おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-
おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-の記事
-
寄せ植え・花壇
【おしゃれガーデニング術】パンジー&ビオラの品種の違いを生かして魅せる! 鉢植えコーディネート
鉢とのコラボでかわいさが際立つパンジー&ビオラ パンジー&ビオラはさまざまな花色や花形があり、毎年驚くような花色の新品種が登場します。地植えでも冬の庭をかわいらしく彩ってくれますが、草丈10〜20cm程度のパンジー&ビオラは、鉢植えにするとよりその魅力が際立ちます。定番のテラコッタの鉢はもちろん、多彩な個性の花をさまざまな植木鉢とコーディネートするのは、着せ替え人形のような楽しさがあり、寄せ植えや鉢植えがこれほど楽しみな花は他にありません。 パンジー&ビオラの品種ごとに異なる生育の違い 左は12月、右は3月の様子。八重咲きのフリルは花数の増え方は2倍ほど。 多彩な個性は色や形の違いだけではなく、育ち方にも違いがあります。この生育の違いは、植えたばかりの頃は気になりませんが、春になると明確に現れてくるので、パンジー&ビオラの品種違いを寄せ植えにするときは、生育差も考慮して組み合わせます。例えば、八重咲きのフリルの強い花は、一輪を咲かせるのにパワーを使うため、春になっても花数がものすごく増えるということはありません。 左は12月、右は3月の様子。中央に植えたパンジー&ビオラがこんもり盛り上がるように茂ってボリュームたっぷり。 それに比べて一重の中輪や小輪は、植えたときの3〜5倍くらいになることも珍しくないので、こうした生育の差のあるものを同じ鉢に植えると、鉢の片側だけがものすごくボリュームが出てバランスが悪くなったりします。経験を積むとそうした品種ごとの違いが分かってきますが、一番失敗がないのは同じ品種で色違いを寄せ植えにすること。生育のバランスが揃うと、春になっても姿のよい鉢になります。 左/同じタイプのパンジー&ビオラを寄せ植えすると、同じように茂って形のよい鉢姿になる。右/生育の違いで左右差がはっきり出た鉢植え。 強烈な個性派パンジー×ダークカラーの鉢でシックな雰囲気 八重咲きで花弁のフリルがまるでサンゴ礁のようなサトウ園芸のパンジー‘ドラキュラ’。花心が黒くベインと呼ばれる筋模様が入る個性強めの花は、ダークカラーの鉢と相性ぴったりです。花はカラフルな取り合わせでも、鉢色をダークカラーにするとシックな雰囲気にまとまります。前述した通り、一般的な一重のパンジーに比べて春の花数の増え方は控えめですが、一輪のもちがものすごくよいのもこの花の特徴です。一重の花は咲いてしおれるまでが早いので、花がら摘みを始終する必要がありますが、この花はその手間がなく美しさを長くキープしてくれます。ただし、八重咲きは山陰では雪に弱いので、軒下が定位置です。 パンジー&ビオラには‘ドラキュラ’に限らず花心が黒っぽく染まるものが多くあるので、黒色やディープパープルの鉢色はよく似合います。この鉢は英国王立の植物園Kew garden(キューガーデン)によって認定された高品質釉薬シリーズで、さまざまなカラー展開があり、色幅豊かなパンジー&ビオラとのコラボが楽しめる鉢です。全てのアイテムに公式ロゴ「ROYAL BOTANIC GARDENS-KEW-」が刻印されており、高貴な雰囲気も魅力。 釉薬鉢、陶器鉢の冬期使用の注意点 釉薬とは素焼き鉢に光沢を出すガラスコーティングのようなもので、液体が染み込んだり染み出したりするのを防ぐため、食器などによく使われる焼き物の技法です。底部は素焼きになっていることがほとんどで、排水には問題ありません。ただし、寒冷地では内部に残った水分が凍結し、ひび割れが発生することがあるので、気温が下がる夜間まで水が鉢内に過剰に残らないよう午前中に水やりをするなど注意が必要です。0度を下回るような厳しい冷え込みが予想される場合は、室内に取り込んだほうが無難。陶器鉢も同様です。 透明ブルー系パンジー×モノトーン鉢でロマンティックに! パンジー&ビオラにはとても一言で「何色」と言えないような繊細な花色がたくさんあります。特にブルーの透明感のある花色を引き立てるには、色彩を排除したモノトーンの鉢がよく似合います。植木鉢といえば茶色のテラコッタが一般的ですが、ブルー系の花色にはウォームカラーのテラコッタが強すぎることがあるので、黒、白のほか、グレーの鉢もおすすめです。 透明感あふれるブルーが魅力のビオラ‘レディ’。 白い鉢はソフトな色合いのパンジーもより美しくロマンティックな雰囲気に仕立ててくれる。 花色と鉢色を合わせたワントーンコーデ カラフルな色合いがたくさんあるパンジー&ビオラですが、なかでも黄色の花は遺伝子上誕生しやすく、花付きのよい品種も多いです。ですから、黄色の鉢はパンジー&ビオラと合わせやすく、一つ持っておいて困らないカラーの植木鉢。冬の間は曇りや雨の日が多い山陰では、明るい黄色の植木鉢とパンジーがひだまりのような明るさをもたらしてくれます。 花色と鉢色を合わせたワントーンコーデは1鉢1株でも目を引く存在感があるので、ガーデンテーブルの上や門柱の上など、狭い場所でも活躍します。小ぶりで色柄ものが多くあり、パンジー&ビオラとのコーディネートが楽しめます。 カラフルな釉薬鉢を並べて。左2鉢は英国ウィッチフォードポタリー製。雨ざらしにならない軒下で管理。 花柄&レリーフ鉢でエレガントな寄せ植え 青い花柄の鉢に合わせてブルー系のパンジー&ビオラとコーディネートしました。花柄の鉢はあまり多くはありませんが、このウィリアム・モリスシリーズの鉢はどんな花も不思議と上品にまとまります。ウィリアム・モリス(William Morris)は19世紀に活躍した英国の思想家、詩人、芸術家で、草花や自然をモチーフにしたファブリックや壁紙を数多く残しました。「美しいと思わないものを家に置いてはならない」という信念のもと作品を作り、“芸術と仕事、そして日常生活の統合”という理念を掲げたモリスのアーツ&クラフツ運動は近代デザイン史に大きな影響と与えました。 モリスの代表的なパターンであるフローラルやウィロー(柳の葉)などのバリエーションがあり、サイズも大中小と揃うので置き場所に合わせて選べます。 こちらはローラ・アシュレイの横長のコンテナで、白一色ですが全面に花柄のようなクラシカルなレリーフが浮かび上がります。横長のフォルムはフォーマルな印象なので、玄関前などにおすすめです。淡いラベンダー色のパンジーとスイートアリッサムをコーディネートして、エレガントにまとめました。 籐のバスケットに花たっぷりで田舎風リラックス ピンク系のパンジー&ビオラを主役にガーデンシクラメンやブラキカム、ルブス、エリカなどを寄せ植えしました。いろいろな種類がたっぷり入っているのがバスケットの雰囲気には似合うような気がします。バスケットタイプの鉢は中にビニールがセットしてあり、土がこぼれないようになっています。どんな花色にも似合い、軽量で移動しやすいのも優れた点です。この鉢は持ち手がついているのもポイント。 バスケットにパンジー&ビオラをたっぷり寄せ植え。 サイズ豊富な定番テラコッタは1株植えからたっぷり寄せ植えまで 英国ウィッチフォードのテラコッタ鉢はパンジー&ビオラを上品に見せてくれる。 鉢の定番といえばテラコッタ。植木鉢の中では最もデザインもサイズも豊富で選び放題です。大鉢はたっぷり寄せ植えをすると、彩りの少ない冬の庭を華やかに彩ることができます。3号サイズの小さな植木鉢は1株だけをコレクション的に愛でるのにぴったり。英国にはプリムラ・オーリキュラを1鉢1種植えて専用の棚に並べた「オーリキュラ・シアター」という観賞方法がありますが、近年の芸術的なパンジー&ビオラもそのような飾り方をしたら壮観に違いないと思います。 英国で伝統的なオーリキュラ・シアター。Wiert nieuman/Shutterstock.com 我が家の玄関は、冬はさながらパンジー&ビオラシアターです。階段を利用して大小さまざまな鉢にパンジー&ビオラを植えていますが、この花たちのおかげで冬はほとんど晴れることがない米子の冬も気持ちを明るく過ごせます。こちらでは雪が降る前の今がちょうど植えどき。今年も新たな花との出会いと寄せ植えをめいっぱい楽しんでいるところです。
-
寄せ植え・花壇
【パンジー&ビオラ】冬こそ活躍する寄せ植え! 大鉢、中鉢、小鉢の効果的な生かし方と植え方
