10年に1度の花イベントフロリアード! 世界をけん引する園芸エキスポFLORIADE 2022 in オランダ

Milos Ruzicka/Shutterstock.com
「フロリアード」というイベントをご存じですか? 10年に1度、オランダで開催される、世界でも有数の規模と歴史を誇る植物に関する総合イベントです。2022年は、そんなフロリアードの開催年。現在開催中でガーデニング業界が注目するビッグイベント、フロリアードを、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんがご案内します。
目次
10年に1度の花と緑のビッグイベント
フロリアードが開催中!

フロリアード(FLORIADE:国際園芸博覧会)は、花とガーデン、緑地に関するすべてを網羅した一大イベントです。第1回のイベントは、1960年ロッテルダムで開催され、第2回は1972年にアムステルダムで。以来10年に1度、園芸大国であるオランダのどこかの都市を会場に開催されています。今年2022年は、アルメーレで開催。春に始まり、秋に終了するフロリアードでは、長期間にわたり多くの植物の成長期の様子と、季節の移り変わりに伴うインドアやアウトドアのシチュエーションを見ることができるのです。

フロリアード2022は、4月14日(木)~10月9日(日)まで開催され、期間中は10:00~19:00まで入場できます。会場エリアWEERWATERは、首都アムステルダムにほど近いアルメーレの町とその周辺。この国際的なガーデニングイベントは、新しい植物やスタイルの発表、プロモーション、そして将来の新たなグリーンシティーの発展に向けたトレンドが生まれ、またすべてのガーデナーが豊かなアイデアに触れることのできる場になっています。

フロリアード2022の会場アルメーレ

フロリアード2022が開催されているアルメーレは、オランダ・フレヴォラント州にある人口約20万人の都市。アムステルダムからほど近く、マルケル湖とアイセル湖など、豊かな水に囲まれた地域です。フロリアードを訪れることができるなら、町の周囲を自転車で回って観光してみるのもいいですね。また、少し足をのばしてアムステルダムを訪れ、世界的にも有名な美術館や運河を楽しむこともできます。
私自身は、実際に会場に行けるかどうかはまだ分かりません。でも、このスペシャルなイベントはテレビ放映のほか、InstagramやFacebookなどのSNSを通じても楽しむことができます。
フロリアード2022の一部をご紹介
今年のフロリアードのモットーは「成長する緑の都市(Growing Green Cities)」。
テーマは4つ掲げられています。
市民の緑化:より多くの緑化空間
市民を養う:食料生産の改善
都市に活力を:スマートなエネルギー生産
都市を健康に:サステナビリティと循環性自然とともに暮らす
見どころがたくさんあるフロリアードの風景を、一部ご紹介します。

水に囲まれた会場

会場となるエリアは、1950~60年代にかけてアイセル湖の一部を埋め立ててできた60ヘクタールほどの平坦な土地。会場内には、大きく分けて「GREEN ISLAND(緑の島)」「URBAN DISTRICT(市街地)」「UTOPIA ISLAND(夢の島)」「HORTUS AVENUE(公園通り)」「ECO DISTRICT(エコ地区)」という5つのエリアがあり、全てのエリアを合わせて192の区画に分かれています。フロリアードの閉幕後は、住宅地として再活用される予定です。

HORTUS AVENUEでは主に地元企業の展示を、URBAN DISTRICTでは世界中から集まったテーマガーデンを見ることができます。ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、キプロス、トルコ、中国、インド、タイ、カタール、UAE、そして日本が参加しているので、それぞれの国のガーデン文化を知る手がかりになりますね。ちなみに、日本のテーマは「Satoyama」です。

オランダ及び国際的なガーデンや植物の企業がディスプレイするGREEN ISLANDは、新しいトレンドに触れられる場所。UTOPIA ISLANDとECO DISTRICTは革新的なアイデアや特別なテーマを展示しています。
会場の移動はケーブルカーで

会場での移動におすすめなのは、ケーブルカー。ケーブルカーからは、素晴らしい景色が見渡せ、また靴を濡らしたり歩き疲れる心配なく、広大なエリアのあちこちへ移動することができます。搭乗は少しボートに似た雰囲気。ケーブルカーのキャビンは、水上から発車するのです。面白いですよね。

会場内の樹木園には「生きた樹木図書館」として、AのAcer(モミジ)からZのZelkova(ケヤキ)まで、約700本の木がABC順に植えられ、さらに約9万本の低木と約20万本の宿根草に彩られています。森の中には映画館もオープンするそうです。
会場内のいろいろな施設

