お家で桜を愛でよう! 庭木のサクラと自宅で収穫するサクランボ

Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
日本の春の花といえば、サクラ。満開のサクラの花景色は幸せな気分を運んできてくれます。そんなサクラのもう一つの楽しみがサクランボ。品種を選べば、自宅で栽培もできますよ。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、思い出のサクランボのエピソードと、お花見にあると嬉しいベンチについてご紹介します。
春はサクラの季節

幸せな気分が味わえる、満開のサクラの時期。今年は残念ながら天候には恵まれませんでしたが、このサクラの季節が日本という国でどれだけ大切にされているかということに、いつも驚かされます。桜並木の下では、あちらこちらでお花見を楽しむ人々の姿が。世界中の人々がこの時期の日本を訪れますが、ドイツで生まれ育った私にとって、ブルーシートを広げて満開の木の下に座っている光景は見慣れないものでした。特に3月はまだ地面も冷たく、正直なところ、当初はあまり快適ではなかったのです。

ドイツ人もピクニックが大好きですが、お花見のように花咲く木の下に限った話ではありません。自然の中であれば、どこでも好きなところで腰を下ろしてピクニックの始まりです。山を登っている時は、大きな岩や倒木、時に素敵なベンチなどがピクニックの場所になります。ドイツにはそこかしこ、それも一番景色が楽しめるビュースポットにベンチが設置されていることが多く、一息入れるにはピッタリなのです。川沿いや畑の中などのサイクリングロードにもありますよ。その多くが、リンデンバウムやシラカバ、ブナ、カシなど、華やかな花こそ咲かせないものの、心地よい緑陰を作ってくれる樹木の下に設置されています。

自然をもっと楽しむベンチ

ベンチがないのは寂しいものです。私が現在暮らしているこの地域の公園を思い返すと、舗装された道沿いにベンチが置かれています。その後ろには木や植物が植わっていますが、サクラの木の下には残念ながらベンチがありません。なぜでしょう? いつか、その理由を公園の管理者に聞いてみたいと思います。
木の下は、開花の季節だけではなく、一年を通して気持ちのよい場所。私のお気に入りのベンチの形は、木の周りを取り囲むように設置されたもので、実用的でありながら優しい印象です。土が濡れている時であってもベンチなら腰掛けやすいですし、高齢者や障がいのある人にとっても、ベンチはより使いやすい選択肢になりえます。小さな子どもがいる家庭にとっても、荷物をまとめて置けるベンチは多いに助けになります。ドイツのオクトーバーフェストで使用されるような折り畳み式のベンチをたくさん設置すれば、もっと多くの人々がより気軽に、暖を求めて飲みすぎることもなく、お花見を楽しめるようになるのではないでしょうか。

初めて咲いた河津桜

私にとって今年のサクラのハイライトは、ダイニングルームの前に年初に植えた河津桜の開花。2月にはもう花が咲き、毎日のようにメジロのカップルが遊びに来てくれました。花の中で遊ぶ2羽の様子は、誰が最初に見つけるか、今日はやってくるかなどの話題とともに、朝食の時間をずっと楽しいものにしてくれました。時にもっと大きな野鳥が訪れることもありましたが、彼らはまだ華奢な河津桜には少し大きすぎたようです。
今はすっかり緑の葉に覆われた河津桜は、小さな緑の実もつけています。もちろん食用にはならず、飾りとして。河津桜に美味しいサクランボがなったらとても素敵でしょうね。同じ夢はソメイヨシノにも。もしソメイヨシノに食用できる実がなるなら、どれほどのサクランボが収穫できるでしょうか。チェリーケーキにチェリージャム、フルーツソース…いろいろに活用できることでしょう。
食用の実がならないサクラも、花だけで十分幸せにしてくれる木です。少なくとも、目と心には美味しいご馳走。それも大切なことです。
苗木を求めてガーデンセンターへ
先日、あるサクランボが実る苗木を求めて、神奈川・平塚郊外にあるガーデンセンターを訪れました。この場所は昨年から友人に誘われていたのですが、3月半ばまでなかなか予定が合わなかったのです。ようやく予定を合わせて車に乗り込んだ彼女が言うには、このガーデンセンターは郊外にあり、ナビを使ってもなかなか見つけるのが難しいそう。
結論から言うと無事お店にはたどり着け、かかった時間も1時間ほどと決して遠くはありませんでしたが、そこに至るまでの道は、途中で道が細くなって田んぼに突き当たってしまうなど、確かになかなかのアドベンチャーでした。少し離れれば、知らない人はそこにガーデンセンターがあるなんて夢にも思わないでしょう。
地図に従って車を走らせていると、突然小さなエントランスと広い駐車場が現れ、ガーデンセンターに到着しました。ディスプレイは興味深く、小さなガーデンカフェもあり、ほかではあまり見られないエクステリアも充実。野菜や地域の植物は一角にまとめられて独立した売り場のようで、豊富な種類のハーブが植わるハーブのディスプレイガーデンもありました。特に、ペパーミントのコレクションに興味を引かれたので、お目当ての苗木と共にいくつかの品種を購入。このペパーミントについては、またいずれお話ししたいと思います。
そこに至るまでの道も、丘陵地帯の眺めや開き始めたサクラの花などを眺めて、楽しいドライブでした。お気に入りのお店の一つになりそうです。
思い出のサクランボを探して

