たなか・あやか/農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。https://www.roselabo.jp/
田中綾華 -ROSE LABO株式会社代表取締役-
たなか・あやか/農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。https://www.roselabo.jp/
田中綾華 -ROSE LABO株式会社代表取締役-の記事
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ストーリー
[ROSE LABO通信 Vol.6]食べられるバラ新品種「24」の開発と、こだわりが詰まった「ローズリップ美容液」
バラの新品種「24」(トゥエンティーフォー)を開発 皆さん、こんにちは! 田中綾華です。 バラの最盛期真っ最中で農園も賑やかです。そして、選定したバラ(子ども)たちがきれいに開花してくれて、とても嬉しい毎日を過ごしています。 バラ好きの方はご存じだと思いますが、6月2日は「ローズの日」と認定されています。そんなローズの日に、ROSE LABOは、コスメティクスラインの新商品を発表しました! 2年の歳月をかけて開発した「ローズリップ美容液」です。 私たちROSE LABOは、「食べられるバラを通して、24時間、女性そして女性ホルモンを内外サポートし、美しくバラのように開花してもらう」ことをミッションとしています。 バラの花びらには、女性にうれしいビタミンA、ビタミンC、ポリフェノール、そして女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌を促進させるゲラ二オールが豊富に含まれています。このゲラニオールという成分、初めて知る方も多いと思いますが、実はこれがバラの香りの元になる成分なのです! このように、バラには女性にとってうれしい成分がもともと豊富に含まれています。そこで、私たちROSE LABOは、そのバラのパワーを最大限に生かせるよう、コスメティクスラインのためのバラの新品種の開発に着手しました。 バラの品質改良には、平均5年ほどかかり、約5,000パターンもの試作からたった1つだけが生まれるといわれています。とてもとても大変な作業ですが、私は、大分県の師匠・メルヘンローズさんの力もお借りして、コスメティクスラインのための新品種「24」(トゥエンティーフォー)を開発するに至ったのです。 「24」(トゥエンティーフォー)という名前は、ROSE LABOのミッションでもある「世界中の女性、女性ホルモンを24時間バラの力でサポートする」という言葉からインスピレーションを得てつけたものです。そして、同様に、コスメティクスラインのブランド名も「24ROSE」(トゥエンティーフォーローズ)としました。 「24」(トウェンティーフォー)は、バラの中心に向かって白からピンクのグラデーションになっています。とても女性らしい色合いで、上品さと可愛らしさを兼ねそなえたルックスと上品な香りが自慢です! “食べられるバラ”の農家が開発した「ローズリップ美容液」…3つのこだわり 私のモットーは、「いつも笑顔でいること」。だからこそ、私たちが作るリップ美容液で、少しでも多くの方に笑顔になってほしい!幸せな微笑みが似合う素敵な唇であってほしい! そんな願いを込めて、商品開発をスタートしました。 そして、冒頭でも触れたように、2年に及ぶ商品開発の日々を経て、やっとこのたびお披露目することができました。溢れるほどのこだわりがたくさん詰まっている商品なのですが、ここでは大きく分けて、3つのこだわりをご紹介します。 1つ目のこだわり:天然由来成分100%であること&8つのフリー成分 「実は女性は、生涯を通じて10本もの口紅を食べている」という記事を読んだことがあり、とても驚いたことを今でも鮮明に覚えています。 “食べられるバラ”をご提供している私たちだからこそ、お口まわりのケアには安心してご使用いただけるものを、と思い、8つの成分(パラベン、 鉱物油、香料、タール色素、アルコール、石油系界面活性剤、紫外線吸収剤、フェノキシエタノール)をフリーにし、かつ天然由来成分100%にこだわりました。この「天然由来成分100%」…これを実現するために、2年間という歳月を費やしたといっても過言ではありません。なぜかというと…次の項目でご紹介します! 2つ目のこだわり:厚みのあるテクスチャー 前述した「天然由来成分100%」のこだわりですが、実は、テクスチャーの粘度を上げることとの両立がとても難しかったのです。「ナチュラルな処方、成分は絶対譲れないけど…効果もしっかりと体感できなきゃ使ってくださる皆さんを笑顔にできない!」と何度も何度も試作を重ね、美容液自体に厚みを持たせることが可能な天然由来成分のヒマワリ油や大豆油、トウモロコシ油を配合しました。 また、ヒアルロン酸や蜂蜜、そして新品種「24」(トゥエンティーフォー)のバラのエキス、ローズ水もたっぷりと配合しました。 その結果、ベタつかないのに、「ポテッ」と厚みのある、縦ジワのないつややかな唇に導いてくれる、自信を持てる商品に仕上がりました! 何度も無理を言って、2年間ずっと改良にとことん付き合ってくれた製造元さんと、ROSE LABO商品開発部のメンバーには本当に感謝しかありません! 3つ目のこだわり:アプリケーター(チップ) 唇と実際に触れ合うチップは、使い心地を左右するので、その素材や仕様にもとことんこだわりました。 使っていただく方のライフスタイルを想像しながら…仕事、家事、子育てに忙しい方でもパパっと、なめらかに、そしてスムーズに塗布できるように工夫しています。 チップ自体のしなりが唇にとてもフィットするので、どんな角度からでも気軽に塗れて、時短にもなります! また、リップ美容液の色もクリアピンクに仕上げたので、唇本来の色を美しく見せてくれて、メイクの上からでも使えます。 寝る前に唇に塗布するのもオススメです。私は、取材の前日には必ずこのリップ美容液を就寝前につけて、さらに当日の朝は、リップ美容液をつけた上からラップをして縦ジワを解消してから、撮影に臨んでいます。ほど良いツヤ感も自慢の一つです。 私たちは自社で商品開発を行っているので、完成品をいち早く試せるのですが、実際に使っていて、この成分やテクスチャーであれば、女性はもちろんのこと、男性やお子さまでも、どなたにでも安心して使っていただけるリップ美容液になったと実感しています! ROSE LABOをもっと知っていただく機会を増やしたい! ROSE LABOでは、今後も皆さんに喜んでいただける商品開発を行っていきます。と同時に、「一人でもたくさんの方が美しく、健やかに、バラのように開花するお手伝いをしたい」という想いを込めて、バラの栽培に取り組んでいる様子なども発信していく予定です。 また、秋には新たにコスメティクスラインでの新作発表、そして加工食品のお披露目会も行う予定です。 