広大な敷地内でもひときわ目を引く建物が、巨大なガラス温室。1ヘクタールもの広さのある温室内には、170mの長い通路があり、ガーベラやピーマン、イチゴ、アンスリウムといったカラフルな花や野菜を見ることができます。ここはイベントや会議の会場、またサステナブルな習慣やイノベーションについて消費者に伝える場としても利用されています。


フロリアードで見るべきもう一つの建物が、花の塔。14階建ての塔には、園芸高校やフレヴォラント州の食料フォーラム、ケアホームなどが入ります。フロリアードの閉幕後は、マンションとして活用されるそうですよ。HORTUSと名付けられるこのマンションは、近い将来700人以上が住むことになるでしょう。こんなに広くて緑に囲まれた場所で暮らせるなんて、うらやましい限りです。

豊富な水に囲まれたアルメーレの会場は、海に近いことから風が強く厳しい環境です。そのような状況でも育つ植物を見つけるのにも役立ちそうですね。

サステナブルで暮らしやすい都市のためのイノベーションや解決策を見つける手がかりをくれるフロリアード。世界各国からおよそ400の団体が参加し、6カ月間で200万人の来場者が見込まれています。イギリスやベルギー、ドイツなどの近隣諸国に加え、世界中からたくさんの人が訪れることでしょう。
コロナウイルスの感染拡大や、不安定な国際情勢が、「成長する緑の都市」という今年のフロリアードのテーマを、より大切なものにしています。思い立って小旅行に行くこともできませんし、いつ何があるかも分かりません。身近な自然環境や都市空間の中の緑、そして互いに知り合い、困難な時にも助け合う社会の重要性がますます実感されます。

可能であれば、ぜひ実際に現地を訪れてみてください。私もそうですが、それが難しい場合は、ぜひフロリアードのSNSや、このガーデンストーリーのサイトで、緑やガーデン、自然について、小さなものから大きなものまで、いろいろなアイデアを楽しんでみてくださいね。
フロリアードの思い出

私がフロリアードを訪れたのは30年前。ハーグの近くにあるズーテルメールという町で行われた時のことです。それ以前にも、フロリアードとよく似たドイツで行われる連邦園芸博覧会(BUNDESGARTENSCHAUEN)など、ヨーロッパやアメリカで行われるフラワーショーを訪れたことはありました。
しかしながら、フロリアードと比べると、それらの思い出も色あせてしまいます。広大な敷地にたくさんの素晴らしいディスプレイエリアが広がり、大きなエキシビションホールではイベントが行われ、誰でも実践できそうな素敵なアイデアがあちこちにちりばめられていました。ディスプレイを一つも見逃すまいとたくさん歩いたため、足が痛くなったのもいい思い出。また、今まで知っていたドイツの風景とは全く違う、見渡す限り平坦なオランダの風景を堪能できたのも大きなプラスでした。そして、世界中から各国のスペシャリストが集まって作り上げたオリジナルテーマのガーデンが一堂に会すということも、当時はこうしたイベントの大きな魅力でした。デザインされた小さな一画ではありますが、飛行機を使って遠い異国の地に行くことなく、その国の空気を感じられる貴重な機会だったのです。

以来、さまざまな地域のフラワーショーを訪れましたが、ここを超えるフラワーショーにはまだ出会えていません。もちろん、ロンドンのチェルシーフラワーショーは素晴らしく、非常に楽しめましたが、周囲の環境や伝統、そしてコンセプトなどは、フロリアードとは多くの点で異なります。チェルシーフラワーショーはロンドンの4.5ヘクタールほどのエリアで、5日間にわたって行われ、5月にしか開催されません(2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で9月に開催)。こちらも必見のガーデンショーですが、毎年行われるので、見に行くチャンスは多くあります。

いろいろな国や地域で行われるガーデンショーは、新しいアイデアやスタイルに出会え、地元のガーデンシーンや人気の植物を発見できるほか、イベントに訪れる熱心なガーデナーや専門家と会話を楽しむこともできる場です。有名なものでも小さなものでも、とても刺激的で見るべきものがたくさんあるので、ぜひ訪れたいものですね。
Information
Floriade Expo 2022
https://floriade.com/en/
開催期間:2022/4/14(木)~10/9(日)
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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