神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
元木はるみ -「日本ローズライフコーディネーター協会」代表-

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
元木はるみ -「日本ローズライフコーディネーター協会」代表-の記事
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育て方
長かった2023年の夏を終えてバラを回復させる手入れ術
お手入れする私たちも大変だった夏 記録的な暑さとなった今年の7~8月に続き、9月後半まで厳しい残暑となり、今年は夏が長く続いたように感じられました。 ちょうどバラの夏の本剪定や施肥を行う時期が、例年9月上旬頃ですので、今年は気温の高い残暑の厳しい時期と重なり、バラのお手入れを行う者にとっては、過酷な作業となったのではと思います。 今回は、そんな長かった夏を振り返りながら、今後の秋バラの開花シーズンに向けての作業について、さまざまな症状と対処方法、おすすめの薬剤や資材等を織り交ぜながら、体験談をご紹介します。タイミングを過ぎた項目もありますが、来年の参考に記事を保存しておくことをおすすめします。 今年の長かった夏を振り返って 我が家の夏の庭。 ・雨天の日が少なく、気温が高く乾燥気味のため、水やり、葉水をほぼ毎日行わなければいけなかった。・自分自身の熱中症予防のため、庭仕事は短時間しか出来なかった。・高温続きで、バラの枝が徒長したり、摘蕾をしてもすぐに蕾が上がった。・葉が高温にさらされたため、葉が黒っぽくなる等の葉焼けが見られた。・落葉した枝や、枯れ枝が多く見られた。・夏を乗り越えられずに枯れてしまった株も見られた。 夏中は、庭仕事の時間がしっかり取れなかったこともあり、私の庭では、9月に入ってから下記のような症状が見られました。これらについての対処法を解説します。 症状1.バラの株元に、オガクズのようなものが見られる これは、「テッポウムシ」と呼ばれるカミキリムシの幼虫が幹の中に入って食害した形跡です。 【対処方法】 放置しておくと、幹の中の空洞化が進んでしまい、枯れてしまうので、直ちに専用の薬剤のノズルを、穴のある場所から幹に差し込んで噴霧します。数日間、様子を観察し、さらにオガクズのようなものが出てこなくなったら、ひとまず退治が完了です。 【使用薬剤例】「殺虫剤 園芸用キンチョールE 木の中のカミキリムシ幼虫退治に」(住友化学園芸)*容器に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 3方向噴射専用ノズルがついているので、柑橘やイチジクなどの果樹やカエデなどの樹幹に食入したカミキリムシ(ゴマダラカミキリ、クワカミキリ)を効果的に退治するのが特徴。また、アブラムシ、ケムシ、ハダニなどの害虫にも幅広く効きます。 症状2.株元がグラグラしている バラの株元がグラグラ動き、株が傾いてしまったら、これはコガネムシの幼虫に、根が食害されてしまったことなどで起こる場合が多いです。 【対処方法】 放置しておくと、枯れてしまいますので、直ちに専用の薬剤を表土に撒いて水を撒いて浸透させるか、鉢植えの場合は、新しい用土に植え替えます。この時期の植え替えは、残っている根を切らないように慎重に取り出し、コガネムシの幼虫や卵のいない新しい用土に植え付け、水やりを行いましょう。 【使用資材例】「土にまくだけ!ベニカXガード 粒剤」(住友化学園芸)*袋に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 野菜にも使用出来、害虫と病気を同時に予防出来る薬剤です。 種まきや植付け時に用土に混ぜ込んだり、植付け後に株元にばらまくだけで効果を発揮する殺虫殺菌粒剤です。殺虫成分は根から吸収され、薬効が葉の隅々まで行きわたり、害虫の被害から植物全体を守ります。微生物(B.t.菌)の作用により植物の抵抗力を高め、丈夫にすることで病気を予防します(抵抗性誘導)。 症状3.枝の徒長や暴れた枝 【対処方法】 10月には、秋バラの開花シーズンがやってきますので、例年、8月下旬~9月上旬頃に、夏の本剪定や整枝を行います。つるバラ以外のバラは、基本、枝の1/3をカットし、2/3を残します。同時に、枯れ枝や細枝などの不要な枝はカットし整枝を行います。 つるバラも、誘引のために残す枝を見極めて、徒長し暴れた枝等、不要な枝をカットし、整枝を行っておきます。 症状4.9月中に出来てしまった小さなつぼみ 【対処方法】 9月の高温続きで、夏の本剪定後に、9月中に小さなつぼみが付いてしまった場合は、バラの体力温存のため、つぼみを付けた枝の一番上の外芽の本葉の上のところで、ピンチ(手で摘む)を行うか、鋏で切り戻しを行います。この時も、深く切り戻し過ぎてしまうと、秋バラの開花が遅くなりますので注意が必要です。 今後、気温がどうなるかによっても、開花の時期が早くなったり、遅くなったりしますので、バラを育てることは、まさに自然と向き合うことと言えるかと思います。 10月のつぼみは、基本咲かせますが、病害虫の被害に遭ったものや、弱々しいつぼみは摘蕾します。 症状5.落葉が多かったり、枯れ枝等を取り除いた後、枝の本数が少なく貧弱な株立ちになった 暑さによってバラも大変だったことが見て取れます。秋バラ開花の前は、元気を回復させる時期です。対処法は症状6の後で解説しています。 症状6.葉の色が薄く、葉脈が浮き出て見える黄白化「クロロシス」状態 左側の葉は黄白化しクロロシス状態。右側の葉もなりかけている。 このような葉緑素が不足した状態は、鉄やマグネシウム、カルシウムなどの微量要素が不足した時に見られます。 【症状5&6の対処方法】 中耕、活力剤、施肥、土壌改良、盛り土等を例年、8月下旬~9月上旬頃に行います。 <中耕>施肥を行う前に、草が生えていれば中耕を兼ねて取り除いておきます。また、株元から約20cm離れた外側の表土を、バラの根を傷めないよう、浅く軽く耕す「中耕」をします。 <活力剤>中耕したすぐ後に、たっぷりの水を散布し、活力剤を与えます。活力剤を与えると、根張りが良くなり、根が肥料などの栄養分や水分を吸収しやすくなります。クロロシスの予防効果もあります。 【使用資材例】「マイローズ ばらの活力液DX」(住友化学園芸)*容器に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 酵母抽出物の働きで根張りがよくなり、バラが丈夫に育つので、夏バテした株や根傷みなどで弱った樹勢回復に役立ちます。マルチミネラル、ビタミン、アミノ酸入りの天然有機質によって土壌中の微生物環境が整い、土質の改善にも有効で、植え付けや植え替え時の発根を助けてくれます。吸収しやすいキレート鉄を配合しているので、新葉の白化防止に役立ちます(鉄は葉の緑色を保つ葉緑素に必要な微量要素です)。 <施肥>バラ専用の肥料を施します。中耕した場所に漉き込んだり、パラパラと表土撒くだけでも大丈夫です。元肥用、追肥用どちらにも使用出来ます。 【使用資材例】「マイローズ ばらの肥料」(住友化学園芸)*袋に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 配合されている成分は、チッソ(N)10:リンサン(P)13:カリ(K)6:Mg1:B 0.012。元肥はもちろん、株のまわりにも追肥としてばらまくだけで、施肥後すぐに効きはじめ、その後2~3カ月間しっかり効き続ける「3ピーク・ブレンド」製法も特徴です。 植物が肥料を吸収しやすくする働きや、土の保水性、通気性を高め土に活力を与える作用をもつ腐植酸に加え、高品質の植物性有機質をブレンドした緩効性肥料として特許を取得している資材です。 また、温度変化にあわせて肥料の溶出量が調節される「リリースコントロールテクノロジー」により、暖かく生育が盛んな時期は肥料成分が速やかに溶出され、逆に冷涼で生育が鈍くなる時期は肥料の溶出は緩やかになります。植物の生育に合わせて、無駄なく効率よく栄養分を与え、バラを丈夫に育て、美しい花を咲かせる専用の肥料です。 <土壌改良>完熟堆肥などを使用して土壌改良します。 中耕した所に、漉き込んだり、表土に乗せるだけでも大丈夫です。これまでさまざまな堆肥を使用してきましたが、この堆肥は、バラの生育が各段に良くなる実感があります。 【使用資材例】「特選有機 バラのたい肥」(花ごころ)*袋に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 土壌を元気にする力(地力)が強く、土がふかふかになります。