さらに新しい試みとしては、私たち農家は皆さんと直接触れ合う機会が少ないので、毎月皆さんに直接お会いすることができるワークショップを始めました。そこでは、私が皆さんの前に立って、食べられるバラの栽培方法や、バラが持つ力、女性ホルモンとの付き合い方、バラを使ったオリジナル化粧水作りなど、体験を通してバラの素晴らしさを、皆さんと一緒に楽しみながらお伝えしています。 ワークショップは、現時点ではまだ東京でしか実施していないのですが、全国のバラ好きの皆さん、そして農業に興味のある皆さんにどんどんお会いしたいので、いつかは47都道府県で開催することが夢です。 今後も、ROSE LABOの事業や商品を通して、皆さんにもっと「24時間バラのある生活」を過ごしていただけるよう、いろいろなアイデアやアイテムを生み出し続けていきたいと思います! Credit 文/田中 綾華(たなか あやか) ROSE LABO株式会社代表取締役。 農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。 https://www.roselabo.com https://www.roselabo.jp/ 併せて読みたい ・リップクリームを手作り! ミツロウと植物オイルを使って5分で完成 <簡単アロマレシピ> ・[ROSE LABO通信Vol.4]美しすぎるバラのスイーツが誕生!「花のババロア」とROSE LABOがコラボ ・[ROSE LABO通信Vol.5]まだまだ夢の途中! 若き経営者2人が考えるエディブルフラワーの未来
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[ROSE LABO通信Vol.5]まだまだ夢の途中! 若き経営者2人が考えるエディブルフラワーの未来
エディブルフラワーをもっと身近な存在にしたい 田中:井田さんが『花のババロア』を開発されたのは、エディブルフラワー産業を発展させたいという気持ちから、というのを前回の対談で伺いました。実際、国内のエディブルフラワー農家さんも最近では増加の一途をたどっています。仲間が増えるのは、私にとってとても心強いことです。 井田:食べられる花を商品に取り入れさせていただいている弊社にとっても、それは本当に嬉しいことです。今後、エディブルフラワー農家がさらに増えていくにあたって何が必要だと思われますか? 田中:まず第一に、エディブルフラワーは無農薬、オーガニックが基準で、栽培そのものが難しいので、そのハードルを乗り越えられるかだと思います。あとは、もともと他の作物の栽培を安定的にされていて、あえて難しいエディブルフラワーにチャレンジする必要がないという農家さんも多いと思いますので、エディブルフラワーのニーズや認知度が世の中でもっと高まったら、栽培しようという方もさらに増えるのではないでしょうか。 井田:僕たちの作るスイーツなどで、エディブルフラワーがもっと人気になれば、エディブルフラワー産業の盛り上がりに貢献できるかもしれないですよね。 田中:はい。今でこそエディブルフラワーの存在がだんだん認知されてきましたが、 私が起業した2015年ごろは、花が食べられるということの認知度がとても低くて。でも今は確実に認知度が上がっていますし、今後ももっと高くなると思うんです。そうしたら、必然的にエディブルフラワーに興味を持たれる農家さんがさらに増えていくと思っています。 井田:そして、農家さんが増えると、食べられる花がもっと身近な存在になりますよね。もしかしたら、野菜を買うように、スーパーでもエディブルフラワーが気軽に買えるようになるかもしれない。 田中:エディブルフラワーを取り扱うスーパーは増えてはいるものの、まだまだ多くはありません。これからは、野菜を買うように食べられるお花を買う、そういう世界をつくれたらいいなと思いますし、そうなるんだろうなという、なんとなくの予感もあるんですよね。 井田:ローズラボさんでは、通年で生のバラに挑戦していくような、今後の展望などはありますか? 田中:私のところはハウス栽培で温度が保てるので、4月から11月くらいまでバラが咲いています。ガーデンで栽培するより、だいぶ長く咲かせられるんですよね。それでも、冬はやはり出荷ができません。暖房をつければ通年栽培ができるんですけれども、重油代が高くてコストがかかりすぎてしまって。クリスマスやホワイトデー、バラの需要がありそうな時期に出荷できるようにするためにも、いつかは通年栽培にもトライできればと思います。そのためには、重油というよりは地中熱など、限りある資源を使わずに済むエコな方法で、温かさを保てればいいなと思っています。 井田・田中:ぜひ、力を合わせて実現させていきましょう! お互いまだまだ夢の途中… 田中:「バラは女性の美容と健康にすごくいい」ということを、もっと知ってもらうことも、認知度や人気をアップさせるためには有効かもしれません。 井田:キレイなだけじゃなく、その栄養価にも注目してもらいたいですよね。 田中:私も、バラが“女性のためのお花”といわれている理由を、このビジネスを始めてからきちんと理解したので、まだまだ世の女性の皆さんには知られていないのではと思っています。バラは3,000〜4,000年も前からあったといわれていて、品種の数も3〜4万はあるんです。こんなにも長い間、女性に愛され続けてきて、バラがお花の中で“女王”と呼ばれているのは、「美しいから」という理由だけだけではなく、美容にいい成分が入っているからなのかもしれないな、と思います。昔の女性たちは、もしかしたら肌感覚でその効果を感じていたのかもしれないって。そんなバラのベネフィットを、もっと知ってもらえると、さらに食べられる花の人気が高まると思います。 バラの効能については、「美にも健康にも嬉しい…食べられるバラの魅力と栽培方法[ROSE LABO通信Vol.2]」で話しているので、ぜひ読んでみてください。 井田:もっとたくさんの方にエディブルフラワーを食べていただけるよう、僕たちの業界も努力しないといけない部分があって。今は、『花のババロア』は関東だけしか配送をしていないんです。冷凍してしまうと、どうしてもプルプル感が損なわれてしまうんですよね。でも、いまも研究と技術開発が進んでいますし、いつかは全国に届けられるような花のスイーツを作れたらいいなと思っています。 田中:お互い、まだまだ叶えたい夢がありますね。 RLPにも実現したい夢が!? 田中:コラボブランドの「RLP」でも、じつは私、夢を持っていて。このコラボを、毎年シリーズ化できたらいいなと思っています。 井田:そうなんですか! いま初めて聞きました(笑)。 田中:化粧品が、毎年クリスマスのシーズンなどの“コフレ”を出すように、RLPも決まった時期にコラボ商品をリリースしたいんです。化粧品のコフレって、ファンにとってはとても楽しみなものです。「今年はどんなデザインだろう? 何が入っているんだろう?」と、発売時期になると、すごくワクワクしますし、発売日を指折り数えて待つ方もいらっしゃると思います。RLPも、そんな存在であってほしいな…と。「そろそろRLPの季節だ! 