おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-
おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-の記事
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一年草
【今が買い時!】まるで青い妖精の庭…ネモフィラが彩る夢のガーデンの作り方
世界中の人が夢中になるネモフィラ・ブルー 国営ひたち海浜公園の「みはらしの丘」。Spyan/Shutterstock.com ネモフィラの最大の魅力は、幻想的なブルー。この青の世界に、毎年多くの人が心を奪われているのが、茨城県の国営ひたち海浜公園です。ネモフィラといえばこの場所を思い出す方も多いのではないでしょうか。4〜5月にかけて、約530万株のネモフィラが咲き誇る「みはらしの丘」には、GW中だけで約30万人以上の人々が訪れます。空と海、そしてネモフィラが一体となるその絶景は、まさに「空の青に包まれる奇跡の場所」として国内外で大きな話題を呼び、「一生に一度は見たい風景」として毎年注目を集めています。 この壮大なスケールの美しさを、自宅のガーデンに小さく再現できるのも、ネモフィラの魅力。光が差し込むと花びらがほんのり透け、庭全体がふんわりとした青のグラデーションに包まれます。春のやさしい青空を切り取ったかのようなネモフィラ・ブルーは、どんな庭にも清らかでロマンティックな雰囲気を添えてくれます。 ネモフィラってどんな植物? 繊細なブルーが魅力のネモフィラ。hasetetsu/Shutterstock.com ネモフィラは、別名「瑠璃唐草(るりからくさ)」とも呼ばれる一年草。やわらかなブルーの花びらが特徴で、春になると空のように澄んだ花が一面に咲き広がります。日本の平地では、例年4月中旬から5月上旬にかけてが見頃。草丈は10〜30cmほどとコンパクトで、グラウンドカバーや寄せ植えにもぴったりです。苗が出回るのはちょうど今頃、3月中旬〜4月上旬で、植えてすぐにキレイな風景が楽しめるのも魅力。手がかからず育てやすいので、ガーデニング初心者にもおすすめです。 ネモフィラの魅力を堪能するガーデンデザイン ネモフィラはどんな植物とも相性がいい春の名脇役 チューリップ‘アプリコットインプレッション’とネモフィラの共演。 国営ひたち海浜公園ではネモフィラが主役ですが、私の庭では脇役として活躍してくれています。ネモフィラのブルーはどんな花色とも相性がよいので、本当に便利。毎年、春にはチューリップを植えるのですが、何色のチューリップと合わせても、上品になるのがお気に入りの理由の一つです。草丈10〜30cmというサイズ感も、チューリップの株元を彩るのにぴったり。 チューリップ‘レモンシフォン’やイエロー系のパンジーとも相性抜群。 チューリップは前年の晩秋から冬にかけて植えたものが芽を出しているので、その間にネモフィラの苗を植え付けるようにします。あまり大胆に掘り返してチューリップの球根を傷めないように注意しましょう。ネモフィラの根は浅く広がるので、少し穴を掘って植え付け、上から盛り土をするような感じでもOKです。 季節をつなぐ役目を果たしてくれるネモフィラ 4月上旬の庭。ネモフィラがチューリップの脇役として活躍。この頃はネモフィラの草丈は20cm程度。 ネモフィラは庭の主役がチューリップからバラへと交代する際、間をつなぐ役目も果たしてくれます。私の庭がある鳥取県米子市ではチューリップは4月いっぱいまでで、バラはもう少し先、5月中旬以降に見頃となります。バラが見頃となるまでの1〜2週間、わずかな端境期が生まれるのですが、その間の庭の彩りをつないでくれるのがネモフィラです。 群植・連続植えでネモフィラ・ブルーを発揮 チューリップが終わった後、草丈が30cmほどになったネモフィラが庭を幻想的に演出。 3月中旬に植えつけたネモフィラは、5月初旬には草丈も株張りも30cmほどになっています。それが春風に揺れると、まるで「花の波」のよう。ネモフィラは花の一つひとつは繊細で小ぶりなため、1株だけでは“青”の印象が淡く、その魅力が最大限に発揮できません。複数株を一定の間隔で植え続けることで、視線を引く美しいラインや面が生まれ、ブルーの魅力が際立ち、あの「ネモフィラ・ブルー」が真価を発揮します。特に春先のガーデンは、宿根草のボリュームがまだ控えめなため、ネモフィラの連続植栽がとても映えます。 花壇の手前にネモフィラを連続植栽。 <植え方のコツ> ●この庭では小道の両側や花壇の縁に沿って連続的にブルーがつながるように、手前から奥までネモフィラを植栽。連続させることによって、景色の中に「青の流れ」を作るようにします。 ●ブルーのボリュームが出るように、1箇所に株間を10〜15cmt程度とって3株程度を植えます。これを連続的に繰り返すと「青の流れ」として認識しやすくなります。 ●植栽帯や花壇の「手前」にネモフィラエリアを作るとブルーが目立ちます。これは抜く際の考慮でもあります。 1株では感じにくい“空を歩くような感覚”は、群れ咲くことで初めて生まれるもの。ネモフィラは「広がってこそ美しい」という特性を活かし、庭に青の物語を描くように植えてみましょう。 ネモフィラのお手入れ&終わったらどうする? チューリップの間に咲くネモフィラ・インシグニス(左)と黒花のネモフィラ‘ペニーブラック’(右)。 ネモフィラの開花中の手入れはほとんど必要ありません。パンジー・ビオラのように、こまめな花がら摘みをせずともOK。ネモフィラは自然に次々と花を咲かせるタイプで、咲き終わった花がタネになってもすぐに見苦しくなることは少なく、花がら摘みをしなくても長く楽しめます。基本的に水はけと日当たりが良ければ、放任でもキレイに育ちます。 ネモフィラは5月中旬には花が終わるので、花後は抜く必要があります。ネモフィラを抜く頃には他の宿根草が旺盛に茂っている最中ですから、抜く際に他の植物を傷めてしまうのでは? という心配が発生するかもしれませんが、次のようにすれば問題なく、他の植物との組み合わせが楽しめます。 ネモフィラは草丈が低く前景向きの植物なので、宿根草の手前に、20〜30cmほど離して植えます。ネモフィラの根は浅く広がるので、このくらいの間隔があれば他の植物の根を傷める心配はありません。抜いた後は宿根草が勢いを増して茂ってくるので、隙間ができず自然にきれいな風景になります。 心配な場合はネモフィラを抜かずに、株元をハサミで切って、根は土中に残してもOK。根は分解されて宿根草の邪魔にはなりません。 寄せ植えでも活躍するネモフィラ 同じブルーのデルフィニウム‘チアブルー’の株元をネモフィラで彩った寄せ植え。枝垂れ咲くのはクレマチス・ペトリエイ。 ネモフィラは横にやさしく広がる草姿をしており、寄せ植えの中で “ふんわり感”や“抜け感”を演出してくれます。ぎっしり詰まった寄せ植えに、軽やかさを加えられるまさに名脇役。さらに、印象的でありながら派手すぎない淡い青色は、 “つなぎの色”としても優秀で、他の花色を引き立てながら全体を調和させる効果があります。 淡いピンクのラナンキュラス・ラックスともネモフィラのブルーは相性抜群。 ネモフィラを使った寄せ植えの使い方アイデア 前景・垂れ下がり役に 鉢の縁からこぼれるように咲くため、前面や鉢の縁に配置すると自然な流れが出て美しい仕上がりに。 ブルーで“抜け”を演出 濃い色の花が多い寄せ植えにブルーを加えることで、軽やかで透明感のある仕上がりになります。 単色トーンでまとめてナチュラルに ネモフィラを中心に、ホワイト〜ブルー系の花でまとめると、シックで爽やかな寄せ植えが作れます。 ネモフィラは、ナチュラルでロマンティックな雰囲気を添えてくれる頼れる存在。他の草花とも馴染みやすく、カラーコーディネートや立体的な演出がしやすいのが魅力です。春のガーデニングに、ネモフィラのやさしいブルーを取り入れて“小さな春の物語”が始まるような庭や寄せ植えを作ってみてはいかがでしょうか?
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宿根草・多年草
花が咲かない!少ない! クリスマスローズの疑問・悩みをプロが一挙解決!