また、土壌をきれいにするデトックス効果もあり、土壌バランスを保つことで連作障害にも効果を発揮します。しっかりした根が張って、きれいなバラを咲かせるバラのために選び抜かれた堆肥です。 <盛り土>特に鉢植えで育てている株は、水やり時の泥跳ねなどで、用土が減っている場合が多いですので、肥料や土壌改良剤が入ったバラ専用の用土を乗せて盛り土します。バラ専用用土の代わりに、上記の完熟堆肥に上記の肥料をよく混ぜ合わせたものを撒いても大丈夫です。 【使用資材例】「特選有機 バラの土」(花ごころ)*袋に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 熟成堆肥や肥料分がバラ専用にブレンドされたバラの土は、使用したい時に直ぐに使用出来るよう、いつもストックしておくと便利です。こちらの用土にはミネラル豊富な海藻成分も入っていますので、根張りが良くなり元気に育ちます。 今からでも行いたいバラの株回復方法 元気が無い株には、まず活力剤を与えます。枯れ枝等不要な枝は取り除き、堆肥や専用用土で土盛りを行い、肥料は、秋バラのシーズンまで間が無いため、これからの施肥には即効性のある液肥(チッ素・リン酸・カリをはじめ、各種微量要素とビタミン等がプラスされた液肥)を利用するのも方法です。 *ただし、10月になって、つぼみが色付き始めたら、施肥はストップします。与え続けると、かえって開花した花が綺麗ではないことがあります。 【使用液肥例】「花工場」(住友化学園芸)*容器に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 配合成分は、チッソ(N)8:リンサン(P)10:カリ(K)5:Mg0.01:Mn0.004:B0.016です。早く効果を出したい時や、追肥に使用します。 植物の健やかな生育に必要な、必須元素及びビタミンなどのさまざまな栄養をバランス良く配合した、素早い効きめの肥料です。硝酸態窒素、アンモニア性窒素、尿素などが配合されているので生育がアップし、そのまま速やかに吸収される製品です。 今から行っておきたいバラの病害虫対策 以上のように、せっかく手をかけても、害虫や病気に侵されては、美しい秋バラの開花にたどり着けないこともあります。秋バラの開花シーズンまであと1歩、病害虫の被害を出来るだけ最小限に済ませるために予防をしておきましょう。 特に高温続きですと、ハダニが発生し広がり、つぼみにも影響します。 【使用薬剤例】「ベニカ ナチュラルスプレー」(住友化学園芸)*容器に書かれている使用容量、使用方法を厳守しましょう。 この薬剤は、化学殺虫成分ではなく、天然成分で作られています。バラに散布しても、そのバラを飲食に利用が出来るなど、ナチュラル派には嬉しい薬剤です。嬉しいことに、今までより、より効き目が良くなりました。ハーブや野菜にも使用出来るのも嬉しいですね。 選び抜かれた3つの天然力で食べる直前まで何度でも使えるという特徴があります。有用菌(B.t.菌)によって、アオムシ、ヨトウムシ、ケムシを2週間ブロックしてくれます。また、トマトを食べるオオタバコガにも効果があります。植物油[調合油]によって、やっかいなハダニの成虫と卵まで効き、水あめ(還元澱粉糖化物)によってアブラムシやうどんこ病を包んで退治してくれます。 引き続き、コガネムシの幼虫が心配な株には、前出の「土にまくだけ!ベニカXガード 粒剤」(住友化学園芸)を株元に撒いておくと安心です。 また、こちらの薬剤は、秋の新芽を食い荒らすゾウムシにも効果があります。 秋バラの開花シーズンまであと少し。爽やかな気候となった現在、たくましく酷暑を乗り越え、庭で健気に生きるバラたちが、また美しい花を見せてくれるように、よく見回り、お手入れを頑張りましょう。 参考/ 住友化学園 花ごころ
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育て方
実録!バラがメインの庭づくり~盛夏のバラの管理2023
一番花、二番花が終わった盛夏の庭 つるバラのスクリーンを背景に、現在はアガパンサスが満開です。 例年より花付きがよかった今年の二番花の季節を終え、暑さで外に出るのも気がのらず、バラのお世話も大変な時期ですね。 花付きがよかった今年の二番花。バラは‘アブラハム・ダービー’(S)。 今年の春の一番花の開花時期は、例年より高温続きで前倒しとなり、枝が徒長して花が小さめでした。その後、梅雨の水分を補給したからか、一番花の開花が今ひとつ満足いかなかったことを挽回してくれるかのように、たくさんの花が咲いてくれました。 庭のバラがこの夏を乗り切ってくれるように、管理のポイントを5つご紹介します。 盛夏のバラの管理ポイント1.水やりをしっかり行う 外に出るのがおっくうになるほどの酷暑ですが、ずっと外にいるバラや植物たちは、降雨が少ないと、たちまち水分不足になってしまいます。 植物は、根から土中の水分を吸い上げ、葉の表面にある気孔から水分を水蒸気に換え、空気中に放出する蒸散作用を行っています。 夏に、葉が黄褐色になったり、落葉するなどの症状が起こるのは、水分不足によるものが大きな原因です。落葉して葉がなくなってしまえば、光合成ができなくなり、株に大きなダメージを与えてしまいます。 なるべく青々とした葉を付けた元気な株でいてもらうためにも、水分不足にならないよう管理することが大切です。 早起きは大変ではありますが、朝の涼しい時間を心がけて、 バラの株元にたっぷりと水を与えましょう。量の目安は、1株につき心で5つ数えるくらいです。また、ハダニ防止や高温軽減のため、葉水も行っています。 盛夏のバラの管理ポイント2.害虫から守る 花を食害するマメコガネ。 この時期に一番多いバラにとっての害虫被害は、コガネムシによるものです。コガネムシや一回り小さなマメコガネの成虫は、バラの花や葉を食害します。また、土中に卵を産み付け孵化した幼虫は、バラの白根を食害します。 まず、成虫が飛来するこの季節に、成虫を捕殺することが大切です。 夏のバラの花は小さく、あまり綺麗ではありませんし、コガネムシなどのエサになりますので、思い切ってつぼみができたら摘んでしまうのも予防策の一つです。 コガネムシの被害にあう前にカットして、部屋で咲かせたサマーローズ。 花を咲かせたい場合は、咲き始めたらなるべく早く枝をカットし、室内で咲かせて楽しみましょう。また、コガネムシのほかに、ゴマダラカミキリ、ハダニ、ゾウムシなどにも、引き続き注意が必要です。 盛夏のバラの管理ポイント3.鉢植えの管理 根が鉢の中でパンパンに張っている状態になるのも、この時期です。 鉢底から根が出ていない場合は、一回り大きな鉢に、根を切らないよう(根鉢を崩さないよう)植え替えます。これを鉢増しといいます。 根がちゃんと回っている状態だと、根鉢を持ち上げても崩れません。 鉢底から根が出て、地面の中に伸びてしまった場合は、植え替えや鉢増しはできません。 なぜなら、バラは根の先端の根毛の部分から水分や養分を吸収しているからです。今、根を切ってしまったら根毛を多く失うことになり、水分や養分を吸い上げる力が落ちて、たちまち元気がなくなってしまいます。ですので、鉢底から根が土の中に伸びていて鉢が持ち上がらないような株は、植え替えや鉢増しの作業は、今ではなく、冬まで待って行います。 鉢増しした株も、植え替えない株も、どちらも盛夏はたっぷり水を与えましょう。 盛夏のバラの管理ポイント4.残す枝と取り除く枝の管理 この時期は、徒長した枝もあれば、枯れた枝もあるなど、成長ステージはさまざまです。残す枝と、取り除く枝を見極めて、対処を行うことも大切です。 まず、枯れ枝を取り除きましょう。茶色になって枯れた部分は、全て取り除きます。枝が枯れるのは、この時期よくあることなので、気落ちしたりせずに、株をリフレッシュさせましょう。 伸びたつる性のバラのシュート。 上写真は、つる性のバラ、ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ(ツクシイバラ)の枝で、明るい緑色のシュートが上に向かって伸びています。このシュートは来年、花を咲かせる枝になりますので、大事に扱います。 このまま支柱を立てて、上を向かせたままの状態で支柱に結束しておきます(高い位置で手が届かず作業が大変な場合は、枝の先端を少しカットして短くしても大丈夫です)。その場合、冬に結束を外して枝を横に倒し、フェンスやトレリスなどに誘引します。 もし、ブッシュ状の株の枝が、このように1本伸びてしまっていたら、他の枝と同じ高さに揃えてカットしておきましょう。 上写真のように枝の先端がホウキ状に数本に分かれている場合は、エネルギーがそこに集中してしまっていますので、ホウキ状のすぐ下の位置でカットして取り除きます。 盛夏のバラの管理ポイント5.適切な除草を行う 雑草は、土中深くに根が張る前の小さなうちに取り除きましょう。 この時期になると、地植えでも鉢植えでもバラの株元で生えてほしくない草が大きく茂ってしまっている場合もあるかと思います(もちろん、こまめに除草に気を配り、そんな状態にはなっていないという方も多くいらっしゃることでしょう)。 草は小さなうちに抜き取るのが基本です。もし現在、バラの株元で大きく茂ってしまった草がある場合、引き抜いて取り除こうとすると、草の根とバラの根を一緒に切ってしまうことにつながるかもしれません。バラはいま根を切ってしまうと、前述した通り、ダメージが残る可能性があります。 ですので、もし草が、バラの株元で大きく茂ってしまった場合は、引き抜かずに、浅くスコップやカマを入れて、バラの根を傷付けないように取り除きます。 今やるべき手入れで秋バラ開花のご褒美が待っています! 9月になったら秋の花を咲かせるために、中旬頃までに夏の元肥や夏剪定をしますが、それまでの期間は、今回ご紹介した盛夏のバラの管理5つのポイントを心がけながら、バラと共に盛夏を無事乗り越えていただきたいと思います。