鉢のサイズごとに活躍する場所が異なる! まず最初に植木鉢の基本をおさらい。鉢のサイズは1号、2号と呼び、1号で直径3cm、2号で6cm。号数×3cmが鉢の直径です。この庭では大鉢は13号以上、中鉢は7〜12号、小鉢は6号以下が目安。それぞれの大きさで活躍する場所が異なります。 庭のフォーカルポイントになる大鉢 13号以上の大鉢はたっぷり花が入り、高さもあるので庭の中に置くとフォーカルポイントとして活躍してくれます。特に秋冬の庭では草丈の小さなパンジー、ビオラなどの花材が多いので、地植えにプラスして大鉢の寄せ植えを置くと目線のやや高い場所にも彩りが出て、平面的になりがちな風景に変化が生まれます。大鉢は深さがあるので、低木など高さが出る種類もいれることができます。 【使った植物】 <低木> ・ギョリュウバイ ・サザンクロス ・ヘーベ <つる植物> ・ヘデラ <一年草> ・パンジー&ビオラ ・アリッサム ・カルーナ(一年草扱い) アプローチに格式を演出する大鉢 大鉢は玄関前や庭の入り口などに、格式を演出する存在感があります。この鉢で使っているのはパンジー&ビオラ、ガーデンシクラメン、ハボタンの3種類の代表的な冬の素材で、一つひとつはそれほど主張の強い花ではありませんが、大鉢1つにまとめることで華やかさを演出することができます。小鉢に分散させることもできますが、鉢の色や素材感の異なるものをたくさん並べると、ごちゃごちゃした印象になってしまいがち。鉢をたくさん置く場合には鉢の色や素材感も統一感を出した方がよいです。その点、大鉢1つは手軽に印象的な風景が作れます。 【使った植物】 <一年草> ・ガーデンシクラメン ・ハボタン ・パンジー&ビオラ 大鉢の寄せ植えの手入れのコツと注意点 大鉢に土が入り植物を植えると、とても重くなるので、基本的に移動できません。日当たりなどを考慮して置く場所や鉢を吟味して置く必要があります。そして、何を植えるか植物選びもポイントです。鉢の容量が大きいのでバラや大型の宿根草ももちろん育てられますが、こうした花々は見頃が短期間のことが多いです。玄関前など目立つところに置いた場合、花期以外は見所が少ない鉢になってしまいます。ですから、私は季節ごとに植え替えることを前提とし、一年草を主役にしています。一年草は1シーズン限りですが、一緒に植えた低木や宿根草は庭におろして再利用もできます。株数はトータルで20〜30株植え込みます。 【使った植物】 <低木> ・ギョリュウバイ ・ヘーベ <つる植物> ・ハツユキカズラ ・ヘデラ <一年草> ・キンギョソウ ・ネメシア ・パンジー&ビオラ ・アリッサム ・カルーナ(一年草扱い) 大鉢の寄せ植えの植え替え方 ①前シーズンの植物を抜く まずは茂って乱れた前シーズンの植物を抜きます。大鉢に植えた植物は根が深くまで張っているので、抜くときは柄の長さが約50cmの中くらいサイズのシャベルで掘り起こすようにするとよいです。 大鉢の植え替えに重宝するツール。柄の長さが50〜60cmで扱いやすい。 ②土を1/3入れ替える 植え替えをするときは土も入れ替えます。土をそのまま使うと、次の植物がうまく育ちません。というのも、土の栄養分が前の植物に使い果たされた状態であったり、病害虫がいることがあるからです。ただし、大鉢の場合は全部の土を入れ替える必要はありません。1/3ほどの土を出して、前の植物の根っこや土中に潜んでいる害虫も取り除きましょう。 ③元肥を入れる 次の植物がよく育つように元肥を入れ、その上から新しい用土を鉢縁から10cm程度下くらいまでになるよう足します。 ④植物を仮置きして配置を吟味 いきなり植物を植えずに、ポットのまま仮置きしてバランスをみます。全方位的に観賞する場合は草丈の高い植物を中央に配置し、鉢縁に向かって段々草丈が低くなるようにします。壁際などに置く場合は前と後がはっきり決まっているので、後方に草丈の高い植物を配置します。鉢縁にはいずれも枝垂れるように伸びる植物を入れると、鉢と植物の一体感が生まれます。 ⑤植物をポットから出して植栽 配置が決まったらポットから苗を出します。根が回っていれば、ほぐすとその後の生育がよくなります。根元をよく見て傷んだ葉があればこの時点で取り除いておくと病気が防げます。植栽するときは苗の向きに配慮し、一番可愛く見える方向で植えます。 ⑥苗の間に土を入れる 苗の間に土を入れていきます。植栽していく過程で、沈みこみ過ぎてしまう苗も出てくるので、埋もれてしまった花があれば少し浮かせて、その下に土を入れ込み高さを調節します。 ⑦水やりをして完了 根元に十分水がいき渡るように水やりをして完了。鉢底から水が流れ出るまでたっぷりあげましょう。冬の間はあまり花が咲き進みませんが、花がらを見つけたら摘み取りましょう。定期的に液肥を与えると寄せ植えの見頃が長くなります。 【使った植物】 <低木> ・ロフォミルタス‘マジックドラゴン’ <つる植物> ・コウシュンカズラ <一年草> ・パンジー&ビオラ ・アリッサム ・カルーナ(低木・一年草扱い) ・エリカ‘フラワーレインドロップ’ (低木・一年草扱い) <宿根草> キンギョソウ‘スカンピードラゴン’(カラーリーフとして) 最も扱いやすい中鉢の寄せ植え こちらは最も作りやすい中鉢の寄せ植えです。中鉢はスペースをとらず、移動も可能なので、玄関前や通路など人が通る場所など、どこにでも置きやすいのがメリット。10〜15株程度植栽できるので、さまざまな植物を組み合わせて複雑な表情を作り出すこともできますし、品種を絞ってインパクトを出すこともできます。 【使った植物】 <一年草> ・パンジー&ビオラ ・トウガラシ‘カリコ’ ・ネメシア ・デコベリー (低木・一年草扱い) <宿根草> ラベンダー‘バレンス・ダークバイオレット’ カリシアロザート アルテルナンテラ‘キャツラジュピター’ 庭の小道の入り口に置いた中鉢の寄せ植えです。周りにいろいろな花が咲く場所なので、寄せ植えはパンジー&ビオラに絞って印象的にしました。例えば、複数の寄せ植えの鉢を並べる場合も、シンプルな鉢植えと複数種類の植物が入った複雑な寄せ植えを組み合わせると、見応えのある風景になります。 【使った植物】 <一年草> ・パンジー&ビオラ ・アリッサム レア品種をコレクションする小鉢の寄せ植え パンジー&ビオラは一輪で複雑な表情を持つ絞りやフリル、フリンジなど、工芸品のような花があります。入手するのも困難な品種も少なくありませんが、運よくそんなレア品種と出会えたときには小鉢でコレクション的に楽しみます。ガーデンテーブルや門柱の上に置けるサイズ感なので、風景のワンポイントになります。 【使った植物】 <一年草> ・フリンジのパンジー ・原種シクラメン・コウム 【使った植物】 <一年草> ・フリンジのパンジー&ビオラ2種 単品植えの小鉢の「寄せ鉢」 1鉢に1種ずつ植えた小鉢を並べてコーディネートした寄せ植えならぬ「寄せ鉢」の窓辺です。小鉢を複数並べる場合は鉢の素材感や色を合わせると花が引き立ちスッキリ見えます。パンジー&ビオラは品種数がとても幅広いので、1鉢ずつ異なる品種を植えた寄せ鉢もおすすめです。 大鉢、中鉢、小鉢のコーディネート 大鉢、中鉢、小鉢を並べた庭のテラスです。大鉢と中鉢のパンジーは同じものを入れてコーディネートしました。寄せ植えはなんといっても地植えにできない場所でも華やかに演出できるのがメリット。さまざまなサイズの寄せ植えを作って家の周りを彩ってみてはいかがでしょうか。
-
寄せ植え・花壇
【球根の買いどき!】組み合わせてかわいいチューリップおすすめ品種