今年のバラはどんな色だろう」とか、「今年も朝から並んじゃうよ」みたいな(笑)。 井田:はい、頑張ります(笑)。 田中:ぜひよろしくお願いします! 最後に私たちから伝えたいこと 田中:Garden Storyの読者さんは、もともとお花が好きだったり庭づくりが趣味だったりという、素晴らしい感性をお持ちの方ばかりだと思いますので、このRLP は絶対お好みに合うと信じています。それに、ビジュアルが美しいだけじゃなく、味も本当においしいんですよ! 井田:じつは、RLP をやらせていただいたことがきっかけで、既存の商品も一緒に味を見直して、全て新しくしたんです。さらにおいしくなったと自負しています。田中さんのバラもですが、弊社もこの規模にしては珍しく、全工程が手作業なんです。 田中:本当にすごいですよね。 井田:せっかく田中さんからいただいた大切なバラなので、一輪一輪を大切に、妥協することなく美味しくお客さまに食べていただきたくて。それに、生産性は悪いですが、手作業で行ったほうが伝わるものがあると思うんです。 田中:おいしく食べていただきながら、私たちがそれぞれ、バラづくりに込めた思い、お菓子づくりに込めた思いも感じていただけると嬉しいですね。 2回にわたり、若き経営者お2人の対談をお届けしました。RLPによる“食べられるバラのスイーツ”のシリーズ化、ぜひ期待したいですね。 併せて読みたい ・美しすぎるバラのスイーツが誕生!「花のババロア」とROSE LABOがコラボ[ROSE LABO通信Vol.4] ・食べられるバラの栽培地レポートを埼玉県深谷市よりお届け! [ROSE LABO通信 Vol.3] ・夢を持てない少女が“食べられるバラ”農園の若き経営者になるまで[ROSE LABO通信 Vol.1] Credit ●田中 綾華(たなか あやか) ROSE LABO株式会社代表取締役。 農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。 https://www.roselabo.com https://www.roselabo.jp/ ●井田 大輔(いだ だいすけ) 株式会社バルニバービイートライズ代表取締役社長。 パティスリードパラディのスイーツ販売をメインに、エディブルフラワーを使ったババロア専門店「花のババロア」などを展開する。「PARADIS 小石川本店」「PARADIS トウキョウミタス店」「ARINCO TOKYO STATION」など8店舗を運営。 https://www.hana-no-babaroa.com 文/徳永 幸子(とくなが さちこ) 人物写真/3 and garden
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[ROSE LABO通信Vol.4]美しすぎるバラのスイーツが誕生!「花のババロア」とROSE LABOがコラボ
“大切にしているもの”が同じだから、最初から意気投合 田中: 今回、井田さんとコラボスイーツを作ることができてとっても嬉しいのですが、井田さんがエディブルフラワーを知ったのは、いつなのでしょうか? 井田: 20代の頃、レストランでエディブルフラワーを初めて目にしました。ステキだなと思い、いつか「食べられる花をスイーツに生かせないか」という気持ちが芽生えたんです。その後、エディブルフラワーを作る農家の方が、とても苦労してお花を育てていらっしゃることも知り、「一緒にエディブルフラワーの市場規模を大きくしたい!」という思いを持つようになりました。 田中: ステキな思いを持って、エディブルフラワーを使ったスイーツのお仕事に携わるようになったのですね。 高品質のエディブルフラワー農家さんがたくさん存在している中で、ROSELABOにお声をかけていただいたのはどうしてですか? 井田: 「エディブルフラワーの中で、どの花がいちばんキレイなのかなぁ」と考えたときに、僕の中ではやっぱり“バラ”だったんですよね。それで、食べられるバラを作っている農家さんを探したら、すごく少なくて。エディブルフラワーの中でもバラの栽培は難しいため、生産者さんも限られていることを知りました。 田中: そうなんですよね。農薬を使わずにバラを育てるのはとても難しいんです。やっと最近、少し増えてきましたけれど、私が事業をスタートした2015年当時は、日本で10あるかないかでした。そんな中、弊社を選んでくださった理由は何でしょうか? 井田: “思い”じゃないでしょうか、やっぱり。僕自身、どこかと手を組むとき、そこの企業の力というよりは、“背景”を重視しています。パートナーとして長く続けられるかどうかは、その会社がどんな思いを持って仕事をしているかが大切だと思っているので。ROSE LABOのホームページや、田中さんのインタビューが載っている記事をたくさん読んで、多分たくさんの苦労をしてこの事業をやられているのだろうなと思いましたし、バラへの思いが強いことが伝わってきたので、「ぜひ一緒に仕事がしたい…いやするんだ!」と心に決めたんです。 田中: ありがとうございます。私、井田さんに初めてお会いした日のことを、今でもはっきり覚えてますよ。最初からすごくフィーリングが合いましたし、なにより私が会社のホームページやブランドブックに書いている思い、“なんで私がやらなくてはならないのか”とか、どういうこだわりをもってバラを栽培しているのかなどを、井田さんがしっかり汲み取ってくださっていて。だから、「ぜひやらせてください!」って思えたんです。 井田: 最初から受け入れていただいて、ありがたいです。 田中: いやいや、こちらこそありがたいです(笑)。井田さんの手がけるブランド『PARADIS』のスイーツも、パティシエさんが一つひとつ手作りされている。私たちも、手作りでバラを栽培している。お互い“手作り”という愛情の部分が同じなので、すごくマッチしていますよね。私たちはパティシエさんみたいに素晴らしいケーキを作ることはできないし、井田さん側ではバラの栽培は難しい。だからこそ、お互いのないところを補い合って、長所と長所を掛け合わせれば、最強のものが作れるんじゃないか、商品を通してお客さまに感謝の気持ちや思いを伝えられると思ったんです。 井田: やっていることは違えど、エディブルフラワー界を盛り上げたい、いい商品を丁寧に作りたいといった“思い”は同じ2人ですからね。いまだから言いますが、お話を持っていく前から、絶対OKをいただけると思っていましたよ。 田中: さすがです!(笑) いくつもの意味が込められた“RLP(アールエルピー)”というブランド名 田中: 井田さんが考えてくださった、『RLP』というブランド名は、<Relation つながり><Love 愛情><Passion 情熱>という、私たちがお互いに大切にしているものが全部盛り込まれていて、本当に素晴らしいネーミングですよね。 井田: 気に入っていただけて嬉しいです。「ROSELABOにふさわしい名前ってなんだろう」というところからスタートして、「絶対に私たちの思いをかけ合わせた名前がいいな」と思い、アイデアを出していったので。 