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ストーリー
バラ咲く庭でパーティー開催! 英国チャールズ3世の戴冠式を祝って
戴冠式を祝う2023年のローズパーティー パーティー当日は、コロネーション(戴冠式)グッズのガーランドを飾って、ゲストをお迎え。 今年は、今までで一番早く訪れたバラの開花シーズンとなり、私は大慌てで庭仕事をし、ローズパーティーの準備もしと、慌ただしい5月でした。皆様はどう過ごされたでしょうか? フェンスに絡むバラは、ゲストの方々に我が家を知らせる目印となったようです。 バラが咲く季節は、我が家でローズパーティーを開くのが恒例となっています。今年は、初めて開いた2003年から数えて21年目だと気づき、あっという間の年月の経過に驚いています。 今年もおかげさまで、ささやかながら、5月に6日間のローズパーティーを開催させていただきました。 2023年5月6日、式典終了後、バッキンガム宮殿までの道のりをパレードする「ゴールド・ステート・コーチ」と祝賀の様子。Watcharisma/Shutterstock.com 日替わりでテーマを変えて行いましたが、なかでも英国の新国王チャールズ3世の戴冠式が5月6日に行われたのを機に、「チャールズ3世の戴冠式を祝うローズパーティー」をテーマに、ナショナル・トラストサポートセンター理事である徳野千鶴子先生に協力していただき、イギリスの戴冠式を祝うストリートパーティー公式メニューから、3つのメニューを再現したパーティーを開催しました。その様子と3つのメニューについて詳しくご紹介したいと思います。 ゲストを迎えるパーティーの準備とおもてなし演出 例年よりだいぶ咲き進むのが早くてハラハラしましたが、なんとかバラも散らずに咲き揃い、安堵したパーティー当日の朝。到着したゲストの方々には、全員が集まるまで自由に庭を散策していただきました。 門の近くでは香り高いイングリッシュローズ‘エヴリン’がちょうど咲いて、バラもゲストをお出迎えしていました。 庭にも、ロイヤルに関するグッズ(ロイヤルアスコットのハンバーと、コロネーションの記念のティータオル)を飾って雰囲気作り。テーブル中央には、朝摘んだバラをアレンジ。 今回は、2つのテーブルで色調を変えて用意しました。半戸外で庭に近いコンサバトリーは、英国菓子やガーデンティーに合う、イギリスのスポード社の「ブルー・イタリアン」の食器を(上写真)、室内は、ローズ色のファブリックに合わせて、イギリスのロイヤル・アルバート社の「レディ・カーライル」をセットしました。 「チャールズ3世の戴冠式を祝うローズパーティー」のテーブルコーディネート。 テーブルには、コロネーションマークが表紙になったメニューを徳野千鶴子先生が用意してくださいました。このマークは、一般の方も自由に使えるようにと、戴冠式を祝うストリートパーティーに関する公式HPでダウンロードができたとのことでした。 戴冠式を記念してロンドンのリージェント通りに掲げられた旗の中にもコロネーションマークが。chrisdorney/Shutterstock.com イギリス(英国)は、正式には、「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)」であり、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、イングランドの4つの「国」から構成される立憲君主制国家です。 マークには、スコットランドの「アザミ」、ウェールズの「ラッパ水仙」、北アイルランドの「シャムロック(クローバー)」、イングランドの「バラ」、そして「チューダーローズ」が描かれています。 chrisdorney/Shutterstock.com 「チューダーローズ」は、「バラ戦争」(15世紀に起きた王位継承権を巡るランカスター家とヨーク家の争い)にランカスター家が勝利し、ヘンリー7世によってチューダー朝が開かれた際、両家のバラの紋章(ランカスター家は赤薔薇、ヨーク家は白薔薇)を組み合わせてできた紋章です。以来、現代の王家にも伝統的な紋章として引き継がれています。 さて、そんなマークがついたメニューを広げると、左側に「ロイヤルファミリーと会ったことはありますか?」「休日何をしますか?」など会話文が印刷されています。これは、イギリスでのストリートパーティーにおける会話のきっかけになるよう、例文が記載されているのです。 ロンドンのストリートパーティーの様子。Graham King/Shutterstock.com ストリートパーティーは、文字通りストリートで行われるもので、その目的は、人と人とのコミュニケーションです。ちなみに、公園や学校などの広場で行う場合は「ビッグランチ」と呼ぶそうです。じつはイギリスでは、こうした「ストリートパーティー」や「ビッグランチ」をとても重視する動きがあります。それは、「人を孤独にしない」という取り組みです。孤独によってアルコールや薬物に依存したり、孤独死に繋がることもあります。しかし、こうしてコミュニティーを作ることで、誰もが少しでもよりよい人生を送ることができるよう、そのきっかけとして、「ストリートパーティー」や「ビッグランチ」が推奨されているのです。 左/室内の一角には、バラのアレンジを飾って。右/見た目も涼しげなローズドリンク。 ウェルカムドリンクは、市販のローズシロップを炭酸で割ったものを用意。日差しが強い日でしたので、クールダウンしていただきました。 コロネーション・ストリートパーティーの公式メニューを再現 当日、英国チャールズ3世の戴冠式を祝うストリートパーティー公式メニュー5つの内から3つを徳野千鶴子先生が再現してくださいました。 徳野千鶴子先生には、メニューの再現だけでなく、そのメニューの背景に隠れたさまざまなエピソードもお聞きすることができました。 コロネーション オバジーン&エビのタコス 皿の上左は「ナディア・フセインさんのコロネーション オバジーン(ナス)」、右は「グレッグ・ウォレスさんのエビのタコス パイナップルサルサ添え」。 3つのメニューの中の1つ目が、「ナディア・フセインさんのコロネーション オバジーン(ナス)」です。 ナディアさんは、ご両親がバングラデシュ出身の1984年生まれのイギリス人女性です。2人のお子さんをもつ専業主婦でありながら、第6回ベイキングオフ大会に出場し、優勝を果たしました。その後、イギリスの勲章MBEも授与されています。 そのナディアさんが考案されたのが「コロネーション オバジーン(ナス)」。ナスの上にかかっているドレッシングは、ギリシャヨーグルトにカレー粉などが入っています。 英国王室ゆかりの伝統料理、コロネーションチキン。Liudmyla Chuhunova/Shutterstock.com カレー粉といえば、1953年のエリザベス2世女王の戴冠式の昼食会に、ル・コルドン・ブルーのロンドン校の校長ローズマリー・ヒュームさんが考案した特別メニュー「コロネーションチキン」が出されたことを思い出される方もいらっしゃるのではないでしょうか。 カレーは、インドのスパイス。エリザベス2世女王の戴冠式当時、インドはイギリスの植民地でしたが、現在のイギリスの新首相スナク氏は、インド系イギリス人です。長いインドとの絆を意味するかのようですね。また、カレー粉が入っているお料理は、金色に見えることからも、コロネーションにふさわしいといわれているそうです。 以前はチキンでしたが、今回はベジタリアンでも食べることができるように、野菜のナスが使用されています。 