チューリップの球根の買いどきと植えどきは別 チューリップは花をさほど知らない人でも春らしさを感じる花です。季節感の演出には欠かせない花なので、クリニックの庭では小道の両側に沿ってたくさんのチューリップを植え、待合室から見えるメインガーデンも毎年趣向を変えたチューリップガーデンにしています。球根は十分寒くなってから植えないと、土の中で球根が腐ってしまったり、早く芽が出てしまうので、この庭では年を越して1月になってから植えています。ただし、球根を買うのは今。人気品種はのんびりしているとすぐにsold outになってしまうため、早めに入手し、家の涼しい場所で植えどきになるまで保管しておきます。 チューリップの原種系はコスパ優秀、園芸品種は豪華絢爛 左は原種系チューリップの‘レディージェーン’、右は園芸品種の‘ブラックパーロット’。Sebastian 22、KrisJacques/Shutterstock.com チューリップには大きく分けて「原種系」と「園芸品種(改良種)」があります。園芸品種のほうが圧倒的に種類が多く、八重咲きやフリンジ咲き、花弁が波打つパーロット咲きなどおしゃれで豪華なものもたくさん! ただ、こうした品種特性は基本的に一年限りで、植えっぱなしにして翌年咲く確率は低く、咲いたとしても花が小さくなったり、色が違っていたり、前年と同じように咲くとは限りません。ですから園芸品種は一年草として扱うことが多いのに対し、原種は植えっぱなしで何年も同じように咲いてくれるのでコスパ優秀です。ただし、原種は品種数が限られ、園芸品種のような大輪で豪華なものはなく、素朴で愛らしい雰囲気が特徴です。それぞれによさがあるので、私は庭の場所の雰囲気に合わせて、原種も園芸品種もどちらも植栽して楽しんでいます。 チューリップには早咲き、遅咲きがあります 左は早咲きの‘アプリコットインプレッション’、右は遅咲きの‘レモンシフォン’。 チューリップにはとても多くの品種があり、毎年違う雰囲気のものにチャレンジできるのも楽しいところです。品種の違いは見た目だけでなく、開花期にも差が生まれます。「早咲き」は3月下旬頃から、「遅咲き」は4月中旬頃から咲き、品種によっては開花期に1カ月近くの差がある場合もあります。同時に咲かせたいときは開花期が同じものを選ぶ必要があり、逆に開花期の異なるものを植えれば、リレーするように花が咲き継ぎ、チューリップのシーズンを伸ばすことができます。私はどちらの方法も取り入れています。 チューリップシーズンを伸ばす開花期違いの組み合わせ ここはクリニックの待合室から見えるメインガーデンで、4月初旬から中旬にかけての風景です。朱色のチューリップは早咲きの‘アプリコットインプレッション’という品種で、ブルーのデルフィニウムやネモフィラとのコントラストが気に入っています。‘アプリコットインプレッション’は、20日過ぎには花が傷んでくるので、花が終わったら葉だけ残して花茎を切り取ります。球根ごと抜き取ると、庭にボコボコと違和感のある「空き」が生まれるので、季節が進んで他の草花が大きくなってきたタイミングで球根を抜き取ります。 チューリップ‘アプリコットインプレッション’とブルーの花の共演。チューリップは一直線でなく、少しランダムに植えると自然な雰囲気。 上写真は、20日過ぎの風景。‘アプリコットインプレッション’から、淡い黄色の‘レモンシフォン’へバトンタッチしました。こちらは4月中旬から咲き出し、5月初旬まで咲いてくれる遅咲きです。チューリップが交代しただけで、庭の雰囲気が一気に変わると思いませんか。段々と気温が高くなるなかで、レモンイエローとブルーのコンビネーションが庭に爽やかさをもたらしてくれます。咲き継がせるときは、こんなふうに印象がガラっと変わるような2種を選ぶと、歌舞伎の早替わりのようで面白いですよ。 白とレモンイエローがやさしい雰囲気のチューリップ‘レモンシフォン’。冬から咲いているシックなパンジーとも相性抜群。 同時に咲かせて可愛い原種系と園芸品種の組み合わせ ピンクの背の高いチューリップは‘ホーランドチック’。咲き始めは白色で、咲き進むにつれピンクと白が入り混じるように咲き、変化が楽しい花です。‘ホーランドチック’の株元でパンジーに混じって咲く小さな黄色のチューリップは、原種系の‘ブライトジェム’。ヒヨコみたいなかわいらしい花で、どのチューリップとも相性がよいのでこちらは植えっぱなしです。 同じ小道の別の年。淡いピンクのチューリップは‘シルバークラウド’。 原種系の‘ブライトジェム’は草丈が20cm程度で愛らしい。 ピコティ品種と単色の園芸品種の組み合わせのコツ 単色のチューリップは‘パープルハート’、花弁が赤色で縁取られるピコティ咲きは‘ビューティートレンド’です。どちらも4月上旬〜中旬にかけての早咲き品種です。ピコティや斑入り品種は個性的でとても美しいのですが、それだけだと意外と風景に紛れてしまい目立たないので、単色のチューリップを少量混植して存在感を引き立たせるのがポイントです。その際、単色のチューリップは、縁取りの色と合わせるとおしゃれにまとまります。 チューリップと他の球根花との組み合わせ 春の球根花はチューリップばかりではないので、他の花との組み合わせも楽しめます。ここは前出の小道の庭で、今年2024年の風景です。シックな赤色が魅力のチューリップ‘ラスティングラブ’が引き立つように、白色のアリウム・コワニーを添えるように植えました。アリウムといえばバラの頃に咲く紫色の大きなギガンチウムが有名ですが、コワニーは4月下旬から咲き出す小型種で、白色の愛らしい花を咲かせます。‘ラスティングラブ’は遅咲きのチューリップなので、アリウム・コワニーとベストマッチ。 チューリップ‘ラスティングラブ’とアリウム・コワニー。コワニーは花もちがよく切り花としても重宝します。 ‘ラスティングラブ’は今年初めて咲かせた赤色のチューリップで、とてもよかったのでちょっと熱弁を振るわせていただきます。まず名前が素敵! そしてなんといってもシックで上品な赤色は、何人もの患者さんから褒められました。見る時間帯や光によって透き通るような澄んだ赤色だったり、ベルベットのような濃厚な感じになったり、表情豊かなのも魅惑的。写真の右側はもう花が終わりそうな頃ですが、多くのチューリップが花の終わりはバラーンとだらしなく花びらが開いてしまうのに対し、‘ラスティングラブ’は静かにひっそり萎んでいくのもいいところ。ご覧のように花色もあせるというより、黒っぽく凝縮されていく感じなので、だいぶ長く庭に置いておいてもOKでした。 木の株元は野原のような原種系ゾーン ここは枝垂れ桜の株元付近で、自然な雰囲気にしたかったので、小輪で細身のものが多い原種系のチューリップや、小型の球根花のスイセン、ムスカリ、クロッカスなどを混植しています。植えっぱなしでいいので、掘り返して木の根を傷つける心配もありません。原種系の花は小ぶりなので、1穴にある程度まとめて球根を植えるのがポイントです。 黄色と赤の2色咲きの原種系チューリップ‘クルシアナシンシア’。 ムスカリと原種系チューリップ‘ヒルデ’の共演。 買い逃しのないよう早めのお買い物を 球根の植えどきはイチョウが黄葉する頃が目安とされています。最近は温暖化でズルズルと植えどきが遅くなっており、球根の流通時期とかなり時差が生まれています。深い雪に覆われる場所でない限りは、年を越して1月に植えたとしても問題なく咲きます。しかし、植えどきには肝心の球根が入手できないことも多いので、買い逃しのないよう早めの計画&お買い物をおすすめします。かくいう私も、毎晩来年の春の庭を想像しながら眠りにつく日々。文字通り寝ても覚めてもガーデニングに夢中です。
-
宿根草・多年草
【今が買い時!植え時!】植えっぱなしOKの丈夫な夏植え球根で秋の庭準備
キラキラ花が輝く夏植え球根ネリネ ネリネはヒガンバナ科ヒメヒガンバナ属(ネリネ属、Nerine属)に属する多年草の球根植物。南アフリカ原産で、8月のお盆すぎから9月にかけて球根を植えると、10月中旬~12月中旬に花を咲かせます。多くの品種はヒガンバナと同様に葉より先に花が咲き、真っ直ぐ伸びた茎の先にリボンを細工したような愛らしい花を咲かせます。クルッとひるがえる細い花弁の表面にはラメを振ったかのようなキラキラがあり、光を受けて花が輝くことからダイヤモンドリリーという別名があります。 ネリネ・サルニエンシスをもとに改良された園芸品種が多く流通しており、ピンク、オレンジ、紫、複色など多彩なバリエーションがあります。開花すると3週間ほどきれいな花姿を楽しむことができ、花もちがよいことからフラワーアレンジメントでも人気です。 ネリネは細身で他の草花とも組み合わせやすいのがお気に入りの理由の一つ。秋になると草花の茂みからスーッと茎が伸び、30〜40cmほどの高さにフワッと花を咲かせます。同じピンク系のコスモスや夏から咲いているクレオメとも相性がよいですし、紫色のサルビアとも引き立て合います。 レイズドベッドなら球根の管理もラク 一般的にネリネは寒さや過湿に弱く、冬は霜の当たらない場所に移動したほうがよいと言われていますが、私が育てている花壇では植えっぱなしで何年も同じように咲いてくれます。この花壇は50cmほどの高さがあるレイズドベッドなので、水はけや保温性が地植えよりよいためかもしれません。この管理の手軽さもお気に入りの理由です。花後は茎を切り、葉っぱは球根に栄養を送るため黄色くなって枯れるまでそのままにしておきます。肥料は特にネリネのために、というわけではありませんが、さまざまな花が植っているため定期的に供給されている状態です。冬にはいつの間にか葉もなくなって、どこに球根を植えたのか分からなくなってしまいます。そのためパンジー、ビオラなど冬の花に入れ替える際に、ときどきネリネの球根を掘り起こしてしまうことがあるものの、また埋めておけば問題ありません。 