寒さが厳しくなってくると、外に出るのも億劫になりがちですが、そんな季節もガーデンやベランダでは楽しみがいろいろ。今回は、花が少ないこれからの季節にも楽しめるおすすめのカラーリーフプランツを、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんがご紹介します。また、記事末尾のコラムでは、エルフリーデさんが体験した、「あ、危ない!」というガーデンシーンでの要注意ポイントも解説します。
寒いシーズンの訪れ
10月中旬に入り、今シーズン初めて居間の暖房のスイッチを入れました。すっかり忘れていましたが、日本の家は外気温の影響が大きいですね。私の故郷のドイツでは、9月には、特に夕方にでもなれば暖房は必須。セントラルヒーティングにより、一歩家に入ればどの部屋でも暖かく快適に過ごすことができます。
今年は、北海道の初雪のニュースとドイツアルプスでの降雪のニュースをほぼ同時に耳にしました。ドイツの最高峰は標高2,962mのツークシュピッツェ(ZUGSPITZE)。3,776mの富士山に比べると少し低い山です。長期間雪が楽しめるので、スキーリゾートとして人気があり、ゴンドラやケーブルカーを利用すればレストランやスキーリフトのある頂上まで簡単にアクセスできます。天気のよい日には、いっぺんにドイツ、オーストリア、イタリア、そしてスイスの4つの国を眼下に眺めることができる素晴らしい場所です。
時々、富士山の山頂でも同じような景色が観れたらどんな感じだろうと想像することがあります。一方で富士山の独特の美しい姿は遠目にもよく分かり、天気がよい日は東京や横浜など各地から見上げることができますね。
秋冬のガーデニング
これからやってくる寒い季節でも、ガーデンやバルコニー、テラスを楽しむ方法はいくらでもあります。あまり寒い寒いと文句を言ってもいけませんね。なんといっても、この季節には蚊がほとんど出ないのですから! 澄んだ新鮮な空気には、酸素と静寂が満ちているよう。一日ごとに景色も鮮明になり、夕焼けの美しさは息をのむほどです。ちょっと手を止めて外を眺めたり、ちょうどいい時間に窓を開けるだけで楽しめる絶景です。時々、娘が通学路で撮影した線路沿いの美しい景色や素晴らしい空の色を写真で送ってくれることがあります。送ってくれる風景はもちろんのこと、スマホの画面ばかりでなく、時にバスや電車の窓から外を見ていることが分かるのも、親としては嬉しいものです。
この時期のガーデニングメリットはもう一つ、雑草の成長が緩やかになること。また、低木や木々は大抵育ちすぎているので、庭の計画を立てながら、どこをどのような剪定にするか、ゆっくり考える時期にもなります。
ガーデンシーズンの見直し
さて、花屋さんやガーデンセンターでは、パンジーなどこれから植えたい植物たちが並び始めています。たくさんの球根や低木類、カラーリーフの宿根草などに加えて、ペラルゴニウムもありました。今年、私は赤のペラルゴニウムを買ってみたのですが、これが大当たり。驚いたことに、花が休まずに毎月ずっと咲き続けてくれたのです。さほど肥料もやらず、むしろどれくらい手をかけなくても大丈夫なのかを見るため、ほったらかしていたのですが、まったく気にせず咲き続け、毎日明るい色の花で元気をくれました。日々の手入れは花がら摘みぐらいのもの。置き場所や鉢の大きさ、環境がよかったのでしょうか。ポリスチレンのポットに植え、白塗りの木箱の鉢カバーに入れたところ、赤い花と緑の葉とのコントラストが素敵な雰囲気になりました。鉢カバーは寒さや強風から守ってくれる効果もあります。また、灌水装置も付けたので、水切れの心配もありません。とてもローメンテナンスな鉢植えでした。
このように、この時期には夏に育てた植物について、パフォーマンスの良かった面と悪かった面を思い起こしてメモしておくのがおすすめです。宿根草の場合は、年間を通して植物の様子を観察することもガーデニングを楽しむ上で大切です。来年以降のガーデニングにも役立ちますし、あとからほかのガーデナーさんと植物話で盛り上がったり、新しい友人を作ることができるかもしれませんよ。
秋が深まるにつれ、草木に咲く花は次第に減っていきます。これからの庭の主役は、オーナメンタルグラス。その存在感と美しさを発揮してくれるシーズンです。秋にも美しい葉を保つ、印象的なカラーリーフを取り入れるのもいいですね。今回は、エキゾチックな魅力を持つカラーリーフを2種ご紹介します。
印象的な葉のニューサイラン