そして、同じお皿に乗ったもう一品は、「グレッグ・ウォレスさんのエビのタコス パイナップルサルサ添え」です。グレッグさんは、もとはコヴェントガーデンで八百屋を営んでいたそうですが、TVに出演したのをきっかけに、人気料理研究家となられた方で、ダイエットメニューがお得意だそうです。 今回のサルサソースも、塩分が少なくて済むように、スパイスで味付けすることを考案されました。 「コロネーション オバジーン」も、「エビのタコス パイナップルサルサ添え」も、大変美味しく、多様性を意識した新しい時代の王室の在り方が伝わってくるようなお料理でした。 いちごとジンジャーのトライフル さて、徳野千鶴子先生に再現していただいた3つ目のメニューは、「アダム・ハンドリングさんのいちごとジンジャーのトライフル」です。 アダムさんは、ミシュラン1つ星レストランのオーナー兼シェフで、5店舗ほどレストランをオープンしている実力者。季節の果物いちごと、新国王がお好きなジンジャーの入ったトライフルを考案しました。 一皿に取り分けて、みなさんでシェア。テーブルごとに話も弾みます。 ジンジャーは、「ヨークシャーパーキン」という「ジンジャーブレッド」のような生地に入っていて、それを粗く刻んで、トライフル容器の底に入れます。 その上にいちごゼリーを乗せ、ジンジャーカスタード、生クリーム、ナッツを順に重ねていきます。 一見、シンプルなようですが、とても手の込んだ一品で、いちごとジンジャーが予想以上に合い、ナッツがアクセントとなった、とても美味しいデザートでした。 チャールズ3世のお気に入りのフルーツケーキ そして、こちらの「チャールズ3世のお気に入りのフルーツケーキ」も、徳野千鶴子先生に作っていただきました。 フルーツケーキは、チャールズ3世も大好きな、イギリスでは最もポピュラーで伝統的なお菓子。ラム酒に漬けたドライフルーツやナッツ、スパイスを入れ、焼いた後にブランデーを染み込ませて熟成させるため、保存の効くお菓子です。誕生日や結婚式のほか、シムネルケーキ(復活祭などに供されるケーキ)としても作られています。 今回のレシピは、紅茶メーカーのウィッタード社が戴冠式を記念して発表したもので、チャールズ3世のお好みのダージリンの紅茶に浸したドライフルーツを使い、焼き上がったケーキには、ドライフルーツを浸した紅茶の残りを染み込ませました。パーティーではご紹介の料理のほかに、スコーンやキッシュも楽しんでいただきました。 料理とともに3つのブランド紅茶もサーブ 紅茶も、コロネーション記念の紅茶や、チャールズ国王と縁の深い紅茶を用意させていただきました。 右から、ハロッズの「チャールズ3世コロネーション記念イングリッシュ・ブレックファーストティー」、フォートナム&メイソンの「チャールズ3世コロネーション・オーガニック・ダージリンティー」、ハイグローヴの「オーガニック・アールグレイティー」。 レストランでは味わえない、特別なメニューを楽しませていただき、徳野千鶴子先生、誠にありがとうございました。また、イギリスから遠く離れた日本で、バラ満開の時期に、ご参加の皆様とチャールズ3世の戴冠式のお祝いができたことも大変嬉しく、また一つ素敵な思い出ができました。
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育て方
【バラの手入れ】異例の気候「高温続きの春」のバラ管理
2023年の春のバラ開花は2週間も早い! 2023年の春は、気温が高めの日が多く、バラもさまざまな影響を受けているようです。 例年より約2週間以上早く、4月上旬からキモッコウバラが咲き始めました。こんなに早い開花は人生史上初! そして、4月20日時点では、全国374の地点で夏日が観測され、5地点では30℃を超え、東京でも最高気温が26℃となりました。 こんななかで庭のバラたちはというと、すでに開花が始まった早咲きのバラに続けてさまざまなバラが、いっせいに開花の準備をしているかのようです。 今年もバラの花々との再会を嬉しく思いますが、嬉しいことばかりではないようです。 4月中旬以降のバラに見られる困った症状と対処法 【症状1】葉が黄色くなった。 対処方法……高温の日が多かったことも関係しているかもしれません。黄色くなった葉や不要な枝を取り除き、蒸れを防いで通気性をよくしておきましょう。生育期ですので、水分不足にならぬよう、雨天以外は水をしっかり与えます。特に、軒下に置いてある鉢植えのバラは、雨が降っても水分不足になりますので、水やりを忘れずに、気を配りましょう。 【症状2】徒長した枝が強風などで倒れかかっている 対処方法……この春の高温続きで、徒長した枝が多く見受けられます。つぼみが付いてしまっている枝は、支柱を立てて結束しておきましょう。つぼみの無い枝は、ほかのつぼみの付いた枝と同じくらいの高さに剪定しておきましょう。ただし、つる性バラなどで、枝を長く伸ばしたい場合は、長いままでも倒れないよう結束しておきましょう。 【症状3】花が例年と比べて一回り小さい 対処方法……この症状も、この春の気候が大きく影響しているかと思います。例年通り、大輪の一番花を期待して待っていたのに、夏花のような花が咲いてしまうと、がっかりではあります。ですが、水やりを怠らないように。気温が低くなれば、例年通りゆっくり開花しながら大きな花となります。どうしても花を大きくしたい場合は摘蕾してつぼみの量を減らします。 【症状4】花芽が付かない つぼみが付いていない枝の様子。 対処方法……毎年よく見られることですが、いつまで待っても花芽の付かない葉だけが茂る枝があります。これは、「ブラインド」と呼ばれる症状です。枝はしっかりしているのに花芽がない枝は、上から1段、または2段目の本葉の上でカットしておきます。カットしたところから新芽が伸びて、つぼみが付くかもしれません。 取り除いたブラインド(花芽がない芽吹きの葉)。 【症状5】葉が透けるような箇所があり汚い 葉が透けるようにかすれて汚くなり、裏側には小さな虫が付いている様子。 対処方法……上写真のような症状が見られたら、それは「ハダニ」による被害です。ハダニの被害は、高温時に発生するものですが、やはり今年は例年より早く発生しました。被害が少ないうちに、被害にあった葉を取り除き、その葉の周囲に、ハダニに有効な薬剤を散布しておきましょう。 【症状6】新芽が黒く、つぼみも元気がない 新芽が黒くチリチリとした症状に加え、つぼみも元気がない様子。 対処方法……3月に引き続き、バラの害虫である「ゾウムシ」はまだ庭に潜んでいます。とても小さな虫で、手で取るのもなかなか大変。限界を感じたら、ゾウムシに有効な薬剤を散布しておきましょう。 *病害虫に対応する薬剤は多種多様です。ご自分のバラへの向き合い方を決めて薬剤を選びましょう。 病害虫対策の薬剤を使うか使わないかの判断目安 バラへの向き合い方として、どのような目的で育てたいのかをあらかじめ決めておくと、育て方の方向性が見えます。また、目的に合わせてバラの育て方の方針が決まってくるかと思います。 【タイプA】観賞が主な目的 →化学殺虫成分が入った薬剤を使用して、しっかり害虫や病気を防除。 この場合のデメリットは、病気や害虫による被害は少なくなりますが、花弁などの飲食はできません。 【タイプB】観賞も楽しみながら暮らしに取り入れ活用するのが目的 →無農薬、または、化学殺虫成分を含まない食品成分等でできた薬剤を使用する。 この場合のデメリットは、飲食に利用したり、ポプリにしたり、暮らしの楽しみは広がりますが、害虫や病気の防除の効果が、化学殺虫成分が入った薬剤を使用した場合よりも少なくなります。 無農薬を心がける私のバラづくり バラの花弁を飲食に利用しています。写真のレシピはこちらの記事でご紹介。 私のバラ作りは、長年【タイプB】でやってきました。無農薬栽培または、化学殺虫成分を含まない製品をこれまでも試してきましたが、今年は、化学殺虫成分を含まない進化した新製品「ベニカナチュラル スプレー」と「ピュアベニカ」(発売元/住友化学園芸)を使用しています。 化学殺虫成分を含まないナチュラル系成分でできた薬剤も、散布の際は、必ず手袋をして行いましょう。 「ベニカナチュラル スプレー」は、3つの天然力「有用菌(B.t.菌)」、「植物油」、「水あめ」が原料で、それらの有効成分が独自ブレンドされています。 また、「ピュアベニカ」は、100%お酢から誕生したスプレーです。どちらの製品も、散布したあとのバラを飲食用に利用することが可能です。 この2つの新しい薬剤が、今までのナチュラル系成分の薬剤と違うのは、何といっても効き目がよくなったことです。 私の庭では、たった1回の散布で、アブラムシはほとんど見かけなくなりました。 薬剤を必要としない病害虫に強いバラの品種を選ぶことも大切ですが、特に今年のような高温続きで、病害虫が前倒しで現れるようなときには、ナチュラル系の成分でできた効き目が確かな薬剤はとっても重宝します。 とはいえ、効き目が確かといっても、必ず全てに効果が現れるとは限りません。また何度も同じ薬剤を使用していると、耐性ができてしまい効果が薄れることもあります。そういった場合は、別な薬剤を試してみましょう。 高温が続く春に行うその他の作業 左/鉢植えのバラの周囲に植えてある徒長したミントをカット。右/カットしたミントとヤロウとともに、早く咲いたイングリッシュローズ‘ウィンチェスター・キャシードラル’(S)を活けて飾りに。 バラの周囲の環境を整えるのも有効です。 気温が高いため、バラ以外の植物も生育が早く、徒長している姿を目にします。そのままにしておくと、バラを覆ってしまい、通気性や日照が悪くなり、バラが育ちにくい環境になってしまいますので、今のうちに適度な高さにカットしておきましょう。 これからも、また気温が上がったり下がったりしながら季節は進むことでしょう。きっとバラたちもこの環境に対応しながら生きているのだと思います。そんなバラたちを、そっと支えながら寄り添って、バラ咲く季節を楽しみたいと思います。