希少ネリネを育種する横山園芸 そんなわけで、わりと放任気味に育てているせいか、ダリアなどの球根のように年々太って花数が増える、ということは私の花壇ではないのですが、もっと丁寧に管理したら増えるのかもしれません。今度、ネリネの育種を行っている横山園芸の横山直樹さんに聞いてみたいと思っています。ちなみに私の花壇のネリネはすべて横山園芸のもので、冬のクリスマスローズ展での出店で見つけたものです。クリスマスローズ展は例年2月に行われますが、ハウスで栽培された開花株の希少なネリネに出会えます。 そんな希少ネリネの一つが ‘クリスパリリー’(上)。横山さんの育種品種で、丈夫で育てやすいネリネ・ウンデュラータ(通称クリスパ)と、花が大きいダイヤモンドリリーの交配種です。花は一般的なダイヤモンドリリーに比べると小ぶりですが、丈夫で露地栽培が容易なのが特徴。波打つ花弁がとても繊細な雰囲気です。 もちろん、植えどきを迎える夏から秋にかけては、ガーデンセンターや園芸店で多くのネリネの球根に出会えます。 冬にグラウンドカバーとしても活躍するオキザリス・バーシカラー オキザリス・バーシカラーも夏植え秋咲き球根です。カタバミ科カタバミ属の耐寒性多年草で、花は11〜3月くらいまで咲き、冬の花が少ない頃の貴重な彩りとなってくれます。花弁が赤く縁取られ、クルクルと丸まったツボミの様子はキャンディーのようでとても愛らしいです。晴れのときは花が開き、太陽がない時はクルクルと丸まり花が閉じます。 春に開花期が終わってからも緑の絨毯として活躍してくれるのもお気に入りです。オキザリスはカタバミの仲間ですが、このバーシカラーは葉っぱが小ぶりで芝生のような雰囲気になるので、ご覧のようにムスカリなど春の球根花を美しく見せてくれます。グラウンドカバーはいろいろありますが、秋から冬にかけて活躍するものは貴重です。この庭では建物の北側に位置する場所で育っているため、日照がやや不足しているのか株を覆うようには花は咲きませんが、緑の中にポツポツ咲く程度が、かえって私は気に入っています。 オキザリス・バーシカラーの育て方 8〜9月に元肥を入れた土に球根を植え付けます。過湿を嫌うので、地植えの場合は砂を土に混ぜ、やや盛土気味にすると水はけがよくなります。地植えは自然の降雨で十分です。年々咲き広がっていくので、ときどき抜いてコントロールしています。夏は休眠期のため、一見枯れてしまったかのようにも見えますが、秋になると再び葉が瑞々しく茂ってきます。病害虫もなく、ほとんど手間がかかりません。2年目以降花が増えて華やかになります。
-
観葉・インドアグリーン
【ローメンテナンスで真夏もきれい!】豪雨・猛暑に耐える植物で盛夏の庭を美しくキープ
猛暑&豪雨に耐える植物が盛夏の庭のポイント 近年の夏の気候はとても極端ですよね。晴れれば40℃に迫る高温で、雨かと思えば1カ月分の降水量が数時間で降ってしまったり。つい先日も山陰は3時間で100mmを超える雨が降り、庭が池のようになってしまいました。この激しい気候に戸惑うのは人ばかりではありません。これまで夏にきれいに咲いていた植物も、この気候に耐えられないものが出てきました。 豪雨で水没した庭とクシャクシャになってしまったユウギリソウ。水は数時間で引くものの、繊細な花は復活が難しい…。 例えば、ふわふわと繊細な花を咲かせるユウギリソウやペチュニアの一部の品種は、叩きつけるような豪雨で花がすっかりクシャクシャになってしまい、晴れても復活が難しい場合があります。ですから、夏に庭を美しく保つには、「耐暑性」に加え、「耐雨性」も植物選びの大事なポイントになってきました。さらに、炎天下の庭に出て頻繁に手入れをしなくてもいいように、「ローメンテナンス」かつ「ロングライフ」であることも条件。 耐暑性 耐雨性 ローメンテナンス ロングライフ これらたくさんの要求に応える植物を、一緒に庭づくりをするガーデナーの安酸友昭さんと考えた結果、近年盛夏の庭に取り入れ始めたのが「観葉植物」です。 盛夏の庭に取り入れたいローメンテナンスな観葉植物 室内に潤いをもたらすインドアグリーンとして愛好家も多い観葉植物。DimaBerlin/Shuttestock.com 観葉植物の多くは熱帯地方原産で、耐暑性に優れ、強い雨にも耐える丈夫な葉を持っています。葉を楽しむ植物なので、花がら摘みなどの手入れの必要もなく、見頃が長いのも条件にぴったり。しかし、観葉植物にはたくさんの種類があり、すべてが庭植えできるわけではないので、種類ごとの特徴を押さえておくことがポイントです。 庭植えできる観葉植物の条件 人気の高いフィカス(インドゴムノキ)は、屋外では半日陰が栽培適所。Felix Hobruecker/Shutterstock.com 観葉植物を庭植えする場合、気を付けたいポイントは2つあります。まず1つ目は、直射日光OKかどうかです。意外かもしれませんが、観葉植物の中には直射日光が苦手なものが結構多いのです。というのも、観葉植物の原産地は熱帯地方のジャングルなど鬱蒼とした密林です。開けた野原のように太陽が降り注ぐ場所ではないため、直射日光にさらされると種類によっては葉焼けして枯れてしまうものもあります。そのため栽培適所が「明るい半日陰」の場合は、木陰などを選んで植栽する必要があります。 そして2つ目は、大きさです。観葉植物は寒さが苦手で、多くは10〜5℃以下になると枯れてしまいます。ですから、秋には掘り上げて室内で養生することを前提としているので、草丈50〜60cmまでくらいのものが適しています。 日向でOK! カラフルな葉が魅力のカラジウム ピンクの葉のカラジウムと紫の葉のアルテルナンテラ‘リトルロマンス’のコンビネーションが美しい。 上記の条件を満たす観葉植物の1つが、カラジウムです。カラジウムは熱帯アメリカなどを原産とするサトイモ科の植物で、夏の直射日光下でもOK。ピンクや白色の模様が入る大きな葉は、緑が濃い真夏の庭でもよく目立ち、室内から眺めていても存在感があります。私の庭ではガーデン用に生産されたガーデンカラジウム‘ハートトゥハート’を地植えや寄せ植えに取り入れています。この品種は日向でも日陰でもOKなので、植える場所を選びません。 カラジウムなど葉色の鮮やかな植物を使った真夏の寄せ植え。赤い花はカンナ‘トロピカル ブロンズスカーレット’。秋まできれいに維持できます。 注意したいのは、観葉植物用に生産された苗の場合、いきなり強い直射日光に当てるとカラジウムでも葉焼けすることがあるということです。園芸店の観葉植物コーナーなどで買った苗の場合は、ハウスの中で幾分遮光された環境で育っているため、いきなり真夏の直射日光にさらすのではなく、徐々に外に出してならすといいでしょう。室内で養生していたものを地植えにする場合も同様です。 日陰で美しい葉を楽しむポトス 一方、ポトスは直射日光に当たると葉焼けを起こしてしまうので、半日陰の場所を選んで寄せ植えの鉢を置いています。黄色や白色の斑入り、ライム色など爽やかな葉が魅力で、日光には弱いですが高温多湿には強いので、場所さえ選べば日本の夏の気候にはぴったりです。つる性なので、少し高いところに鉢を置いたり、ハンギングにして枝垂れさせると、美しい葉が堪能できます。 北側の庭に置いた寄せ植え。ライムグリーンの葉と紫の花のトレニアなどをコーディネート。 草取りの手間を低減してくれる這い性のコリウス コリウス‘グレートフォール’シリーズの色違いを混植。 夏の庭の大きな課題の一つが雑草です。今や真夏の草取りは危険行為ですが、だからといって草ボウボウにしておくのもイヤなもの。そんなジレンマを解消してくれるのが、這うように育つグラウンドカバープランツ。草で草を制する作戦です。 真夏の庭のグラウンドカバーとしておすすめなのが、這性いのコリウス。葉が低くカーペットのように広がり、1株で60cm以上になる‘グレートフォール’シリーズや‘トレイルブレイザー’シリーズはグラウンドカバーとしても機能し、雑草が生える隙を与えないので重宝します。花にも負けない華やかなカラーがあり、花がら摘みなどの手間もないので管理も楽です。 這い性のコリウスで赤い葉が美しい‘トレイルブレイザー ロードトリップ’。写真提供/エム・アンド・ビー・フローラ 見栄えがよくローメンテナンスな花の組み合わせ ヒマワリ‘サンフィニティ’は1株で50〜100輪以上の花が咲くともいわれます。センニチコウ‘ファイヤーワークス’は長期間色褪せないためドライフラワーにも。 真夏の花の中では、センニチコウ‘ファイヤーワークス’とヒマワリ‘サンフィニティ’は草丈が腰高以上になり、庭の景色を作るのにおすすめです。両者は多花性で1輪の花もちがよく、初夏から秋まで長期間咲くなど多くの共通点があります。