Q.1 クリスマスローズの寿命はありますか? 植栽から3年目、大株に育ったプチドールを摘んでブーケに。 長年、クリスマスローズを地植えで育てています。買ってきた苗を地植えにし、3年くらい経つと株いっぱいに花が咲き、それはそれは見事です。最盛期には庭中から惜しみなく花を切ってきて、クリスマスローズのブーケを作って楽しめるほど。数年はそんなふうに素晴らしくよく咲くのですが、7〜8年経った頃から、花数が減ってきて以前のように咲かなくなってきてしまいました。クリスマスローズは長生きする宿根草だと思っていましたが、寿命があるのでしょうか? それとも植えている場所が悪いのでしょうか? A.1 クリスマスローズはとっても長生き! ただしコツがあります。 横山園芸には40年以上生き続けている株がありますよ。ですから、クリスマスローズの寿命は、ハイブリッドに関しては限りなく長いと言えます。しかし、面谷さんがおっしゃるように開花してから7〜8年経つと、勢いが衰えて花数が少なくなってくるものです。そうなる前にやって欲しいのが植え替えと株分けです。横山園芸の40年以上の株も、株分けと植え替えを繰り返して生き続けています。また、ハイブリッドはこのように長生きさせることができますが、原種のなかには短命なものもあり、それらはタネ採りで生き残りを図ります。 Q.2 クリスマスローズ同士の相性ってありますか? 横山さんの作出した‘ヨシノ’が大好きで、大事に育てています。原種チベタヌスの雰囲気がありつつ、ハイブリッドとの交配により性質はとても丈夫で、地植えで年々株が充実してすごくきれいです。そこで、‘ヨシノ’の隣に‘姫ヨシノ’も植えたのですが、なんだかいまいち調子が悪いです。クリスマスローズにも相性の良し悪しがあるのでしょうか? A.2 クリスマスローズ同士は適切な距離が必要です クリスマスローズ同士は近くに植えるとケンカする傾向にあります。根からアレロパシーを出して戦い、全体的に株が弱ってしまうんです。特に植木鉢など限られた空間では顕著に表れますが、地植えでも適切な距離を保って植えることが大切です。 Q.3 こぼれタネで出てきたクリスマスローズはどうすればいいですか? 場所によって、こぼれタネでクリスマスローズがあちこちから出てくるのですが、そのまま育てていいのでしょうか? A.3 移植が必要です 先ほどと同じ理由で、クリスマスローズ同士が近くにあると、全体的に株が弱ってしまうので、小苗のうちに掘り上げて別の場所に移してあげるか、鉢植えで楽しむといいでしょう。 Q.4 花や葉っぱに黒い斑点が出て枯れてきました。どうしたらいいですか? A.4 「ブラックデス」という病気です。すぐに対処しましょう。 ブラックデスは葉や花、茎などに黒い病変が現れます。ハサミの使い回しやアブラムシ、ハダニなどが媒介して液体感染するので、それらの防除に努めますが、発症後は適応薬剤がないので、残念ですが株を掘り上げ、周辺の用土も破棄して他の株への感染の拡大を防ぐことをおすすめします。 横山直樹さんによる「横山お花クリニック〜面谷クリニックのガーデンから〜」開催! 上記のお悩みを含め、実際に横山直樹さんが面谷さんの庭を巡りながら、クリスマスローズのお悩みを解決するインスタライブを開催します。「花数を衰えさせない植え替えのベストなタイミング」や「アレロパシーを出さない適切な距離感」「草花とクリスマスローズの相性」「適切な植え場所」「猛暑の乗り切り方」など、専門家の目線でクリスマスローズの庭づくりを指南します。 横山さんに相談したいクリスマスローズの疑問やお悩みがある方は、ガーデンストーリーのインスタグラム「クリスマスローズの疑問・お悩み募集」の投稿のコメント欄で、ご質問をお寄せください。インスタライブ内にて回答します(事前に編集部でセレクトさせていただきます)。 ■「横山お花クリニック〜面谷クリニックの庭から〜」インスタライブ/3月30日(日)10〜11時 また、同日午後13時から現地にお悩みのクリスマスローズの株の鉢をお持ちいただける方に限り、横山さんが株を診察してくれる「横山お花クリニック・植え替え診察室(無料)」を開催。ご希望の方には、横山さんがあなたのクリスマスローズの株を健やかに育つよう植え替えしてくれます(1鉢1,000円)。 ■「横山お花クリニック・植え替え診察室」/3月30日(日)13〜15時 住所/鳥取県米子市道笑町4丁目221−1(*クリニックへの電話でのお問い合わせは受けつけておりません。現地に直接お越しください。駐車場50台あり)
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寄せ植え・花壇
かわいさアップ! クリスマスローズと咲かせる早春の花&寄せ植えアイデア
クリスマスローズとは? 豪華な八重咲きから魅惑の原種まで多彩な魅力 左/庭で咲いたクリスマスローズのブーケ。うつむいて咲く花の表情がよく眺められる。右/原種チベタヌスとニゲルの種間交配で生まれた‘ピンクアイス’。 クリスマスローズはまだ花が少ない1〜3月にうつむき加減の可憐な花を咲かせます。年々株が大きくなり、花数が増えていく宿根草で、地植えでも鉢植えでも育てられます。原種はヨーロッパから地中海沿岸、西アジアにかけて自生し、これらを掛け合わせて生まれた園芸品種は多数。日本には熱心な育種家がいるおかげで、毎年新しい品種が生まれ、魅力は深まるばかりです。あなた好みの花もきっと見つかるはず! クリスマスローズの栽培の基本 クリスマスローズが咲く早春の庭の小径。冬〜早春は日が当たり、夏は木陰になる落葉樹の側が地植えの栽培適地。 育てやすさは品種ごとに異なり、例えば標高1,500m付近に自生するチベタヌスは高山植物のように特別なケアが必要となり、上級者向きです。しかし、多くは寒さに強く丈夫で初心者でも育てられます。地植えでは夏の直射日光を避けられる落葉樹の側などを選んで栽培するのがポイント。また、クリスマスローズの生育サイクルは以下のように他の多くの植物と少し異なるので、それに合わせて適期適切な手入れをすれば、ほとんど病害虫に悩まされることなく育てられます。 1〜3月/開花期 4〜5月/生育期 6〜9月/半休眠 10〜12月/生育期 ① 開花期・生育期は日が当たり、休眠期は日影になる場所を選んで育てる。落葉樹の側がおすすめ。 ② 生育期に肥料を与える。特に、八重咲き品種は花を咲かせるのに一重よりパワーが必要なので、たっぷりあげる。 ③ タネをつけると株が衰えるので、咲き終わった花は遅くとも4月中に花茎を切る。 ④ 11月以降、内側の花芽に日があたるよう春に伸びた葉を折り取る(古葉取り)。周辺に植わる宿根草や球根にも日を当てる目的があります。 クリスマスローズと相性のよい早春の花 アネモネ・フルゲンスと八重咲きのクリスマスローズ‘プリマドレス’。 クリスマスローズは草丈が30〜40cmになり、早春の庭にボリュームを出してくれる貴重な素材です。早春の草花は草丈の低いものが多く、うつむき加減に咲くクリスマスローズと咲かせると、花同士がおしゃべりをしているように見えて、なんとも愛らしいのです。組み合わせのポイントは以下の3つ。 ① クリスマスローズと開花期が揃うもの② クリスマスローズと栽培条件が似ているもの③ 大きくなりすぎないもの クリスマスローズとの組み合わせにおすすめの早春の花を6つピックアップしました。 1.アネモネ・フルゲンス アネモネ・フルゲンスは春に咲くキンポウゲ科の球根花で、アネモネの原種です。細く繊細な茎を伸ばし、上向きの丸い花を咲かせます。草丈は20〜30cmほどで、クリスマスローズと同じくらいの草丈で咲き、花が寄り添うような風景がとても愛らしいです。冬〜早春にかけて花苗が販売されています。球根は植えっぱなしで何年も咲いてくれており、ローメンテナンスなのも魅力。 さまざまな花色があり、花心の色も魅力的なアネモネ・フルゲンス。 2.ナルキッスス・バルボコディウム ナルキッスス・バルボコディウムは、草丈10〜20cmの小型の原種スイセンです。鮮やかな黄色や柔らかなクリーム色があり、赤紫色の花が多いクリスマスローズと好相性。株元を明るく鮮やかに彩り、レフ板効果でクリスマスローズの花も際立ちます。花が終わると茎が次第に枯れて茶色くなり、夏は休眠に入ります。ちょうどその頃にはクリスマスローズの葉が茂って、枯れた葉を隠してくれるとともに、夏の日差しからも守ってくれるので、栽培環境としても好相性です。球根は晩秋〜冬に植え付け、植えっぱなしでOKです。 ユニークな花形と透明感のある花弁が魅力のナルキッスス・バルボコディウム。Walter Erhardt、AlmacUK/Shutterstock.com 3.ユキワリソウ ユキワリソウは草丈10〜20cmの宿根草。北陸や東北地方原産の日本の植物で、鮮やかな小花が素朴で愛らしい花です。「雪割草」の名前どおり、雪国の春を代表する花なので、夏の暑さや直射日光にはクリスマスローズ以上に注意が必要です。落葉樹の下で、なおかつ夏は直射日光がほとんど当たらない場所のみ残って咲いてくれているので、場所選びがポイントです。植え付けのタイミングは春と秋のお彼岸前後です。 色や花形もバリエーション豊富なユキワリソウ。Elena Zobova、mizy、Amalia Gruber/Shutterstock.com 4.パンジー&ビオラ パンジー&ビオラは冬の庭を愛らしく彩る一年草。前年の晩秋から春までと開花期が長く、クリスマスローズが咲き出す頃には、花のボリュームが出て株元を華やかに彩ります。カラーバリエーションが豊富で花形もフリルや小輪などさまざまなものがあるので、クリスマスローズの個性に合わせて組み合わせるのが楽しい花です。秋から冬に開花株を植え付けます。一年草なので花後は抜き取るだけで、気楽に育てられるのも魅力。 小輪の素朴なビオラと淡いピンクのクリスマスローズの組み合わせ。 5.プリムラ・マラコイデス プリムラ・マラコイデスは小花が群れ咲き、ふわふわと柔らかな雰囲気が素敵です。花径が大きくフォルムがはっきりしているクリスマスローズの花とは対照的で、組み合わせると互いの魅力が引き立ちます。本来は多年草ですが暑さに弱いので日本では一年草扱いになります。秋から冬に開花株を植え付けます。一年草なので花後は抜き取るだけで、気楽に育てられるのも魅力。開花期間中は液肥を定期的に施すと次々に花が咲き、見頃が長くなります。 白く粉をかけたような草姿から化粧桜とも呼ばれるプリムラ・マラコイデス。 クリスマスローズとプリムラ・マラコイデス、パンジーの組み合わせ。 6.原種シクラメン・コウム 原種シクラメン・コウムは、地際7〜8cmの高さで咲き、花も小さく素朴でクリスマスローズとよく似合います。落葉樹の下では、球根が分球してどんどん増えていってくれるのもお気に入りの点です。原種シクラメンには秋に咲くヘデリフォリウムと冬から早春に咲くコウムがあります。2種類植えておくと、クリスマスローズが咲く前から開花中まで、花が寂しくなりがちな季節にも庭を彩ってくれます。 葉の色もきれいな原種シクラメン・コウム。 クリスマスローズの寄せ植えアイデア クリスマスローズの花色には赤茶がかるものが多く、割と渋めのカラーが多くあります。それゆえに古くから茶花としても愛されてきましたが、寄せ植えでも和の雰囲気に仕立てたり、はたまた華やかシックに演出したりと、組み合わせる植物次第でさまざまな表情を引き出せるのが寄せ植えの面白いところです。クリスマスローズと早春の花の寄せ植えをご紹介します。 渋めカラーのクリスマスローズで野の風情を演出した寄せ植え ラブリーガーデンの安酸友昭さんが作ってくれた寄せ植え。 