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樹木
【私の推しバラ】35年の愛好歴から選び抜いた心酔Rose神5
元木はるみさんがバラを選ぶ基準とは 神奈川県の自宅の庭で、多数のバラを育てながら、バラを育てる喜びや育て方を、記事執筆やカルチャースクールなどでも解説する元木はるみさんは、最愛のバラを育てて約35年になるロザリアンです。 元木さんがバラの苗を購入するに至るまでにまず確認することは、系統や樹高、樹形等の性質です。その情報をもとに、植えるのにふさわしい場所を考えます。日当たりや、構造物の支えが必要かなどを含めて、庭のどこに植えたらよく育つか、鉢栽培の場合はどこに置くとよいかを確認します。そして、咲いている花や香りなどを知るために、バラの専門店や庭園などで、なるべく実物を見てから購入を決断します。 実際に見て、心がときめくかも大きなポイントです。そんな元木さんによるチェックポイントを満たし、実際に育ててきた経験から選んだ5種のバラを紹介します。 マストバイ① 20年間ずっと心ときめかせてくれるバラ「クロッカス・ローズ(Crocus Rose)」 系統シュラブローズ(S)/四季咲き性/2000年イギリス作出/作出者:David Austin このバラを初めて見たのは、以前開催された花イベント「国際バラとガーデニングショー」の会場でした。バラの花々で埋め尽くされた会場のなかでも、特にこのバラがお披露目されたイングリッシュローズの新品種が植栽されたコーナーは、人気の的でした。ミレニアムイヤーに発表されたバラですが、「華やか」と表現するよりは、花に内包する‘秘められた美しさ’を強く感じました。 会場内の室内灯では、花色はほとんど白っぽく見えましたが、グリーンアイを覗かせて、ほんのわずかに黄色~アプリコット色が見え隠れするニュアンスがあるその花色は、とても繊細で心奪われたことを覚えています。それからすぐに苗を入手して庭に植えてから、もう20年以上。今でも、最初の出会いの時に感じた ‘秘めた美しさ‘に心ときめきます。 アプリコット色のつぼみから、カップ咲き、大輪ロゼット咲きと次第に開き、アプリコットクリーム~クリーム色へと変化していきます。そのすべての花色と花姿を身近に眺めていたくて、束ねて室内に飾るのも楽しみの一つです。 優しい花色、優しい佇まいのバラですので、脇役にも主役にもなる大変エレガントなバラです。 マストバイ② 花数たっぷりで他のバラとも相性がよい「スノー・グース(Snow Goose)」 系統シュラブローズ(S)/四季咲き性/1996年イギリス作出/作出者:David Austin 花径3cmほどのセミダブルの小輪花が房状に咲いて、ナチュラル感があるバラです。長年、‘スノー・グース’を育ててきましたが、以前の庭ではこのバラのよさを生かしきれていなかったのではと反省しています。現在の庭では、しっかり日が当たる場所に植えたためか、すくすく元気に育ち、春は壁を覆い尽くすほどたくさんの花を咲かせてくれました。 イングリッシュローズでありながら、つるバラとして利用することができ、花壇の背景や庭の奥側に配置するとよいバラです。栽培には、壁面やフェンス、アーチなどの支えが必要です。 上写真は、先にご紹介した大輪のバラ‘クロッカス・ローズ’を囲むように添えたのが、小輪の‘スノー・グース’です。このアレンジメントでも分かるように、どんなバラとも相性がよく、ガーデンでもアレンジメントでも重宝するバラです。 マストバイ③ 食べられる芳香豊かなバラ「食香バラ‘豊華’(ほうか)」 系統不明/一季咲き性/作出年・作出国・作出者不明 ダマスク香にスパイシー香が微かに加わった強い香り。ワックス成分の少ない花びらは、柔らかく苦味やえぐみも少ないことから、中国では1000年以上も前から、食用・薬用・香料として利用されてきた唯一無二のバラです。現在でも山東省平陰のバラの村では、このバラを多数栽培して出荷されています。このような歴史とロマン溢れるバラを自宅で身近に栽培できるようになったことは大変ありがたいことです。 このバラが咲く時期は毎朝花を摘み、花弁をさまざまな方法で暮らしに役立てています。例えば、花びらをビネガーに漬けて、水や炭酸水で割ってビネーガードリンクにすると、喉越しよくバラの香りが口いっぱいに広がる夏にぴったりの飲み物に。また、砂糖やオリーブオイル、ハーブソルト、レモン汁を加えれば、バラ色のドレッシングが出来上がります。 ‘豊華’の柔らかく美味しい花弁は、生のまま食すこともできるので、サラダやお菓子に生の花弁を散らせば、彩り豊かな一品になります。病害虫にも強い性質で、私は完全無農薬でこのバラを育てています。 マストバイ④ ゴージャスに咲く!「フランソワ・ジュランヴィル(François Juranville)」 系統:ランブラー(R)/一季咲き性/1906年フランス作出/作出者:Barbier Frères & Compagnie バラで風景を作りたい時に、大活躍してくれるつる性のバラです。暑さ・寒さに強く、枝は匍匐(ほふく)性でよく伸長し、パーゴラやアーチなどの構造物に誘引するのに向く性質です。我が家では、サンルームの開口部を縁取るように設置したパーゴラに絡めて、外から見ても室内から見てもバラの花々に囲まれる感覚が味わえるゴージャスなバラです。 引越し前の住まいでも、窓の周りを縁取るように誘引し、約10mを超す大木にまで成長しました。しかし、現在の住まいに移る際、掘り起こして移植するには大きすぎて、現在の庭では新しく苗を購入しなおして植栽しました。 マストバイ⑤ 魅惑の花色と香りをまとう「ブルー・ムーン・ストーン(Blue Moon Stone)」 系統:シュラブ(S)/四季咲き性/2017年日本作出/作出者:河本純子 グリーンがかったツボミから、薄紫色の中輪ロゼット咲きの花が開花するその過程がなんともロマンチック! 花に顔を近づけると、ダマスクの香りに甘さが加わった心地よい香りを堪能できます。花色は徐々に退色していきますが花もちがよいため、一房の中に紫色~白のグラデーションを見ることができます。 剪定することでコンパクトな樹形に仕立てられるシュラブローズなので、鉢植えで育てるのにも向いています。
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ストーリー
英国王室に受け継がれる「ロイヤルマートル」と森の治療薬レモンマートル活用法
