッパのバラの園芸家たちとの交流もあったサミュエル・ボウン・パーソンズ(1819-1906年)の、1869年の著書『Parsons on the Rose』を、安井真八郎が日本語に翻訳したものです。 この中でも‘サフラノ’に関する記述を見ることができ、茶薔薇(ティーローズ)の項に、「薄桃色ノ花ノ半開(サキカケ)ノ時、最モ美ナリ」と書かれています。 「采女(うねめ)」の和名を持つ‘アンナ・オリビエ’ 光沢のある杏色の美しい花を咲かせるこちらのバラが日本に輸入されると、「采女」という和名を付けられました。 采女とは、日本の朝廷において、天皇や皇后の食事や身の回りの庶事を専門に行う女官のことで、良家の容姿端麗な子女から選ばれたそうです。 「桜鏡」の和名を持つ‘ドュセス・ド・ブラパン’ ピンクを帯びたコロコロと愛らしい花を咲かせるこちらのバラは、1873~74(明治6~7)年、開拓使によって、アメリカから「美香登」「天國香」などとともに日本に輸入され、「桜鏡」という和名が付けられました。 1877(明治10)年に、京都で出版された花銘表『各國薔薇花競』では、75品種のバラの和名が掲載されていますが、「桜鏡」と「西王母」の和名も見ることができます。 和名「雪見車」の‘ザ・ブライド’と和名「金華山」の‘レディ・ヒリンドン’ 「花嫁」を意味する品種名の通り、眩しいほどの清らかな純白の花は、日本に輸入されると「雪見車」という和名が付けられました。 山吹色の花色は、紫がかった新葉や茎とよくマッチして、おしゃれで落ち着いた雰囲気です。 ティーローズの中でも香りが強く、お砂糖をたっぷり入れた紅茶のような甘い香りがします。こちらのバラに付けられた和名は「金華山」、そして、もう一つ「金鵄(きんし」という名が付けられました。 このように、明治~大正時代の日本では、同じ品種に異名がいくつも付けられるということが起き、後々、正しい元の品種名を特定することが困難になってしまいましたが、明治維新後に、急に外国語を使用することに抵抗があったのか、和名を付けることになってしまったようです。 これは、日本だけでなく、アメリカなどでも元の品種名に異名を付けることがよくありました。たとえば、戦争の敵国(ドイツなど)のバラに英名を付けるなど。敵国の言葉を使用したくないという気持ちの表れだったと思います。 目の前に咲くバラの背景を知ると、そのバラがこれまでに歩んできた道のりの一端が垣間見えるようで、ますます愛おしく感じられるます。 ぜひ、秋にも咲くオールドローズのティーローズも、お楽しみいただきたいと思います。
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実録! バラがメインの庭づくり第9話 バラからの注意信号~待ち遠しい秋のバラ
秋バラ開花前に株の状態をチェック! 酷暑の夏、残暑の秋を乗り越え、10月の秋バラの開花シーズンも目前となりました。 しかし、庭を見回っていると、よいことばかりとは限りません。黄色くなってしまった葉を見つけたり、株元にオガクズのようなものが見つかったりと、この時期も油断できないと感じます。 今回は、シーズン前にできるだけ早く察知したいバラからの注意信号と、その主な原因・対策をご紹介したいと思います。 バラからの注意信号「葉が急に黄色くなり、落葉してしまった」 その原因と対策 バラの葉が黄色くなったり、さらには落葉してしまったことには、以下の6つの原因が考えられます。 水分不足 根を切って傷めた 不適切な施肥 ハダニによる被害 濃い農薬の散布 台風後の塩害 これらの原因に対しては、すぐ対処できるものと、これまでの栽培方法を思い出してみて見直すべきものとがあります。葉の不調がもしあったら、解決できることはすぐ実行し、今後注意すべき点は、忘れないようにメモなどに書き残しておきましょう。 バラからの注意信号1.水分不足 今の時期は、秋の長雨が続いたり、夏よりもだいぶ気温が下がってきたことから、つい安心して晴天が続いても水やりを怠ってしまうなど、水分不足が第一に考えられます。 特に、軒下にあるバラは、雨が少し降った程度では根まで届かず、水分不足になりがちです。 【水分不足の対策】 晴天が2日以上続いたら、水やりを行い、軒下のバラには雨が降っても気を配り、水やりを怠らないこと。