田中: しかも、最初の2つの頭文字“RL” がROSE LABO、最後のPが『PARADIS』のPと、お互いの会社の頭文字でもあるっていうのが、これまたすごい。で、「最高の名前じゃないですか!」って言ったら…、「いやいやいや、まだまだあるんですよ」っておっしゃって、『星の王子さま』を机にボーン!って置いて…。 井田: “Rose of Little Prince”つまり、“星の王子さまのバラ”という意味でもあるんですよ、ってね。 田中: 思わず「よ、さすが!」って言いましたね(笑)。 井田: 弊社の目の前に本屋さんがあるのですが、たまたまそこで『星の王子さま』が目に入って、もう1回読み返してみたんですよ。あの本って、読む人それぞれの年齢や立場などで捉え方が変わりますよね。そのとき本当に大切なものが何かっていうのを教えてくれる本だと思うんです。それに、あのお話に出てくるバラは、王子さまがバラのためにかけた時間や手間があるからこそ特別なバラになる。「あ、これはRLPという名前にマッチする」と思ったんですよね。 田中: そんな本が、たまたま目に入るって、すごいですよね! 井田: 僕、なんか引きがあるんですよね(笑)。 田中: こんな素敵な名前をつけていただいて、単なるコラボ商品というだけではなく、しっかり大切に育てたいブランドだと井田さんも思ってくださっているのかなと思いましたね。 井田: もちろんです! 何回も試行錯誤を重ねて商品が完成 田中: コラボさせていただくことが決まってから、本当に何回も何回も、試作品をいただきましたよね。 井田: けっこうな数を提案しましたよね(笑)。何個くらいサンプルを作ったのかな〜? 数え切れないほどですね。 田中: 毎回「すごくいいじゃないですか!」って言うのですが、でもまた新しい試作品が上がってきて…。 井田: 田中さんがすごく褒めてくださるので、「あ、これで大丈夫かな」って、途中で僕も分からなくなっちゃって…。1回もNOとは言われなかったですもんね。 田中: だって、どのサンプルも全部良かったので。何がダメなのか、本当に分からなかったです。 井田: こだわったのは、見え方です。バラ自体がしっかりキレイに見えているか、多くの方に食べていただけるか、そこをいつも気にしていました。なので、最初は大きなバラ一輪をまるまる入れて作ってみたりもしました。でも、より多くの方に食べていただきたいと考えたとき、正直食べにくいから、ちょっと違うなと思いまして…。まあ、作らせたのは僕なんですけど(笑)。 田中: 切るのも難しかったですね(笑)。ただ、一輪まるごと入ったものは、見た目が本当に美しかったですよね。そうやって作っていただいた試作品は、1回目より2回目のほうが、2回目より3回目のほうがやはり良くて、「これ、どこまで良くなるんだろう?」って思っていましたもん(笑)。 井田: そんなふうに思われていたとは(笑)。最後、完成形ができたときも、すごく褒めていただいて。 田中: そう、最後の作品を見たとき…もはや商品というよりは作品だと思っていましたが、最後の作品は満場一致で、みんなが「美しい!」って言いましたよね。「井田さんが求めていたものは、これなんだ」って、すごく腑に落ちました。バラの見え方や立体感が素晴らしくて、ただ入れりゃいいってもんじゃないんだなって。 井田: そう言っていただけると、何回も試行錯誤したかいがあります。 田中: 私たちはバラの品質を追い求める。そこで妥協はしません。例えば他の人がB 品やC 品でいいと言っても、私たちは全部A品を作っていくぞと思っています。井田さんがスイーツを作る時もきっと同じで、他人が「いいじゃないですか」と言ったとしても、井田さんご自身が納得できなかったら商品化しないんでしょうね。他の人からは見えない景色が見えているんだと思います。でもそれって、すごく大切なことですよね。そうやって、お互いの最高品質をぶつけ合ってできたのが、このRLPですね。 高級な“食べられるバラ”を、もっと身近に楽しんでほしい 田中: 私は、食べられるバラを通して、世界中の女性を美しく健康で幸せにしたい。これは創業当時から、ずっと掲げている理念です。でも、今まで弊社には生の製品がなくて、バラの花びらを飲食店さんに納品するだけでした。それも、一人1万円以上のコースのデザートにバラの花びらが乗っている…といった感じのレストランなので、多くの方に食べていただくとのは難しかったんです。ですので、今回のコラボで、これまで食べられるバラにトライしたかったけれど機会がなかったという方にもお届けすることができて、とても嬉しく思っています。 井田: 僕も、バラというちょっと高価な花を、より多くの方に身近に感じていただけるといいなぁと思って商品開発を進めたので、このRLPでたくさんの方にバラの良さをお届けしたいですね。あと、僕は男なので…男性目線で語ると、女性への贈り物など特別なシーンで使っていただけたらいいなと思います。見た瞬間、きっとその美しさに驚いてもらえると思うので! 田中: 絶対、贈り物にしたら女性に喜ばれると思いますよ〜。少しでも多くの方に、この商品を通してワクワクする気持ち、高揚感を味わっていただきたいですね。 今回は、ブランドや商品にかける思いをご紹介しました。次回は、若き経営者2人が考えるエディブルフラワーの未来について語っていただきます。お楽しみに! 併せて読みたい ・知っておきたい! 流行中の薔薇トレンドとオススメ品種10選 ・美にも健康にも嬉しい…食べられるバラの魅力と栽培方法[ROSE LABO通信 Vol.2] ・夢を持てない少女が“食べられるバラ”農園の若き経営者になるまで[ROSE LABO通信 Vol.1] Credit ●田中 綾華(たなか あやか) ROSE LABO株式会社代表取締役。 農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000㎡)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。 https://www.roselabo.com https://www.roselabo.jp/ ●井田 大輔(いだ だいすけ) 株式会社バルニバービイートライズ代表取締役社長。 パティスリードパラディのスイーツ販売をメインに、エディブルフラワーを使ったババロア専門店「花のババロア」などを展開する。「PARADIS 小石川本店」「PARADIS トウキョウミタス店」「ARINCO TOKYO STATION」など8店舗を運営。 https://www.hana-no-babaroa.com 文/徳永 幸子(とくなが さちこ) 人物写真/3 and garden 「Garden Story」LINE@の友だち追加はこちらから!
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[ROSE LABO通信 Vol.3]食べられるバラの栽培地レポートを埼玉県深谷市よりお届け!
