魅力的な植物オイルから生み出される石けん&スキンケアブランド「MOONSOAP(ムーンソープ)」
植物にまつわる、ものづくりの物語。日本には、植物の力を生かして、真摯に製品を生み出している人や企業が多くあります。今回お話を伺ったのは「MOONSOAP(ムーンソープ)」。食べ物を選ぶ視点で素材を厳選し、肌をいたわり、心地よさを追求することから生まれたナチュラルスキンケアブランドです。天然の原料のみを使い、丁寧に手作業で作られた石けんやコスメが、いま注目を集めています。その製品作りにかける思いを伺いました。
目次
敏感肌に悩み、自分で作ってみた石けんが評判に
子どものころから肌が弱く、市販のシャンプーが合わずに苦労していたという「MOONSOAP」代表の滝井みおぎさん。「自分に合うものがないなら、作ってみよう」と、石けん作りを始めたのは20代の頃。ITプログラマーとして激務の日々を送っていたときでした。
「大学で農業と化学を専攻していたのと、もともと実験が好きだったこともあり、改めて有機化学と精油化学を学び直しながら、オリーブオイルやココナッツオイルなどを使って石けんを作ってみました。使ってみると、頭皮のトラブルがなくなり、髪もまあまあの仕上がりで、顔も身体もしっとり洗い上げる素晴らしい石けんができたことに驚きました」
ここで持ち前の探求心に火がついた滝井さん。化学の実験をするように、素材の組み合わせや配合率の調整を繰り返し、仕上がりや使い心地のよさを追求していきます。
「小さい頃から、毛布や洋服の手触りがよいものでないと寛げず、匂いなどにも敏感に反応していて、胃腸もあまり強くありませんでした。日光アレルギーやニキビ、アルコールに肌が負けてしまったりと、いろいろな小さな問題がありました。そのため『毎日を心地よく過ごしたい』という思いを、ずっと強く抱えていました。大学を選んだ理由も、学校案内の『生活を快適にする化学』というフレーズに惹かれたからです。一般的な石けんは、パーム油と牛脂が原料であることが多く、洗浄力はあるのですが、スキンケア成分は含まれていないため、肌をいたわることができません。自分で自分のために作る石けんなら、原料は肌によいものだけを使えます。そして、一つの石けんで、髪も顔も体も洗えたら、それだけ持っていればよくて、銭湯にも旅にも便利です。また石けんは生分解性なので、地球に負担をかけません。楽しくなって、いろいろな組み合わせで石けんを作りました」
運命の出会いをしたタイで工房を
最初は個人で使うために作っていた石けんですが、作りすぎて余ってしまった分を友人にプレゼントしたり、イベントで販売したりするうち、次第にそのよさが評判になっていきます。そこで、石けん作りをライフワークにしたいと考えるようになりました。どこに工房をつくろうか? と候補地を探し始めたとき、真っ先に思いついたのが、タイでした。
「というのも、タイは私が人生で初めて『本当の心地よさ』を実感した国だったからです。とはいえ、タイとの出会いは偶然。大学時代に初めての海外旅行で『飛行機のチケットが一番安い』という理由で選んだ所でした(笑)。でも、そのタイ旅行が、その後の人生を変えるくらい大きなきっかけになったんです。まず、野菜とハーブたっぷりのタイ料理のおいしさに衝撃を受けました。感動のあまり、大学卒業後はしばらく都内のタイ料理店で調理師として働いていたほど。その後も、コロナ禍前までは毎年タイを訪れていましたが、タイに行くと体のリズムやお通じなど、私の体に明らかによい変化が現れるのを毎回実感します。緑があふれ、多くの植物、花、果実には生命力がみなぎっています。見上げるような大木・巨木にも日常的に出会います。自然とともに生きるタイの暮らしは、『本当の豊かさとは何か』を教えてくれているような気がします」