イギリス王室で育てられている植物たち Benjamin McMillan/Shutterstock.com 今年、2022年9月8日に御年96歳で崩御されたエリザベスⅡ世女王陛下、そのご葬儀(国葬)の際、棺に飾られた植物について、花好きの方々の間でも注目されました。ニュースでも報じられていた通り、これらの植物は、バッキンガム宮殿、クラレンスハウス、ハイグローヴハウスの庭園から摘まれた植物が使われたそうです。 Kelly Chow/Shutterstock.com ダークレッドのダリア、スカビオサ、アジサイ、3~4品種のバラ、イングリッシュオークの葉、ローズマリー、ギンバイカ(マートル)の枝などが、テレビの中継画面からも見て取れました。中でも中央の頂点に活けられていたギンバイカ(マートル)は、じつはイギリス王室にとって、とても大切な植物だったのです。 縁起物の植物「ギンバイカ(マートル)」 Gherzak/Shutterstock.com 学名/Myrtus communis和名/ギンバイカ(銀梅花) 別名/マートル、ミルタス、イワイノキ科名・属名/フトモモ科ギンバイカ属原産地/主に地中海沿岸 常緑低木 日当たりのよい、温暖な場所を好む常緑低木で、枝を剪定する場合、花が終わった頃、すぐに剪定すれば翌年の花を楽しむことができます。和名の「銀梅花(ぎんばいか)」は、5~7月に咲く5弁の花弁を持つ白い花が、梅に似ていることから付けられました。美しい糸のような細いオシベが特徴的です。 S.Zykov/Shutterstock.com 古くは、古代エジプトで繁栄・豊穣の象徴とされ、愛と美の女神ヴィーナスに捧げるご神木とされました。キリスト教では、聖ヨハネが葉からオイルを作り、イエスの洗礼に使用したともいわれています。 ハーブとしては「マートル」と呼ばれ、花や葉にユーカリに似た香りがあります。料理の香り付けに利用したり、結婚式の飾りや、お酒に浸けて香りを移したものを「祝い酒」として利用したことから「イワイノキ」(祝いの木)の別名があります。 Ivan Semenovych/Shutterstock.com 「繁栄」「豊穣」「平和」「美」「愛」「結婚」「純潔」「忠誠」「貞節」「幸運」などの象徴とされ、誕生から結婚式、葬儀までと幅広く利用される縁起物の植物です。 レモンマートル KarenHBlack/Shutterstock.com 葉に斑が入る斑入り銀梅花(バリエガータ)もあり、花のない時期でも観賞価値があります。 また、シナモンの香りのシナモンマートル、レモンの香りのレモンマートルは、オーストラリア原産のフトモモ科バクホウシア属の常緑低木です。 イギリス王室に受け継がれるマートル 常緑樹のマートルが、なぜ王室で育てられ、どのように使われてきたのかのエピソードをご紹介します。 ヴィクトリア女王と「ロイヤルマートル」 Abel Brata Susilo/Shutterstock.com 18歳の若さで女王となったヴィクトリア女王(1819年5月24日 - 1901年1月22日)、(在位:1837年6月20日 - 1901年1月22日)は、1840年、21歳の時に、アルバート王子(ザクセン=コーブルク=ゴータ公子)と結婚しました。 ヴィクトリア女王は、アルバート公の祖母から贈られたブーケの中に入っていたマートルを挿し木し、ワイト島にあるヴィクトリア女王とアルバート公の別邸「オズボーンハウス」の庭園に植えたとのことです。 CoolJosh/Shutterstock.com その木は今も健在で、国の繁栄に貢献し、幸せな家庭を築いたヴィクトリア女王とアルバート公を称え、繁栄と幸せな結婚を象徴する植物として「ロイヤルマートル」と呼ばれています。英国王室の花嫁のウェディングブーケには、この「ロイヤルマートル」の小枝を入れることが伝統的な習わしとなっているそうです。 エリザベスⅡ世女王、キャサリン妃はじめロイヤルウェディングブーケに、その「ロイヤルマートル」は入れられました。 葬儀の棺に添えられたマートルの小枝 Turgut Cetinkaya/Shutterstock.com 再び、エリザベスⅡ世女王のご葬儀の話に戻りますが、棺に添えられた花々の中のマートルの枝は、1947年のエリザベスⅡ世女王とフィリップ殿下のご結婚式のウェディングブーケから枝を挿し木して育てられたものと伝えられています。 つまり、ヴィクトリア女王が夫アルバート公の祖母から贈られたマートルの小枝を挿し木して育てた木の枝を、エリザベスⅡ世女王がご自身のご結婚式のブーケに使用し、そのブーケのマートルを挿し木して育てた木から、今回のご葬儀に小枝が使用されたという訳です。 このことからも、イギリス王室にとって受け継がれる「ロイヤルマートル」は、大切で特別な植物だということが分かります。 「森の治療薬」といわれるレモンマートル活用法 レモンマートル(科名・属名/フトモモ科バクホウシア属)の葉には、香りの成分であるシトラールがレモンの約20倍も含まれており、含有率は世界一とされています。 シトラールには、抗菌、抗ウィルス、鎮痛、鎮静効果があり、免疫力の低下が原因で引き起こされる病気を予防する効果があるとされています。また、そのレモンのような香りをかぐことで、リラックス効果、癒やし効果があり、心と体の両方に効果が期待できるハーブです。 オーストラリアの先住民アボリジニは、古くからこのレモンマートルを「森の治療薬」と呼び、薬草として活用してきました。 お茶として楽しむ 耐熱性のポットに、8~10枚ほどの水洗いした葉を入れ、熱湯を注ぎ、5分間蓋をしてよく蒸らします。お茶の味が濃くなったら、また熱湯を注いで繰り返しいただくことができます(*但し、子宮収縮作用促進効果もあるといわれているので、妊婦さんの服用はご注意ください)。 また、香りのよいバラの花弁とブレンドしていただくのも美味しく、おすすめです。 ブレンドしたバラの花弁は‘ローズ・ポンパドール’です。花は、甘く爽やかなフルーティー香が強く香ります。レモンマートルをドライにして保存する際は、写真のように葉を小さくカットしておくと、抽出しやすく美味しくいただけます。 飾って楽しむ 香りのブーケ(タッジー・マッジー)を作って室内に飾ります。逆さにして飾りながらドライにすれば、室内で長く香りを楽しめます。 *タッジー・マッジーは、ヨーロッパの中世の時代、抗菌作用などの効能のあるハーブなどの香草を小さく束ねて、伝染病予防や魔除けとして持ち歩いたのが由来といわれています。 プレゼントとして贈る レモンマートルの花言葉は、ギンバイカ(マートル)と同様に、「愛」や「幸運」ですので、プレゼントにも最適です。 ブーケ材料/レモンマートル、ローズマリー、ラベンダー、カルーナ、バラ(‘ヴィウーローズ’、’アンナ・ユング’、‘ローズ・ポンパドール’) マートルに実った果実ごとリースにしても絵になります。Katinkah/Shutterstock.com エリザベスⅡ世女王のご葬儀を通して、「マートル」という植物へのイギリス王室の想いを強く感じ取り、知ることができました。そして、私も庭で育てているマートルには、さまざまな効能が期待できることも再認識しました。マートルは、今までもこれからも庭木としての役目を担いながら、付加価値をさらに広げ、人々の生活の中で存在感を増していくのではないでしょうか。
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暮らし
真夏のバラを切って飾って花遊び<サマーローズの活用法>
盛夏のガーデンで健気に咲くバラ この時期は、猛暑と害虫による被害などがあり、バラにとっても過酷な季節です。 それでも、毎日水やりをしていると、小さなつぼみを上げてくるバラたちに、生きた植物の力強さを感じさせられます。 今回は、そんな健気で愛らしい夏のバラ「サマーローズ」の楽しみ方をご紹介します。 食害を受ける前に「摘蕾」を 夏のバラは、目を離すとたちまち上写真のようにカナブンやコガネムシ、マメコガネなどに花や葉を食害され、無残な姿になってしまいます。 食害されないためには、予防方法として「摘蕾(てきらい)」を行うとよいでしょう。 特に効果があるバラは、以下のような株です。 植えて間もないまだ小さな苗 古くて弱った苗 夏の暑さに弱い苗(葉が黄色くなったり、葉を落としてしまう症状が出ている) これらのバラの体力を温存するためにも、つぼみができていたら手で摘み取ります。 夏も元気な株につぼみを見つけた場合 葉が茂った元気な株の場合は、摘蕾せずに室内で咲かせることができます。このバラを私は、「サマーローズ」と呼んで楽しんでいます。 室内飾りにできそうなバラは、上写真のようにつぼみが少し色付いたタイミングで、下方の枝も少し付けた状態(株に残る枝があまり短くならないように)で剪定します。 サマーローズを楽しむためのポイント ポイント① まず日頃からバラの面倒をよくみて、株を弱らせないようにすること。 注意:暑さに強い品種であっても、水やりをしなければ、弱ってしまいます。 ポイント② つぼみができたら、外で咲く前に剪定して室内で咲かせること。 注意:鉢植えのバラを、鉢ごと急に冷房の効いた室内に持ち込むと、環境の変化にうまく適応できない場合があります。 サマーローズを楽しむ手順 手順① つぼみが付いた枝は、剪定したらすぐに水につけます。 手順② 要らない葉を取り除きます。 手順③ 枝先にハサミを斜めに入れて、水の中でカットします(水切り)。 手順④ 水に挿しておくと、日に日につぼみが膨らんできました。 害虫たちに食害される心配もなく、テーブルなどに飾って室内で花開くサマーローズを楽しみます。 また、花が害虫の食害にあっても(写真左)、外側の花弁を取り除けば、楽しめることもあります。 三番花や四番花のサマーローズは、春に比べて小ぶりなので、花器も小さいものが似合います。ミルクピッチャー(上写真右)は形も綺麗で、花器としておすすめです。 また、枝を短くしか剪定できない場合は、オアシスに挿したり、小さなお猪口などを花器代わりにしたり、水を張ったお皿に浮かべるのも素敵なアイデアです。 夏は夏らしくバラと付き合う 以前は「夏のバラは、小さくて汚らしい」と、私自身も思っていた一人でしたが、今では、「サマーローズ」と呼んで、その大切な命の恵みを、大事に楽しんでいます。今年の夏もサマーローズに元気をもらって乗り越えたいものです。