なぜ埼玉県の深谷市? 深谷とROSE LABOの関係性 まずは、なぜ栽培地に深谷市を選んだのか、その経緯などをご紹介します。 バラを育てるにあたって深谷市を選んだ理由 バラは、一日の平均温度を足し算して1,000℃になったら1輪咲くという性質を持っています。お花屋さんなどで見る観賞用のバラを育てる農家さんは、冷房の効く環境で育てていることが多いのですが、私たちはあえて暑い環境の中で育てます。なぜなら、平均温度が高いほどバラはエネルギーをたくさん使って早く咲き、そうすると茎が細く、そして夏場には花弁が小ぶりになります。これが食用バラには最適だからです。 暖かい…いや、むしろ夏は暑すぎるくらいに暑くなる埼玉県深谷市は、食用バラを栽培するのに最適な地というわけなのです。 また、深谷市は「花のまち深谷」と呼ばれていたり(詳細についてはこの後ご紹介します!)、高速道路の出口が「花園インター」だったり…と、個人的に運命を感じてしまったのも大きな理由です(笑)。 食用バラの栽培方法は… そんな理由で選んだ深谷市で、私たちは全ての食用バラをビニールハウスの中で、“農薬”と“土”を使用せずに栽培しています。 防草シートを周辺に敷き、除草剤(農薬)は使用しません。なので、夏場は特にハウス周辺の雑草抜きが大変です! そして、ビニールハウスは散乱光のシートで作ってもらっています。バラは光合成で成長するため、日光が少しでも多く当たることが重要だからです。 ROSE LABO栽培地の一日 バラ農家で働く人の一日って、なかなか想像できないと思いますので、ご紹介しますね。 一番忙しい夏場の場合・・・ ○起床 5:00 バラは夜にデンプンを貯め込むので、日が昇るタイミングがいちばん香りが高いといわれています。 お客さまに少しでも香り高いバラを楽しんでいただくため、朝は太陽とともに起床します。 ○作業 6:00~8:00 上記の理由から、まずすぐにバラを摘みます(摘んだらすぐに涼しい作業所へ運び、茎を水へつけるメンバーに渡します)! そして摘む作業と同時に、葉の表面の色みや、裏に虫がついていないかなどのチェックも並行して行います。また、通年“うどんこ病”にならないように細心の注意を払い、少しの変化も見逃さないようにしています。 ○朝食 8:30~9:30 体力勝負なので、炭水化物と塩分が欠かせません。夕食は美容のために(!)炭水化物は少なめにしていますが、朝はしっかりと食べます。炭水化物と塩分を一緒に摂ることができる“梅のおにぎり”は、朝ごはんの必需品です!! また、太陽が高い時間帯にハウス内で作業をすると、熱中症になる恐れがあるので、休憩後は選別や発送作業を行います。 ○休憩 9:30~13:00 お手伝いしてくれているスタッフには、子育て中のママさんや副業の人もいるので、皆さん帰宅して家事や仕事をするなど、自由に過ごします。 ○作業 13:00~15:30 朝摘みのバラの花弁を1枚ずつばらし、選別して受注分のバラを発送します。 選別は、1の花びらに対して2名で行い、1枚ずつ傷がないか、虫がいないかを目で確認し、念のために筆でも払います。慎重に、そして最高の状態で、バラを発送しています。 ○作業 16:00~17:30 栽培地に戻り、剪定作業やハウスの掃除などを行います。 ○あがり 17:30 ○就寝 21:00 朝が早いので、就寝時はもうクタクタ…。早めに寝て、明朝に備えます! バラづくりスタッフにインタビュー! ROSE LABOのバラづくりを手伝ってくれている皆さんの声を聞いてみました! ●松本喜宏さん Q:ROSE LABOとの出会いは? 松本さん:そもそも私が所属している会社でバラを育てていたのですが、その中で田中代表と代表のお母さんが「バラを育てることができる場所を深谷で探している」ということを知り、一緒に“食べられるバラ”を育てる事業をスタートしました。 Q:代表・田中の最初の印象はどうでしたか?(笑) 松本さん:最初はとても若い女の子でびっくりしましたね。でもROSE LABOの事業内容や、その目標、そして何よりも、若いのに持っている代表としてのキャパの広さ、ポジティブで前向きな姿勢がとても魅力的だと思いました。だから事業としてだけでなく個人的にもすごく協力したいという気持ちになる。おそらくROSE LABOで働きたいと思って集まった皆が、同じように感じていると思います。 Q:今後のROSE LABOの展望はいかがでしょうか? 松本さん:代表がずっと言っているように、“無農薬でバラを育てる”という栽培方法は確立はしているけれども、まだまだもっとできることがあるんじゃないのかなとも思っています。無農薬でバラを育てることは不可能だとずっと言われてきた中、ROSE LABOは病気や虫に日々気を付けながら、栽培を実現しました。その栽培方法の精度を上げれば、バラ以外の農業にも生かせるんじゃないでしょうか。そうすれば、埼玉、ひいては日本の農業の可能性をROSE LABOが広げていけるのではないかと思います! ●本田由紀さん Q:ROSE LABOとの出会いは? 本田さん:ROSE LABOを手伝っている友達がいたことが、最初のきっかけです。はじめは「とっても可愛い若い女の子がいるな~」くらいの感じで見ていました。やがて「食べられるバラを始めたんだよ」という話を聞き、そうこうしているうちにどんどん盛況になっていき、手伝ってほしいという話が来たんです。ROSE LABOで初めて、バラを育てるという機会をもらいました。 Q:バラを育てる立場に立ってみて、大変だなという点と、うれしいと感じる点は? 本田さん:大変だなという点は、やはり農薬を使っていないがために持ち上がる課題に、その都度対処していかなければならないところです。うれしいなと感じるのは、咲きたてのバラを目にする時。ここに来るだけでテンションが上がり、「やってよかったな」って感じます。 Q:栽培地にはなかなか来られないお客さまに、どのようにここの魅力を伝えたいですか? 本田さん:ROSE LABOで心を込めて作り、販売している加工食品やコスメなどの商品を開けたときに、ハウスに入ったときに感じる“バラの香りに包まれる”感覚を、ぜひ感じていただきたいですね。 Q:ROSE LABOを通してお客さまに伝えたい想いは? たまにちょっと高価なものを食べたりすると、人ってとても豊かな気持ちになりますよね? 食べられるバラには、そんな気持ちにさせてくれる魅力があると思います。せっかく体にとても良い成分が入っているバラですので、ROSE LABOの商品をどの世代の女性にも気軽に手に取っていただき、心も体も満たしていただけたらいいなと思っています。 