クリスマスローズの‘レッドサン’や‘パピエ’を直径60cmの大鉢に寄せ植えにしました。この2種は花が上向き気味に咲き、花の表情がよく見える品種です。控えめな色で和の雰囲気を感じさせる上品な花に合わせて選んだのは、スミレ‘エビ茶’や‘紅花ヒラツカ’、ミヤマオダマキなどの山野草。さらに、クリスマスローズと同じ栽培環境を好む宿根草のティアレラもプラス。鉢の縁には茎がレッドサンと同じブロンズレッドのベロニカ‘オックスフォードブルー’を植えてあります。 円形鉢の寄せ植えの一つのセオリーとして、中央が高くなるよう主役となる花を配置し、鉢縁にいくにつれ草丈を低くし、こんもり丸い整った形を作る方法がありますが、今回はあえてさまざま草丈のものが入り混じるように仕立ててあります。クリスマスローズも主役として目立たせる植え方ではなく、山野草類と入り混じらせて咲かせることで、野の風情を演出しました。 小輪で葉も小さく、野生っぽい雰囲気のクリスマスローズに合わせて、ハナニラやアッツザクラを寄せ植えしました。スイートアリッサムとベロニカ‘オックスフォードブルー’は鉢縁にグラウンドカバーとして。 立ち枯れた樹木の根っこを活用し、森の中をイメージして作った寄せ植えです。渋めのカラーのクリスマスローズ2種に、ミヤマオダマキやハナニラ、原種シクラメン・コウムなど森林にも自生する素朴な花と組み合わせました。鉢縁にはここでもベロニカ‘オックスフォードブルー’を。 チョコレートカラーの花を華やかに寄せ植え 渋めのカラーのクリスマスローズも、組み合わせる花を変えるとシックで華やかな雰囲気に変わります。フリフリの花びらが華やかなパンジーを、クリーム色、チョコレートカラー、アプリコットの3種合わせ、ハツユキカズラとスイートアリッサムを鉢縁に植栽。こんもりドーム状に仕立てました。 クリスマスローズの寄せ植えで気をつけること 鉢植えのクリスマスローズの中から寄せ植えに用いる株を選ぶこともある。 寄せ植えの場合は開花した株、または開花しそうな株を選んで寄せ植えするので、2〜3月初旬頃に作業します。この時期はクリスマスローズの根は軽くほぐす程度で、あまり大胆にいじらないようにします。基本的にクリスマスローズの根は直根性といい、真っ直ぐ下に深く伸びる性質があり、根をいじられるのを嫌います。ダメージを受けると、本来夏越しに向けて温存しておかなければならない体力を回復のほうに消費してしまい、うまく夏越しできなくなってしまうので、根を傷めないようそっと扱います。 花が終わったら花茎を切り、寄せ植えをバラしてクリスマスローズは落葉樹の下など適所へ地植えにするか、単独で鉢植えにし、直射日光の当たらない風通しのよい場所で養生させます。この際も根は傷めないようそっと扱います。 2月はクリスマスローズの開花苗が出回る季節です クリスマスローズは早春の庭に立体感や奥行きを与えてくれる宿根草。場所や栽培のちょっとしたポイントを押さえれば、何年も続けて庭で咲いてくれます。同時期に咲く一年草や春の球根類などと組み合わせることで、庭をいっそう華やかにしたり、イメージを変えたりすることができます。クリスマスローズの開花株がたくさん出回るこの季節に、さまざまな花とのコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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宿根草・多年草
【今が買い時!】初心者にもおすすめの宿根草ラナンキュラス・ラックスで作る、映える春の庭
春の庭を彩るラナンキュラス・ラックスの魅力と育て方のポイント たっぷりとした花びらが華麗なラナンキュラス・ラックス‘ヘラ’。 私が暮らす山陰の年明けは、たいていは雨か雪。冬に青空が見られることはほとんどなく、東京の大学へ通う娘のところへ行くようになって、関東では冬も毎日お日様が見られることに驚きました。寒くて薄暗い冬を長く過ごしていると、明るい日差しがさす春が恋しくてたまりません。春の訪れは、光の色が変わる瞬間で分かります。光が春色になったら、庭もそれに合わせてパッと華やかにしたくなります。そんな気持ちに応えてくれるのが、ラナンキュラス・ラックスです。 ラナンキュラス・ラックスやパンジー、ネメシア、スズランなどが共演する春の庭。 ラナンキュラス・ラックスは桜と同じ頃に開花する宿根草。ちょうど今頃、1月初旬から花が咲いた開花株が店頭に並びます。1ポット数千円するので、草花の苗の中では高めですが、一度育ててみればその価値は余りあることが分かります。宿根草ですから毎年、季節になると花を咲かせてくれるのは当然ですが、地植えにすると2年目は株の大きさが倍以上になります。3〜5月まで次々に花を咲かせ、1株で優に100輪は咲くでしょうか。この点がチューリップなどの春の球根花との違いで、とにかく1株で豪華。草丈は60〜70cmほどになり、春先の庭ではとても存在感があります。草丈が高いのですが、株元の茎は太くしっかりしており、それでいて風に揺れるような抜け感があり、ふわふわ優しい大きな花束のような草姿も絵になります。 ラナンキュラス・ラックスが初心者にもおすすめの理由 ラナンキュラス・ラックスを育て始めて6〜7年になりますが、害虫の被害を受けたことがありません。パンジーやビオラ、デルフィニウムはダンゴムシやナメクジ、ヨトウムシなどに食べられて花がボロボロになることがありますが、そばに植えてあるラックスは被害を受けません。また、花びらが薄く繊細な植物は、開花後に強い雨に当たると花がクシャッとなって復活しないことがありますが、ラックスは繊細に見えて雨を弾き、雨にも負けずに綺麗な花を咲かせてくれるのも大きなポイント。ラックスの名前は「ワックス」からきているのですが、その名前の通り、「耐雨性」にも優れており、最近の激烈な雨にも耐えてくれます。植えっぱなしで夏越しも冬越しもするので、初心者にもおすすめです。 地植えで楽しむラナンキュラス・ラックスの育て方 盛り土をして水はけをよくしたラナンキュラス・ラックスの花壇。 庭のさまざまなエリアに植栽しているラナンキュラス・ラックスをご紹介します。ここは駐車場に面した東側の花壇で、通りからも見える場所なのでラックスをたくさん植え、春が来た喜びを道ゆく人も感じられるようにしました。ラックスは花びらにツヤツヤとした光沢があり、日に当たると輝くように花色が浮かび上がります。 ラナンキュラス・ラックスの育て方のコツは水はけ ラナンキュラス・ラックスの育て方のコツは、何よりも水はけ。もともと球根植物なので、湿った環境を嫌います。この花壇も地面より10〜15cmほど高く盛り土をし、水はけをよくしています。わずかな段差のようですが、植物の生育環境には確実に違いが出ます。 ラナンキュラス・ラックスは花壇後方の色彩構成に活躍 ここはクリニックの待合室から眺められる主庭です。濃いブルーのデルフィニウムに合わせて、イエロー系のラナンキュラス・ラックスを植栽しました。この植栽帯は道路側へ向かって地面が緩やかに高くなっており、雨が降っても水がすぐにはけるので、ラナンキュラス・ラックスの栽培環境としては好適です。草丈が高くある程度まとまった色を提供してくれるので、花壇の後方の色彩構成に大活躍します。 ラナンキュラス・ラックスは2年目以降に本領発揮 赤茶色のバラの新葉ともよく似合う黄色のラナンキュラス・ラックス‘サティロス’。 ラナンキュラス・ラックスは地植えにすると2年目以降は株の大きさが2倍以上になります。株の大きさにともない花数が増えるのはもちろんなのですが、充実した株に咲く花は花色がグッと深みを増し、一年目とはまったく違う表情を見せます。庭にスペースの余裕があれば、ぜひ地植えをお勧めします。 透明感のある黄色の花が木陰でも輝くようなラナンキュラス・ラックス‘ハリオス’。 こちらは先ほどの植栽帯の向かい側、高さ約40cm、奥行き1m、長さ8mほどの花壇です。こちらはテーマカラーを淡いピンクとブルーにし、ピンク系のラナンキュラス・ラックスを花壇後方へ植栽しました。ラナンキュラス・ラックスには‘アリアドネ’や‘アウラ’、‘ヴィーナス’など、ふわっと儚げなピンクの花が多く、春の優しい光によく似合います。この花壇では3カ所にラナンキュラス・ラックスを配置しています。 花心とのコントラストが可愛いラナンキュラス・ラックス‘ヘスティア’。 ラナンキュラス・ラックスの開花期と合う春の花 ラナンキュラス・ラックスの手前には草丈の低いネメシア(右上)やネモフィラ(右下)、クリスマスローズ(左)などを植栽。ペールトーンの花色でまとめて優しい雰囲気にしました。ネメシアとネモフィラは一年草、クリスマスローズは宿根草です。ちょうどラナンキュラス・ラックスの開花と同じ3〜5月に庭を彩ってくれます。 寄せ植えで楽しむラナンキュラス・ラックス ここは建物に沿った小道の庭で、診察や治療を受ける患者さんから一番よく見える場所なので、一番の見どころを作るようにしています。八角形の高さのある大鉢にラナンキュラス・ラックスを寄せ植えにしました。スイートアリッサムやハナカンザシ、シレネなどの小花が株元にふわふわ咲き群れ、ラックスの花を引き立てます。 ブーケのように華やかな寄せ植えはガーデナーの安酸友昭さん(ラブリーガーデン)制作。 鉢の周囲に設けた4カ所の植栽帯にもラナンキュラス・ラックスと小花を植栽。 ラナンキュラス・ラックス‘ディーバ’。咲き進むと淡くなる花色の変化も素敵。 小道の庭の入り口にも、中くらいのラナンキュラス・ラックスの寄せ植え鉢を置きました。小道のようなスペースの限られた庭では、鉢植えの花を取り入れると高低差ができ、風景に変化が生まれます。植木鉢を庭の中におくときは、周囲の地植えの花ともコーディネートすると、狭くても目を引くコーナーが作れます。ここでは紫色のラナンキュラス・ラックス‘ディーバ’に合わせ、紫系のパンジーやキンギョソウ‘ブランルージュ’などを周囲に地植えし、花色が繋がるようにしました。 ラナンキュラス・ラックスの夏越し・冬越し 鉢上げしたラナンキュラス・ラックス(黄みがかった葉はクリスマスローズの鉢)。 ラナンキュラス・ラックスの花は5月くらいまでが見頃。私の庭ではバラと交代になるように花茎を切ってさっぱりさせます。そのまま地植えの箇所もありますが、主に東側の花壇や寄せ植えの鉢は、バラと合わせる草花に入れ替えるため、ラックスは鉢上げして北側のバックヤードへ。やがて緑の葉も枯れ、地上部は何もなくなりますが、休眠しているので心配ありません。これは地植えのままの株も同じで、地上部がなくなり次の季節の宿根草に席を譲ってくれるので、好都合です。地上部がなくなったら、鉢上げした分も水やりはせず自然の降雨のみで風通しよく管理します。秋になると再び目覚めて写真のように葉っぱが展開してきます。葉が出てきたら緩効性の置き肥を株元に施肥し、冬〜早春に再び地植えや寄せ植えします。私は鉢上げした分は花が咲く直前に植え込みします。 ラナンキュラス・ラックス‘ムーサ’。 米子では冬は雪が積もることがありますが、植えっぱなしの株も全く問題なく、春になると毎年盛大に咲くので、これといった冬越し対策はしていません。ラナンキュラス・ラックス‘ムーサ’はもう植栽から6年以上経過しており、奥行き35cmしかない花壇に植えっぱなしですが、見事な花つきでバラの前のシーズンの主役を担ってくれます。 ラナンキュラス・ラックスは、その華やかさと丈夫さで、春の庭を彩る主役になれる花です。初心者でも育てやすく、毎年美しい花を楽しむことができます。ラナンキュラス・ラックスで、庭をさらに輝かせてみてはいかがでしょうか?
