植物とゆかりが深い、エッフェル塔に面した宮殿ホテル『シャングリ・ラ ホテル パリ』|パリ発、季節の花だよりVol.14
2010年に誕生した『シャングリ・ラ ホテル パリ』。ここはかつて、ナポレオン・ボナパルトの甥、ローラン・ボナパルトの邸宅でした。19世紀末に建設されたここを、ラグジュアリーホテルに再生するニュースは当時、じつにセンセーショナル。歴史的記念建造物に登録された空間には、優雅な時間が流れています。
目次
大輪の花でのお出迎えが、世界有数の高級ホテルならでは
大理石のホールの中央に、大輪の花をたっぷりといけるお迎え花は、『シャングリ・ラ ホテル パリ』のトレードマークです。
花を担当するのは、人気フローリストのパスカル・ミュテルさん。パリ17区にショップがあります。
ミュテルさんは、毎日必ずホテルに足を運び、花のメンテナンスを自身で行います。そして、週にいちど、花の総入れ替えをするそう。
「『シャングリ・ラ ホテル パリ』のアレンジは、シックなパリのエスプリを取り入れつつ、ナチュラルな庭のイメージを念頭に作りあげています」とミュテルさん。
この日のお迎え花は、アマリリス、アジサイ、アマランサス、ユーカリ、カメリアの葉、スギなど、さまざまな花材のミックス。鬱蒼とした、と表現したくなるような、緑色深い楽園を彷彿とさせる花たちの共鳴が見事でした。
廊下のコンソールテーブルにも、花が飾られていました。アジアを意識した掛け軸風のタブローに、ピンクグラデーションのアマリリスがよく似合っています。このアレンジはほどよい大きさで、私たちの家で花を飾る参考になりそうです。
ベネチアングラス、壁面の植物…印象的なインテリアの数々
エントランスをまっすぐ進むと、カジュアルレストラン『ラ・バウヒニア』にたどり着きます。ここのシャンデリアは、息をのむほど見事な美しさです。
『シャングリ・ラ ホテル パリ』がオープンした2010年当時、パリでは、シャンデリアといえば『バカラ』が主流でした。そこへ、突如と現れた女性的なベネチアングラスのシャンデリアは、非常に新鮮。
ガラス張りの天井から自然光が降り注ぐ『ラ・バウヒニア』の内装に、すんなりと馴染む、その優美なシャンデリアの下には、やはり優美で、かつふんだんな花がいつも飾られています。
ローラン・ボナパルトは植物への造詣が大変深く、邸宅内に世界最大規模のハーブ園を造ったそうです。そんな館の歴史を反映し、『ラ・バウヒニア』の内装にも植物の温室をイメージさせるディテールが、そこかしこに見られました。パリを訪れたら、花好きの友達とここでティータイム、なんて素敵ですね。
レストランの隣のバー、『ル・バー・ボタニスト』も覗いてみましょう。
なんと、バーの壁面がガーデンに! 自然光が入らないバーというスペースで、どうすればこんなに生き生きとグリーンを育てることができるのでしょうか。
「まめにメンテナンスを行っているうえ、元気がなくなった鉢は外して取り替えればいいのです」
ミュテルさんの答えです。
鉢を入れ替えることで、常によい状態のグリーンを飾っているというわけ。元気がなくなったグリーンは、太陽光を浴びさせればまた、元気になります。
ここ『ル・バー・ボタニスト』は、ボタニスト(生物学者)らしい、生のハーブが主役のカクテルがずらりと用意されていることでも知られています。
最後に、館内で見つけた植物モチーフの内装ディテールを紹介しましょう。
エレベーター内のボタニカルアートと、果樹の花たちの壁紙です。館内の移動が楽しくなる演出です。
2階の踊り場には、美しいステンドグラスがありました。
そして、エッフェル塔が眺められるガーデンも、忘れてはいけません!
パリのパラス(フランスのホテル格付けにおける最高ランク)はいつでも、素晴らしい花たちで溢れています。そんなパラスの中でも、植物と歴史的関わりをもつホテルは、やはり希少。ローラン・ボナパルトの邸宅だった『シャングリ・ラ ホテル パリ』ならではのストーリーでしょう。
シャングリ・ラ ホテル パリ Shangri-La Hotel, Paris
ホームページ/http://www.shangri-la.com/fr/paris/shangrila
住所/10, avenue d’Iéna, 75116 Paris
パスカル・ミュテル Pascal Mutel
ホームページ/https://www.pascalmutel.com
Credit
角野恵子 Keiko SUMINO-LEBLANC
在仏日本人ジャーナリスト、コーディネーター。日本の企業に就職後、東京在住フランス人ジャーナリストのアシスタントを経て、1997年よりパリに移住し、在仏歴21年に。食とライフスタイルを中心に、日仏の雑誌およびwebで活躍中。共著に「DIYでつくるパリのインテリア」(エクスナレッジ)「パリでうちごはん そして、おいしいおみやげ」(小学館)など。プライベートでは、ふたりのパリジェンヌの母。
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