栽培地での社員研修の様子をレポート 先日、深谷の栽培地に社員全員で赴きました。その目的は、初の社員研修! 社員が増えたこともあり行ったのですが、“初深谷”を体験するメンバーがほとんどでした。農業経験者は、私と、九州出身のもう一人のみで、その他のメンバーは花を育てているハウスに入ったこともありません…。農業を始めたころの初々しい自分の姿が、走馬灯のように蘇りました(笑)。 研修の日に行った作業は、‘ルージュ・ロワイヤル’という名のバラの剪定と、枯れて落ちてしまった葉や枝の除去でした。 農薬を使わず栽培しているため、虫や菌などがハウス内に混入しないよう、常日頃からとても気をつかっています。 研修当日も、下の写真にあるように、全員防護服を着用、そして作業用の長靴を履いてスタートしました。 全メンバー、最初は恐る恐る剪定バサミを使っていましたが、そのうち慣れてきたのか、どんどんスピードアップ! 作業も夕方前には終わっていました。 ROSE LABOの“食べられるバラ”が、どこでどのように栽培されているのか、身をもって体験することは、社員として大変貴重な経験です。これからもできるだけ深谷に赴き、栽培体験を通して、その大変さを学んでもらい、そして農業の未来に能動的に関わっていこうというマインドを育てていければと思っています。 「食べられるバラ」栽培を通して深谷市を盛り上げていきたい! 深谷市は前述の通り、「花のまち深谷」と呼ばれています。例えば、チューリップについては、年間で約1.5万本、約120種類を生産していて、その生産高は日本一を誇っています。 “深谷ネギ”だけではなく“深谷ゆり”もあるなど、深谷は本当にお花の街なのです! 私たちが育てている“食べられるバラ”を通して、深谷の空気の良いところ、優しい人が多いところ(完全主観です…)、そして「深谷はお花の街だ!」ということをPRできればと思っています。 また、日々ていねいに良い作物を育てて、ROSE LABOとしてのブランディングをしっかり行い、ブランド農家のロールモデルになって、深谷市から埼玉県へ、埼玉県から世界へ…と、日本を代表する作物を発信していきたいと思っています。まずは、小さなことからコツコツと邁進していきます! 併せて読みたい ・夢を持てない少女が“食べられるバラ”農園の若き経営者になるまで[ROSE LABO通信 Vol.1] ・美にも健康にも嬉しい…食べられるバラの魅力と栽培方法[ROSE LABO通信 Vol.2] ・バラの花言葉を色ごとに紹介! 花屋では売っていないバラを育ててプレゼントしよう Credit 文/田中 綾華(たなか あやか) ROSE LABO株式会社代表取締役。 農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。 https://www.roselabo.com https://www.roselabo.jp 「Garden Story」LINE@の友だち追加はこちらから!
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[ROSE LABO通信 Vol.2]美にも健康にも嬉しい…食べられるバラの魅力と栽培方法
私の世界を広げてくれた“食べられるバラ”との出合い 皆さん、こんにちは! ROSE LABOの田中綾華です。 私が食べられるバラに出合ったのは19歳の頃でした。リビングルームでの母との他愛もない会話の中で、「バラって食べられるんだって」ということを聞き、食べられるバラの存在を知りました。 私にとってバラは幼少期から身近な存在で(詳細については、ぜひ連載第1回目の「夢を持てない少女が“食べられるバラ”農園の若き経営者になるまで[ROSE LABO通信 Vol.1]」をチェックしてみてください!)、そのバラが食べられるという事実に衝撃を感じました。 それと同時に「食べられるバラってなんておもしろいんだろう!」「バラを食べるなんてロマンティックで素敵だなぁ…」「私もバラを食べてみたい!」と思ったのです。当時、夢や目標もなく、劣等感ばかり抱いていた自分の中に、一気に新たな世界が広がり、高揚感と驚きで胸がいっぱいになったのを覚えています。 そのときの情熱を胸に、大学を中退し、22歳で“食べられるバラ農園”経営者として独立しました。そのあたりの経緯も、[ROSE LABO通信Vol.1]をご覧ください。 ROSE LABOの「食べられるバラ」ってどうやって栽培しているの? 土と農薬を一切使わない 一般的には「バラ=観賞用」と思われる方が多いと思います。でも私たちが育てるのは“食べられるバラ”。お客さまに安心して召し上がっていただけるバラを…、と考えてたどり着いたのが、“ビニールハウスの中で、土と農薬を一切使用せずに育てる”という栽培方法でした。 土ではなく、“ロックウール”と呼ばれるスポンジのようなものを土台にして、そこにバラの根を活着させるのですが、そうすると、バラは土と勘違いしてロックウールに根を生やすのです。 農薬を使用しないという選択は、日々、虫や病気と戦うということでもあります。いったん、ビニールハウスの中で病虫害が発生すると、全滅してしまう恐れもあるので、食用ではない切り花のバラづくりでは通常、農薬を使用して栽培します。でも私たちのバラは「食べる」ことを目的としているので、口に入っても安全なように“クエン酸”や“お酢”などを使用して病虫害対策をしています。 他にも、ビニールハウスに入る時には靴をハウス専用の長靴に履き替えたり、アブラムシは黄色に反応するので黄色い虫取りシートを吊るしたり…と地道な努力を欠かさず行っています。 特に、葉がまるでうどん粉をふりかけたように白く覆われてしまう「うどんこ病」は強敵。これを防ぐために、葉に水をかけたりするのですが、この作業は早朝に行わないと葉が乾かずに湿度が高くなり、よけいに病気が発生してしまうので要注意! いろいろと工夫が必要なこの栽培方法について、切り花農家さん(観賞用のバラを育てている農家)にお話しすると、とても驚かれます。 花びら重視!「可能性残し」の技とは… また、私たちは蕾が小さいうちにピンチ(枝先をつまむこと)をしません。背丈がどんどんのびていきますが、その分たくさん蕾をつけてくれるのです。社内ではこの方法を「可能性残し」と呼んでいます(笑)。 皆さんがお花屋さんで見かけるバラはアレンジメント用なので、枝が太くて長く、まっすぐで、葉っぱも緑色だと思います。しかし、私たちが「可能性残し」栽培をしたバラの枝は細く、曲がってしまっていることも多く、これも切り花農家さんに驚かれることの一つです。 私たちがこの方法をとる理由は、“花びら”重視のため。