バレンタインは、チョコを贈りますか? 花を贈りますか? それとも自分へのご褒美を選びますか? フランスでは、男性から女性に赤いバラなどをプレゼントするのが長年定番となっていましたが、近年は、おしゃれな花屋さんが扱う「スローフラワー」が人気だそうです。フランスのバレンタインのギフト事情や、スローフラワーについて、フランス在住の庭園文化研究家、遠藤浩子さんがレポートします。

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バレンタインは「スローフラワー」を選ぼう

フローリスト「デジレ」のブーケ
フローリスト「デジレ」の店頭に用意されたフランス産の季節の花のみのブーケたち。バリエーション豊かでおしゃれ。

スローフラワー、って聞いたことありますか?日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、近年パリでは「スローフラワー」を扱うおしゃれな花屋さんが増えて人気を集めています。ところで、そのスローフラワーとは? これは、スローフードなどからインスパイアされた呼称で、ローカルにサステナブルな方法で栽培される季節の切り花が「スローフラワー」です。

エコロジーやサステナビリティはもはや日常の生活に欠かせない選択基準。そんななか、バレンタインに花束を贈るのならば、ぜひスローフラワーを選んでみてほしい、という環境意識の高いフローリストや生産者たちの声が広く聞こえるようになってきています。

フランスのバレンタインデーのギフトのベーシックは?

パリ
2月のパリ。YULIYAPHOTO/Shutterstock.com

さて、恋人たちのためのバレンタインデーは世界共通なれども、祝い方には国によってちょっとした違いがあるようです。日本では女性から男性にチョコレートを贈るのがスタンダードですが、フランスではむしろ男性から女性に赤いバラなどをプレゼントする日なのだそうです。花をはじめ、香水やランジェリーなど、ロマンチックな贈り物が定番です。

バレンタインの赤いバラ

赤いバラ
Fusionstudio/Shutterstock.com

なかでも赤いバラの花言葉は、愛情や情熱、アイラブユーとまさに愛の告白で、バレンタインデーやプロポーズに“愛する人に贈る花”、とされてきました。ところがバレンタインデーの2月14日は立春も過ぎたとはいえまだ真冬。それは日本とほぼ同じ四季のサイクルのフランスでも同じこと。たとえばパリと近辺のイル=ド=フランス地方のバラの季節はだいたい4月から11月頃まで。2月の庭にバラが咲くことはまずないのです。

温室栽培のバラ
エクアドルの温室で栽培されるバラ。Fotos593/Shutterstock.com

ではこの赤いバラはどこからやって来るのでしょうか。遠くエクアドルやケニアなどの温室で安価な労働力を使い管理栽培された切り花が、オランダの生花市場などを経由して届きます。見た目は端正だけれども、多大なCO2を消費して届けられる、かつ目には見えないけれど大量の農薬や殺菌剤でコーティングされた赤いバラなのです。

花市場
フランスの花市場にずらりと並ぶ切り花。Emily Geraghty/Shutterstock.com

バレンタインデーは切り花販売の最盛期だそうですが、特に人気が集中するバラは、自然のサイクルを全く無視した方法で遠い外国で栽培され、調達されていることがほとんど。ちなみにフランスでは切り花市場の花々の8割以上がこうした生産サイクルで外国から運ばれて来ているのだそうです。

オーガニック
Ekaterina Pokrovsky/shutterstock.com

近年は食卓に上がる野菜や果物に限らず、肌に触れるものなど、日常生活のあらゆる場面で安心安全なオーガニック、環境に優しいサステナビリティが選択基準の大事なポイントになってきました。野菜や果物に対して地産地消で季節のものを大切にしたい、と思う人は多いことでしょう。それはじつは切り花にとっても同じなのです。

スローフラワーで季節の花を愛でる

ミモザの黄色が目を惹くフローリスト「デジレ」
今日は南仏産のミモザの黄色が目を惹くフローリスト「デジレ」の入口。

このような切り花市場の事情を知ると、あえて季節外れのバラでなくても、この時期に美しい季節の花を選びたい、と思うのは、今やごくナチュラルな感覚になりつつあります。この時期のフランスだと、ハウス栽培にはなりますが、アネモネ、ラナンキュラス、チューリップやミモザなど冬から早春のフレッシュな可愛らしい季節の花々が選べます。花を愛でることはその季節を愛でること、今しかないこの季節を表現する花束を贈るのは、なかなかに素敵なことではないでしょうか。