学名からフォルミウム、英語ではNew Zealand flaxとも呼ばれる、ニュージーランドを原産とするニューサイラン。マオリの言葉ではハラケケといいます。剣状の葉をまっすぐに伸ばして時に草丈2m以上にまでなり、夏にはさらに高く花茎を伸ばして鮮やかな黄色や赤の花を咲かせます。繊維質の葉は固くしっかりとしていますが、同時にしなやか。かつてはロープや帆、バスケットを作る素材としても使われていました。以前ニュージーランドを訪れた際には、ニューサイランをいたるところで見かけました。葉にはブロンズや緑、アプリコットやローズピンクのストライプが入る品種もあり、葉色自体も明るい色から赤みがかった黒に近い色まで幅があってカラフル。サイズも60cmくらいの小型種から3mを超えるようなものまでさまざまです。シードヘッドも魅力的ですし、また鳥たちはこの花の蜜が大好きです。
ドイツでは、冬越しの際に温室などに移動させる必要があるため、基本的に鉢植えで育てるエキゾチックな植物。しかし、日本で私が暮らす湘南や、三浦から伊豆のエリアでは育てやすい植物で、同じような気候の地域でも問題ないでしょう。もっとも、住んでいる地域の気候に合った植物を探すには、地元のガーデンセンターを活用するのが一番です。
秋冬のガーデンアイデアとして、赤い葉のニューサイランを1株、大きなプランターに入れて育てるのも素敵です。同系色のヒューケラを2株か3株、鉢のサイズに合わせて植え、パンジーや、ヘリクリサム・ペティオラレや葉の小さなアイビーなど枝垂れる植物を植えれば素敵な大鉢の出来上がりです。
寄せ植えを作る際、園芸店で苗をまとめて購入すると、カートの中で組み合わせの印象を見たり苗を比較したり、実際にレイアウトする場合のシミュレーションができます。どんな苗を使うか、鉢の大きさや完成した寄せ植えを置く場所を考えながら選びましょう。また苗だけでなく、排水性をよくするための鉢底石や、植物に合った用土もお忘れなく。用土を購入する際には、何が配合されているかも確認しておきましょう。
おすすめオージープランツ、コルディリネ
もう一つのおすすめプランツが、コルディリネ。コルディリネはオーストラリア原産の植物で、Cabbage Treeとも呼ばれます。葉は少しニューサイランにも似ていますが、ニューサイランが長い葉を持つ多年草なのに対し、コルディリネはもっと短い葉と、高くまっすぐに伸びるどっしりとした幹を持つ樹木です。6~10年ほど育てると花茎が伸びてきて、甘い香りを放つクリーム色の花を咲かせ、虫たちを呼び寄せます。
原生地では数m超と樹高が高くなりますが、そこまで大きくせずに育てることもできます。また幹がまっすぐなので、意外とスペースを必要としません。コンテナや小さなスペースに植えれば、ベランダでも素敵なアクセントになってくれますよ。
コルディリネは低く育つ宿根草や季節の草花と組み合わせるのもおすすめ。置き場所や目的に応じて、ニーズに合ったものを選ぶとよいでしょう。
コラム:ガーデニングのココが気になる! Part2
果樹の収穫とハチとの遭遇
つい先日のことですが、友人のひとりが4本のカキの木を育てている畑に連れて行ってくれました。毎年どの木が渋柿で、どれが甘柿なのか忘れてしまうので、サトイモ畑の横を通り過ぎながら、まずは1つカキの実をもいでみることに。一口かじってみると…残念! 渋柿のほう。しばらく味が分からなくなるほどの渋さでした。
次は友人が味見する番なので、別の木の実をもいでみると、こちらは砂糖のように甘い甘柿。見つけた甘柿の木から収穫作業をスタートしました。ひとりが枝を引き下げ、もうひとりが実を収穫する役です。木には50個ほどの実がついていて、濃いオレンジ色に熟れすぎたものから食べ頃のものまで、さまざま。ちょうどよく熟したものを狙って収穫し、熟れすぎたものにはなるべく触らないようにしていたのですが、突然熟した実が1つ頭の上に落ちてきて、ジャケットにべったり汁がついてしまいました。枝の振動によって落ちてしまったのでしょう。2人して大笑いしながら、残りの収穫作業を続ける間にも、何度も何度も同じことが起きました。どの実がいつどこに落ちてくるのかは、まるで予想がつかないのです。最終的には2人とも被害に遭いましたが、柔らかい実はぶつかってもけがをしないので、そこまでは問題ではありません。
問題は別のところに! 突然、友人が悲鳴を上げて飛びのきました。大きなハチが熟した実に止まっていたのです。幸い、ハチが襲ってくることはありませんでしたが、果汁がついた洋服や周りの地面に落ちている果実の数から考えると、周囲にいるハチに収穫中に襲われなかったのは運がよかったとしか思えません。ハチはやたらに襲ってくるわけではありませんが、スズメバチの場合は刺されると命の危険もありますから、うっかり刺激しないよう注意が必要なのです。
この日学んだことは、気温が下がるこの時期になっても、危険なハチや虫は辺りにいるということ。次回はハシゴを持参して、虫がいないかをよく確認しながら収穫作業をしたほうがよさそうです。
Credit
ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
取材/3and garden
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