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家庭菜園で楽しむ季節の味わいと自然の恵み

家庭菜園で楽しむ季節の味わいと自然の恵み

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Meyer-Rebentisch, Dr. Karen

コロナ禍で人気が高まっている家庭菜園。自分で野菜を育てれば、季節の変化を感じながら自然の恵みを存分に味わえます。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、家庭菜園で育てたいおすすめ野菜や、菜園では必ず遭遇する雑草の対処方法について、エピソードを交えて教えていただきます。

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春の雪と河津桜

桜
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

今年の2月は、東京周辺でも雪が降りましたね。私にとっては、この雪が冬の終わりが見えて、頭の中が春モードになるタイミング。長年ガーデナーとして働いてきたからか、それとももともと早めに植栽する植物を決めたい性格なのかは自分でもちょっと分かりませんが、植物について考えるときは、少なくとも1シーズン先、もっと創造力が旺盛なときは1年先のことを考えていることもあります。

雪が降ったときは、ちょうど静岡県の伊豆にいました。市街では雪を見ることはありませんでしたが、少し標高が高い場所にある、滞在していたホテル裏手の箱根ターンパイクは、東京周辺の高速道路の多くと同じく雪により閉鎖されていました。南北の幅も広く、標高差がある日本では、地域ごとの天候や気候の多様性には驚くばかりです。ちなみにドイツでは、スノータイヤなどの車の冬装備こそ義務づけられていますが、地域全体が雪に覆われても、ひどい事故があった場合を除き、高速道路が通行止めになることはまずありません。

河津桜
早咲きで知られる河津桜。Princess_Anmitsu/Shutterstock.com

滞在したのは、河津桜で有名な河津近く。江の島から海辺の道を通りながら、河津桜の育つ環境の変化や、固く閉じたつぼみや一分咲きにほころんでいるものまで、開花状況の違いを眺めることができました。そしてホテルに入るときに私の目を捉えたのは、エントランスホールのアレンジ。ピンクの花が咲く河津桜の枝と、ホテルのシンボルフラワーであるオレンジとブルーの花が鮮やかなストレリチアの組み合わせが、とても美しいものでした。

旅行などでどこへ行っても、その場所らしい花や種をつい探してしまいます。自然の中の植物の姿には、野生での植物の組み合わせや、厳しい環境下にどのように対応しているかといったヒントがたくさんあります。いろいろな場所で出会えたそんなシチュエーションの数々は、忘れないようにたくさん写真を撮っておきましょう。

家庭菜園の雑草処理

雑草
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

さて、自宅のある神奈川の湘南に戻れば、ポタジェガーデンが今の私のメインプロジェクトです。私が野菜を育てる時のキーワードは「ナチュラル」。私なりの解釈ですが、パーマカルチャーの考え方にできるだけ則るようにしています。例えば雑草の処理。20年以上前から、菜園や同じ場所にある宿根草ボーダーに生えてきた雑草などの自然のものは、すべて土に戻すようにしています。私はこれを、地中の虫や動物たちのごはん、と考えています。また、そばにはコンポストボックスも備え付け、野菜の切れ端やガーデンで整理した葉などを堆肥にしています。菜園エリアには、しっかり根を張る厄介な雑草がたくさん生えてきますが、今はそんな雑草を抜くのに向く季節。腰が痛くなる作業ですが、1回1~2時間ずつで小分けにしてやれば、そこまで負担になりません。

スギナやヤブガラシ、時に増えすぎたレモンバームやペパーミントなど、種がつきすぎていたり、根から増えたりするようなものは燃えるゴミに出してしまいますが、できるだけ雑草は生えた場所の土に還すようにするのが私なりのルール。また、桜やレンギョウの剪定枝は、外で乾かしてからレイズドベッドの下層に入れるか、どこか適当な場所に埋めておきます。こうした枝も、少し時間はかかりますが、ちゃんと土に還りますよ。

家庭菜園におすすめのジャガイモと赤からし菜

ジャガイモ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

今はもうじきやってくる、ジャガイモの植え付け準備の真っ最中。ジャガイモは家庭菜園で栽培する野菜として人気がありますね。先日は植え付けたいジャガイモ品種をチェックしましたが、今までに育てた品種の中でも美味しかったキタアカリが、私のイチオシです。

ジャガイモが収穫できたら、おすすめレシピはホームメイドのポテトサラダ。作り方は、次の通りです。

ポテトサラダ
© StockFood / Csigó, Zita

<材料>

  • ジャガイモ(キタアカリ)500g
  • タマネギ 1個
  • ヒマワリ油 大さじ2
  • マスタード 小さじ1
  • 野菜スープ(ブイヨン) 150cc
  • 酢 大さじ2
  • 塩・胡椒 適量
  • チャイブ 適量