じつは私は何年も、この苗木を探していました。
昔、6月に友人の一人が真っ赤なサクランボをお裾分けしてくれたことがあります。小さいけれど美味しい実で、どこで手に入れたのか聞いてみたところ、彼の古い借家の庭に植わっている木になっていたのだと言いました。彼もこの美味しい実がなるサクラがお気に入りだったのです。
今ではこの古い家もこの木もなくなり、その場所には代わりに駐車場を舗装した4つの新築の家が建っています。サクランボをお裾分けしてくれた彼も亡くなり、そのサクランボがどの品種なのかを知る人は誰もいなくなってしまいました。
それが先日、7年間探し続けていたそのサクランボと同じものを、別の友人が持ってきてくれたのです。それも彼女の庭で採れたもの。低木のサクラで、実はグミに似ていますが、より丸い形です。思い出の味と同じ味のこのサクランボによって、ようやくその品種が分かったのです。

それはユスラウメ(Prunus tomentosa)。中国を原産とするサクラの仲間です。品種名が分かったので、次は苗を探し始めましたが、なかなか見つからず、今回訪れたガーデンセンターでようやく購入することができました。

このガーデンセンターには、赤い実と白い実の2種類の品種があり、もちろん2種類とも購入。うきうきした気分で、我が家のガーデンではどんな生育をしてくれるかを楽しみにしています。私のイメージではサクランボは赤いものですが、白っぽい実のものも珍しいですし、きっと素敵なコントラストになることでしょう。
面白いのは、私が購入したユスラウメはスタンダード仕立て風になっていたこと。地上30cmほどが主幹だけになっているので、大きな植木鉢に植えた時にほかの草花と組み合わせやすく、可愛いコンテナガーデンになりますね。ガーデンの一角やコンテナなど、いろいろなところに植栽できます。

個人的には、深さのある大鉢に植えて、鉢縁をカバーするようにハンギング向きの一年草を植えるのがおすすめ。ピンクや紫のプリムラや、藍色のビオラ、赤いデイジーなどは、白い花が咲くサクラの低木と素敵な組み合わせになりますね。また、ペチュニアやミリオンベルなどのハンギング向きの植物も、夏に向けておすすめです。
植える鉢は一般的なプラスチックの植木鉢でもいいですが、装飾が付いたものや好きな色など、もっとデコラティブな鉢を選ぶのも素敵。鉢カバーとして一回り大きなバスケットやアイボリーホワイトの鉢などを使い、ナチュラルさやエレガントさを演出するのも一手です。木のボックスやずっしりとしたクレイポットもあり! 好みに合わせていろいろ選んでみましょう。

我が家の河津桜は、木製の白いボックスに入れてあります。大好きな白色と、緑の葉のコントラストはお気に入りの景色。もっとも白はすぐに汚れてしまうので、メンテナンスの手間がかかる色でもあります。
ガーデンショップやガーデンセンターを見て回り、好みの鉢や植物を探すのはとても楽しい時間です。本格的なガーデンシーズンが到来する前に早めに動き出し、じっくり選びましょう。素材や品質、そして自分にぴったりなものを選ぶことが大切です。これから始まる春のガーデンシーズン、思いっきり楽しみたいものですね。
写真/Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
Credit
文 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
取材 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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