ただし、水はけのよいバラに適した用土に植えられていることが前提です。 バラからの注意信号2.根を切って傷めた 夏の元肥や中耕を行った際、シャベルなどで深く掘りすぎて、大切な根を切って傷めてしまうことがあります。そうすると水分や栄養分を吸い上げることができず、株が弱ってしまいます。 【根を切って傷めた対策】 冬以外の生育期は、根を切らないよう夏の元肥、中耕は浅めに行うこと。 バラからの注意信号3.不適切な施肥 小さな粒状の化学肥料を一度にたくさん施してしまうと、水やりや降雨によって、その肥料がバラの用土の中に潜り込み、根を傷めてしまうことがあります。また、液肥を多く与えすぎたり、希釈倍率を間違えて濃い液肥を与えてしまった場合も、同じく根を傷める原因になります。さらに、化学肥料ばかり長年使い続けると、バラには吸収されない塩類(ナトリウム、塩素、炭素、硫酸など)が土の中に残ります。こうして塩害が起きると、最初は葉が黄色くなり、次第に元気がなくなり生育が悪くなってしまいます。 ●『肥料の必要性とは? 有機質肥料と化学肥料の違いについて解説』 【不適切な施肥の対策】 肥料は、なるべく有機質肥料を選び、急激に根に負担がかからないようにします。ただし、未発酵の有機質肥料だと、触れた根を傷めてしまうことがあります。 特に、鉢植えのバラの用土の中に、油かすなどの未発酵の有機質肥料を混ぜ込んでしまうと、用土の中で発酵し、その際生じる発酵熱によって根が傷んで、あっという間に葉が黄色くなり落葉。さらには、枯れてしまうこともありますので、根に触れても安全な発酵済みの有機質肥料を使用するか、未発酵の有機質肥料を使う場合は、固形のものを選び、根に直接触れない地表に置き肥するなど、注意が必要です。 また、即効性のある液肥は、パッケージに記載されている使用に際しての用法・用量を必ず守りましょう。 長年の化学肥料の使用により、塩害が考えられる場合は、塩類を吸着させ薄めるために、完熟堆肥などの有機繊維質を軽くすき込むと高kがあります。本格的な改善策は、冬に行います。 【現在時点での施肥】 9〜10月は、夏の元肥と追肥が効いて、バラも開花準備に入っている時期です。 この期間は、花肥であるリン酸分が多めの肥料を追肥で与えますが、即効性を期待するなら液肥をおすすめします。しかし、雨天続きの場合は、固形肥料をまくのも一つの方法です。 いずれも、用法・用量を守り、与えすぎには注意しましょう。 なお、つぼみが色付き始めたら、全ての施肥はストップしてください。いつまでも施肥を続けていると、奇形や汚い花が咲くことにつながります。 また、チッ素分の多い肥料をこの時期に与えると、チッ素過多により、黒点病やうどん粉病にかかりやすく、花もつぼみのままボーリングしやすくなってしまいます。 バラからの注意信号4.ハダニによる被害 ハダニは、高温乾燥時に発生しやすいので、秋の長雨の時期には、被害が少なくなるのですが、南側の軒下など雨が当たらず乾燥しやすい場所や、風通しの悪い場所にあるバラには、この時期でもハダニが発生し、被害が出ることがあります。ハダニは、葉の裏にクモの巣のように白っぽく覆うように付いていることが多く、放置していると、葉がすすけたように黄色くなり、徐々に落葉していきます。 【ハダニの対策】 ハダニの被害が見られたら、シャワーの水で勢いよく洗い落とします。 バラからの注意信号5.濃い農薬の散布 特に、自分自身で農薬を希釈する場合、希釈倍率を規定よりも濃くして散布してしまうと、葉や根を傷める原因となります。また、小粒状の農薬を多量にまいてしまい、水やりや降雨によって、地中に農薬成分が一季に入り込むと、根を傷め、株が弱ってしまいます。 【濃い農薬の散布回避の対策】 農薬は、希釈倍率と、散布する回数や量などを守りましょう。新芽や新葉には、少し薄めにして散布を始めるとよいでしょう。 バラからの注意信号6.台風後の塩害 海水などを巻き上げて雨を大量に降らす台風の後は、海から遠くても塩害を起こすことがあります。 【台風後の塩害対策】 台風の後は、株全体に真水をかけて洗い流します。 その他、水はけの悪い場所に植えられていたり、黒点病や癌腫病、テッポウムシなどの害虫による被害でも葉が黄色くなり落葉し、ひどい場合は枯れてしまうことがあります。 