紅葉や落ち葉が美しい秋がやってきました。植物が葉を落とし、庭全体の見通しもよくなる秋は、ガーデンの大掃除におすすめの季節です。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、この季節にやっておきたいガーデン整理のポイントと、冬から春にかけて楽しむ寄せ植えについてご紹介。翌年に向けて、ガーデンをすっきりさせていきましょう。
目次
落ち葉の季節の到来
いつの間にか気温が下がり、冷たい風と変わりやすい天気とともに、今年も秋がやってきました。植物の葉は、種類や育つ場所、風の当たり具合などにより、それぞれのペースで散り始めています。こうした季節の変化は毎年の楽しみ。落葉が始まると、景色から受ける印象はガラリと変わります。高い木々の葉に覆い隠されていた建物が、まるで急に大きくなったかのように突然その姿を現します。もっとも光が届くようになると、手入れや修繕が必要そうな箇所が目につくことも。木々の葉は多くのものを隠し、守り、安心感を与えてくれるものです。週に数回ドライブする東京の道の変化にも心が躍り、また、人々が、日々落ち葉を清掃している様子も大好きな秋景色です。
先日、日本海にほど近い、大きな駅を訪れる機会がありました。駅近くの広々としたオープンスペースには、まだ若木の桜数本とグラウンドカバーが植栽され、その隣にはたくさんのベゴニアのハンギングバスケットが飾られていました。ベゴニアはどれも美しい状態に保たれていて、この時期にはぴったりのディスプレイです。そこに広いペイビングエリアがあったのですが、落ち葉一つ見当たりません。全てが驚くほどスッキリと綺麗に保たれていることを不思議に思っていると、ちょうど60代ほどの男性がスイーパーを持って掃除をしていることに気がつきました。芝刈り機に似たスイーパーは、鋭い刃の代わりに箒がついたもの。スイーパーという名前の通り、彼はすべての葉を追いかけ、吸い込んでいました。時々中身を捨てては、また最初からやり直しです。このエリアが素晴らしく綺麗だった理由は、忍耐強い作業員の方とスイーパーのおかげだったのです。
秋はガーデン掃除がおすすめ
このように、すべてを美しい状態に保つのはとても手がかかります。私の知る範囲でも、多くの人が庭を綺麗な状態に保つのに苦労しています。実際大変な仕事で、思った通りにならないこともしばしば。強風が吹くこともありますし、虫や蚊もまだ発生します。肌寒い天気や、地面が濡れていたりといった些細なことがやる気をそいでしまうことも。でも、必ずしも、すべてが整っていることが素晴らしいとは限りません。私にとっては、結果に満足して快適であれば、それがよい仕事。普段はちょっとした欠点には目を瞑り、時々まとめて大掃除することにしています。人やガーデン、環境はそれぞれ違いますので、大切なことは、楽しんで作業を行い、終わった後は、たとえ疲れていても、ハッピーな気持ちになっていることです。
また、ガーデンの大掃除は必ずしも一人で行う必要はありません。よい日取りを決めて、友達を招いて手伝ってもらいましょう。例えばランチの後、2時間ぐらい庭作業を一緒に楽しみ、そのあとはお茶とお菓子でティータイム、なんていかがでしょうか。友人に家での手助けを頼むことの少ない日本ではあまり一般的ではないかもしれませんが、私の故郷のドイツや他国の友人たちの間では、お手伝いを頼むことはよくあることです。特に私の場合、プロのガーデナー経験から、樹木の伐採のような他の人ならば家族と相談が必要なことも決められるので、お手伝いを頼みやすいというのもあります。
秋は庭の大掃除にぴったりの季節。今から始めれば、あらかた庭仕事が片付いて、12月をリラックスした気持ちで迎えられますよ。少なくとも、屋外の掃除は終わっているのですから。家の中の大掃除は、また別の話ですけれどね。
ガーデン大掃除チェックポイント
ガーデンでは、芝生や花壇の中、ウッドデッキの下、コーナー部分が見落とされがちです。葉が落ちて緑や花が少なくなると、今まで隠れていた部分が目に付くようになるので、掃除もしやすくなりますし、全体を見て模様替えをするにもいい季節。翌年のために、より使いやすいようにしておきましょう。
小道のタイルやレンガがぐらついていたり、水やりのホースが短すぎたり漏れたりするようであれば、修繕を。ほかにも、いろいろと気づく点があるかもしれません。ToDoリストやバケットリストを作っておくと便利ですよ。
樹木と茂み
秋は、多くの樹木の剪定適期です。古枝や弱った枝、隣家や道路、公共空間に伸びていきそうな枝は切り戻しましょう。適度な剪定は、安全のためにも欠かせません。例えばほんの数日前、植物が伸び放題となった空き地が原因で、ヒヤリとする出来事がありました。自転車で移動中、空き地に茂っていた樹木や野生のつる植物が狭い道路に飛び出していたため、車を1台やり過ごして再び漕ぎ出そうとしたところ、その飛び出していたつるに引っかかってしまい、危うく自転車から落ちるところでした!
