ガーデンにウッドデッキがあったら、ゆっくり座ってくつろいだり、家族みんなでティータイムを楽しんだり、ガーデンライフがよりいっそう充実しそうですよね。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが、そんな夢を実現すべく、自宅のガーデンにミニウッドデッキを作ったDIYの様子をレポート! ウッドデッキ制作の流れや、DIYをする際に気を付けたいポイントを、イメージ写真を交えてご紹介します。
目次
ミニウッドデッキ制作に挑戦!
先日、我が家にDIYのミニウッドデッキが完成し、デッキでくつろぐガーデンスペースという小さな夢が実現しました。今回の記事では、このウッドデッキ制作についてレポートしたいと思います。
我が家のウッドデッキ制作を考えてみると、キーになったのは辛抱強さ。ウッドデッキの導入を考え始めてから何年もかかって、ようやく理想のデッキが部分的にでも実現したのです。これほど時間がかかったのは、DIY自体が時間のかかるプロセスであることもありますが、我が家の小さなガーデンスペースに最適なデッキの形が見つかるまで、私や夫の考えが何度も変わったためでもあります。
ウッドデッキ制作の前に
ミニウッドデッキを設置することにしたのは、次のような環境です。場所は我が家の裏庭でダイニングルームの正面、奥行き3m、幅3.6mほどの小さなガーデンスペース。隣家の白いアルミフェンスで囲われています。隣家の敷地には1.8mほどの高さに成長したアベリアの生け垣も植えられ、我が家の庭と、明るいオーシャンブルーに塗られた隣家の扉とをやさしく仕切る目隠しになっています。
ダイニングの掃き出し窓から裏庭に出られますが、70cmほどの段差があるため、引き戸の外にコンクリートの踏み台2つを置いてあります。ところが、掃き出し窓のフレームがこの踏み台に少しかぶさるため、足を置く部分が狭くなって、外に下りる際は注意が必要でした。私はこの踏み台が嫌いで、改善しなければと思いながら、ずっと裏庭に行くにも正面玄関を使っていました。時間とエネルギーの無駄ですよね。
そこで、ここに2~3mの長さのウッドデッキを作り、残りの空いたスペースは水やりの際の動線とすることにしました。
ウッドデッキを設置する前は、このエリアは砂があちこちに飛び広がるのを防ぐ黒いマルチシートで覆われていました。このシートは見た目こそよくありませんが、大雨や台風の時に壁が汚れるのを防いでくれる、とても実用的なものです。マルチシートをしておけば汚れも防げ、地面を保護して雑草対策にも役立つので、おすすめですよ。
ウッドデッキ制作のための準備
ウッドデッキを制作するためにまず始めたことは、設置場所の寸法の計測。それから、夫が理想の完成図を絵に描いてくれました。ウッドデッキの制作を決めてから迷ったことは、一続きのデッキにするか、2段に分かれたデッキを作るかということ。一部が一段低く設計された、沈床式庭園のような魅力も頭に浮かびましたが、一方でバリアフリーも重要なポイントで、段差のあるウッドデッキはバリアフリーではありません。母が長年車いすを使っていたため、実用的なバリアフリー構造は、私にとって重要なことなのです。
結局、今回は決断を先送りし、「仮デッキ」を作ってDIY経験を積むことにしました。こうすれば、最初から完璧を目指さず、「これは一時的なものだから」と、とりあえず妥協することができます。少なくとも5年ほどは持つでしょうから、それから新しいものを作るか、ウッドデッキ以外のアウトドアプランに変更するかを考えようと思います。という訳で、今回は2段に分かれたデッキを作ることに決めました。
検討するほどよくなるから、と考え続けるより、とりあえず始めてみるということは、時にとても大切です。自由に体が動く時間にも限りがありますしね。
このウッドデッキにはガーデンファニチャーは置かない予定。デッキにそのまま座り、小さなテーブルとトレイを使ってティータイムを過ごせたら、私にとってはパーフェクトです。エクステリアは場所を取りますし、強風の日は飛ばされてしまう危険もあり、また経年劣化や冬の収納の問題もあります。
ウッドデッキの材料を購入
2段式のミニウッドデッキを作ると決まったら、さっそく車に飛び乗り、お気に入りの大きなホームセンターに向かいました。農業界のプロの方々も使うこのお店は、郊外にあって実用的な製品がたくさん揃います。
買い物をする際は、いくつかのホームセンターやガーデンセンターを回って、商品や価格、陳列などを比較すると、理想に近いものがお得に購入できるのでおすすめ。ガーデンで使いたいものを見つけたら、メモや写真に残しておくとよいでしょう。
今回はお店でちょうどいい長さの松の板を見つけたので、即決で購入しました。それを一つひとつ真っ直ぐか、穴がないかをチェックしていきます。この作業は2人1組で行うと簡単ですよ。板の長さは3.3mだったので、お店で必要な長さにカットしてもらいました。そうでなければ車に積んで運べませんからね。
木材を購入しに行く際は、素手でささくれなどに触れて怪我をしてしまわないよう、手袋を持っていくと便利です。私は手のひら部分がさまざまな色のゴムでできたグローブを愛用し、夫は軍手のほうが好きなようです。私はあまり軍手が好きではありませんが、人それぞれ好みがありますから、我が家では常に2種類の手袋が常備されています。
木材を選ぶ際は、板の模様や色にも注意を払いましょう。板によっては色が違うこともありますし、見た目はやっぱりよくあってほしいものです。