「タイの石けん作りでは、米ぬかオイルやココナッツオイル、パームオイルを原料として使います。これらの植物オイルをはじめ、石けんの原料となる植物がタイには豊富にあります。この地で石けんを作りたい! と心に決め、信頼できる工房と出会うことができました。そして、その工房を基軸に、有限会社『MOONSOAP』を立ち上げました。2004年のことです。この工房では、そのときから今までずっと、植物の有効成分を損なわないコールドプロセス製法で、1カ月かけて石けん一つひとつを丁寧に手作りしています」
原料にこだわり、フェアトレードも信条に
「MOONSOAP」が目指す「心地よい暮らし」は、タイで働く仲間にとっても同じ。原料の入手にあたっても、大地や人に優しいものを求めています。原料を購入するだけでなく、原料となる植物を栽培している地域と共に活性化していくことを目指しています。
「たとえば、『買い手がいるから』という理由で、原料となる作物だけを栽培した場合、金銭面では潤ったとしても、生活は本当の意味で豊かにはなりません。収益を得るための特定の作物だけでなく、野菜や米など、必要な作物をバランスよく育てたり、日々の暮らしを崩さずに、供給できるものを分けてもらうことができたらいいなと考えています。その上、原料は農作物でもあるため、収穫の状況によって思い通りに入手できないこともあります。また、石けん作りも天候に左右されるので、『製品が作れず、在庫がなくなる』ということもあるのですが、それは自然なことなのです、とお客様にも説明しています」
「とにかく、原料は良質なものを使っています。原料そのままでも、よい化粧品といえるくらいです! 現在はタイ以外にも、オーガニック(認証を取ってない場合もあり)で品質のよいものを世界中から厳選しています。たとえば、カカオバターはパプアニューギニアの森から。シアバターはアフリカのマリから。どれも未精製のものを選ぶのですが、香りが強く酸化しにくいのが特徴です。日本でも休耕田を活用するプロジェクトがあり、岩手の有機米を発酵させてエタノールを作っています。先日は、福岡県の八女市でベチバー(イネ科の植物)の根っこを香料として活用しようとしている方たちを訪ねてきました」
石けん一つから始まった「MOONSOAP」ですが、身近な人の悩みに応えるべく製品を作っていくうちに、アイテム数も増えていきました。
「たとえば、手荒れに悩む美容師さんのために、天然成分のヘアワックスを開発したり。いわゆる“マーケティング”はしたことがないのですが、身近な人を笑顔にしたいと思って頑張っていたら、スキンケアにボディケアと、どんどん数が増えちゃいましたね(笑)」
天然の香りは、幸せな気分を運んでくれる
そしてもう一つ、「MOONSOAP」が大切にしているのが、香りです。
「それは、私が『よい香りを嗅ぐこと』が何より好きだから(笑)。よい香りは気分を変えてくれるし、幸せな気持ちにしてくれます。その一方で『香害』という言葉があるように、合成の香りの中には、少量でとても強いものもあります。でも、自然の中にある花や森の香りは揮発が早く、人類が何千年も嗅ぎ慣れてきたものです。香水が苦手な方が周りにいて、でも香りを纏いたいという気持ちから、天然香水『Bio Perfume(ビオパフューム)』はできました」
「香水は装いとして纏うことも多いと思います。けれど『Bio Perfume』は、何よりも自分自身の心地よさのためのもので、ふわっと軽やかに香ります。天然の花のブーケって、どんな花を組み合わせても芳しさは損なわれません。天然の香水もそれと同じで、重ねづけができるのが特徴です。リラックスしたいとき、シャキッと気合いを入れたいとき、気分によって『いいな』と感じる香りは違うし、季節によっても好みが変わるので、いろいろなタイプを試してお気に入りを見つけていただけたら嬉しいです」
直営ショップには、こだわって選んだ「よいもの」が
2021年11月には、東京の下高井戸駅前に『MOONSOAP』の全製品をラインナップした直営店をオープン。店内に一歩足を踏み入れると、爽やかでやわらかな香りに包まれます。取材時、まず一番に目を引かれたのが、美しいマーブル模様の黒い石けんでした。