いずれも、「葉が黄色くなる」のは、バラからの信号であり、まさに「注意」するよう訴えかけてきているのです。 今年、被害が多く聞かれるテッポウムシ 現在、多くの方より、「今年は、テッポウムシの被害が多い」という声を聞きます。 私の庭でも見回り中に、大切にしてきた‘ブーケ・パルフェ’(CL/ベルギー Lens 1989年作出)の株元に、オガクズのようなものを見つけました(上写真)。 これは、ゴマダラカミキリムシの幼虫のテッポウムシが、幹の中で食害し、穴から木くずの混ざった糞を排泄したものです。 株元に小さな穴がないか探し、穴を見つけたら、薬のノズルを差し込み、薬剤を噴射します。そしてその後、数日間は、オガクズがまた出ないか(テッポウムシがまだ生きているか)観察します。 ゴマダラカミキリムシの幼虫テッポウムシとは ゴマダラカミキリムシの成虫は、7月に太い株の地際の樹皮の下に産卵します。テッポウムシと呼ばれるのは、主にゴマダラカミキリムシの幼虫のことで、1~2年間に渡り幹の中をトンネル状に食害し、穴から木くずの混ざった糞を排出します。 テッポウムシに食べられた木は、水の通り道である道管が傷つけられて水分を運ぶことができなくなり、最悪の場合は枯死してしまいます。被害にあったかどうかを調べる方法は、幹の株元付近をよく観察すること。小さな穴やオガクズ状の糞があったら、前述のようにすぐに対処しましょう。 被害にあう前に成虫を退治したり、卵を産み付けられる前に対策することも大切です。 成虫は、バラの幹や枝の樹皮を食害し、その部分が茶色くなって、枝先をしおれさせます。成虫のカミキリムシは光るものを嫌うことが分かってきましたので、株元にアルミホイルなどの光を反射するものを巻きつけると効果があるといわれています。 秋バラの開花まであと少し。引き続き、お手入れを頑張りましょう。 私が心惹かれてきた秋バラをご紹介 さて、ここからは、これまで私が出合った秋のバラの中から、朝、晩、日中の気温差が織りなす、この季節ならではの美しさが印象に残った6品種をご紹介させていただきます。 ‘アンナ・ユング’ 四季咲きのバラですが、特に秋の花色は光沢が加わり、外側の花弁の縁に、濃いピンクがはっきりと乗り、とても美しい花を咲かせます。 ‘マダム・アントワーヌ・マリー’ こちらも、春よりも花弁の花色の濃淡がはっきりと浮き出て、ほっそりとした茎に、中輪の整った剣弁の花を美しく咲かせます。 ‘ジェームズ・ギャルウェイ’ 秋に、よりいっそう日もちする花は、その間、ゆっくりと花弁を広げながら花色をピンクから薄く退色させるまで優雅に咲き誇ります。 ‘フラゴナール’ 桃色ピンクの中心に、秋は、よりはっきりとオレンジ色が帯びてくるのが分かります。 豊かなフルーティー香も、秋の静けさの中でより際立って感じられます。 ‘ライラック・ビューティー’ シルバーがかるライラック色の花弁に、赤紫の覆輪の花を咲かせますが、秋は、ゆっくりと退色し、全体が淡い優しい色合いへと変化します。 ‘マンダリナ・コルダナ’ もともと日もちに優れた品種ですが、秋はさらに長く楽しめて、明るく光沢のある花色が、時間の経過とともにいっそう輝きを増していくような美しい花を咲かせます。 菊を背景に、秋のバラを活けて 一年の中でも、最も花色が冴える秋バラのシーズン、本当に待ち遠しいですね。
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実録!バラがメインの庭づくり第8話~夏に弱ったバラの回復法&つぼみの利用
夏バテから回復させて次のシーズンにつなぐお手入れ まだ残暑が厳しい時期ですが、秋になってからのバラの恩返しに期待して、元気を取り戻してくれるよう、少し心と手をかけてあげましょう。 また、害虫予防や夏剪定によってカットしたバラのつぼみの利用法もご紹介します。 周辺をきれいに整える雑草取り まずは、バラの株元や周囲の雑草を取り除きましょう。株元や周囲の草を取り除くと、固くなってしまった用土が軽く耕され、水分や栄養分が地中に染み入りやすくなります。 しかし、草が大きく育ち、その根が地中深く張ってしまっていると、草を抜いた時にバラの根が切れて傷めてしまうことがあるので、雑草は小さなうちに、こまめに取り除くのがベストです。 