コロナウイルス感染拡大の影響もあり、自宅の庭やベランダで家庭菜園を楽しむ人が増えています。自宅で育てた野菜は新鮮で美味しく、安心。野菜が育つ過程を見守るのも楽しいものです。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが、自宅で楽しむこの夏の家庭菜園の様子と、ガーデンの恵みを贈るオリジナルなプチギフトをレポートします。自家製野菜を使った3つのレシピつきです。

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1日の始まりの庭散策

家庭菜園

私にとっての幸せな一日の始まりは、元気な「おはよう!」の声と、家族ととる美味しい朝食、そしてその日一日のプランを立てること。天気はあまり気にしませんが、朝一番のガーデン散策の結果は大切です。驚くほどにキュウリが育っているのを観察したり、オクラの成長の遅さをじれったく思ったり、朝の庭巡りは一日の始まりに欠かせません。時には、可愛い植物の葉に大きな虫食い穴が開いているのを見つけて頭が痛くなることも。そんなときには、犯人の虫探しの始まりです。

同じ庭でも、毎朝散策しているといろいろなことに出会います。バッタが辺りを飛び跳ねたり(これで虫食い穴の犯人が分かりましたね)、小さな虫が飛んでいたり、時にハチドリほどの大きさのチョウが目の前を横切ったり。

庭に登場するのはなにも虫だけではありません。犬を連れて散歩する人ともよく出会いますし、顔見知りの人は挨拶してくれます。まだ道が涼しい早朝のうちに犬を散歩させている隣人とちょっと会話を楽しんだりもしますよ。最近では感染の用心のため、フェンス沿いの植物が伸びすぎて通行の邪魔になっていないかを確認するためだけでもマスクが必須。こんなご時世には、庭や植物、外に出ることはとてもいい気分転換になっています。ガーデンの横を通る人々も、日常のプラスアルファの一コマとして、私の庭を楽しんでくれているよう。お互いにとって嬉しいことですね。

夏の家庭菜園で育つ野菜

家庭菜園の夏野菜

夏はさび病やうどん粉病など、ガーデナーに新たな試練をもたらす病気が発生しやすい時期です。基本的に、私は病気が発生してしまった植物で回復が見込めないものは、他に病気を広げないうちに処分するようにしています。どの植物に病気が発生するかは毎年変わるので、素早い決断が求められます。植物を健康に育てるためには、もちろん環境が大切。環境は私たちの手入れと植物の相乗効果で変わっていきます。

植物の姿も、時間によって常に変わっていきます。例えば今年、緑のカーテンをキュウリで作ってみたところ、数週間にわたり生き生きした緑の葉と収穫の喜びを味わうことができました。ところが今になると、黄変した葉が困り物。実験として玄関前で育ててみたので、キュウリがぐんぐん成長していくのは素晴らしかったのですが、現在は枯れかかった黄色い葉で見映えが悪いのです。という訳で、今年のキュウリはもうお別れ。来年、この場所以外で会いましょう!

収穫したキュウリの一部は、友人や近所の人、時に通りすがりの人にもお裾分けしました。ほんのちょっとしたプレゼントですが、みんな喜んでくれましたよ。

今年の収穫

トマトの鉢植え

庭から収穫したばかりの野菜で食事の支度ができることは、とても幸せな気持ちにさせてくれます。特に朝の収穫は格別。朝に野菜を収穫している間にもその日の夕飯のメニューが浮かびますし、朝採りで新鮮、なおかつ暑い日の後も冷たい野菜が楽しめます。

この夏の菜園で一番の驚きは、ウィンドウボックスで育てたニラ。始めはさび病と格闘しなければなりませんでしたが、一度切り戻しをした後の収穫といったら! 生き生きとした緑色の元気な葉が、何週間にもわたって収穫できました。収穫したニラはニラ玉にし、1/3ほどはそのまま育てて花を咲かせてみたところ、白い可愛らしい花が咲きましたよ。この先のシードヘッドも楽しみです。

ニラの鉢植え

ほかに赤ジソと青ジソも栽培し、トマトのプランターの寄せ植え素材としても活用してみました。赤ジソはすでに収穫して、シソジュースやシソシロップに。きれいな赤色のさっぱりしたドリンクは、夏バテを吹き飛ばすのにぴったりです。スペシャルギフトとしてシソジュースのボトルをプレゼントした友人も、とても喜んでくれました。

シソの楽しみ方としては他に、ゆかりふりかけを作るという手もあります。もう何年も日本に暮らしていますが、どういう訳かゆかりを知ったのはつい最近。ドイツから客人が訪れた際に、「白いご飯にとっても合うから」と、とても熱心にゆかりをお土産に購入していたのを見て、初めてゆかりを知ったのです。今では私もゆかりでごはんを食べています。

ガーデンで恵みをギフトに

庭の収穫

家庭菜園に興味を持つ理由はさまざま。例えば引っ越しや、野菜やハーブの栽培に興味を持った家族の影響だったり、美味しい料理を作るためだったり。私は美味しそうな野菜を見つけると、自分の庭で育ててみたくなります。

経済のスローガンに、「再発見」「再開発」「再投資」というものがありますが、私にとってこれらの言葉は、ガーデンやバルコニーなどで育つ植物をよく観察し、自分なりのいろいろな生かし方を探してみよう、という意味に感じられます。庭からの恵みは、自分で楽しむのはもちろん、誰かにお裾分けするのも嬉しいものです。あまり手をかけなくても、素敵なギフトを作ることができますよ。