生育旺盛で盛夏には株張りが1m近くにもなり、花があちこちを向いて咲きワイルドな雰囲気。この庭では石積みの壁の前に植栽していますが、こうした構造物を背景にすると株姿が多少乱れても荒れた感じにならず、程よくナチュラルにまとまります。 ‘サンフィニティ’は一年草で、‘ファイヤーワークス’は暖地であれば宿根しますが、山陰の冬は雪が多く寒さが厳しいため一年草として扱います。 夏に向かって美しさを増す大鉢の寄せ植え 真夏の寄せ植えの課題は水切れです。その点、大鉢は水もちがよいので安心。大鉢は季節ごとにそっくり入れ替えるのは大変ですが、この寄せ植えは春からマイナーチェンジを繰り返しながら咲き継がせています。ブラウンの葉のウンシニア・ルブラやピンクの小花のクフェア‘ピンクシマー’は、5月に植えたものをそのまま残しています。夏から秋にかけては、紫色の花のヘリオトロープやピンクの花が咲く多肉植物のセダム‘ゼノックス’が存在感を増します。 上の鉢の前の季節の様子。見頃の花を少しずつマイナーチェンジしながら、5カ月咲き継がせます。 環境に貢献する庭づくり 庭づくりをしていると気候の変化を肌で感じ、地球の危機的状況を不安に思うことがありますが、同時に植物がいかに大切な存在かも改めて感じます。真夏に木々が提供してくれる木陰はホッと一息つける安全地帯ですし、植物が生えている場所はアスファルトの場所とは体感温度が明らかに違います。そして、植栽帯は一度に降る豪雨を吸収し、道路が水であふれるのを防ぐのにも一役買っているはずです。少しでも環境に貢献していると思うと、知恵と工夫を絞って庭づくりをするのがいっそう有意義に感じられます。
-
宿根草・多年草
【夏の宿根草10選】植えっぱなしOK! バラのあとに庭を彩る夏の宿根草&球根
バーバスカム‘ウェディングキャンドルズ’ 学名/Verbascum chaixii 'Wedding Candles'種類/宿根草(耐寒性多年草)冬季常緑・半常緑草丈/60〜100cm 株張り/30〜50cm アイボリーの小花が縦に連なって穂状に咲きます。草丈が1m近くになり、存在感はある一方、株幅はスリムで他の草花と組み合わせやすいのも魅力です。私の庭では花心のパープルに合わせて、リシマキア・アトロプルプレア‘ボジョレー’とコーディネートして植えています。‘ボジョレー’は春から咲きますが、この時期には50cmくらいになり、‘ウェディング キャンドルズ’と共演させるのにぴったりです。草丈が高くなると倒れてしまうこともあるので、70cmくらいを越えたら支柱を立てます。 アリウム‘サマードラマー’ 学名/Allium 'Summer Drummer'種類/球根草丈/約130~200cm 株張り/20〜30cm アリウムはさまざまな種類を庭で育てていますが、アリウム・ギガンチウムもアリウム・クリストフィーもアリウム・ニグラムも、バラの開花と同じ頃に咲きます。一方、この ‘サマードラマー’はアリウムの中でも遅く開花し、バラの後の庭を彩ってくれます。背丈以上に伸びる細い茎の先に、10cmほどの花を咲かせます。ポン、ポンと紫色の丸い花が空中をリズミカルに彩る風景がユニークで楽しい花です。草丈が高いので、倒れないように30〜40cmの支柱を立て、株の下のほうでゆるく縛ってあります。このくらいの高さで支えてあげれば倒れることはなく、支柱は葉に隠れて目立つ心配もありません。耐寒性も耐暑性も強く、植えっぱなしで毎年よく咲いてくれます。 バラの頃に咲くアリウム‘クリストフィー’。星形の花が特徴でバラの株元を隠す草丈。 カワラナデシコ‘ミーティア’ 学名/Dianthus superbus種類/耐寒性多年草または一・二年草 冬季常緑・半常緑草丈/40~60cm 株張り/20〜30cm 切り花として育種されたカワラナデシコで、華奢な茎がスッと伸び、切れ込みの深いピンクの花を夏から秋までたくさん咲かせます。ふわふわと繊細な雰囲気の花は、バラが終わったあとの夏の庭の貴重な彩りです。高温多湿に弱いので、いったん花が終わったら切り戻して夏越しさせます。もう何年もこの場所で咲いてくれています。 花弁の縁がフリンジ状になり繊細な雰囲気の花。 ダリア‘ラべラグランデ キャラメル’ 学名/Dahlia hybrida種類/宿根草草丈/30~40cm 株張り/30~40cm やさしいアプリコットカラーと白色のグラデーションがきれいなダリアです。コンパクトに姿よくまとまるので、レイズドベッドの花壇に夏の花々とともに寄せ植えにしています。バラの頃からよく咲き、いったん花が終わって切り戻しても、次のつぼみがたくさん控えていて、すぐに再び満開になり華やかです。 バーベナやビデンスとの寄せ植え花壇。 カンパニュラ・ラプンクロイデス(ハタザオキキョウ) 学名/Campanula rapunculoides種類/宿根草(耐寒性多年草)草丈/100~120cm 株張り/40~80cm 古くから「ハタザオキキョウ」の名で親しまれるカンパニュラです。細い茎に青紫色のベル形の花が連なり、とても涼しげな雰囲気で咲いてくれます。植えっぱなしでどんどん広がり、花後に茎を切る程度で、放任でもとても丈夫。こぼれ種でもよく増え、林立するように群生して見事です。耐寒性にも耐暑性にも優れ、場所によっては帰化植物としてあちこちで見られるほど、日本の気候には適しているようです。 シャンデリアリリー 学名/Lilium種類/球根草丈/80~120cm 株張り/20~30cm 華奢な茎を伸ばして、下から花が咲き上がっていきます。繊細かつ素朴で山野草のような雰囲気を持ちながらも、花があちこちを向いて咲く様子はまさしくシャンデリアのようで華麗さもあります。6月下旬から咲き出し7月初旬には終わってしまいますが、丈夫で毎年この時期に美しい姿で楽しませてくれます。花後は葉っぱから栄養が球根に送られるので切らずにそのままおいておき、秋になって黄色くなってきたら切ります。 アメリカアジサイ‘アナベル’ 学名/Hydrangea arborescens ‘Annabelle’種類/低木樹高/80~120cm 株張り/80~150cm 真っ白な花は花径20cm以上になる大輪で、大株になると遠目から見てもよく目立ちます。夏が過ぎるとだんだん緑色になって乾いていき、ドライフラワーの花材としても重宝します。一般的なアジサイは翌年の開花のために、花後すぐに剪定する必要がありますが、‘アナベル’は翌春になってから花芽が形成されるため、色変わりする花を長く庭に留めておくことができるのも魅力です。白い‘アナベル’のほかにピンク色の花が咲く‘ピンクアナベル’も育てています。こちらは白花と比べると、やや小型で素朴な雰囲気です。 スカビオサ‘スノーメイデン’ 学名/Scabiosa atropurpurea 'Snow Maiden'種類/多年草(耐寒性多年草)冬季常緑・半常緑草丈/60~100cm 株張り/25~40cm スノーメイデンとは「雪の乙女」という意味。その名のとおり、かわいい白いポンポン状の花がたくさん咲きます。草丈が高くなるので、支柱をして育てます。初夏から咲き出し次々に花がつくので、タネができないよう花がら摘みをこまめにすることと、満開後に切り戻しをすることで秋まで長く楽しめます。 梅雨から夏へと向かう庭。 アガパンサス‘クイーンマム’ 学名/Agapanthus praecox orientalis 'Queen Mum'種類/多年草(耐寒性多年草)冬季常緑・半常緑草丈/60~100cm 株張り/40~60cm つぼみは青く、開花すると内側が白色なので、角度によって2色に見えるアガパンサスです。花径が15cmほどあり、アリウム・ギガンチウムのように丸く咲く花はよく目立ちます。とても丈夫で、何年も植えっぱなしですが、乾燥に強く近年の猛暑の中でもきれいに咲いてくれる頼もしい花です。どんどん株が太って花数が増えてきていますが、あまりに大きくなってきたので、そろそろ株分けをしてリサイズしようかなと考えているところです。花後のタネ姿もユニークですが、全部残しておくと株が疲れてしまうので、いくつか残して花茎はカットします。 キキョウ 学名/Platycodon grandiflorus種類/宿根草(耐寒性多年草)草丈/約60cm 株張り/約30cm キキョウは秋の七草の1つですが、6〜9月にかけて咲きます。東アジアに広く分布する宿根草で、日本でも古くから山野草として親しまれてきましたが、現在では自生種は稀で、国内では絶滅危惧種になってしまいました。つぼみが風船のような形をしており、英名では「バルーンフラワー」とも呼ばれます。冴え渡る青紫色の星形の花は凛として風情があり、蒸し暑い庭に清々しい印象をもたらしてくれます。初夏の一番花が終わった頃に茎を半分くらい切り戻すと、脇芽が伸びて二番花が咲きます。これといった病害虫もなく、暑さにも寒さにも強く、丈夫でよく咲いてくれますが、過湿に弱いので水はけには注意します。