食用のバラでは花びらを効率的に生産することが重要なのです。ピンチをしたり、根元から切ると、バラの開花スピードは遅くなり、開花回数も減ってしまいます。花びらしか使わないのに(必要とされていないのに)、枝や葉っぱまで完璧にしようとすると原価の高いバラになってしまうのです。すると、お客さまにとってお求めにくい価格になってしまう…そういう理由もあり、この「可能性残し」栽培を取り入れています。 私たちにとって大切なのは、お客さまの笑顔、幸せ、そしてニーズ。高品質のバラを少しでも低価格でお客さまに提供することが、会社としても、生産者としても大切な心構えであり、企業努力だと思っています。 「食べられるバラ」って何がいいの? さて、「バラって食べたら何がいいの? おいしいの?」と疑問に思われる方も多いと思います。私も最初は単純に「ロマンティックだな〜」「なんかお姫さまみたいだな〜」と思っていました。しかしバラには、あの凛とした美しいルックスや、華やかな香り以外にも、食べることによって得られる嬉しいパワーがあるのです! 実際に私たちが育てているバラを第三者機関で調べたところ、花びらにはビタミンAやビタミンCなどのビタミン群や、ポリフェノール、食物繊維など、美容に嬉しい栄養素が含まれていることが分かりました。 「野菜と同じように、バラを食べることによって、美しく健康になることが当たり前の未来になってほしい。必ずなるぞ!」 そう思っています。 せっかく美容に嬉しいパワーが満載なのですから、バラ好きの方は、そのルックスや香りだけでなく、味覚もお楽しみいただきたいです。 ちなみに、バラの味はというと…バラです(笑)。というより、バラの香りがしっかりとします。花弁は硬いものや柔らかいものなど品種によってさまざま。エディブルフラワーを召し上がった経験のある方から、「苦いんじゃない?」とよく質問を受けますが、正直なところ品種によっては苦いものもあります。バラも人と同じで、「全く同じ」ということはなく、個性を持っていますので、それぞれの個性を楽しんでいただければと思います。 私たちが育てている ‘ルージュロワイヤル’は、苦味が少なく、その味で人気がある品種です。ROSE LABOのバラを皆さまに召し上がっていただける機会をさらに増やしていく予定ですので、楽しみになさってください! 私たちの商品開発ストーリー 私たちROSE LABOでは、8つの加工食品と3つの化粧品を販売しています。 今回は、中でも一番人気の 「CONFITURE ROSE 」(コンフィチュールローズ)の商品開発秘話をご紹介させていただきます。 ROSE LABOの創業期(約3年前)には、加工食品は販売していませんでした。自分たちの手で愛情を込めて育てた食べられるバラを、飲食店に納品することが主なビジネスモデルでした。ただ、バラが元気よくたくさん咲いてくれたのはとても嬉しかったのですが、当時はエディブルフラワーの認知度も今より低く、また私の営業力が不足しており、大量のバラが余ってしまったのです。 どうしたものかと頭を抱えましたが、毎日愛情を込めて育てた大好きなバラを捨てることなんてできません…。余ったバラは、スタッフやご近所の皆さんに配っていました。 「いつも笑顔でポジティブでいる」ことを心がけていたので、「みんなでバラ風呂だ〜!」などと最初は笑っていたのですが、数日経って冷静になり、「この量だと一日に何回お風呂に入ればいいんだろう…。どうしたらこの子(バラ)たちの命を永らえることができるのだろう」と真剣に考えるように。 そして、「とにかく一緒に働くメンバーを笑顔にしたい!」「このバラを有効に活用したい!」との思いから、バラをジャムにしてスタッフの皆さんにドッキリプレゼントをしたのが、ROSE LABOの加工食品の始まりです。 本来ならば、経営者らしくカッコよく「戦略的に始めました!」と言いたいところなのですが(笑)。実際は、全く戦略的ではなく、バラが好きなあまりにたどり着いた案が、バラの命を長引かせ、バラ好きのスタッフさんたちを喜ばせるバラジャムだったのです。 この「CONFITURE ROSE」(コンフィチュールローズ)は、最高品質を追求して何回もリニューアルをしています。商品には、ヒラヒラと舞うような大輪の花びらを、たっぷり手作業で詰め込んでいます。赤い色は、深紅のバラ”ルージュロワイヤル”と”サムライ”を煮出して付けた色です。また、バラだからこその「食べて美しく」を商品開発のポリシーにしているので、白砂糖は不使用。北海道産の甜菜糖を使っています。 ヨーグルトに入れたり、スコーンに塗ったり、また、紅茶の中に溶かしてロシアンティーとして楽しんでいただくのがオススメです! なお、2019年1月21日より、大宮そごう3階にて全ての商品の常設販売を開始しました! ぜひ遊びにいらしてください。その他、伊勢丹新宿店地下2階のビューティーアポセカリーでも常設販売を行っています。 来月の連載は、栽培研修の様子をレポートさせていただこうと思っています。ぜひチェックしていただけると嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 併せて読みたい ・夢を持てない少女が“食べられるバラ”農園の若き経営者になるまで[ROSE LABO通信 Vol.1] ・バラを育てたい! 初心者さん必見 バラの種類・育て方・病気などを解説 ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸
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[ROSE LABO通信 Vol.1]夢を持てない少女が“食べられるバラ”農園の若き経営者になるまで