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寄せ植え・花壇
【マストバイ冬の花10】寄せ植えに、花壇に大活躍する冬の庭の定番植物と生かし方
【パンジー&ビオラ】芸術的に進化する魅惑の花色を鉢植えで パンジー&ビオラは冬の花の代表選手。10月頃から店頭に並び始め、翌年の4月まで庭を彩ってくれる花期の長い一年草です。毎年、新品種が登場し、八重咲きやフリル、フリンジ、斑入り、ピコティ(覆輪)、バイカラー(2色咲き)、小輪、極小輪など、多彩なバリエーションは進化し続けています。人気作出家やブランドの花は1株千円前後することもありますが、ひと冬うっとり過ごさせてくれる千円を他に探すのは難しいかもしれません。ちなみにパンジーもビオラもどちらもスミレ科の植物で、花の比較的大きいものをパンジー、小さいものをビオラと呼び区別しています。 パンジー&ビオラの色は季節で変化があり、寒いほどに鮮やかさが際立ちます。上の写真は同じ寄せ植えですが、左が12月で右が翌年3月の様子。冬の間はピンクが濃く、メリハリのある表情ですが、春になると花色が優しくなり、花数も増えてふわっとした印象に変化しました。そんな季節による表情の変化もパンジー&ビオラの魅力の一つです。 パンジー&ビオラの栽培のコツ これまで何百という種類を育ててきた経験から、花の特徴によって生育の仕方にも個性があることが分かりました。人気のフリル系八重パンジーは、花弁数が多いので花を咲かせるのに通常のパンジーよりパワーが必要です。植え込み時には元肥を、そして生育中も肥料が切れないように液肥をしっかり与えながら育てると、花数が確保できます。そうした特徴からも施肥管理がしっかりできる鉢植えのほうが栽培には向いているようです。また、雨に濡れると八重咲きは花が傷みやすいので、置き場所は軒下などがいいでしょう。 一方、花径が小さく素朴な印象のビオラは地植えで活躍してくれます。冷たい雨に濡れても花茎がシャキッと立ちます。春になると花数が増えて華やかになりますが、草丈が10〜15cmと小さいので、春咲きの球根花やクリスマスローズの株元を彩るのにも最適です。 【ガーデンシクラメン】華やかな色彩でハレの日にぴったり シクラメンは赤やピンクのパッと目につく華やかな花色が特徴で、クリスマスやお正月などハレの日の演出に最適な冬の花材です。一般的なシクラメンは寒さに弱いため、部屋の中で鉢植えを楽しみますが、シクラメンよりミニサイズのガーデンシクラメンは、寒さに強く冬の庭でも育てることができます。花弁が反り返って咲くピンクや赤系の花が一般的ですが、上向きに咲くものや花弁がクルクルとリボン状になるもの、ブルーやイエロー系など多彩なバリエーションで毎年楽しませてくれます。 ストライプ模様がユニークなシクラメン‘クレヨン’。 ガーデンシクラメンの栽培のコツ 葉を外側へ、花芽を中央に移動する「葉組み」により開花が促される。 ガーデンシクラメンはサクラソウ科シクラメン属の球根です。葉が密に重なっており、内側に枯れた花や傷んだ葉が隠れがちです。株をそっとかき分けながら、枯れた花や枯れ葉は、「株元から」茎をやさしくねじって折り取るようにします。シクラメンがかかりやすい病気に灰色かび病という病気がありますが、球根や葉、花に水がかからないよう株元に水やりをし、上記の手入れをして風通しよく育てることで防ぐことができます。 ガーデンシクラメンは一般的なシクラメンよりは寒さには強いですが、雪や霜が強く降りると、花がしおれて復活しにくいので、鉢植えで軒下などで育てるのがおすすめです。 ガーデンシクラメンの夏越し方法 シクラメンは5月頃別の鉢に植え替え、水やりをせずにそのまま9月頃まで過ごさせることで休眠して夏越しが可能です。その間、地上部は葉も茎も何もない状態になります。直射日光と雨の当たらない屋外の風通しのよい場所で鉢を管理します。秋になり涼しくなってきたら、植え替えて日当たりのよい場所に移動し、水やりと肥料を再開しすると再び葉が茂り始めます。 【ストック】草丈の高さを生かして大鉢の中心に ストックの草丈は20〜80cmで、パンジー&ビオラやガーデンシクラメンなど、他の冬の花に比べて、この時期では貴重な草丈のある花です。その草丈の高さを生かして大鉢の寄せ植えの中央にストックを植えると、立体的なフォルムになり存在感が抜群。特にクリスマスやお正月の頃の寄せ植えには真っ赤なストックが活躍してくれます。 草丈のあるストックは冬の花壇も立体的に見せてくれます。 ストックの栽培のコツ ストックは、アブラナ科アラセイトウ属の一年草です。原産地はヨーロッパ南部で多年草とされていますが、日本の厳しい夏を乗り越えられないため、日本では一年草に分類されています。一年草ですが11月頃から苗が出回り、翌年5月頃まで花を咲かせる花期の長い花です。ガーデン向けに販売されているストックは分枝するタイプのものが多く、花がら摘みをすることで脇からも花茎が伸びて繰り返し花が楽しめます。 【スイートアリッサム】レースのような群花がエレガント スイートアリッサムは、ひと花は小さいですが、花いっぱいの姿がエレガント。花色は、白、ピンク、紫など、他の花と組み合わせやすい色が揃っています。草丈は、10~15cmと低く、広がって咲き、寄せ植えでは鉢縁に植栽すると枝垂れるように伸びて、鉢との一体感を生んでくれます。 ガーデンでもよく咲き広がり、広い面を花で埋めてくれるグラウンドカバープランツとしても活躍します。大鉢の周りをスイートアリッサムで埋め尽くすようにすると、よりロマンチックな雰囲気になります。 スイートアリッサムの栽培のコツ 花期は長く、2~6月、9~12月。高温多湿が苦手なので、春に咲いた花は、夏に茎を5cm程度切り戻すことで、秋にもよく花を付けます。さらに、ゆっくりと効果があらわれる緩効性の肥料を施すと、きれいに咲き継いでくれるでしょう。日本では一年草として扱われているアリッサムですが、じつは、冷涼な地域では宿根草として扱われます。 【ペルネッティア】オーナメンタルなたわわな実 別名ハッピーベリーとも呼ばれ、花言葉は「小さな幸せがいっぱい」「実る努力」です。そんな花言葉から、この時期、受験勉強に励むお子さんがいるお宅におすすめ。初夏頃にズスランのような小さなベル形の花を咲かせますが、秋から冬に実る赤やピンクの実を主に観賞します。園芸店に流通するのもその頃です。ツヤツヤの実は寄せ植えや花壇のかわいいアクセントになり、クリスマスらしい雰囲気を演出するのにも重宝します。 花壇の縁を彩るペルネッティア。寒さに強く地植えでOK。 淡いピンクと濃いピンクのペルネッティアを鉢縁に入れた寄せ植え。 ペルネッティアの栽培のコツ ペルネッティアはツツジ科の常緑低木で、北海道で生産されることが多く耐寒性には優れていますが、耐暑性は弱いです。また、多くの庭の植物がアルカリ性から中性の土壌を好むのに対し、ペルネッティアは酸性土壌を好み、人工受粉をしないと再び実をつけるのが難しいので、私は一年草扱いとしてワンシーズン楽しんでいます。 【宿根ネメシア】ボリュームたっぷりに咲く開花期の長い小花が魅力 日本で長く親しまれてきたのは一年草のネメシアですが、近年は2〜3年は株が生育する宿根草タイプが重宝されています。宿根ネメシアは耐寒性が強く、耐暑性もほどほどあり、10〜6月まで長期間開花し夏越しします。上記写真のネメシア・エッセンシャル‘ラズベリーレモネード’のようなイエローとラズベリーの組み合わせなど、花色も多彩に進化し、香りが豊かなものなど魅力が増すばかりです。 甘い香りが漂うゲブラナガトヨの宿根ネメシア・メーテル。耐寒性が強くマイナス5℃まで耐える。 宿根ネメシアの栽培のコツ 10月から6月の開花期間中、咲き終わった花はこまめに取り除きます。株全体の花が咲き終わってきたら、株元から5〜10cm程度の場所で切り戻すと再び新芽が発生し開花が促されます。開花中と切り戻し後には定期的に液肥を与えます。 【カルーナ】クリスマスの演出に重宝する常緑低木 カルーナは常緑低木でシュッと細長い形状をしており、葉っぱがモミの木に似ているのでクリスマスの演出に最適です。細かな緑の葉の間から縦に連なるように花を咲かせ、花穂のような咲き姿になりよく目立ちます。品種によりさまざまな草丈がありますが、高さがあるものは大鉢や細長いタイプの鉢の中央に植えると見応えが出ます。花色も赤、ピンク、オレンジ、黄、白など多彩なバリエーションがあります。荒れた痩せ地の酸性土壌に自生し、耐寒性は強いですが耐暑性は弱いので、暖地での夏越しは困難です。私は一年草として扱っています。 カルーナを中心にストック、ガーデンシクラメン、パンジー、スイートアリッサムと、鉢縁にいくに従い草丈が低くなるよう寄せ植え。 丸くてこんもりと茂るタイプの花が多いなか、カルーナはライン状の花姿が寄せ植えのよいアクセントになります。草丈が小さいコンパクトな品種は、中鉢から小鉢の寄せ植えにぴったり。 横長のバスケットコンテナにガーデンシクラメン 、ビオラ、スイートアリッサムと寄せ植え。 【ハボタン】バラに似た葉姿がお洒落 ハボタンはキャベツやブロッコリーなどと同じアブラナ科の植物で、別名「ハナキャベツ」とも呼ばれます。キャベツと異なるのは美しい色。観賞期間はとても長く、寒さに強く気温の低下に伴って鮮やかに発色し、白やピンク、赤、紫などに株の中心部が染まっていきます。小ぶりでバラのような花形のものなどがあり、寄せ植えにお洒落な雰囲気をもたらしてくれる冬の素材です。春には株の中心部が伸びてきて菜の花とよく似た黄色の花を咲かせます。二年草、または多年草ですが、私は一年草扱いでワンシーズン楽しみます。 左は12月の植栽直後。右は翌年4月の様子。