-
ガーデンデザイン
【おすすめ!】トゲ少なめで誘引しやすくナチュラルに景色を彩るつるバラ7選
つるバラとは? 柱に誘引したピンクのバラは、花にも葉にもハーブのような香りがある‘コンスタンス・スプライ’。 バラには自立して育つ「木立ち性のバラ(ブッシュ・ローズ)」と、自立せずに長く伸びたつるをアーチなどに留めつけて育てる「つるバラ(クライミング・ローズ)」、この2つの中間のような性質を持つ「半つるバラ(シュラブ・ローズ)」の3タイプの樹形があります。 樹高が6m以上になる‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’。 つるバラの枝は1年で2m以上、品種によっては7mくらい伸びるものもあります。この長く伸びた枝をアーチやフェンスなどに留めつけることを「誘引(ゆういん)」といいますが、品種によって枝の太さややわらかさ、トゲの多寡などが異なるので、仕立て方や空間の広さ、誘引時の労力も考慮して選ぶことが大事です。 私のつるバラ選びの5ポイント 上記のとおり、品種によって特性の異なるつるバラですが、私が気に入っているものには、以下の5つのポイントが共通点として挙げられます。 トゲがほとんどなく、枝が細くしなやかで誘引しやすい‘メアリー・ディレイニー’。 ① 枝が細めでしなやか/誘引や剪定(枝を切ること)がしやすく、花や葉を落とし枝だけになる冬期も繊細な雰囲気です。② トゲが少なめ/誘引しやすく、ケガの心配が少ないです。③ 小輪〜中輪/ほかのつるバラや草花と組み合わせたときに馴染みやすいです。④ 消毒なしでOK/病害虫の被害が受けにくく、丈夫な品種を選んでいるので、バラには基本的に消毒をしていません。⑤ 香りがある/バラは品種ごとにさまざまな香りがあり、最盛期にはあたりに甘い香りが漂います。品種によっては香りがまったくないものもありますが、できるだけよく香るものを選ぶようにしています。 これらのポイントに加え、名前が素敵であることも選ぶときのポイントにしています。「このバラは何?」と聞かれたときに、素敵な名前やエピソードがあると、お話しするのも楽しいものです。そんな私のお気に入りのつるバラたちをご紹介します。 アーチ状になり誘引しやすい「クラウン・プリンセス・マルガリータ」 ヴィクトリア女王の孫娘で、一流の造園家でもあったスウェーデン皇太子妃の名前を冠したバラです。アプリコット色の中輪の花を房になって咲かせます。咲き進むにつれて外側の花弁が反り返ってクラシカルな花形になり、色が淡くなっていく変化も美しい花です。花は果物のような爽やかさを感じる強香。淡い紫色のガーデンシェッドの壁に、白花の‘スノーグース’とともに誘引しています。枝はしなやかで自然にアーチ状になり、トゲも少なめで誘引もしやすいです。樹高は3m前後。5月が一番花が多く咲きますが、その後も返り咲きます。 トゲがほぼなし!「メアリー・ディレイニー」 ‘メアリー・ディレイニー’は2022年に「モーティマー・サックラー」から改名したバラで、品種自体は古くからあります。ほんのり淡いピンク色で、ゆるっと開く半八重咲きの花がナチュラルでリラックスした雰囲気を庭に醸し出してくれます。このバラも中輪でとても爽やかないい香りがします。病気に強く非常に丈夫ですが、一番のおすすめポイントはトゲがほとんどないこと。誘引時のストレスがありませんし、人が通る場所でも安心して育てることができます。樹高は3m前後で、四季咲き。 つるバラの使い方ワンポイント① ‘メアリー・ディレイニー’は低い位置にも花が咲いてくれるので、草花との共演も楽しめます。はかなげな淡いピンクの花と相性がよいのは、ブルーや白の花。私のお気に入りは水色の花をふわふわと咲かせるギリア・カピタータやニゲラです。一年草ですが、こぼれ種から毎年芽を出して育ちます。 左/ギリア・カピタータ。右/水色のニゲラ。 遅咲きでバラのシーズンを延ばしてくれる「デビュタント」 社交界にデビューする少女を意味する「デビュタント」。そんな可憐なイメージで咲く小輪のつるバラです。ほかのバラに遅れて、鳥取県米子市では5月20日過ぎから見頃を迎え、バラのシーズンを引き延ばしてくれる貴重なバラです。半八重咲きでピンクの花色は、咲き進むにつれ淡く変化します。華奢な花枝がタランとこぼれるように咲き、高いところに誘引すると独特の風情が楽しめます。生育旺盛で6mくらい伸びる大型のつるバラで、壁にワイヤーを張ってそこに枝を誘引しています。花は微香で5月の一季咲き。同様に遅咲きで小輪、アプリコット色の‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’と一緒に咲かせています。 華奢な花枝を垂らして咲く‘デビュタント’。 朝夕の光に輝く「ティージング・ジョージア」 深みのあるイエローの優雅な花は、朝夕の光に照らし出されて輝くように咲き、甘い香りをあたりに漂わせます。クリニックの玄関の壁からアプローチの屋根の内側へ誘引していますが、トゲは普通にあるほうなので、人が手を触れない場所に植えています。患者さんからは「このバラを見て気持ちが明るくなった」「香りに癒やされる」という声も聞こえる、とても人気のある花です。イエローのバラはパッと明るく朗らかな印象なので、玄関など人をお迎えする場所には合っているのかなと思います。樹高は2.5〜3mで、非常に丈夫。病気や害虫に悩まされることもなく、もう何年もこの場所で美しい花を咲かせています。 つるバラの使い方ワンポイント② 壁に誘引したつるバラは、ほかの花の背景としても活躍します。‘ティージング・ジョージア’を誘引した壁の前の鉢には、いつもブルー系の花を寄せ植えにしています。黄色とブルーは補色関係にあり、お互いの色を引き立て合い、美しい風景を作ってくれます。 サルビアやフロックス、ブラキカムなどブルー系の花を寄せ植えした大鉢。 ナチュラルな咲き姿が魅力の「シャンペトル」 シャンペトルとはフランス語で「田園風」という意味で、その素敵な名前にひかれて買ったバラです。その名のとおり、花と葉のバランスがちょうどよく、とてもナチュラルな咲き姿なのが気に入っています。バラの中には花つきがものすごくよく、空間をびっしり花で埋め尽くすように咲くタイプもあるのですが、この庭ではほかの草花との調和を重視してバラを選んでいるため、このくらいのフワッとした咲き具合がちょうどいいのです。トゲがほとんどなく、病気にもならず、とても丈夫。樹高は120〜150cmと、しなやかな枝は伸びすぎないので誘引の手間もほとんどかからず、とても使い勝手のよいバラです。 ‘シャンペトル’の下には野生的な雰囲気で咲くセンティッド・ゼラニウムを。 四季咲きで冬のローズヒップも可愛い「スノーグース」 左/春の‘スノーグース’。右/冬の赤い実とアプリコットがかる花。 小輪の白い花をたわわに咲かせる様子は、雪におおわれたようです。咲き始めはほんのりとピンクがかり、次第に真っ白になっていきます。四季咲きで12月に入ると赤いローズヒップが実り、これも可愛いのです。チラチラと咲く冬の花は、春とは異なり数は少なく、色もアプリコットがかっています。樹高は2〜3mほどでトゲが少なく、しなやかな枝は誘引もしやすいです。 左端の白いバラが‘スノーグース’。 白いふわふわとした花の雰囲気に似合うように、株元には同じ白花でふわふわと咲く宿根草のセントランサス‘スノークラウド’を植栽して白いコーナーにしています。 セントランサス‘スノークラウド’。宿根草で何年も同じ場所で花を咲かせますが、こぼれ種であちこちに増えていきます。 シックな赤と濃厚な香りの「スヴニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン」 濃い赤色の中輪のつるバラで、バラらしいダマスク香が濃厚に香ります。赤色にもさまざまニュアンスがありますが、このバラは黒みを帯びてとってもシックな雰囲気。つるはわりとしっかり真っ直ぐ伸びるほうですが、トゲがほとんどないので扱いやすいです。本来の樹勢は普通なのですが、この庭ではほかのバラとコラボレーションさせることが多く、生育旺盛な‘メアリー・ディレイニー’のそばに植えていたら、4〜5年後に樹勢が負けて花付きが悪くなってきてしまいました(写真は3年目)。単体で植えるか、ほかのバラと組み合わせるときは、お相手選びを慎重にすることをおすすめします。 ‘スヴニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン’と‘メアリー・ディレイニー’との競演。3年目くらいまでは見事でしたが、その後、‘スヴニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン’の樹勢が衰えてきました。 つるバラの病害虫対策 基本的に病気に強い品種を選んでおり、つるバラに消毒はしていません。バラの代表的な病気にはうどんこ病と黒点病があり、花の盛りが終わって夏になると黒点病にはかかります。黒点病にかかった葉は、ポツポツと黒い点ができ、やがて黄変して散ります。しかし、それでバラが枯れるということはなく、上の写真のとおり、春になればまたみずみずしい緑の葉が展開し、わんさか花を咲かせるので気にしていません。四季咲き性のバラを秋にもたわわに咲かせたいと思ったら、葉を残しておいたり消毒をする必要も出てくるのでしょうが、秋はコスモスや寄せ植えを楽しんでいるので、バラはポツポツ咲くだけで私は十分満足しています。つるバラは5月に楽しめればOK!というスタンスで栽培すれば、消毒の面倒からは解放されます。 一方、葉がうどん粉をかけたように白くなるうどんこ病にかかると、バラが枯れてしまうので気をつけなければなりません。この庭はクリニックの待合室でもあり、さまざまな体調の方がいらっしゃいますし、消毒の面倒も負いたくないので、私は初めからうどんこ病にかからない品種を選んでいます。ここでご紹介したつるバラは、これまでうどんこ病にかかったことはありません。 気をつけたいバラの害虫テッポウムシ バラの新葉やつぼみを枯らすバラゾウムシ。 同様にバラにやってくるバラゾウムシなどの害虫に対しても、基本的に見つけたら手でとるスタイルです。つるバラの多くは大きくなると花がたくさん咲くので、多少虫にやられたとしても、ガッカリするほどのレベルに至ったことはありません。ただし、カミキリムシの幼虫「テッポウムシ」だけは、大株のつるバラを枯らす被害をもたらすので注意が必要です。 株元をチェックしてオガクズが出ていたら、幹の中をテッポウムシが食い荒らしている証拠なので、その時ばかりは穴に細いノズルを差し込んで噴射する殺虫剤を使います。また、テッポウムシの成虫、ゴマダラカミキリムシは6月頃から庭に現れるので、産卵される前に見つけたら捕殺します。 6月以降はこの虫に要注意。ike-yama/Shutterstock.com つるバラの咲く庭の楽しみ 庭の「映えスポット」。記念撮影する人がたくさん。 つるバラは構造物に誘引して咲かせるので、人が立った高さのところに花が咲いてくれ、香りを楽しむのにちょうどいいのです。ですから、庭を歩いていていろんなバラの香りが楽しめるように、なるべく香りのあるものを選んでいます。そして、記念撮影をするときの「映えスポット」としても大活躍。バラが咲くと、皆さんバラと一緒に、あるいはバラを背景に記念撮影をしてくださいますが、我が家でも必ず家族写真を撮るのですよ。美しいバラととともに家族の歴史を残すことができるのは、幸せなことです。 つるバラは空間を広く彩ってくれますが、地面のスペースはさほど必要ありません。次の記事では狭小スペースで育てているつるバラたちをご紹介します。 書籍出版の記念に夫と。可愛いピンクの‘デビュタント’が背景になってくれました。
-
寄せ植え・花壇
【あったか!】温かな気持ちになる暖色カラーの冬の寄せ植え
暖色カラーの冬の寄せ植え素材 庭の植物は寂しくなるものの、冬はじつは寄せ植えに最も適した季節で、花材も豊富に揃います。上の植物(下に解説)は定番の素材で、暖色カラーもバリエーション豊か。クリニックは患者さんが開院時間の前から玄関に並んでくださるので、少しでも温かい気持ちになっていただけるよう、庭にもこうした暖色の花を取り入れた寄せ植えを作ってお迎えしています。 【写真左上から時計回りに】 パンジー・ビオラ/花がらを摘むことで次々に花をあげ、5月頃までよく咲く一年草。チェッカーベリー/赤い実がかわいい低木。夏越しが難しいので一年草扱い。鉢縁に入れて赤い実がこぼれるようにすると魅力が際立ちます。ガーデンシクラメン/庭植えや鉢植え用の寒さに強いシクラメン。強い霜や雪にあたると花が傷むので、軒下などに置くとよいでしょう。スイートアリッサム/這うように広がって、こんもり花を咲かせる一年草。白花が一般的ですが、近年は赤やピンク、オレンジなども展開しています。ミニバラ/四季咲き性が強く、冬の寄せ植え花材として重宝します。寒さで病害虫の被害が少なく、花も冷蔵保存されたかのように一輪が長もちします。 真っ赤なリンゴを添えた寄せ植え 鉢の中央に赤いパンジーとカルーナ、ワイン色の斑が入るカラーリーフのコプロスマとキンギョソウ‘ブランルージュ’を配し、鉢縁周辺にスイートアリッサムやチェッカーベリーを植栽しました。カラーリーフは寒くなるにつれ発色が鮮やかになり、冬の寄せ植えで重宝します。春に向けてパンジーやスイートアリッサムはどんどん花数が増えて、最終的に鉢からあふれるほどふわふわになりますが、植えた当初は花数がゆっくり増えるので、赤いリンゴを置いて色を足しました。装飾用のリンゴは、フラワーショップなどで手に入ります。 受験生のいるお家に! たわわに実るペルネッティアの寄せ植え 冬の赤い実ものといえば、チェッカーベリーと並んで人気のペルネッティア。別名ハッピーベリーとも呼ばれ、花言葉は「小さな幸せがいっぱい」「実る努力」です。そんな花言葉から、この時期、受験勉強に励むお子さんがいるお宅におすすめの寄せ植えです。4人の子どもの受験を経験した私ですが、受験生のいる家では、本人のみならず見守る親御さんも内心ヤキモキ、ハラハラの毎日をお過ごしのことと思います。が、親が代われるものでもなし! 美しい寄せ植えを作ってご自身の心も、勉強に励むお子さんもリラックスさせてあげましょう。美しいものには心を癒やす力がありますよ。ふんわりピンクのビオラと少し濃いピンクのストック、白いスイートアリッサムを合わせました。たくさんの幸せが訪れますように! チェッカーベリーと並んで冬の実ものとして人気のペルネッティア。つやつやの実がたわわにつく低木です。 パンジー、スイートアリッサム、チェッカーベリー、ペルネッティアをたっぷり植え込んだ大鉢の寄せ植えです。これらの花は、冬場は草丈が低くペタッとしてしまいがちなので、ツンツンとライン状に生育するカルーナを入れてアクセントにしました。カルーナも冬の寄せ植えでとても活躍してくれる名バイプレイヤーです。 大鉢におすすめのエリカの寄せ植え 鉢の中央に植えたのが、エリカ。カルーナの近縁種の低木で、細い茎にライン状に花がつきます。冬の花材の中では草丈が高いので、大鉢や冬花壇の後方で活躍します。この大鉢の寄せ植えでは白いエリカを鉢の中央に配置し、周囲に草丈の低いパンジーやカルーナをぐるりと植えました。鉢の縁にはチェッカーベリーも入っています。 花が大きく豪華なエリカ‘ふっくらももちゃん’。四季咲き性で耐暑性に優れ、冬だけでなく通年咲きます。 シクラメン×パンジーの紅白おめでとう寄せ植え 赤いガーデンシクラメンとブルーホワイトのパンジーをメインにした、紅白のおめでたい雰囲気の寄せ植えです。それぞれ3つずつ三角形になるように配置し、間にはチェッカーベリーやカルーナを入れました。ガーデンシクラメンは寒さに強く外で育てられるように改良された品種ですが、強い霜や雪にあうと花が溶けるように枯れてしまうので、軒下などに鉢を置くのがおすすめです。 冬こそおすすめのミニバラの寄せ植え この時期は、ガーデンセンターや園芸店にミニバラの開花株がたくさん並びます。開いた花はこの時期、寒さで咲き進むことがなく、屋外ではまるで冷蔵保存されたかのように、1カ月以上美しい姿を保ちます。ミニバラといえどもバラの気品を漂わせ、存在感も抜群なので、寄せ植えでは間違いなく主役になります。ここではピンクのミニバラに赤いガーデンシクラメン、パンジー、斑入り葉のキンギョソウ‘ブランルージュ’、エリカを合わせました。 この大鉢の主役は赤い花のストックです。ストックは花もちがとてもよく、冬の庭の植物の中では草丈が30〜40cmと高いほうで、寄せ植えや花壇に立体感を出すのに重宝します。ストックの周りにカルーナ、コプロスマ、パンジー、スイートアリッサムというように、鉢縁に向かうにつれ草丈が低くなるよう植栽しています。 暖色には心理的に2〜3℃の温度感の上昇を生じさせ、前向きで楽しい気持ちにさせる効果があるとか。ぜひ暖色カラーの草花を寄せ植えにも取り入れて、ハッピーな気持ちで一年をお迎えください!