「これは、タイで無農薬栽培した麻の茎を乾燥させて焼き上げた麻炭を練り込んだ石けんです。麻は古くから浄化力があることで知られていますが、麻炭は近年『デトックス』という視点から着目されている素材です。毛穴の奥の汚れまでしっかり洗浄しつつ、必須脂肪酸を豊富に含んだ麻種子オイル(ヘンプオイル)と米ぬかオイルもたっぷり配合されているので、洗い上がりはしっとり。ほかの石けんと同様に、顔や体はもちろん、髪も洗えます。この石けんで、頭皮のディープクレンジングをすると、スッキリ爽快! やみつきになる人も多いんですよ」
ほかにも、世界中から選び抜いた良質な植物オイルを配合し、「アロハ」「シシリー」「アキタ」「シャンハイ」など、それぞれの土地や都市にインスピレーションを受けて名付けた石けん「ワールドソープ」シリーズも。使うたびに旅行気分を味わえそうです。また、スキンケア製品以外に、こだわって選んだハーブティーや生活雑貨も並んでいます。
「直営店では『MOONSOAP』製品のほか、私たちが『よい』と思ったものをセレクトして販売しています。たとえば、無農薬、無着色、砂糖不使用の天日干しドライフルーツ。これは、世界一フルーツがおいしいといわれるアフガニスタン産なのですが、アフガニスタンの大使館職員を通じて、政情不安定な現地の農家さんと直接契約して、仕入れています。お店に並べる品物は、作った人も使う人も、喜ぶものであってほしい。それが当社の願いです」
毎日を『いかに心地よく過ごすか』ということを考えていたら『植物をはじめ自然の恵みを自然なかたちで享受する』というスタイルにたどり着いたという「MOONSOAP」。あなたも、ナチュラルな香りに包まれて、肌をいたわり肌が喜ぶスキンケアを試してみませんか?
ガーデンストーリーウェブショップで「MOONSOAP ヘンプソープ」を販売中
「MOONSOAP」のハンドメイドソープのラインナップの中でも、滝井さんがあらゆる肌タイプの女性に合うとおすすめするのが「ヘンプソープ」。
国産米でんぷん、カナダ産のUSDAオーガニックヘンプオイル(麻種子オイル)を配合していて、ふんわりと吸いつくようなもっちり泡が、古い角質層や老廃物を優しく取り去り、肌をすべすべに洗い上げます。
細胞膜の形成に欠かせないαリノレン酸、γリノレン酸などの必須脂肪酸が80%も含まれているヘンプオイルを日常的なケアとして使うことで、必須脂肪酸が表皮から浸透し、身体の細胞膜が修復され、肌を美しくすこやかに保ってくれます。
こちらのソープももちろん全身に使え、アトピーや肌の弱い方にもおすすめです。
現在、この「ヘンプソープ」を数量限定でガーデンストーリーウェブショップで販売中。体が喜ぶナチュラルなスキンケア、ぜひ取り入れてみてください。
Information
Profile/滝井みおぎ(「MOONSOAP」代表)
1974年生まれ。明治大学農学部農芸化学科卒業後、都内のタイ料理店厨房に勤務。その後タイに渡り、雑誌やレストランの仕事をしながら6カ月滞在。帰国後は広告代理店やIT企業で働く傍ら、趣味で石けんづくりをスタート。2004年に「MOONSOAP」を立ち上げる。現在では、ネットショップや直営店のほか、製品を取り扱うショップも全国で続々と増えている。
写真/MOONSOAP 、3and garden
Credit
文 / 新 明子 - ライター/エディター -
しん・あきこ/出版社勤務を経て、編集&ライターとして独立。女性誌編集部に5年在籍した経験を生かして、ライフスタイル一般、美容、人物インタビュー記事などを担当。その後、縁あって園芸専門誌の編集部に3年在籍。園芸にまつわる喜怒哀楽を味わい、植物の魅力に目覚める。自宅のベランダでは、レモン、ユーカリ、ジューンベリー、ハーブなどを栽培。新苗から育てたバラ‘ノヴァーリス’を溺愛中。
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