春になると花心が長く伸びてきて、菜の花によく似た花が咲く。 【スキミア】つぼみの姿がかわいい常緑低木 スキミアは、ミカン科ミヤマシキミ(スキミア)属の常緑低木。晩秋から冬にかけてプチプチとしたつぼみや赤い実をつけた可愛い姿を保ち、春になると花が咲き、冬から春にかけての花壇や寄せ植えで活躍してくれるガーデンプランツです。園芸店に並ぶ幼苗は樹高30cmほどで、寄せ植えや花壇で活躍します。花期は春の3月頃ですが、11月頃に花芽ができはじめ、冬はつぼみのまま全く変わらない姿を観賞でき、手をかけなくてもきれいな姿を保つことができるのが嬉しいところ。クリスマスやお正月の花飾りとしても活躍します。 赤と緑のスキミア、パンジー、チェッカーベリーを大鉢に寄せ植え。春にはつぼみが開花して白い花が咲き、雰囲気がガラリと変わる。 スキミアの栽培のコツ スキミアの苗が園芸店に出回るのは、主に11~12月なので冬は寄せ植えに用い、その後は寄せ植えをバラして地植えにします。スキミアは元々山の中で育つような植物なので、日陰を好みます。夏の暑さや直射日光が苦手なので、庭のシェードエリアに地植えにしています。生育はとてもゆっくりで、将来的にも樹高は80~100cmほどとコンパクトなので、花壇の奥のほうへ植えておくと手がかからず常緑の葉がいつもきれいに日陰を彩ってくれます。 【コニファー】クリスマスの定番樹木 クリームイエローの葉が美しいコニファー・サルフレア。成長すると2〜3mに。 コニファーは常緑針葉樹の総称で、マツ科やヒノキ科などのさまざまな種類があります。葉色は緑に限らずシルバーがかっていたり青味がかっていたり個性豊か。円錐形の美しい樹形は、クリスマスツリーとして活躍します。大きなクリスマスツリーを庭にしつらえるのは大変ですが、小型のタイプのコニファーを寄せ植えにすると、華やかなクリスマスツリーが演出できます。 パンジーやガーデンシクラメン、チェッカーベリーなど赤い花の中にミニサイズのイタリアカサマツ(ピヌス・ピネア)が入ると、よりいっそうクリスマスらしい雰囲気。 コニファーの栽培のコツ 日当たりのよい場所が栽培適地。耐寒性は強いですが、夏の暑さには弱いので西日が強く当たる場所は避けます。苗木のうちは寄せ植えにできるくらい小さいですが、例えば上のイタリアカサマツ(ピヌス・ピネア)は10mくらいになるので、地植えにする際は生育後の樹高を調べてから場所を選ぶ必要があります。
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寄せ植え・花壇
【おしゃれガーデニング術】パンジー&ビオラの品種の違いを生かして魅せる! 鉢植えコーディネート
鉢とのコラボでかわいさが際立つパンジー&ビオラ パンジー&ビオラはさまざまな花色や花形があり、毎年驚くような花色の新品種が登場します。地植えでも冬の庭をかわいらしく彩ってくれますが、草丈10〜20cm程度のパンジー&ビオラは、鉢植えにするとよりその魅力が際立ちます。定番のテラコッタの鉢はもちろん、多彩な個性の花をさまざまな植木鉢とコーディネートするのは、着せ替え人形のような楽しさがあり、寄せ植えや鉢植えがこれほど楽しみな花は他にありません。 パンジー&ビオラの品種ごとに異なる生育の違い 左は12月、右は3月の様子。八重咲きのフリルは花数の増え方は2倍ほど。 多彩な個性は色や形の違いだけではなく、育ち方にも違いがあります。この生育の違いは、植えたばかりの頃は気になりませんが、春になると明確に現れてくるので、パンジー&ビオラの品種違いを寄せ植えにするときは、生育差も考慮して組み合わせます。例えば、八重咲きのフリルの強い花は、一輪を咲かせるのにパワーを使うため、春になっても花数がものすごく増えるということはありません。 左は12月、右は3月の様子。中央に植えたパンジー&ビオラがこんもり盛り上がるように茂ってボリュームたっぷり。 それに比べて一重の中輪や小輪は、植えたときの3〜5倍くらいになることも珍しくないので、こうした生育の差のあるものを同じ鉢に植えると、鉢の片側だけがものすごくボリュームが出てバランスが悪くなったりします。経験を積むとそうした品種ごとの違いが分かってきますが、一番失敗がないのは同じ品種で色違いを寄せ植えにすること。生育のバランスが揃うと、春になっても姿のよい鉢になります。 左/同じタイプのパンジー&ビオラを寄せ植えすると、同じように茂って形のよい鉢姿になる。右/生育の違いで左右差がはっきり出た鉢植え。 強烈な個性派パンジー×ダークカラーの鉢でシックな雰囲気 八重咲きで花弁のフリルがまるでサンゴ礁のようなサトウ園芸のパンジー‘ドラキュラ’。花心が黒くベインと呼ばれる筋模様が入る個性強めの花は、ダークカラーの鉢と相性ぴったりです。花はカラフルな取り合わせでも、鉢色をダークカラーにするとシックな雰囲気にまとまります。前述した通り、一般的な一重のパンジーに比べて春の花数の増え方は控えめですが、一輪のもちがものすごくよいのもこの花の特徴です。一重の花は咲いてしおれるまでが早いので、花がら摘みを始終する必要がありますが、この花はその手間がなく美しさを長くキープしてくれます。ただし、八重咲きは山陰では雪に弱いので、軒下が定位置です。 パンジー&ビオラには‘ドラキュラ’に限らず花心が黒っぽく染まるものが多くあるので、黒色やディープパープルの鉢色はよく似合います。この鉢は英国王立の植物園Kew garden(キューガーデン)によって認定された高品質釉薬シリーズで、さまざまなカラー展開があり、色幅豊かなパンジー&ビオラとのコラボが楽しめる鉢です。全てのアイテムに公式ロゴ「ROYAL BOTANIC GARDENS-KEW-」が刻印されており、高貴な雰囲気も魅力。 釉薬鉢、陶器鉢の冬期使用の注意点 釉薬とは素焼き鉢に光沢を出すガラスコーティングのようなもので、液体が染み込んだり染み出したりするのを防ぐため、食器などによく使われる焼き物の技法です。底部は素焼きになっていることがほとんどで、排水には問題ありません。ただし、寒冷地では内部に残った水分が凍結し、ひび割れが発生することがあるので、気温が下がる夜間まで水が鉢内に過剰に残らないよう午前中に水やりをするなど注意が必要です。0度を下回るような厳しい冷え込みが予想される場合は、室内に取り込んだほうが無難。陶器鉢も同様です。 透明ブルー系パンジー×モノトーン鉢でロマンティックに! パンジー&ビオラにはとても一言で「何色」と言えないような繊細な花色がたくさんあります。特にブルーの透明感のある花色を引き立てるには、色彩を排除したモノトーンの鉢がよく似合います。植木鉢といえば茶色のテラコッタが一般的ですが、ブルー系の花色にはウォームカラーのテラコッタが強すぎることがあるので、黒、白のほか、グレーの鉢もおすすめです。 透明感あふれるブルーが魅力のビオラ‘レディ’。 白い鉢はソフトな色合いのパンジーもより美しくロマンティックな雰囲気に仕立ててくれる。 花色と鉢色を合わせたワントーンコーデ カラフルな色合いがたくさんあるパンジー&ビオラですが、なかでも黄色の花は遺伝子上誕生しやすく、花付きのよい品種も多いです。ですから、黄色の鉢はパンジー&ビオラと合わせやすく、一つ持っておいて困らないカラーの植木鉢。冬の間は曇りや雨の日が多い山陰では、明るい黄色の植木鉢とパンジーがひだまりのような明るさをもたらしてくれます。 花色と鉢色を合わせたワントーンコーデは1鉢1株でも目を引く存在感があるので、ガーデンテーブルの上や門柱の上など、狭い場所でも活躍します。小ぶりで色柄ものが多くあり、パンジー&ビオラとのコーディネートが楽しめます。 カラフルな釉薬鉢を並べて。左2鉢は英国ウィッチフォードポタリー製。雨ざらしにならない軒下で管理。 花柄&レリーフ鉢でエレガントな寄せ植え 青い花柄の鉢に合わせてブルー系のパンジー&ビオラとコーディネートしました。花柄の鉢はあまり多くはありませんが、このウィリアム・モリスシリーズの鉢はどんな花も不思議と上品にまとまります。ウィリアム・モリス(William Morris)は19世紀に活躍した英国の思想家、詩人、芸術家で、草花や自然をモチーフにしたファブリックや壁紙を数多く残しました。「美しいと思わないものを家に置いてはならない」という信念のもと作品を作り、“芸術と仕事、そして日常生活の統合”という理念を掲げたモリスのアーツ&クラフツ運動は近代デザイン史に大きな影響と与えました。 モリスの代表的なパターンであるフローラルやウィロー(柳の葉)などのバリエーションがあり、サイズも大中小と揃うので置き場所に合わせて選べます。 こちらはローラ・アシュレイの横長のコンテナで、白一色ですが全面に花柄のようなクラシカルなレリーフが浮かび上がります。横長のフォルムはフォーマルな印象なので、玄関前などにおすすめです。淡いラベンダー色のパンジーとスイートアリッサムをコーディネートして、エレガントにまとめました。 籐のバスケットに花たっぷりで田舎風リラックス ピンク系のパンジー&ビオラを主役にガーデンシクラメンやブラキカム、ルブス、エリカなどを寄せ植えしました。いろいろな種類がたっぷり入っているのがバスケットの雰囲気には似合うような気がします。バスケットタイプの鉢は中にビニールがセットしてあり、土がこぼれないようになっています。どんな花色にも似合い、軽量で移動しやすいのも優れた点です。この鉢は持ち手がついているのもポイント。 バスケットにパンジー&ビオラをたっぷり寄せ植え。 サイズ豊富な定番テラコッタは1株植えからたっぷり寄せ植えまで 英国ウィッチフォードのテラコッタ鉢はパンジー&ビオラを上品に見せてくれる。 鉢の定番といえばテラコッタ。植木鉢の中では最もデザインもサイズも豊富で選び放題です。大鉢はたっぷり寄せ植えをすると、彩りの少ない冬の庭を華やかに彩ることができます。3号サイズの小さな植木鉢は1株だけをコレクション的に愛でるのにぴったり。英国にはプリムラ・オーリキュラを1鉢1種植えて専用の棚に並べた「オーリキュラ・シアター」という観賞方法がありますが、近年の芸術的なパンジー&ビオラもそのような飾り方をしたら壮観に違いないと思います。 英国で伝統的なオーリキュラ・シアター。Wiert nieuman/Shutterstock.com 我が家の玄関は、冬はさながらパンジー&ビオラシアターです。階段を利用して大小さまざまな鉢にパンジー&ビオラを植えていますが、この花たちのおかげで冬はほとんど晴れることがない米子の冬も気持ちを明るく過ごせます。こちらでは雪が降る前の今がちょうど植えどき。今年も新たな花との出会いと寄せ植えをめいっぱい楽しんでいるところです。