花屋
ラナンキュラスやアネモネ、チューリップなど、季節の花々が賑やかなディスプレイ。1本から購入できます。

ちなみに、万が一どうしてもバラがいい、という場合には、フランスの場合、南仏の生産地で、光電エネルギーを利用するなど環境に優しい方法で栽培された、輸送距離も短くクオリティの高いバラという選択肢もあるのだそうですが、あまりおすすめではありません。できる限り季節の花を大切にする、という発想が素敵だと思います。

パリのフローリストにて

パリのフローリスト「デジレ」
前出の「デジレ」の店頭。フローリストのすぐ隣には、オーガニックフードのカフェを併設。

そんな訳で今回覗いてみたのはパリの人気フローリスト「デジレ」。パリの中でもおしゃれなインテリアショップやパティスリー、バーやレストランなどが集まる地区にある、スローフラワーを扱う花屋さんの老舗的な存在。

パリのフローリスト「デジレ」
季節の切り花の他に、鉢物もいろいろ揃っています。シクラメンやスイセン、カメリアなども。

環境に配慮したオーガニック栽培の国産の花々を専門に扱う「デジレ」の店頭を見ると、今の季節の花が分かります。寒い季節にはパリと近郊の露地栽培ものはお休みになりますが、もっと温暖な気候の南仏の生産地から届けられる花々があり、バラはなくともとてもバリエーション豊か。見ているだけでワクワクしてきます。

フランスのカフェ
フランスのおやつの定番マドレーヌや、栗粉の入ったチョコレートケーキなど、焼き菓子が並ぶカウンター。チーズケーキはほろっととろける美味しさです。カフェは近年人気のフィルターコーヒー。

また、ガラス壁で仕切られたショップの隣には、小さな可愛いカフェが併設されており、すべて手作りされたオーガニックのランチや軽食メニュー、美味しいスイーツ類がいただけます。おしゃべりに興じる友人同士やラップトップを持ち込んで仕事をする人、ちょっとコーヒーブレイクに寄ったらしい近所の人など、それぞれが自分のリズムで楽しんでいる、普段着のパリジェンヌのライフスタイルを垣間見るようなリラックスした雰囲気も素敵。

スモールバジェットのためのアイデア、思い切ってシンプルに

ところでオーガニック生産の花は割高なのでは? とか、花を贈りたいけれど、花束にするには予算が心配、ということがあるかもしれません。例えば大輪の赤いバラなら一輪でもさまになるけど、他はどうなの、という声もありそうです。でも、心配無用。スモールバジェットでも花の楽しみ方はさまざまです。

アネモネの花束と、白のパロットチューリップのアレンジ
アネモネの花束と、白のパロットチューリップのみのアレンジ。花の数はもっと少なくてもOKだと思います。花1種類のみでシンプルシックに。

例えばラナンキュラスやアネモネは、1本を一輪差しに飾るだけでも、じつは大いに存在感あり。かえって大勢でワイワイと花束になった時よりも、一本一本の個性を感じることができます。幾枝かのミモザや、1種のチューリップのみ、などのブーケは潔く、花種の選び方次第でグッとスタイリッシュにもなります。

シクラメンと水仙
鉢植えのシクラメンは冬の花の定番、そして、かわいい小さな白いスイセンの花束。

さて、バレンタインデーにも、チョコレートの代わりに季節の花を贈るのはいかがでしょうか? 花が私たちに伝えてくれる今の季節を一緒に楽しむことを大切に、ちょっとした贈り物に、もちろんご自宅用、ご自身へのプレゼントにも、ぜひ気軽にローカルな季節の花を活用してみませんか。

Information

パリのフローリスト「デジレ」

フローリスト&カフェ「デジレ Désirée」

https://desireefleurs.fr

Credit

遠藤浩子

写真・文/遠藤浩子

フランス在住、庭園文化研究家。
東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。

blog|http://www.hirokoendo.com
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