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育て方
バラを立体的に演出する構造物を見に出かけよう! 横浜のバラスポットへ
誘引見学スポット1「港の見える丘公園 イングリッシュローズの庭」 横浜市イギリス館前に広がる「イングリッシュローズの庭」には、約150品種1,000株が植栽され、多くのイングリッシュローズを楽しむことができます。 花の咲いていない時期は、5月の華やいだ雰囲気とは違って、ひっそりと落ち着いた趣があります。 門を入ってすぐの位置にあるオベリスクには、頂点に横浜市の花である「バラ」を象ったオブジェがついています。 アーチの柱の部分は、先程通ってきた門のレンガとお揃いの仕上げになっています。 構造物の材質や色を統一することによって、まとまりのあるガーデンになっていることがよく分かります。 また、上部には「エバーグリーン色」といわれる深緑に塗られたステンレス製のバーが、地面と平行に2列設けられ、それぞれにつるを誘引し、バラの花が高い位置で咲くように立体的に演出されています。 枝を斜め上に巻きながら数カ所留め、上部に持っていく誘引の方法もよく見ることができました。 6連のアーチの構造物が、花のない時期でも、ガーデンに美しい風景を作っています。 こちらの大型のパーゴラは、上部のアーチ部分はステンレス製です。 よく見ると、枝をアーチに沿わせて伸ばし、均等をあけて紐で間隔に固定しています。 こちらのパーゴラは、すべてステンレス製で華奢な印象です。 細いフレームが組み合わさった柱なので通気性があり、枝の固定など誘引作業もしやすそうに思えました。 誘引見学スポット2「港の見える丘公園 バラとカスケードの庭&香りの庭」 こちらは、「イングリッシュローズの庭」の奥、山手111番館前の「バラとカスケードの庭」にあるガゼボの春の姿です。 ガゼボの円柱には、‘ピエール・ド・ロンサール’(Cl)などが誘引されています。 こちらは、奥に横浜市生まれの作家・大佛次郎の記念館を望む「香りの庭」です。 整然と美しく整えられた花咲く前のローズガーデン。香りが低くたちこめるように、沈床花壇となっています。 約100品種500株の香りのバラが集められた「香りの庭」は、それぞれの香りの特徴ごとに分けて植栽されています。 噴水を中心にバラのアーチが連なり、季節の花々が彩りを添えています。 では、冬の誘引の様子を見てみましょう。「香りの庭」に設置されているアーチはエバーグリーン色で、すべてステンレス製です。 小道の先には、誰もが腰掛けたて香りを楽しみたくなるように配置されています。 ベンチの背景になる場所には、ラウンドしたフェンスが設けられていて、誘引が丁寧に施されていました。 誘引見学スポット3「山下公園内 未来のバラ園」 こちらは、係留されている氷川丸を背景にした山下公園の一部にある「未来のバラ園」です。 「未来のバラ園」は、海に向かって、山下公園の中央噴水の右側(元町側)にある沈床花壇で、約160種1,900株のバラが植栽されています。横浜の玄関口である港のすぐそばにあるバラ園として、歴史あるバラから新しいバラまで幅広い品種を植栽。自然環境を考えた未来のモデルガーデンを目指していることから、「未来のバラ園」と命名されました。 「未来のバラ園」は、シンメトリー(左右対称)にデザインされ、中央にはスタンダード仕立てのバラが植わり、その両サイドにつるバラを誘引したアーチが連なっています。間口が広いローズゲートのため、広い空間で立体的にバラを楽しむことができます。 ローズゲートを進むと、鉢植えに仕立てられた‘ル・ポール・ロマンティーク’(CL)があります。 中央付近の四隅には、オブジェのように仕立てられたバラもあり、誘引方法をじっくりと見ることができました。 裏に回ってみると、株元が腰高な花壇に植えられていて、枝を横に倒しながら柱を覆っている誘引の様子がよく分かりました。 中央にはスタンダード仕立てのバラが奥へと整列し、左右に白バラが咲く春の「未来のバラ園」の圧巻の風景です。 ローズゲートのアーチに植栽されている6種のバラです。中央のスタンダード仕立てのバラは‘アイスバーグ’です。 ステンレス製の一基のアーチには、白を基調とした3種類のバラが誘引されていました。 こちらは、低い壁面に仕立てたれたつるバラ。ほどよい枝の数です。 「未来のバラ園」から階段を上ると、奥に噴水が見え、手前にバラが絡む大型のパーゴラがあります。柱の部分がレンガ仕上げ、上部は木製になっています。 レンガ部分の柱に施された誘引の様子です。手前にはパネルを設置、サイドにはワイヤーが張られていて、枝を留めつけるようになっています。誘引されているバラは、‘つるノックアウト’や‘アンジェラ’など、強健な品種が選ばれています。 5月の最盛期になると、満開のバラの株元にはさまざまな宿根草などが花開き、多くの人々が集って賑やかです。こちらのガーデンでは、世界的に進められている環境への配慮に着目し、減農薬でも栽培できるバラが集められ、訪れる人々の目と心を楽しませてくれています。 バラの花が咲く時期、そして、花のない時期にも、構造物や誘引を見に、ローズガーデンを訪れてみてはいかがでしょうか。きっと参考にしたいと思えることが、たくさん見つかることでしょう。
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育て方
秋バラが綺麗に咲くように~今から行う鉢植えバラの手入れ方法
庭のバラは今、どんな状態ですか? 今年の夏は、猛暑の日もありましたが、まるで梅雨時のように雨天が続いたり、幾度か台風による大雨があったせいか、我が家のバラは例年より葉が落ちずに、次々と小さなつぼみを上げるものが多いように思います。皆さまが育てているバラはいかがでしたか? もし現在、バラの葉がほとんど無い状態だとしたら、考えられる大きな理由は4つです。 雨天時以外の日の水やりの回数や量が少なかったために水分不足になってしまった。 鉢植えの底から根が出て土中に根を張っていたのに気がつかず、鉢の置き換えをして、根を切って傷めてしまった。 ハダニや黒点病(黒星病)などの病害虫によりダメージを受けた。 暑さに弱い品種のため。 ●「夏に弱ったバラの回復法」も併せてご覧ください。 8月下旬~9月上旬に行う作業 【剪定】 冬に強剪定や誘引で整えた株も、春を過ぎ、そして夏を越し、現在だいぶ枝が暴れているのではないかと思います。8月下旬~9月上旬に行う剪定は、不要な枝を取り除き、剪定や整枝を行いますが、冬とは違い、光合成を妨げないため葉の量はあまり減らさないようにすることが大切で、冬のような強剪定ではなく、弱剪定とします。ただし、お隣の敷地に入り込んでしまったり、あまりにも枝が伸びて手に負えない場合は、臨機応変に各家庭に合った剪定を行ってください。 【施肥】 鉢植えのバラへの施肥は、市販の固形肥料(根に触れても安心な肥料)が便利です。パッケージに記載されている容量、使用方法などを守ってご使用ください。 コンパクトな樹形の鉢植えバラ 剪定・施肥・盛り土・水やり 見本の品種は、四季咲き性のフロリバンダ、‘アジュール’(2020年 河本バラ園作出)。写真右が夏の終わりの頃の状態です。 まずは、花やつぼみ、枯れ枝や細い枝、内側に向かって伸びている「ふところ枝」などの不要な枝をカットします。 「ふところ枝」が無くなり、通気性がよくなりました。 全ての枝にハサミを入れます。目安として剪定前の枝の約1/3(オレンジ箇所)をカットしたのが写真の状態です。 今回のカットでは、上写真程度の枝葉の量を切りました。 鉢のすぐ内側にシャベルで少し溝を作り、根に触れても安心な固形肥料をすき込みます(パラパラと撒くだけでも)。 鉢植え株は、水やりなどで用土が減っている場合が多いので、バラ専用の用土を盛り土します。 ここで盛り土に使う用土は、一度バラに使ったものは避け、新しい用土を準備してください。写真のような市販のバラ専用用土が便利です。 盛り土をしたら、すぐにたっぷりの水を与えましょう。その後、秋まで水やりに気を配りながら、2週間に1回、活力剤(活性液)を使用して、バラの元気を回復させます。 