<作り方>

  1. ジャガイモはゆでて皮をむき、タマネギは小さく刻みます。
  2. フライパンにヒマワリ油をひいて刻んだタマネギを炒め、そこに野菜スープを加えます。味見をして塩・胡椒で味を調えます。
  3. ゆでたジャガイモは食べやすい大きさに切ってフライパンに加え、そのまま20分置きます。大事なことは、ジャガイモは熱いうちに熱いスープに入れること。こうすることで、味がよくしみます。
  4. マスタードと酢を入れてよく混ぜ、チャイブを刻んでのせたら出来上がり。

私の家では、ポテトサラダといえばきれいな黄色で、たくさんのタマネギとチャイブが入ったもの。どんなソーセージともよく合いますよ。

ドイツでは、ジャガイモを収穫した後は、マメやニンニク、ホウレンソウ、タマネギといった野菜を育てるのが人気です。ほかに、カボチャやトウモロコシなどもよく見かけます。こうしてみると、南米大陸を原産とし、古くから栽培されてきた野菜が多いですね。

私はこの春、ジャガイモと同じ列にカレンデュラやホウレンソウ、ハツカダイコンを植えるつもり。どんな風に育つか楽しみです。

赤からし水菜
ElenVik/Shutterstock.com

もう一つおすすめの野菜が、赤からし菜。暗赤色の素敵な色彩がアクセントになるので、野菜のコンテナに植えるのもいいですね。昨年は30cmほどにまで育ち、特に寒い日もしおれずに、茶色っぽい退屈な冬の菜園に色を添えてくれました。ちょっと刺激的な味わいで、葉はミズナのようにギザギザしています。育てやすく、ほぼ通年種まきして収穫できるので、初心者の方にもおすすめ。リーフガーデンやコンテナに、ほかのサラダ野菜やエディブルフラワーと一緒に植えるのにぴったりです。

旬を味わう菜園の喜び

ポトフ
© StockFood / Gräfe & Unzer Verlag / Lang, Coco

冬のあいだ、私はドイツ語で「アイントフ」、つまりポトフをよく作りました。野菜庫にある野菜、しばしば残り物だったり形が悪かったりしますが、それらを鶏の手羽やソーセージなどと一緒にゆっくり煮て作ります。野菜だけでも十分美味しいですよ! 数時間、じっくり時間をかけて調理し、煮あがったら落ち着くまでそのまま冷ますのが美味しいポトフのポイントです。

出来上がりは、心まで温かくなるような、美味しいスープ。寒い日にぬくもりと元気をくれますよ。特にレシピといえるようなものはなく、ただ、材料すべてを水と一緒に鍋に入れ、弱火でコトコト煮て、好みの味にととのえるだけ。どうぞ味わってみてください。

今年嬉しい驚きだったのが、昨年の11月末に種まきした、青い花が咲くボリジ。よく育って、これまでのところ厳しい冬も乗り越えてくれています。この調子なら、4月か5月には青い花が咲くことでしょう。花が咲いたら、サラダの彩りに使うのが楽しみです。ボリジの隣には菜の花が咲き、小さな苗を守ってくれています。ちなみに、この菜の花もとても美味しいですよ。先日菜の花を中華スープに入れ、ごま油をほんの少し垂らしてみたら、うきうきするような春の味がしました。

家庭菜園
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Meyer-Rebentisch, Dr. Karen

こうした旬の味を強く感じられるのは、自分で育てた野菜を食べた時だけ。それに、オーガニック野菜はとても美味しいので、ぜひ皆さまも栽培にチャレンジしてみてくださいね。家庭菜園はコミュニケーションツールにもなりますし、食材に対する感謝を思い起こさせ、フードロスを減らすことにもつながります。

ココが気になる!
市民農園の雑草処理

ガーデニング
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

私の菜園の隣には、170ほどの小さな区画に分かれた市民農園があります。ここ数週間、そこの管理人さんが大きな穴を掘っています。掘り上げた土は手押し車に入れ、4mほど先の大きな土の山へ。長さ4m、幅2m、深さ1mほどと、びっくりするほどの大きさです。

少しお話ししてみたところ、この大きな穴は、貸し農園に育つ雑草を刈り取った後に捨てるために必要なんだとか。穴を掘る前は、市に料金を払って年に数回雑草を引き取りに来てもらっていたそうです。この雑草の処分費用を減らして市民農園の会費を抑えるため、昨年夏から穴を掘って雑草を捨てることを始めたのだそう。これだけの大仕事を、私が知る限り初老の管理人さん1人で行っているのです!

ドイツでやるなら、どこか日付を決めて、メンバーが交代で穴を掘るだろうと思います。もっとも、ドイツの市民農園、クラインガルテンでは、管理人を雇わないことが多く、メンバーはそれぞれ助け合わなくてはいけないことも背景にあるかもしれません。ガーデン仲間が必要に応じて助け合うことが大切なので、それぞれギブ・アンド・テイクの関係を築いているのです。日本ではあまりこのような会員さん同士の関係はないのでしょうか?

そして私の疑問はもう一つ。このような大きな市民農園では、環境への負荷や処分の手間を考えても、雑草をそこの土に還すような規制があってもいいのでは、と思います。ごみにしてしまうのではなく、できるだけ自然に還すようにしたいですね。

Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

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