色選びは、これまた難問。家の壁の色と合う色で、購入しやすい製品、そしてもちろん好きな色を選びましょう。材質により塗料の発色が異なることもありますので、木材を購入したら、実際の作業にかかる前に少量だけ使用予定の塗料を購入し、試し塗りしてみるのがおすすめ。多少時間や手間はかかりますが、やるとやらないでは大きな違いがあります。今回私たちが選んだのは、周囲によく馴染む、明るい茶色の水性塗料です。
一方で、夫と一緒に近所を散歩していると、「このウッドデッキの色もうちに合いそうだね」なんて言われます。なので、5年のうちには、別の色を選ぶかもしれませんね。ともかく、今回はこの色をゲットしました。
デッキ制作とDIYで注意すること
購入した木材は持ち運びやすい適切なサイズにカットし、塗料を購入してネジを選び、だいたいの準備は整いました。そして、ウッドデッキのDIYの際に忘れてはいけないのは、地下部分の工事と、それに必要なコンクリートブロックなどの材料や道具です。幸い、我が家は昨年使った電動ノコギリやドリル、鉄製角など必要な道具があったので、それらを使うことができました。
自分の手で挑戦したり、試行錯誤するのは大切なことです。一方で、DIYを敬遠させるつもりはありませんが、実際の作業はインターネット上やYouTube上で描写されているほど簡単ではないということも覚えておきましょう。特に基礎工事の部分は、おろそかにすると後々倒れたりゆがんだりと、危険につながることもありますので、丁寧に行いましょう。この記事でもウッドデッキの目に見える部分、つまり木材部分から説明しましたが、仕事のほとんど、少なくとも重要なパートは、基礎工事と準備です。
しっかりした基礎を準備するためには、時間と労力が必要です。幸い私たちの土地は、排水性のよい砂地だったので、地面を掘ってコンクリートブロックの土台を埋め込み、安定するよう周囲を砂利で固めるだけで済みました。
基礎部分ができたら、木材を正しい角度でまっすぐ固定していきます。
最後に塗料を塗ってDIYウッドデッキが完成しました!
今回の制作期間
ウッドデッキを使えるようになるまでには、準備など含めて1カ月強かかりました。なぜそんなに時間がかかったのでしょう? 作業が長引いたわけはいろいろありますが、主に次のような理由です。
- 天候に左右されるため
雨や強風の日は、作業には適していません。我が家には屋外で屋根のあるスペースはなく、塗料が乾くまで木材を保管しておく場所もありません。また、塗料を塗ること自体はそれほど時間がかかる作業ではありませんが、その準備として紙やすりなどをかけるのは時間が必要ですし、塗料の準備も忘れてはなりません。作業スペースの確保も問題で、木材の量にかかわらず一定の広さが必要。スペースが小さい場合は、作業後の後片付けも大変です。
もちろん、作業できるスペースはガーデンごとの状況によって異なりますが、こうしたことは頭に入れておくとよいでしょう。
- 材料の不足
よく計算して確認しても、買っておいた材料では足りなくなってしまうことはあります。そうなると、追加のホームセンターへの買い出しは必要不可欠。これも時間を取られます。
- 作業時間の制限
作業をしたのは、基本的に週末だけ。作業はできるだけ朝早く、遅くても8時半にはスタートするようにしていましたが、昼の時間はあっという間に過ぎていき、暗くなったら作業はストップしなければなりません。
- 体力、気分、モチベーション
半日全力で仕事し、時に予想外の作業に時間が取られると、モチベーションが下がって追加の休憩時間が必要になることも。
- 優先順位が高い他の仕事
急に仕事のメールが舞い込み、合間合間に作業しなければならなくなることもあります。こんな時は、DIYの中断は仕方ありませんね。
このほかにも、予想外の作業が発生するかもしれません。週末の時間を利用してDIYをするなら、必要な時間や労力を多めに見積もっておきましょう。でも、自分で作った場所やそのためのDIYを楽しむのは、その苦労に見合う価値がありますよ。
DIYとウッドデッキのあるガーデンの楽しみ
私はガーデナーではありますが、大工さんではありません。正直に言うと、私の興味は植物やその育つ環境が主で、DIYにはあまり関心がありませんでした。ですから、夫が我慢強く付き合ってくれなかったら、まだ我が家のデッキは完成していなかったかもしれません。そんなわけで、別の選択肢としては、業者に頼んでしまうこと。もし予算がもっとあったら、私の第一の選択肢はプロの方に頼むことだったでしょう。でも、こうして力とアイデアを出し合って、思い出に残る場所を作ったミニウッドデッキ制作は、素敵なプロジェクトでした。
DIYビギナーのうちは、できの良し悪しにかかわらず、作ったということに100%満足し、ハッピーな気分になるといいですよ。たくさん失敗して、うまくできたところを思いっきり気に入るのも大切です。
実際、私は毎日このミニデッキを見る度に嬉しくなってしまいます。じつは、名前も付けてしまいました。1段目は「バニャンテラス」、2段目は「ワイキキビーチ」です。今までに見てきたたくさんの木製ベランダや設えの記憶も含めて、リラックスできる、また幸せな時間を過ごせる場所になっています。
先日、家族全員がこのデッキに集まり、「バニャンテラス」に座って午後のティータイムを楽しみました。同じ日の夕方には、娘と一緒にデッキに横になり、この真新しい木製ハワイアンオアシスから、星空観測を楽しみました。ウッドデッキのある庭という、小さな夢が実現したのです。
Credit
ストーリー・写真(記載外)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
取材/3and garden
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