植物を切り戻すのは勇気がいるかもしれませんが、必要な分は躊躇せずしっかり切りましょう。剪定は一年中植物に合わせて行いますが、今は強剪定するにもいい季節。来年の春や夏、生き生きとした新芽が伸びる姿を想像しながら楽しんでやってみてくださいね。
剪定の後、切った枝を捨てるのも意外と大変です。長さや太さ、捨て方などが決まっている場合があるので、お住まいの地域のごみ収集ルールを確認しましょう。私の住む地域では、大量の枝や庭の廃棄物の場合、市役所に電話をして収集を申し込む必要があります。
私は庭の廃棄物という言い方は好きではありません。そこで、ただゴミとして捨てるのではなく、切った枝が病害虫に侵されていなければ、できるだけそのまま庭に置いてゆっくりと分解させています。分解されていく過程では、同時に多くの虫や動物たちの棲み処にもなります。限られた庭スペースでは難しいかもしれませんが、枝をまとめて置けるような使っていない一角があれば、このようにゆっくり分解させてみるのもいいかもしれません。冬の間、枝を小さく切っていくのも楽しいものですよ。バーベキューグリルがあれば、枝が乾いたら薪として利用することもできますね。クラフト材料や子供のおもちゃにもなります。
一年草と宿根草
夏の花はほとんど終わり、まだ花が残っていても、そろそろ一年草は整理する季節です。一年草の間に常緑の宿根草が植えてあれば、片付けが終わった後でもまっさらにはならず、冬の間も花壇に緑が残ります。もちろん、花壇を一年草だけで作るかどうかはそれぞれの人の好みで異なりますが、宿根草やグラス類、一年草、低木などを混植するのもいいと思います。
ハーブガーデンはハーブの種類に合わせて少しずつ切り戻しましょう。私の場合はできるだけ長くそのままにしておき、晩秋以降もハーブを収穫して使っています。
植木鉢やコンテナ
鉢植えやコンテナ、バルコニーの花も同様です。それぞれ場所を移したりする必要がありますが、その前に鉢などの状態を確認しておきましょう。時には壊れていることがあります。年々増えていく鉢やコンテナ、もし割れていたり壊れそうなものがあれば、お別れするタイミングかもしれません。買ってはみたものの、色が庭に合わなくて使っていない鉢は、断捨離も考えてみましょう。難しい選択ですが、ごみ回収が来る前にパパッと済ませてしまうとよいでしょう。どこかに保管しておく必要もありませんし、ついつい手放しがたくなってしまうのも防ぐことができます。できるだけ、いいものを長く使うようにしたいですね。空いた鉢は、新たに植え直す前に洗っておきましょう。
先日、我が家のレイズドベッドでも問題を発見。いろいろな素材や植物を試行錯誤するために、大袋に土やその他の資材をすべてまとめていました。今までは問題がなかったのですが、今回は素材が異なっていたためか、残念ながら夏の間に、ボロボロになった袋の部分が土の上に散らばっているのを見つけました。これを全部取り除いて捨てるには手間がかかることでしょう。これは予想外のトラブルで、二度と起きないように気を付けたいと思います。
冬から春の花も準備しよう
秋は、球根や人気のパンジー&ビオラなど、丈夫な一年草を植えるタイミング。どちらもほとんど世話をしなくても元気に育ち、バラエティ豊かで好みの色や形も豊富に揃います。私は小輪のビオラが好きです。どこで育てるかによって、背景の家との調和がとれるように慎重に色を選びます。私は、今年の秋の花と球根の寄せ植えは、一つは家の前に、ほかに裏庭、ベランダなど、食卓から、よく見える位置にも置く予定です。
植える前には、それぞれの組み合わせをよく考えます。ガーデンストーリーなど、ガーデニングのホームページや園芸店の見本、カタログなどで、可愛い組み合わせ方のお手本を見つけるといいですよ。真似したいものがあれば、写真に撮って必要な苗と球根を揃えましょう。可愛い寄せ植え作りには、置きたい場所の高さなどに合わせて、素敵なコンテナを用意することも重要です。
作った寄せ植えは、日当たりのよい場所に置くのがおすすめ。もし半日陰や日陰で育てるなら、選べる球根はかなり限られてきます。暗い一角を明るく見せたいなら、カラーリーフやシルバーリーフを取り入れるのがおすすめ。また、長く暗い冬の夜には、植物の近くにライトがあると、暗くてもよく見えますし、気持ちが明るくなりますよ。人を検知して自動で点灯するソーラー式のスポットライトを使っている友人もいますが、とても明るいライトです。太陽さえ当たっていれば勝手に充電してくれるので、使い勝手もよさそうですよ。
ドイツでは、春は常に黄色と結びついています。黄色のスイセンと赤いチューリップはマストアイテムですし、赤いプリムラや赤と白のデージー(ヒナギク)も欠かせません。ピンクのチューリップと黄色のビオラ、シルバーリーフの組み合わせも定番です。ローズマリーやセージも寄せ植えの素敵なアクセントになりますよ。コンテナの深さや幅に合わせて選びましょう。一風変わった組み合わせに挑戦してみるのも楽しいものです。「あなたが好きなものは、なんであれ、それがあなたの作るべきもの」というような言い回しもあることですし、ぜひご自分の好きな組み合わせにチャレンジしてみてくださいね。
Credit
ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
取材/3and garden
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