さて、我が家の庭では、私はパプリカを、夫はトウガラシを育てています。面白いのは、なぜか夫はトウガラシとニンニクにしか興味がないということ。いまだに理由は分かりません。でも確かに、トウガラシは育てるのも楽しいですし、赤く色づくのも目に嬉しい素敵な植物。小さなものから細長いもの、丸いものなど、品種も色彩も多様です。そんなトウガラシは贈り物にもぴったりで、シンプルに実付きのままドライにした枝をリボンで束ねたり、英字新聞に包むだけでも、スタイリッシュで気取らないプレゼントになります。こうしたガーデンの収穫で作る、素敵なギフトを3つご紹介しましょう。

自家製チリペースト

ハリッサ
Lika Mostova/Shutterstock.com

ガーデンで育てたトウガラシで作る、自家製チリペーストも挑戦しがいのあるもの。北アフリカよく使われる調味料で、ハリッサとも呼ばれます。原料はトウガラシ、ニンニク、レモン汁、塩とオリーブオイル。パプリカを入れても美味しいです。

作り方は、まずトウガラシのヘタの部分を切り落とし、種をあらかた取り除いて小さく刻みます。ペーストの辛さは、トウガラシの種類と残っている種の量によって変わります。刻んだトウガラシはミキサーに入れてペースト状になるまで混ぜ、他の材料を加えてさらに混ぜて、消毒したビンに詰めます。開封後は冷蔵庫に入れておけば、数週間は保存できます。

パスタのソースやドレッシングに美味しいですよ。ぜひお試しを!

さて、トウガラシの辛さは品種によって大きく異なります。その辛さを計る単位が「スコヴィル値」。これによると、ピーマンの値を0とし、ペペロンチーニ・ペッパーは100 – 500で、アナハイム・ペッパーは500 – 2,500、ポブラノは1,000 – 1,500、ハラペーニョが2,500 – 8,000、タバスコ・ペッパーが30,000 – 50,000。そしてカロライナリーパーというトウガラシは、なんと1,400,000 – 2,200,000という値になっています。いったいどんな辛さなんでしょうね!

スコヴィルスケール
スコヴィル値。julie deshaies/Shutterstock.com

このように大いに幅があるトウガラシの辛さですが、辛いものをプレゼントするときは辛さに注意が必要です。人の味覚は、人それぞれ違います。以前、辛いもの好きのスペインの友人にサプライズで、私にとってはとても辛い料理を用意してみたのですが、彼女にとっては全然辛くなかったようで、なんと追加のタバスコを要求されたことがあります。もし人にあげるなら、相手がどのくらいの辛さを好むかをリサーチしてからにしましょう。

バジルのペスト

バジルペースト
Elena Schweitzer/Shutterstock.com

バジルで作るペストというソースも贈り物にぴったり。ペストという名前は、イタリア語でつぶすという意味の「PESTARE」からきています。

ペスト・ジェノベーゼ約200ml分の材料は以下の通り。

  • バジルの葉 50g
  • パルメザンチーズ 50g
  • 松の実 40g
  • ニンニク 2片
  • 塩 小さじ1/2
  • オリーブオイル 120ml

作り方は、まず中火に熱したフライパンで、松の実をうっすらと色がつくまで炒ります。パルメザンチーズ以外の材料をすべてミキサーに入れ、ペースト状になるまで混ぜます。最後にパルメザンチーズを入れてスプーンなどでかき混ぜて出来上がり。ビンに詰めれば素敵なギフトの完成です。

フムス

フムス
FoodAndPhoto/Shutterstock.com

ほかにギフトにおすすめなのが、フムス。もともとは地中海の料理なのですが、ドイツでも人気があり、友人にふるまったり、贈り物にするには欠かせません。ベースとなる材料はひよこ豆。ゆでたひよこ豆にニンニクや塩などを加えて作るペーストです。フムスをコリアンダーやスパイス入りの焼きたてパンにのせれば、あっという間になくなるごちそうに。プレーンなバゲットにもよく合います。

ドイツにはベジタリアンも多いため、肉料理以外の選択肢として、ひよこ豆やレンズ豆に加え、世界中の豆料理がとてもポピュラーになっています。野菜スティックとフムスやペストの組み合わせは、さっと準備ができてとてもヘルシーな一品になります。

自家栽培ならではの楽しみ

ピクルス

料理好きな人にとって、自家栽培で野菜を育てていれば、オーガニックなフルーツや野菜、ハーブなど、材料が自宅で揃うのが嬉しいところですね。スムージーがブームになったときも、同様に自宅で野菜や果物を育てる人が増えた記憶があります。

ガーデンやバルコニーで野菜を育てることは、SDGsにもつながります。玄関先で野菜が収穫できれば、車やバイクを使ってお店まで頻繁に買い物に行かなくても済み、買い物に使う時間とエネルギーを節約できます。肩肘を張らず、小さな鉢植えや、プランター1つ、バルコニーのコンテナ1つからスタートするのもよいでしょう。初めての栽培におすすめなのは、簡単ですぐ育つ、タイムやバジル、ニラ、パセリ、チャイブなど。種を播いて数日後に食べられるスプラウトもいいですね。

家庭菜園を楽しむなら、家族みんながそれぞれ自分の植物や担当エリアを持つようにするといいですね。ガーデンやバルコニーにいる時間は、コロナ禍をつかの間忘れ、気持ちよい屋外の空気を楽しむリアルな喜びを感じさせてくれます。

家庭菜園

植物の楽しみ方は無限大。自分の植物は、決まった視点にとらわれず、いろいろな角度から見てみましょう。新しいアイデアや美味しい料理、そして尽きせぬ喜びをたくさんもたらしてくれるはずです。

Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

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