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寄せ植え・花壇
【パンジー&ビオラ】冬こそ活躍する寄せ植え! 大鉢、中鉢、小鉢の効果的な生かし方と植え方
鉢のサイズごとに活躍する場所が異なる! まず最初に植木鉢の基本をおさらい。鉢のサイズは1号、2号と呼び、1号で直径3cm、2号で6cm。号数×3cmが鉢の直径です。この庭では大鉢は13号以上、中鉢は7〜12号、小鉢は6号以下が目安。それぞれの大きさで活躍する場所が異なります。 庭のフォーカルポイントになる大鉢 13号以上の大鉢はたっぷり花が入り、高さもあるので庭の中に置くとフォーカルポイントとして活躍してくれます。特に秋冬の庭では草丈の小さなパンジー、ビオラなどの花材が多いので、地植えにプラスして大鉢の寄せ植えを置くと目線のやや高い場所にも彩りが出て、平面的になりがちな風景に変化が生まれます。大鉢は深さがあるので、低木など高さが出る種類もいれることができます。 【使った植物】 <低木> ・ギョリュウバイ ・サザンクロス ・ヘーベ <つる植物> ・ヘデラ <一年草> ・パンジー&ビオラ ・アリッサム ・カルーナ(一年草扱い) アプローチに格式を演出する大鉢 大鉢は玄関前や庭の入り口などに、格式を演出する存在感があります。この鉢で使っているのはパンジー&ビオラ、ガーデンシクラメン、ハボタンの3種類の代表的な冬の素材で、一つひとつはそれほど主張の強い花ではありませんが、大鉢1つにまとめることで華やかさを演出することができます。小鉢に分散させることもできますが、鉢の色や素材感の異なるものをたくさん並べると、ごちゃごちゃした印象になってしまいがち。鉢をたくさん置く場合には鉢の色や素材感も統一感を出した方がよいです。その点、大鉢1つは手軽に印象的な風景が作れます。 【使った植物】 <一年草> ・ガーデンシクラメン ・ハボタン ・パンジー&ビオラ 大鉢の寄せ植えの手入れのコツと注意点 大鉢に土が入り植物を植えると、とても重くなるので、基本的に移動できません。日当たりなどを考慮して置く場所や鉢を吟味して置く必要があります。そして、何を植えるか植物選びもポイントです。鉢の容量が大きいのでバラや大型の宿根草ももちろん育てられますが、こうした花々は見頃が短期間のことが多いです。玄関前など目立つところに置いた場合、花期以外は見所が少ない鉢になってしまいます。ですから、私は季節ごとに植え替えることを前提とし、一年草を主役にしています。一年草は1シーズン限りですが、一緒に植えた低木や宿根草は庭におろして再利用もできます。株数はトータルで20〜30株植え込みます。 【使った植物】 <低木> ・ギョリュウバイ ・ヘーベ <つる植物> ・ハツユキカズラ ・ヘデラ <一年草> ・キンギョソウ ・ネメシア ・パンジー&ビオラ ・アリッサム ・カルーナ(一年草扱い) 大鉢の寄せ植えの植え替え方 ①前シーズンの植物を抜く まずは茂って乱れた前シーズンの植物を抜きます。大鉢に植えた植物は根が深くまで張っているので、抜くときは柄の長さが約50cmの中くらいサイズのシャベルで掘り起こすようにするとよいです。 大鉢の植え替えに重宝するツール。柄の長さが50〜60cmで扱いやすい。 ②土を1/3入れ替える 植え替えをするときは土も入れ替えます。土をそのまま使うと、次の植物がうまく育ちません。というのも、土の栄養分が前の植物に使い果たされた状態であったり、病害虫がいることがあるからです。ただし、大鉢の場合は全部の土を入れ替える必要はありません。1/3ほどの土を出して、前の植物の根っこや土中に潜んでいる害虫も取り除きましょう。 ③元肥を入れる 次の植物がよく育つように元肥を入れ、その上から新しい用土を鉢縁から10cm程度下くらいまでになるよう足します。 ④植物を仮置きして配置を吟味 いきなり植物を植えずに、ポットのまま仮置きしてバランスをみます。全方位的に観賞する場合は草丈の高い植物を中央に配置し、鉢縁に向かって段々草丈が低くなるようにします。壁際などに置く場合は前と後がはっきり決まっているので、後方に草丈の高い植物を配置します。鉢縁にはいずれも枝垂れるように伸びる植物を入れると、鉢と植物の一体感が生まれます。 ⑤植物をポットから出して植栽 配置が決まったらポットから苗を出します。根が回っていれば、ほぐすとその後の生育がよくなります。根元をよく見て傷んだ葉があればこの時点で取り除いておくと病気が防げます。植栽するときは苗の向きに配慮し、一番可愛く見える方向で植えます。 ⑥苗の間に土を入れる 苗の間に土を入れていきます。植栽していく過程で、沈みこみ過ぎてしまう苗も出てくるので、埋もれてしまった花があれば少し浮かせて、その下に土を入れ込み高さを調節します。 ⑦水やりをして完了 根元に十分水がいき渡るように水やりをして完了。鉢底から水が流れ出るまでたっぷりあげましょう。冬の間はあまり花が咲き進みませんが、花がらを見つけたら摘み取りましょう。定期的に液肥を与えると寄せ植えの見頃が長くなります。 【使った植物】 <低木> ・ロフォミルタス‘マジックドラゴン’ <つる植物> ・コウシュンカズラ <一年草> ・パンジー&ビオラ ・アリッサム ・カルーナ(低木・一年草扱い) ・エリカ‘フラワーレインドロップ’ (低木・一年草扱い) <宿根草> キンギョソウ‘スカンピードラゴン’(カラーリーフとして) 最も扱いやすい中鉢の寄せ植え こちらは最も作りやすい中鉢の寄せ植えです。中鉢はスペースをとらず、移動も可能なので、玄関前や通路など人が通る場所など、どこにでも置きやすいのがメリット。10〜15株程度植栽できるので、さまざまな植物を組み合わせて複雑な表情を作り出すこともできますし、品種を絞ってインパクトを出すこともできます。 【使った植物】 <一年草> ・パンジー&ビオラ ・トウガラシ‘カリコ’ ・ネメシア ・デコベリー (低木・一年草扱い) <宿根草> ラベンダー‘バレンス・ダークバイオレット’ カリシアロザート アルテルナンテラ‘キャツラジュピター’ 庭の小道の入り口に置いた中鉢の寄せ植えです。周りにいろいろな花が咲く場所なので、寄せ植えはパンジー&ビオラに絞って印象的にしました。例えば、複数の寄せ植えの鉢を並べる場合も、シンプルな鉢植えと複数種類の植物が入った複雑な寄せ植えを組み合わせると、見応えのある風景になります。 【使った植物】 <一年草> ・パンジー&ビオラ ・アリッサム レア品種をコレクションする小鉢の寄せ植え パンジー&ビオラは一輪で複雑な表情を持つ絞りやフリル、フリンジなど、工芸品のような花があります。入手するのも困難な品種も少なくありませんが、運よくそんなレア品種と出会えたときには小鉢でコレクション的に楽しみます。ガーデンテーブルや門柱の上に置けるサイズ感なので、風景のワンポイントになります。 【使った植物】 <一年草> ・フリンジのパンジー ・原種シクラメン・コウム 【使った植物】 <一年草> ・フリンジのパンジー&ビオラ2種 単品植えの小鉢の「寄せ鉢」 1鉢に1種ずつ植えた小鉢を並べてコーディネートした寄せ植えならぬ「寄せ鉢」の窓辺です。小鉢を複数並べる場合は鉢の素材感や色を合わせると花が引き立ちスッキリ見えます。パンジー&ビオラは品種数がとても幅広いので、1鉢ずつ異なる品種を植えた寄せ鉢もおすすめです。 大鉢、中鉢、小鉢のコーディネート 大鉢、中鉢、小鉢を並べた庭のテラスです。大鉢と中鉢のパンジーは同じものを入れてコーディネートしました。寄せ植えはなんといっても地植えにできない場所でも華やかに演出できるのがメリット。さまざまなサイズの寄せ植えを作って家の周りを彩ってみてはいかがでしょうか。
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寄せ植え・花壇
【球根の買い時!】組み合わせてかわいいチューリップおすすめ品種
