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妻のためにつくった癒やしの庭〜ガーデンセラピーコンテストグランプリ受賞者インタビュー〜

妻のためにつくった癒やしの庭〜ガーデンセラピーコンテストグランプリ受賞者インタビュー〜

暮らしに緑を積極的に取り入れ、健やかに生きることを提唱している日本ガーデンセラピー協会。同協会が主催する「みんなが笑顔で元気になる!花・緑・庭コンテスト」一般部門でグランプリを受賞された安田尚通さんに、ご自身のガーデンセラピー体験を伺いました。

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四季折々に花が咲き継ぐ庭づくり

早春の庭

まだ空気に冷たさが残る早春にもかかわらず、ムスカリやスイセン、アイリスなどの小球根に加え、クリスマスローズやヒマラヤユキノシタ、アウリニア・サクサティリス、アジュガなどの宿根草が豊かな彩りを展開する安田さんの庭。日毎、地面を覆う緑が増えていくにつれ、原種チューリップやシラー、アイリスのつぼみが上がり、それらの花が開くと庭はさらに明るさを増して春の光に輝きます。チューリップが終わる頃には、バラのつぼみがほどけ始め、庭は甘い香りで満たされていきます。

桃華

「‘桃香’っていうバラなんです。ピンクの大輪で、バラの香りのコンクールで金賞を受賞した花なんですよ。とてもいい香りが気に入って選びました。バラのほかにも、ラベンダーやセージなど香りのいい植物を選んで、四季を通じて花が咲き継ぐようにしています」(安田さん)

妻のために庭をリフォーム

春の庭
原種チューリップのシンシア(左)やノースポール(右)など明るい色の花が生き生きと咲く春の庭。

じつは、安田さんは3年前まで14年間、単身赴任で全国各地を転々とする生活を送っており、帰宅した際のわずかな時間を利用して自宅の庭をつくってきました。もともと自然が好きで、土に触れているとリラックスすると話す安田さんですが、限られた時間を駆使しての庭づくりには、もう一つ理由がありました。

春の庭
紫色のベル形の花を咲かせるシラーと黄色のアイリス。補色で花色を組み合わせ、互いの美しさを引き立たせる。

「妻が体調を崩してしまったことがあって、何か私がしてあげられることはないかなって考えて、庭に色とりどりの花が咲くようにしようと思いついたんです。それまでは家を買った際についてきたツゲとか松が植わる和風の庭だったんですが、もっと明るく変化のある景色が妻がいつもいるリビングの窓から見えたら楽しいんじゃないかって思って」(安田さん)

美しい景色には人を癒やす力がある

白樺
北海道のシラカバの道/写真3and garden

庭づくりのヒントをくれたのは、赴任先で見てきた美しい各地の風景や自然の中での心地よい体験です。

「北から南まで赴任しましたが、それぞれの地域で異なる自然の美しさを見てきました。北海道の美しいシラカバ林やラベンダー畑、沿道もどこも花であふれて素晴らしかったですね。九州ではフェニックスや南国のカラフルな花々がすごくキレイでしたし、そういう自然の風景に、自分自身が癒やされながら単身赴任生活を続けてきました。だから、美しい風景が妻の体調をよくしてくれたらいいなと思い、私がその景色をつくることにしたんです」(安田さん)

グラウンドカバー
地面を覆うように咲く花々。丈夫で毎年楽しめるものが選ばれている。左からオーブリエチア、アウリニア・サクサティリス、イベリス。

ずっとそばにいることができない自分の代わりに、安田さんは花に思いを託しました。できるだけ丈夫でよく育つ花を選び、四季を通じた色彩計画に加え、香りのいい植物は身近に楽しめるよう窓の側で栽培したり、夏の日差しを和らげるヤマボウシやハナミズキといった花木も新たに植栽するなど、工夫を重ねていきました。代わるがわる花が咲き継ぐ庭の風景や花の香り、木々の梢にとまる鳥や昆虫たちは、ひとりで家で過ごす奥さんに毎日ささやかな楽しみを運び続けました。

「今ではすっかり回復し、私よりよっぽど元気なくらい(笑)。3年前に赴任を終えて家に戻ってきたんですが、今は妻と近所のバラ園まで一緒に散歩に行くのが日課なんです。ガーデニングはもっぱら私の担当で、バラの苗を植え付けたり、寒肥をやるために土を掘ったり…。庭づくりもいい運動になりますよね」(安田さん)

観葉植物目線で室内もリフォーム

観葉植物
室内にも観葉植物がいっぱい。

自宅に戻ってきてからは、庭だけでなく室内にもガジュマルやパキラ、ドラセナ、アルテシーマ、オリヅルラン、雲南棕櫚竹などの観葉植物があふれ、瑞々しい緑を堪能しています。

「これらは赴任先で私を癒やし続けてくれた大切な植物たちです。ですから、数年前に家のリフォームを計画した際は、植物と調和するように壁は漆喰にして、床は自然木に、カーテンも夏の強光を和らげてくれるものを選んだりと、ちょっと植物本意でこだわりました。おかげで植物たちは引っ越しても元気に育ってくれていますが、植物が心地よくいられる空間というのは、人にとってもやっぱり気持ちいいものなんですよね。リモートで家にいる時間が増えましたが、あまりストレスを感じることなく過ごせているのは、こうした住環境のおかげもありますね」(安田さん)

ガーデンセラピーをもっと広めていきたい

安田さんの次なる目標は、西側の部屋の窓から見える庭のリフォームだと言います。

「リビングの窓から見える色とりどりの庭とは、また違う庭にしたいんです。妻の体調が回復したことや、僕自身が緑に癒やされてきた経験からもガーデンセラピーに興味を持って、日本ガーデンセラピー協会の講義を受けるようになりました。そしたら実際に、緑にはストレス値を下げたり、血圧を正常化したり、NK細胞を増加させたりといった科学的なエビデンスがあることを知り、私がやってきたことは間違っていなかったんだって、嬉しかったですね。ガーデンセラピーの要素を取り入れながら、現在植栽されているツゲやレンギョウに似合う落ち着いた雰囲気の庭にリフォームするつもりです」(安田さん)

さらに、自身の庭を通して、ガーデンセラピーの魅力や庭の有用性をもっと広めていきたいと語ってくれました。

Credit

協力/日本ガーデンセラピー協会 https://www.garden-therapy.org

写真/安田尚通さん(*記載以外)

取材・文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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