ROSE LABOがエディブルローズに込める思い 私たちROSE LABOは、2015年より埼玉県深谷市で“食べられるバラ”の栽培を行っています。飲食店に花びらを納品したり、また、自社の食べられるバラを加工したローズティーやローズジャムなどの食品、石鹸や化粧水などを百貨店やセレクトショップで販売している会社です。 「食べられるバラを通して世界中の人を美しく、健康に、幸せに」 この思いを込めて、毎日丁寧に自分たちの手でバラを育てています。 今回は、私がこの会社を立ち上げるに至った経緯や、バラ栽培にかける思いについてお話ししたいと思います。 “バラ好きの起業家”だった曾祖母の影響を受けて… 実は私の家族に農家はいません。私に影響を与えたのは、バラ好きだった曾祖母です。 私の曾祖母は起業家で、鞄や靴の製造販売を行いながら、一人で7人の子どもを育て上げた、とてもパワフルな女性でした。常に明るく、オシャレで、“自分”を持っていて、カッコよくて…。座右の銘は「自分の人生は自分が主役」! そんな曾祖母のパワーの源がバラだったのです。凛としたバラのルックスから、「薔薇が側にあると強く、美しくなれる」と私に教えてくれました。その言葉の影響と、曾祖母への憧れから、私も幼少期からバラが大好きでした。 でも私は曾祖母とは全く違い、個性や“自分”というものを持っておらず、口癖は「なんでもいい」…。特技や趣味も持たずに成長し、将来の夢や目標もないまま大学へ進学。そこで出会った同級生は、みんな夢や目標をしっかり持っていて、キラキラと輝く彼女たちを横目に、大学生活では常に劣等感を抱いていました。 「このままで私の人生は幸せなのだろうか?」 「今後の人生はどうやって設計すればよいのだろう」 そんな人生の悩みを抱えていた大学1年のある日、母とリビングルームで他愛もない会話をしている中で、「食べられるバラがある」ということを耳にしました。私にとって幼少時代から身近にあったバラだからこそ、とても衝撃を受けたのを覚えています。 「そもそも、誰がバラを食べられないと決めつけたんだろう」 それは自分が生きてきた中で得た経験や知識から生まれた“固定観念”だということに気が付き、その固定観念を消してみることにしました。 同時に、“バラが食べられる”ということに無限の可能性を感じ、「昔から好きだったバラを、しかも“食べられるバラ”を、自分の手で育てたい」と、生まれて初めて自分の夢ができたのです。 1秒でも早く農業の世界へ! と大学を中退 「一度きりの人生、思いっきり楽しもう!」「憧れの曾祖母に近付けるかもしれない」とワクワクする気持ちと同時に湧いてきたのが、とてつもない焦りでした。 農業は、技術や経験がそのまま作物の品質に直結するとても難しい世界で、深い知識と経験が必要だということは分かっていました。 でも自分は、親族にも農家はいないサラリーマン家系の生まれ。東京で育ったので、農家の知り合いもいません。 農業学校で学ばれた方や農家に生まれた方に相当出遅れている、という焦りや不安と戦いながら、「1秒でも早く農業の世界に飛び込まなくては!」と覚悟が決まりました。夢や目標もなくダラダラと過ごしていた毎日との決別です! 思い立ったら、自分でも驚くほどの突破力と行動力が発揮され、20歳で大学を中退。世間体を気にしたり、「せめて卒業してからでも」という声もありましたが、私は、「やりたい」と思ったその時が、最高のパフォーマンスを発揮できる時だと信じていましたので、行動に移しました。今でも、あの時期、直感に従って大学中退の決断をしてよかったと思っています。 常に心のどこかで、「バラ好きな曾祖母が見守ってくれている」という謎の自信があったのも事実です。 大学中退後、頼れるツテもなかったので、バラ農家を自分でネットで検索。やっと見つけた“食べられるバラ”を栽培している農家に泊まり込みで修行に入りました。 そこで基本的なバラ栽培のノウハウや、虫や病気の予防方法などを約1年間かけて勉強させていただき、独立したのが2015年。22歳の時でした。 22歳での挫折、学びを経て… 独立できたのはよかったのですが、その時育て始めたバラたちは日に日に元気がなくなり、最終的にほとんど全てのバラを枯らしてしまいました。たった1年ほど修行をしただけで、私は「立派なバラ農家になれた」と少し天狗になっていたのだと思います。農業の世界や生物を扱うことは想像以上に奥深く、私はまだまだ勉強不足・経験不足でした。今思い返しても本当に悔しくて、バラに対して申し訳ない気持ちでいっぱいです。 バラが枯れてしまった大きな原因は、肥料と灌水回数・量のバランスでした。でもその当時は原因が分からなかったので、毎日「どうしよう」と悩みながらも、朝は栽培をし、日中は都内へ営業に…。とにかく少しでも咲いてくれているバラをお客さまのもとに届けないと生活できない、と必死です。 経費はかさんで毎月赤字が続き、当時のメンバーに内緒で、夜は居酒屋でアルバイトをし、翌月の支払いに充てていくような日々でした。 体にも心にも余裕がないまま半年が過ぎた頃、ふと立ち止まって、「根本的にバラを咲かせないとずっとこのままだ…」とやっと気付いたのです。そして、アグリイノベーション大学校という週末に農業の座学や実習を学べるスクールに通い、ここでやっとバラが咲かなかった原因や、どうしたら咲くのかなどの知識や技術を学ぶことができました。 今、私の農園ではたくさんのバラが元気に咲いています。 余ったバラを生かしてあげたい…たどり着いた商品化の道 バラが元気に咲いてくれたのは本当に嬉しかったのですが、当時は“食用花”の認知がまだまだ少なくて、取り扱いをしてくれる店舗がなかなか見つからず、バラが大量に余ってしまう状況に。でも、自分の手で毎日愛情を込めて育てたバラを捨てることはもちろんできず、家に持ち帰っていました。 「どうしたらこの子(バラ)たちの命を永らえさせてあげられるのだろうか…」。そう考えながら毎日を過ごしていました。 その時、バラを使用したジャムをメンバーに作ってあげたことがきっかけで、バラを加工食品に生かしたらいいのだと気づいたのです。 思い立ったら得意の行動力が再び発揮され、都内のあらゆる店舗に何度も足を運び、食品の流行やパッケージのデザイン、原材料などを研究。そうして、「食べて美しく」をコンセプトとしたバラの加工食品を開発し、商品化が実現しました。白砂糖の代わりに甜菜糖を使用したり、着色料は使わないなど、試行錯誤を重ねたうえで完成した製品です。また「見てワクワクする」という女性ならではの率直な感情も大切にしたいと思い、大きな花びらをそのままたっぷり入れるなど、こだわりと思いを詰め込みました。 現在は百貨店などのギフトカタログや、三越伊勢丹新宿店地下2階ビューティアポセカリーにて常設販売を行っています。ぜひ手にとってみてくださいね。 今回は、私の生い立ちや、なぜ食べられるバラを育て始めたのか、どんな思いで育てているのかなどをお話しさせていただきました。 次回は食べられるバラの魅力についてご紹介したいなと考えておりますので、目を通していただけると嬉しいです! 併せて読みたい ・鉢植えバラの冬のお手入れ「来春よく咲かせる!とっておきの話」 ・花の女王バラを紐解く「チャイナローズ~中国生まれのバラ」 ・サヘル・ローズさんが語るガーデニングライフとバラに託す大きな夢 Credit 文/田中 綾華(たなか あやか) ROSE LABO株式会社代表取締役。 農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。 https://www.roselabo.com