チューリップの球根の買い時と植え時は別 チューリップは植物にさほど関心のない人でも春らしさを感じる花です。季節感の演出には欠かせないので、クリニックの庭では小道の両側に沿ってたくさんのチューリップを植え、待合室から見えるメインガーデンも毎年趣向を変えたチューリップガーデンにしています。球根は十分寒くなってから植えないと、土の中で腐ってしまったり、早く芽が出てしまうので、この庭では年を越して1月になってから植えています。ただし、球根を買うのは今。人気品種はのんびりしているとすぐにsold outになってしまうため、早めに入手し、家の涼しい場所で植え時になるまで保管しておきます。 チューリップの原種系はコスパ優秀、園芸品種は豪華絢爛 左は原種系チューリップの‘レディージェーン’、右は園芸品種の‘ブラックパーロット’。Sebastian 22、KrisJacques/Shutterstock.com チューリップには大きく分けて「原種系」と「園芸品種(改良種)」があります。園芸品種のほうが圧倒的に種類が多く、八重咲きやフリンジ咲き、花弁が波打つパーロット咲きなど、おしゃれで豪華なものもたくさん! ただ、こうした品種特性は基本的に1年限りで、植えっぱなしにして翌年も開花する確率は低く、咲いたとしても花が小さくなったり、色が違っていたり、前年と同じとは限りません。ですから園芸品種は一年草として扱うことが多いのに対し、原種は植えっぱなしで何年も同じように咲いてくれるのでコスパ優秀です。ただし、原種は品種数が限られ、園芸品種のような大輪で豪華なものはなく、素朴で愛らしい花姿が特徴です。それぞれによさがあるので、私は植え場所の雰囲気に合わせて、原種も園芸品種もどちらも植栽して楽しんでいます。 チューリップには早咲き、遅咲きがあります 左は早咲きの‘アプリコットインプレッション’、右は遅咲きの‘レモンシフォン’。 チューリップにはとても多くの品種があり、毎年違う雰囲気のものにチャレンジできるのも楽しいところです。品種の違いは見た目だけでなく、開花期にも差が生まれます。「早咲き」は3月下旬から、「遅咲き」は4月中旬から咲き、品種によっては開花期に1カ月近くの差がある場合もあります。同時に咲かせたいときは開花期が同じものを選ぶ必要があり、逆に開花期の異なるものを植えれば、リレーするように花が咲き継ぎ、チューリップのシーズンを伸ばすことができます。私はどちらの方法も取り入れています。 チューリップシーズンを伸ばす開花期違いの組み合わせ ここはクリニックの待合室から見えるメインガーデンで、4月初旬から中旬にかけての風景です。朱色のチューリップは早咲きの‘アプリコットインプレッション’という品種で、ブルーのデルフィニウムやネモフィラとのコントラストが気に入っています。‘アプリコットインプレッション’は、20日過ぎには花が傷んでくるので、咲き終わったら葉だけ残して花茎を切り取ります。球根ごと抜き取ると、庭にボコボコと違和感のある「空き」が生まれるので、季節が進んで他の草花が大きくなってきたタイミングで球根を抜き取ります。 チューリップ‘アプリコットインプレッション’とブルーの花の共演。チューリップは一直線でなく、少しランダムに植えると自然な雰囲気。 上写真は、20日過ぎの風景。‘アプリコットインプレッション’から、淡い黄色の‘レモンシフォン’へバトンタッチしました。こちらは4月中旬から咲き出し、5月初旬まで咲いてくれる遅咲きです。チューリップが交代しただけで、庭の雰囲気が一気に変わると思いませんか。段々と気温が高くなるなかで、レモンイエローとブルーのコンビネーションが庭に爽やかさをもたらしてくれます。咲き継がせるときは、こんなふうに印象がガラッと変わるような2種を選ぶと、歌舞伎の早替わりのようで面白いですよ。 白とレモンイエローがやさしい雰囲気のチューリップ‘レモンシフォン’。冬から咲いているシックなパンジーとも相性抜群。 同時に咲かせて可愛い原種系と園芸品種の組み合わせ ピンクの背の高いチューリップは‘ホーランドチック’。咲き始めは白色で、咲き進むにつれピンクと白が入り交じり、変化が楽しい花です。‘ホーランドチック’の株元でパンジーに交じって咲く小さな黄色のチューリップは、原種系の‘ブライトジェム’。ヒヨコみたいなかわいらしい花で、どのチューリップとも相性がよいので、こちらは植えっぱなしです。 同じ小道の別の年。淡いピンクのチューリップは‘シルバークラウド’。 原種系の‘ブライトジェム’は草丈が20cm程度で愛らしい。 ピコティ品種と単色の園芸品種の組み合わせのコツ 単色のチューリップは‘パープルハート’、花弁が赤色で縁取られるピコティ咲きは‘ビューティートレンド’です。どちらも4月上旬〜中旬にかけての早咲き品種です。ピコティや斑入り品種は個性的でとても美しいのですが、それだけだと意外と風景に紛れてしまい目立たないので、単色のチューリップを少量混植して存在感を引き立たせるのがポイントです。その際、単色のチューリップは縁取りの色と合わせると、おしゃれにまとまります。 チューリップと他の球根花との組み合わせ 春の球根花はチューリップばかりではないので、他の花との組み合わせも楽しめます。ここは前出の小道の庭で、今年2024年の風景です。シックな赤色が魅力のチューリップ‘ラスティングラブ’が引き立つように、白色のアリウム・コワニーを添えるように植えました。アリウムといえばバラの頃に咲く紫色の大きなギガンチウムが有名ですが、コワニーは4月下旬から咲き出す小型種で、白色の愛らしい花です。‘ラスティングラブ’は遅咲きのチューリップなので、アリウム・コワニーとベストマッチ。 チューリップ‘ラスティングラブ’とアリウム・コワニー。コワニーは花もちがよく、切り花としても重宝します。 ‘ラスティングラブ’は今年初めて咲かせた赤色のチューリップで、とてもよかったのでちょっと熱弁を振るわせていただきます。まず名前が素敵! そして、なんといってもシックで上品な赤色は、何人もの患者さんから褒められました。見る時間帯や光によって透き通るような澄んだ赤色だったり、ベルベットのような濃厚な感じになったり、表情豊かなのも魅惑的。写真の右側はもう花が終わりそうな頃ですが、多くのチューリップが花の終わりはバラーンとだらしなく花びらが開いてしまうのに対し、‘ラスティングラブ’は静かにひっそり萎んでいくのもいいところ。ご覧のように花色もあせるというより、黒っぽく凝縮されていく感じなので、だいぶ長く庭に残しておいてもOKでした。 木の株元は野原のような原種系ゾーン ここは枝垂れ桜の株元付近です。自然な雰囲気にしたかったので、小輪で細身のものが多い原種系のチューリップや、小型の球根花のスイセン、ムスカリ、クロッカスなどを混植しています。植えっぱなしでいいので、掘り返して木の根を傷つける心配もありません。原種系の花は小ぶりなので、1穴にある程度まとめて球根を植えるのがポイントです。 黄色と赤の2色咲きの原種系チューリップ‘クルシアナシンシア’。 ムスカリと原種系チューリップ‘ヒルデ’の共演。 買い逃しのないよう、早めのお買い物を 球根の植え時はイチョウが黄葉する頃が目安とされていますが、最近は温暖化でズルズルと遅くなっており、球根の流通時期とかなり時差が生まれています。深い雪に覆われる場所でない限りは、年を越して1月に植えたとしても問題なく咲きます。しかし、植え時には肝心の球根が入手できないことも多いので、買い逃しのないよう早めの計画&お買い物をおすすめします。かくいう私も、毎晩来年の春の庭を想像しながら眠りにつく日々。文字どおり、寝ても覚めてもガーデニングに夢中です。
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おすすめ植物(その他)
【今が買い時!植え時!】植えっぱなしOKの丈夫な夏植え球根で秋の庭準備
キラキラ花が輝く夏植え球根ネリネ ネリネは、ヒガンバナ科ヒメヒガンバナ属(ネリネ属、Nerine属)に属する多年草の球根植物。南アフリカ原産で、8月のお盆すぎから9月にかけて球根を植えると、10月中旬~12月中旬に花を咲かせます。多くの品種はヒガンバナと同様、葉よりも先に、まっすぐ伸びた茎の先にリボンを細工したような愛らしい花を咲かせます。クルッとひるがえる細い花弁の表面にはラメを振ったかのようなキラキラがあり、光を受けて花が輝くことからダイヤモンドリリーという別名があります。 ネリネ・サルニエンシスをもとに改良された園芸品種が多く流通しており、ピンク、オレンジ、紫、複色など多彩なバリエーションがあります。開花すると3週間ほどきれいな花姿を楽しむことができ、花もちがよいことからフラワーアレンジメントでも人気です。 ネリネは細身で他の草花とも組み合わせやすいのがお気に入りの理由の1つ。秋になると草花の茂みからスーッと茎が伸び、30〜40cmの高さにフワッと花を咲かせます。同じピンク系のコスモスや夏から咲いているクレオメとも相性がよいですし、紫色のサルビアとも引き立て合います。 レイズドベッドなら球根の管理もラク 一般にネリネは寒さや過湿に弱く、冬は霜の降りない場所に移動したほうがよいといわれていますが、私が育てている花壇では、植えっぱなしで何年も同じように咲いてくれます。この花壇は50cmほどの高さがあるレイズドベッドなので、水はけや保温性が地植えよりよいためかもしれません。この管理の手軽さもお気に入りの理由です。花後は茎を切り、葉っぱは球根に栄養を送るため黄色くなって枯れるまでそのままにしておきます。肥料は特にネリネのために、というわけではありませんが、さまざまな花が植わっているため定期的に供給されている状態です。冬にはいつの間にか葉もなくなって、どこに球根を植えたのか分からなくなってしまいます。そのため、パンジー、ビオラなど冬の花に入れ替える際に、ときどきネリネの球根を掘り起こしてしまうことがあるものの、また埋めておけば問題ありません。 希少ネリネを育種する横山園芸 そんなわけで、わりと放任気味に育てているせいか、ダリアなどの球根のように年々太って花数が増える、ということは私の花壇ではないのですが、もっと丁寧に管理したら増えるのかもしれません。今度、ネリネの育種を行っている横山園芸の横山直樹さんに聞いてみたいと思っています。ちなみに私の花壇のネリネはすべて横山園芸のもので、冬のクリスマスローズ展での出店で見つけたものです。クリスマスローズ展は例年2月に行われますが、ハウスで栽培された開花株の希少なネリネに出会えます。 そんな希少ネリネの1つが ‘クリスパリリー’(上)。横山さんの育種品種で、丈夫で育てやすいネリネ・ウンデュラータ(通称クリスパ)と、花が大きいダイヤモンドリリーの交配種です。