水切れに注意して、2週間に1回活力剤 気温の高い日は、水切れに特に注意し、2週間に1回は活性液(活力剤)を与えます。 この時期は、花を咲かせることよりも、株の元気を回復させることに重点を置きましょう。株が元気になれば、また美しい花を咲かせてくれます。そのためには、水分や栄養分を吸い上げる根の力をまず回復させるために、活性液(活力剤)を使います。さまざまな活性液(活力剤)が市販されていますので、使用方法を守って与えてください。 整枝と夏剪定を行います 枯れ枝や細く弱々しい枝、内側に向かって伸びたふところ枝、不要な枝などを切り除き、整枝を行います。 秋バラは、10月中旬~11月頃が最も美しく咲く時期です。剪定から開花までは、約50日前後かかりますので、バラが最も美しく咲く時期に開花を迎えられるよう、つる性のバラ以外は、9月上旬~14日頃までに、株全体の1/3~1/4をカットする夏剪定を行います。 これは、あくまでも目安ですので、下葉や新芽がほとんどなくなってしまうようでしたら、剪定はもっと浅めに行い、株の保護のため、光合成が少しでも多く行われるようにします。 一季咲きのバラは、剪定をしなくても構いませんが、枝が暴れているようでしたら、管理しやすいように整枝や剪定を行っておくと後々楽です。 つる性のバラは、来年の樹形を頭に描きながら、残す枝を決め、不要な枝や暴れて管理が大変な枝は、整枝や剪定を行っておきます。 夏の元肥 株に栄養を補充し、秋の開花を促す施肥を8月下旬~9月上旬に行います。 以前は、四季咲き性の地植えの株には、株元から半径約20cm離れた場所に円を描くように溝を浅く掘り、そこに、完熟堆肥バケツ1.5ℓ、炭小粒または燻炭150g、有機質肥料適量をすき込む方法を行ってきました。しかし昨今の酷暑の中、なかなかその作業は大変だということと、溝を掘った時に根を切って傷めてしまった場合、株を弱らせることにも繋がるため、最近では、草を取り除いて軽く耕された状態の土に、有機由来の原料で栄養分がバランスよく配合されたペレット状の固形肥料を、ぱらぱらと撒くようにしています。 また、鉢植えの株にも、肥料を地植えと同様に施していますが、用土が減っている場合は、上に盛り土します。そして、引き続き、水枯れに注意し、活性液(活力剤)を利用しながら、株の回復を促します。 葉が増えてきたなどの回復が見られた株には、リン酸分(花肥)の多い即効性のある液肥を2回ほど、つぼみが色付く頃まで与えます。 ※リン酸分の多い液肥は、葉が落ちてしまっている株にはいきなり与えず、葉が元気に復活してから与えます。つぼみが色付いたら、全ての施肥はストップします。 新葉を守りながら秋の開花シーズンへ 新しい葉がたくさん出てきたからといって安心はできません。高温の日が続けば、ハダニが発生しますし、新鮮な新しい芽や葉を狙う害虫たちもまだたくさんいます。 ご自身のバラを育てる目的に合わせた育て方で、薬剤を利用するか、無農薬で頑張るかを決めて、新しい葉を病害虫からしっかり守ろうという意識を持って、秋の開花シーズンに繋げていただきたいと思います。 切り取った夏のつぼみの利用法 真夏の花は、咲いても小さく、残念ながらきれいな花は望めません。 また、コガネムシを集め、食害され、卵を産み付けられ、孵化した幼虫にバラの根を食害されることにもつながる可能性を秘めています。 害虫予防とバラの体力温存のために、私は夏のつぼみはほとんど切り取ってしまいます。 しかし、ただ捨ててしまうのでは、かわいそうでもったいないので、切り取ったつぼみを暮らしに活用しています。 香りのあるバラのつぼみは、よく水洗いし、ハーブティーや紅茶に入れて楽しみます。 香りの少ないバラのつぼみは、ドライにして保存し、エッセンシャルオイルを足したポプリやクラフト作りなどにも利用しています。ささやかな楽しみを実践しながら、秋の到来に期待して過ごしましょう。
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実録! バラがメインの庭づくり第7話~コガネムシとの戦い