オベリスクに誘引した鉢植えバラ 剪定・施肥・盛り土・水やり 見本の品種は、返り咲き性の‘ブリーズ’(S)(2009年 仏 デルバール作出)。 すっと上に長く伸びた茎の先に中輪カップ型のコロンとした可憐な花を上向きに咲かせます。このような樹形のバラは、枝を真横に寝かせるのではなく、軽く斜めにする程度に誘引します。オベリスクに誘引することで半日陰や狭い場所でも、すっきりとまとまりのある姿になります。我が家では通路の脇に鉢植えで置いていますが、ベランダや玄関ポーチに置いてもとても似合います。 冬に誘引した枝は、いったんオベリスクから外し、不要な枝を取り除きます。 剪定・誘引後の状態。花茎が伸びて、秋に咲く位置を想定しながら、すべての枝にハサミを入れます。そして、枝を軽く斜めにしながら、同じ方向を向かせてオベリスクに留めつけて誘引します。 前出と同様に、鉢のすぐ内側にシャベルで少し溝を作り、根に触れても安心な固形肥料をすき込みます(パラパラと撒くだけでも)。 鉢植え株は、水やりなどで用土が減っている場合が多いので、バラ専用の用土を盛り土します。 ここで盛り土に使う用土は、一度バラに使ったものは避け、新しい用土を準備してください。市販のバラ専用用土が便利です。 盛り土をしたら、すぐにたっぷりの水を与えましょう。その後、秋まで水やりに気を配りながら、2週間に1回、活力剤(活性液)を使用して、バラの元気を回復させます。 剪定でカットした 小さなつぼみや花たち 剪定でカットしたつぼみや花は、春や秋に比べたらとても小さく、見た目も地味かもしれませんが、暑い中、健気に咲いていてくれたその姿は、とても愛おしく感じます。 捨ててしまうのはもったいないので、ぜひ室内で愛でてください。 剪定と施肥を終えた株は、これから秋に向かって成長します。10月になれば、涼しい気候の中で、また美しい花を咲かせてくれることでしょう。その日を楽しみに、日々、バラの面倒を見ていきましょう。
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育て方
実録! バラがメインの庭づくり第17話「移植してから15カ月目に満開のバラたち」
過去最高に早く咲いた2021年のバラたち 今年の春のバラの一番花の時期も、そろそろ終わりを迎える頃となりました。皆さんのお庭の春のバラは、いかがでしたでしょうか? 例年より約3~4週間も早く咲き始めた今年のバラたちでしたが、何処も花付きがよく、今年はバラの当たり年でもあったようです。 さて、今回は、以前の庭から移植し、15カ月目を迎えた今年5月の私の庭のバラたちの様子をご報告いたします。移植当時、「植栽計画図」を作成し、おおむねその通りに植栽したバラたちが、2回目の春を迎え、株も大分充実し、花数を増やしてくれました。 移植したバラを枯らさないように育てるということが第1目標だった昨年の庭に、今年は、新たに購入したバラも加わり、バラがメインの小さな庭は、ますます狭くなってしまいました。 【エリア1】門・エントランス周りのバラたち 門の西側のフェンスに誘引したバラや、エントランス付近のバラは、門柱のタイルの色に合うよう、黄色~アプリコット~白の花色のバラを配置しました。 壁面に誘引した‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R/1916年/フランス/Eugène Turbat & Compagnie作出)は、大変花付きがよく、スパイシーな香りに、ミツバチたちも集まっていました。 アプリコット色の‘アブラハムダービー’(S/1985年/イギリス/David Austin作出)と、その後ろはクリーム色の‘クロッカスローズ’(S/2000年/イギリス/David Austin作出)。 玄関前には、黄色の‘ゴールデン・ボーダー’(F/1993年/オランダ/Verschuren社作出)と白の‘スノーグース’(S/1996年/イギリス/David Austin作出)の組み合わせ。 【エリア2】中庭のバラたち エントランスから、右側(東側)にあるバラの中庭へのアプローチ。芝の緑と、ジギタリスやオルレアの草花がバラの彩りを引き立ててくれました。 エントランスから中庭へ進むと、ピンクや赤の強い花色が庭の印象を変えてくれています。右手にはアーチのあるディスプレイコーナー。左奥は、サンルームがあります。 バラの花壇の‘マサコ(エグランタイン)’(S/1994年/イギリス/David Austin作出)は、白い小花のオルレアとハーブのヤロウなどが咲き競って、優しい景色にうっとり。 バラの花壇の後方に植栽した‘バレリーナ’(HMsk/1937年/イギリス/Bentall作出)。 【エリア3】サンルームを囲むバラたち 窓を開け放てば、バラの香りを全身で浴びることができます。身近に楽しめるようにと、サンルームを取り囲むようにバラを植栽しました。 サンルームの正面に備えた南側アーチには、‘フランソワ・ジュランヴィル’(R/1906年/フランス/Barbier Fr res & Compagnie作出)を「しめ縄仕立て」に誘引しました。 サンルームの前は、地植えしているバラの前に鉢植えのバラを置き、いつでもサンルームから花咲く姿が見られるように、鉢植えを置き換えながら楽しみました。 【エリア4】公道側の花壇のバラたち 樹木に絡ませた‘ポールズ・ヒマラヤンムスク’(R/1916年/イギリス/George Paul作出)と、その手前下には「バラ摘みコーナー」として植栽した‘マイカイ’(Ch)と食香バラ‘豊華’(Ch)。白と赤のメリハリのあるカラーリングです。 ‘マイカイ’と‘豊華’は、どちらも中国原産のバラで、古くから薬用や食用に栽培されてきました。中央が‘マイカイ’で、左右に‘豊華’を1株ずつ植栽。 朝のバラ摘みは、この季節の楽しい日課となりました。 公道に面した南西の一部のコーナーは、常緑樹の後ろ側になるため、あまり日光が当たらない場所です。そのため、白いテーブルやイス、アーチを置き、移動できる鉢植えのバラのコーナーとしました。赤紫のバラは、‘ミステリューズ’(F/2013年/フランス/ドリュ作出)。 【エリア5】公道に面したフェンスを彩るバラたち 南側の公道に面した白いフェンスには、花がたくさん咲き、うつむいて枝垂れるようなつるバラやランブラーローズを選びました。 手前は、花もちがよく、中輪の花が房咲きになる‘ジャスミーナ’(Cl/2005年/ドイツ/コルデス作出)、奥の白い中輪房咲きのバラは、‘ボルティモア・ベル’(R/1843年/アメリカ /Samuel Feast作出)。 エントランスそばのフェンスの角地には、‘メイ・クイーン’(R/1898年/アメリカ/Dr. Walter Van Fleet作出)が、たくさんのつぼみをつけて、以前の庭にあった頃と変わりない姿で咲き誇りました。 春、我が家で最後に咲き始めるのは、ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ(別名:ツクシイバラ)(Sp)。暖地を好むバラなので、西日が当たる明るく暖かい場所に植栽しました。 バラ開花後の最初の作業「花がら摘みと剪定」 1枝に何輪か咲いたバラも、花がらを徐々に取り除き、最後の1輪もそろそろ取り除く時期となりました。 5枚葉の上で枝を剪定しておけば、四季咲き性のバラは、そこから芽を伸ばし、二番花を咲かせてくれます。 2021年の春を振り返って 今年は、とにかく冬~春にかけて高温の日が多く、バラは、今までで一番早い開花となりました。その現実に、なかなかこちらの頭や体が付いていけず、困惑の中、バラのシーズンを迎えたように思います。 しかしながら、昨年に続き、新型コロナウイルスの影響で、自由に行動ができない中であっても、バラは花を咲かせ、今年も確実に元気や勇気、癒やしを与えてくれました。 どんな時代、どんな環境でも、気高く咲いて、優しく微笑みかけてくれる存在。改めて、バラという植物の偉大さを見つめ直した今年の春だったかと思います。ちなみに、今年の春の私の庭のバラたちの満開日は、5月12~14日であったように思います。さて来年は、どうなることか、引き続き、バラと共にある暮らしを続けて参ります。 バラの最盛期に開催したバーチャルオープンガーデン 5月12日(水)15時より、神奈川県にある元木はるみさんのバラ咲く庭から中継でオンラインオープンガーデンを開催しました。無農薬~低農薬栽培でバラを育てて、花びらやローズヒップを暮らしに活用している元木さん。仕立て方のテクニックやお気に入りの品種などをご紹介いただきました。また、当日はサンルームにバラのプチパーティーのテーブルセッティングも登場! バラのおもてなしのこだわりも教えていただきました。ぜひ、ご覧ください。 YouTubeライブ配信URLはこちら