花は一般的なダイヤモンドリリーに比べると小ぶりですが、丈夫で露地栽培が容易なのが特徴。波打つ花弁がとても繊細な雰囲気です。 もちろん、植えどきを迎える夏から秋にかけては、ガーデンセンターや園芸店で多くのネリネの球根に出会えます。 冬にグラウンドカバーとしても活躍するオキザリス・バーシカラー オキザリス・バーシカラーも夏植え秋咲き球根です。カタバミ科カタバミ属の耐寒性多年草で、花は11〜3月くらいまで咲き、冬の花が少ない頃の貴重な彩りとなってくれます。花弁が赤く縁取られ、クルクルと丸まったつぼみの様子はキャンディーのようでとても愛らしいです。晴れのときは花が開き、太陽が見えないときはクルクルと丸まり花が閉じます。 春に開花期が終わってからも緑の絨毯として活躍してくれるのもお気に入りです。オキザリスはカタバミの仲間ですが、このバーシカラーは葉っぱが小ぶりで芝生のような雰囲気になるので、ご覧のようにムスカリなど春の球根花を美しく見せてくれます。グラウンドカバーはいろいろありますが、秋から冬にかけて活躍するものは貴重です。この庭では建物の北側に位置する場所で育っているため、日照がやや不足しているのか株を覆うほどには花は咲きませんが、緑の中にポツポツ咲く程度が、かえって私は気に入っています。 オキザリス・バーシカラーの育て方 8〜9月に元肥を入れた土に球根を植え付けます。過湿を嫌うので、地植えの場合は砂を土に混ぜ、やや盛土気味にすると水はけがよくなります。地植えは自然の降雨で十分です。年々咲き広がっていくので、ときどき抜いてコントロールしています。夏は休眠期のため、一見枯れてしまったかのようにも見えますが、秋になると再び葉が瑞々しく茂ってきます。病害虫もなく、ほとんど手間がかかりません。2年目以降花が増えて華やかになります。
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観葉・インドアグリーン
【ローメンテナンスで真夏もきれい!】豪雨・猛暑に耐える植物で盛夏の庭を美しくキープ
猛暑&豪雨に耐える植物が盛夏の庭のポイント 近年の夏の気候はとても極端ですよね。晴れれば40℃に迫る高温で、雨かと思えば1カ月分の降水量が数時間で降ってしまったり。つい先日も山陰は3時間で100mmを超える雨が降り、庭が池のようになってしまいました。この激しい気候に戸惑うのは人ばかりではありません。これまで夏にきれいに咲いていた植物も、この気候に耐えられないものが出てきました。 豪雨で水没した庭とクシャクシャになってしまったユウギリソウ。水は数時間で引くものの、繊細な花は復活が難しい…。 例えば、ふわふわと繊細な花を咲かせるユウギリソウやペチュニアの一部の品種は、叩きつけるような豪雨で花がすっかりクシャクシャになってしまい、晴れても復活が難しい場合があります。ですから、夏に庭を美しく保つには、「耐暑性」に加え、「耐雨性」も植物選びの大事なポイントになってきました。さらに、炎天下の庭に出て頻繁に手入れをしなくてもいいように、「ローメンテナンス」かつ「ロングライフ」であることも条件。 耐暑性 耐雨性 ローメンテナンス ロングライフ これらたくさんの要求に応える植物を、一緒に庭づくりをするガーデナーの安酸友昭さんと考えた結果、近年盛夏の庭に取り入れ始めたのが「観葉植物」です。 盛夏の庭に取り入れたいローメンテナンスな観葉植物 室内に潤いをもたらすインドアグリーンとして愛好家も多い観葉植物。DimaBerlin/Shuttestock.com 観葉植物の多くは熱帯地方原産で、耐暑性に優れ、強い雨にも耐える丈夫な葉を持っています。葉を楽しむ植物なので、花がら摘みなどの手入れの必要もなく、見頃が長いのも条件にぴったり。しかし、観葉植物にはたくさんの種類があり、すべてが庭植えできるわけではないので、種類ごとの特徴を押さえておくことがポイントです。 庭植えできる観葉植物の条件 人気の高いフィカス(インドゴムノキ)は、屋外では半日陰が栽培適所。Felix Hobruecker/Shutterstock.com 観葉植物を庭植えする場合、気を付けたいポイントは2つあります。まず1つ目は、直射日光OKかどうかです。意外かもしれませんが、観葉植物の中には直射日光が苦手なものが結構多いのです。というのも、観葉植物の原産地は熱帯地方のジャングルなど鬱蒼とした密林です。開けた野原のように太陽が降り注ぐ場所ではないため、直射日光にさらされると種類によっては葉焼けして枯れてしまうものもあります。そのため栽培適所が「明るい半日陰」の場合は、木陰などを選んで植栽する必要があります。 そして2つ目は、大きさです。観葉植物は寒さが苦手で、多くは10〜5℃以下になると枯れてしまいます。ですから、秋には掘り上げて室内で養生することを前提としているので、草丈50〜60cmまでくらいのものが適しています。 日向でOK! カラフルな葉が魅力のカラジウム ピンクの葉のカラジウムと紫の葉のアルテルナンテラ‘リトルロマンス’のコンビネーションが美しい。 上記の条件を満たす観葉植物の1つが、カラジウムです。カラジウムは熱帯アメリカなどを原産とするサトイモ科の植物で、夏の直射日光下でもOK。ピンクや白色の模様が入る大きな葉は、緑が濃い真夏の庭でもよく目立ち、室内から眺めていても存在感があります。私の庭ではガーデン用に生産されたガーデンカラジウム‘ハートトゥハート’を地植えや寄せ植えに取り入れています。この品種は日向でも日陰でもOKなので、植える場所を選びません。 カラジウムなど葉色の鮮やかな植物を使った真夏の寄せ植え。赤い花はカンナ‘トロピカル ブロンズスカーレット’。秋まできれいに維持できます。 注意したいのは、観葉植物用に生産された苗の場合、いきなり強い直射日光に当てるとカラジウムでも葉焼けすることがあるということです。園芸店の観葉植物コーナーなどで買った苗の場合は、ハウスの中で幾分遮光された環境で育っているため、いきなり真夏の直射日光にさらすのではなく、徐々に外に出してならすといいでしょう。室内で養生していたものを地植えにする場合も同様です。 日陰で美しい葉を楽しむポトス 一方、ポトスは直射日光に当たると葉焼けを起こしてしまうので、半日陰の場所を選んで寄せ植えの鉢を置いています。黄色や白色の斑入り、ライム色など爽やかな葉が魅力で、日光には弱いですが高温多湿には強いので、場所さえ選べば日本の夏の気候にはぴったりです。つる性なので、少し高いところに鉢を置いたり、ハンギングにして枝垂れさせると、美しい葉が堪能できます。 北側の庭に置いた寄せ植え。ライムグリーンの葉と紫の花のトレニアなどをコーディネート。 草取りの手間を低減してくれる這い性のコリウス コリウス‘グレートフォール’シリーズの色違いを混植。 夏の庭の大きな課題の一つが雑草です。今や真夏の草取りは危険行為ですが、だからといって草ボウボウにしておくのもイヤなもの。そんなジレンマを解消してくれるのが、這うように育つグラウンドカバープランツ。草で草を制する作戦です。 真夏の庭のグラウンドカバーとしておすすめなのが、這性いのコリウス。葉が低くカーペットのように広がり、1株で60cm以上になる‘グレートフォール’シリーズや‘トレイルブレイザー’シリーズはグラウンドカバーとしても機能し、雑草が生える隙を与えないので重宝します。花にも負けない華やかなカラーがあり、花がら摘みなどの手間もないので管理も楽です。 這い性のコリウスで赤い葉が美しい‘トレイルブレイザー ロードトリップ’。写真提供/エム・アンド・ビー・フローラ 見栄えがよくローメンテナンスな花の組み合わせ ヒマワリ‘サンフィニティ’は1株で50〜100輪以上の花が咲くともいわれます。センニチコウ‘ファイヤーワークス’は長期間色褪せないためドライフラワーにも。 真夏の花の中では、センニチコウ‘ファイヤーワークス’とヒマワリ‘サンフィニティ’は草丈が腰高以上になり、庭の景色を作るのにおすすめです。両者は多花性で1輪の花もちがよく、初夏から秋まで長期間咲くなど多くの共通点があります。生育旺盛で盛夏には株張りが1m近くにもなり、花があちこちを向いて咲きワイルドな雰囲気。この庭では石積みの壁の前に植栽していますが、こうした構造物を背景にすると株姿が多少乱れても荒れた感じにならず、程よくナチュラルにまとまります。 ‘サンフィニティ’は一年草で、‘ファイヤーワークス’は暖地であれば宿根しますが、山陰の冬は雪が多く寒さが厳しいため一年草として扱います。 夏に向かって美しさを増す大鉢の寄せ植え 真夏の寄せ植えの課題は水切れです。その点、大鉢は水もちがよいので安心。大鉢は季節ごとにそっくり入れ替えるのは大変ですが、この寄せ植えは春からマイナーチェンジを繰り返しながら咲き継がせています。ブラウンの葉のウンシニア・ルブラやピンクの小花のクフェア‘ピンクシマー’は、5月に植えたものをそのまま残しています。夏から秋にかけては、紫色の花のヘリオトロープやピンクの花が咲く多肉植物のセダム‘ゼノックス’が存在感を増します。 上の鉢の前の季節の様子。見頃の花を少しずつマイナーチェンジしながら、5カ月咲き継がせます。 環境に貢献する庭づくり 庭づくりをしていると気候の変化を肌で感じ、地球の危機的状況を不安に思うことがありますが、同時に植物がいかに大切な存在かも改めて感じます。真夏に木々が提供してくれる木陰はホッと一息つける安全地帯ですし、植物が生えている場所はアスファルトの場所とは体感温度が明らかに違います。そして、植栽帯は一度に降る豪雨を吸収し、道路が水であふれるのを防ぐのにも一役買っているはずです。少しでも環境に貢献していると思うと、知恵と工夫を絞って庭づくりをするのがいっそう有意義に感じられます。