-
ガーデン&ショップ
クリスマスの寄せ植え&森の動物たちが集まるかわいいガーデンクリスマス
モミの木の寄せ植えツリー 昨年のクリスマスツリー。いつも待合室の窓からよく眺められる場所に置いています。 クリニックの庭のクリスマス演出は、患者さんたちも楽しみにしてくれている年末恒例のイベント。庭に飾るクリスマスツリーは毎年、テーマを決めてイルミネーションの色やオーナメントを変えているので、12月が近づくと、「今年はどんなふうになるの?」と聞かれるようになりました。そう聞かれたら張り切らないわけにはいきません。一緒に庭づくりをしているガーデナーの安酸友昭さんに「今年はどうするだ?」と相談すると、今年は「小さいツリーにしましょう」という意外な提案が。毎年庭には3m以上のツリーを飾ってきたので、それを小さくするのは不安でしたが、あれこれと安酸さんの指示に従って進めるうちに、いつもとは少し違う、かわいいガーデンクリスマスが出来上がりました。 大鉢に樹高150cmくらいのモミの木を植え、株元にはパンジーを植栽。その鉢の手前にいつも庭で使っている小さめのガーデンテーブルを置いて、パディントンベアを着席させました。「ほら面谷さん、パディントンから見たら、このツリーは大木ですがん」と安酸さん。庭づくりは想像の翼を広げることが大事と安酸さんはいつも言いますが、本当にそのとおり。パディントンから見たら、この庭は大きな森かもしれません。というわけで、今年のテーマは「森の動物たちのクリスマスパーティー」になりました。 パディントンたちのおかげで、冬の寂しい庭が一気に楽しい雰囲気に。患者さんも窓からたくさん写真を撮ってくれています。 モミの木の株元にはイルミネーションの色に合わせた優しい色のパンジーとアイビーを寄せ植え。 テーブルコーディネートで庭に彩りを 冬の庭はどうしても彩りが寂しくなりがちですが、ガーデンテーブルをコーディネートすると、庭に効果的に鮮やかさを演出することができます。赤のタータンチェックと緑の布は手芸店で買ったもので、雨をはじくように防水スプレーをしてあります。その上にはキャンドル入りのバスケットアレンジを置きました。アレンジも扉にかけた大きなリースも、赤がポイント。これは私がアレンジの練習に通っている東京・神楽坂の「ジャルダンノスタルジック」さんが作ってくれました。 テーブルにはハリネズミやフクロウも遊びに来ました。びしょ濡れになるとかわいそうなので、この子たちも防水スプレー済み。 夜になり、ライトアップをすると、ボックスウッドの後ろから鹿が! じつはこれ、安酸さんお手製の影絵です。防水加工をした紙に鹿を描いて、丁寧に切り抜いて作ってくれました。テーブルの下に紙の鹿を置いて、扉へ投影しています。いつも言葉数少なく「ふーん」とか「へー」とかばかり言っている安酸さんですが、その頭の中には楽しいアイデアがあふれているようです。よくこんなことを考えつくなぁと感心します。 紙の鹿は風で飛ばされないように、木の板と針金で留めてあります。室内ならもっと手軽にできるはずです。紙とライトと映し出す壁があればできますから、ぜひ作ってみてください。きっとお子さんも喜ぶと思いますよ。 クリスマスの寄せ植え 寄せ植えもクリスマスカラーで植栽しました。パンジーやガーデンシクラメン、チェッカーベリー、スキミアは赤で統一。ブルーグリーンのツンツンとした葉は、ピナス・ピネアと呼ばれるイタリアカサマツです。小さなツリーのようで、クリスマスの寄せ植えにぴったりです。赤色の寄せ植えは、夜は色が闇に沈んで見えにくくなるので、室内の明かりがこぼれる窓辺のすぐ側に置いています。 白っぽい色でまとめた寄せ植えは、夜のライトアップにもよく映えます。中央には草丈の高いキンギョソウを、周りには淡い色合いのパンジーやネメシア、白色のカルーナ、スイートアリッサムを植栽。鉢縁からは斑入りのアイビーやハツユキカズラを垂らして動きを持たせました。 ガーデンの入り口にも、大鉢のモミの木の寄せ植えを作りました。静かな森の水辺をイメージし、ブルー系のパンジーを株元に植栽しました。モミの木に吊したのは氷で作ったオーナメントで、中に庭の花を閉じ込めました。 シリコンの製氷機に花と水、吊すためのワイヤーも一緒に入れて凍らせます。いずれ溶けてしまうはかないオーナメントですが、したたる滴もきれいです。 大きなツリーはなくても、庭にちょっとしたストーリーを持たせると楽しい雰囲気が生まれます。想像の翼を広げて、ガーデンクリスマスを楽しんでみませんか。
-
寄せ植え・花壇
【秋の庭づくり】球根と花苗、どっちを先に植える? 球根と花苗の植え方
春に美しい花を咲かせる秋植え球根 淡いピンクのチューリップ‘シルバークラウド’の足元に小型の原種系チューリップ‘ブライトジェム’を。 来年の春に美しい花を咲かせるために、この秋に植える球根を「秋植え球根」と呼びます。チューリップ、スイセン、ヒヤシンス、ムスカリ、クロッカス、スノードロップなどたくさんの種類がありますが、さらにチューリップだけでも7,192の品種が登録されており(王立球根生産者協会|2022年4月現在)、その数は毎年増え続けています。 なくなる前にゲット! 秋植え球根は今が買い時 そんなわけで、よりどりみどりの秋植え球根ですが、販売されている期間は限られており、遅くとも11月まで。人気の品種は早々に売り切れてしまうので、園芸店やホームセンター、通販などで早めに購入しておくことをおすすめします。でも、植えるのは少し待って。秋植え球根の植えどきは「イチョウの黄葉」が目安です。 秋植え球根の植えどき目安「イチョウの黄葉」はいつ? イチョウの黄葉は地域によって異なり、ちょうど桜前線と逆行するように北から南へ移動します。気象庁が発表しているイチョウの黄葉日の平年値は、以下の図の通り、10月末から11月末。 出典/気象庁「生物季節観測の概要」 日本気象株式会社によると、今年は夏に続き、秋の気温も高いことから、北日本・東日本では平年並みか平年よりやや遅め、西日本では平年並みと予想されています。ですから、球根を植えるのはもう少し後が理想的。暖かすぎると球根が土中で傷み、花が咲かなくなってしまったり、咲いても草丈が伸びずに本来の美しさが見られないことがあるので、十分寒くなってから植え付けましょう。 秋植え球根は適期を守れば成功率はダントツ! 原種も推し! 原種のアネモネ・フルゲンス。植えっぱなしで毎年よく咲き丈夫。 植えどきさえ守れば、秋植え球根はほとんど失敗することなく来春に可愛い花を見せてくれます。というのも、あのぷっくりとした球根の中には、すでに花芽も葉も茎も作られており、それらを育てるだけの栄養も蓄えてあるので、あとは土に埋めさえすればOK! ガーデニングビギナーも大成功へと導いてくれますよ。特におすすめなのは「原種系」。寿命が長く、丈夫で毎年繰り返し咲いてくれるコスパのとてもよいグループです。原種系のおすすめについてはこちらをご参考に。 ●マストバイ“原種・神7” 植えっぱなしで、よく増え、かわいい! 原種系の植物を植えたエリア。小型でかわいい花が集い咲きます。 チューリップは開花期に注意 チューリップ‘パープルハート’と‘ビューティートレンド’の共演。 チューリップは品種によって早咲き、遅咲きがあり、開花時期に1カ月近い差が出ることも。ですから、いくつかの種類を組み合わせて「共演」させようとする場合には、開花期を揃えて選びましょう。開花期が異なると、共演が見られません。一方、開花期の異なるものをうまく組み合わせると、チューリップが咲き継ぐ「リレー」が楽しめます。目的によって開花期に注意して選びましょう。 秋植え球根と花苗の植える順番 チューリップとパンジー&ビオラの春の共演。 秋植え球根の植えどきを楽しみに待っている間に、園芸店にはパンジーやビオラ、ガーデンシクラメン、ネメシアなど、晩秋から翌春まで咲いてくれる一年草の花苗もたくさん店頭に並ぶようになります。これらの花と秋植え球根をともに植えると、庭植えでも鉢植えでも、翌春はとても華やかな景色が楽しめます。ここで疑問なのが、どちらを先に植えるのかということ。花苗が先でしょうか? それとも球根が先でしょうか? 庭植えなら花苗を先に植えましょう 花苗の間に球根を植えていきます。 パンジーやビオラなどの花苗と秋植え球根を同じエリアに植える場合には、花苗を先に植えましょう。球根は一度土に植えてしまうと、芽が出るまではどこに植わっているか、地上からは分からなくなります。ですから、球根を先に植えると、後から花苗を植えるときに掘り返してしまったり、シャベルで傷つけてしまったりします。パンジーやビオラは11~12月にも新品種が出てくるので、それらを植えたい場合は、球根の植え付けを1月まで(雪の降る地域では降雪前まで)待っても大丈夫です。 チューリップの球根は、球根の2倍くらいの深さに植えます。球根植え専用のツールがあると、花苗の根を傷つけないので便利。 草花との共演に向くチューリップ チューリップは品種によって葉っぱの幅が広く、成長した際に大きな葉が周囲の草花を覆い隠してしまうものもあります。ですから、草花と共演させる場合には、葉っぱの細めのものを選んでいます。上の写真の‘シルバークラウド’は葉が細く華奢な感じがしておすすめです。ほかに、‘パープルハート’と‘ビューティートレンド’もおすすめ。 チューリップ‘パープルハート’と‘ビューティートレンド’も葉が小さめで優雅な雰囲気で咲きます。 ムスカリや原種チューリップなどの小球根の植え方 小球根は1穴にドサッと植えます。 ムスカリや原種チューリップ、クロッカスなど、小型の花の球根類を小球根と呼びます。小球根は1穴にドサッとまとめて植えると、咲いたときにブーケのように華やかなので、基本的に私はそのように植えていますが、場所によっては点在させても面白い風景になります。 ムスカリと原種チューリップを1穴に混植して咲かせました。 グラウンドカバーの中にポツポツと点在させて咲かせても風情があります。 鉢植えなら球根を花苗の下に 1鉢の中にチューリップとパンジー&ビオラを一緒に植える場合には、まず球根を植えた、その上に花苗を植えます。すると、秋から冬にかけてはパンジー&ビオラが咲き、春になるとその間からチューリップの芽が伸びてきて花が咲きます。2段階に楽しみがある寄せ植えで、ダブルデッカーとも呼ばれる植え方です。鉢植えで球根を育てる場合には、球根だけだと春まで何もない鉢を眺めることになり、水やりも忘れがちですが、花苗が植わっていれば花も楽しめ、水やりも忘れることなく一石二鳥です。 球根は、誰が育てても必ず花を咲かせてくれる頼もしい植物。春の景色を想像しながら、ぜひ球根ガーデニングを楽しみましょう!