梅雨明けから盛夏のバラ栽培の悩みとは 今年の梅雨は、雨天の日が多く、なかなか外での作業が進みません。 そんな庭では、前回の第6話でご紹介した黒点病やうどん粉病などのバラの病気に加えて、コガネムシが猛威をふるっています。 コガネムシによるバラへの被害 コガネムシとは甲虫類のことで、バラに被害を与える種類には、マネコガネ、ヒメコガネ、ドウガネブイブイ、ハナムグリ、ゾウムシなどが挙げられます。 これらは食害性害虫で、成虫は5月頃から飛来し、バラの花弁やつぼみ、葉などを食害します。そして、土の中に潜って産卵し、孵化した幼虫は根を食害しながら越冬し、成虫となったものが翌春から夏にかけて地上に出て再び食害します。幼虫にほとんどの根が食害されてしまうと、いくらバラの肥料を与えたとしても、ひどい場合は枯れてしまうことがあります。 コガネムシの対処法をご紹介 成虫、幼虫とも対処方法は「見つけ次第捕殺」することです。では、具体的にそれぞれの対処法をご紹介しましょう。 【コガネムシの成虫の場合】 私は、虫を手で捕まえたりすることは、何の抵抗もなく行えますが、苦手な人は、市販の薬剤に頼るのがよいかと思います。甲虫類に効果のあるスプレーや乳剤など、説明書をよく読んでご使用ください(※薬剤によっては、散布をした場合、花弁などを飲食に使用することができなくなるものもありますのでご注意ください)。 また、雄を誘引する性フェロモンと、両性を誘引する食物誘引剤を使用したフェロモントラップなど、コガネムシを誘引して駆除する方法もあります。 【コガネムシの幼虫の場合】 特に鉢植えで育てている場合は、冬に鉢の土替えを行う際に、必ず土の中にコガネムシの幼虫がいないかチェックし、駆除する必要があります。地植えの場合も安心せずに、見つけ次第、駆除します。ご自身の手で捕殺するのが苦手な方は、土に撒くだけの粒剤などを使用すると楽で効果があります。また、コガネムシの幼虫は腐葉土を好むため、バラの用土や株元には腐葉土ではなく完熟堆肥を使用するとよいでしょう。 皆さんがバラを育てる目的や、ご自身に合った方法で、バラを食い荒らすコガネムシたちとの戦いに、ぜひ打ち勝ってくださいね。 新しい自宅で懐かしむバラの香り さてこちらは、昨年、以前の庭に咲いた‘ウィリアム・シェイクスピア2000’(En.R)と‘マイカイ’(Ch)、食香バラの‘豊華’をリキュールに漬けておいた「ローズ・リキュール」です。 よく漬かった「ローズ・リキュール」に炭酸水とレモン汁を入れて。夏にもおすすめの飲み物です。 リキュールの簡単な作り方をご紹介します。 <材料A> 香りのよいバラの花弁……容器の約2/3の量 <材料B> 氷砂糖……容器の約1/4の量 容器にAとBを入れ、35度の焼酎(リキュール)をAとBが全て漬かるように注ぐ。そして密封し、1カ月以上、冷暗所に保存してでき上がり。 中の花弁は、そのまま漬けておいても、こし器で取り除いても、どちらでもOKです。 バラがたくさん咲いたら、ぜひ試してみてください。 以前の庭は、残念ながらもうなくなってしまいましたが、このリキュールをいただいていると、庭の香りが蘇るようです。 たくさんのかけがえのない日々を、あの庭でバラたちと共に過ごしてきたことが思い出されます。 以前の住まいは、家と庭の間に玄関ポーチを広めに取ったお気に入りのスペースがありました。私自身がイメージしたスケッチを大工さんに渡し、つくってもらったのですが、その広めのポーチでは、庭仕事の合間に休憩したり、お茶を飲んだり、バラをお披露目するパーティーの際は、華やかにお菓子や花を飾ったり……。お客様の笑顔や楽しい会話に包まれて、おかげさまで、美しい時間を過ごすことができました。 新居に設けた庭にアクセスする半戸外空間 先日、無事にすべての引っ越しが終わった新しい住まいでも、家と庭の間に、小さなスペースを設けました。 4畳半弱のコンサバトリーですが、雨天でも窓のすぐ外に咲いているバラを眺めることができます。また、全面扉を開け放つこともできますが、蚊が入らないように網戸も設置したので快適です。 以前の庭では、6月以降は蚊が発生するためポーチを利用しにくかったのですが、今回はその経験を生かしたことで、蚊の心配は少なく過ごせそうです。 写真は、日本画家の木下美香さんが描いてくださった以前の庭と、バラ‘ワイズ・ポーシャ’(En.R)。蚊にたくさん刺されたことも、想い出の一つです。 こうして引っ越しが一段落して、改めて以前の庭が懐かしく思えています。