暮らすように滞在できる、唯一無二の隠れ家。『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』|パリ発、季節の花だよりVol.11

当連載にたびたび登場する「パラス」とは、フランスにおけるホテル格付けの最高ランクを意味します。つまり5つ星以上。ラグジュアリーを競い合うパリのホテルのなかでも、歴史的価値やスペシャルなサービスを約束する、文字どおり「宮殿」クラスのホテルだけが得られる称号です。その特別な「パラス」の称号を、客室わずか40室のプチホテルが獲得していることをご存じですか?『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』が、その貴重なホテルです。
目次
おもてなしの気遣いが心地いい、ラグジュアリーホテル
前述した「パラス」とは、フランス観光開発機構による1次審査、文芸、美術、文化、メディア、経済など各界の有識者による2次審査を経て選定される格付けです。厳しい審査をくぐり、「パラス」の称号を獲得したホテルの一つが『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』です。

隠れ家のようにこじんまりとしたホテルで、ベーシックなゲストルーム(14室)よりスイート(26室)が多く、このホテルがいかにラグジュアリーに重きを置いているかが理解できます。
場所は、フランス大統領官邸・エリゼ宮のすぐそば、シャンゼリゼ通りとエリゼ宮を隔てる緑地スペース(公園)に面したガブリエル通り42番地。1854年、ナポレオン3世の異父兄弟シャルル・ド・モルニー公爵が建設した館です。その後、それぞれの時代の富豪が館のオーナーになり、1996年にはデザイナーのピエール・カルダンが所有しました。
由緒ある館を4年の歳月をかけて大改装し、2015年に『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』としてオープン。2年を待たずにパラスに昇格しました! そんな新生ホテルは、『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』のほかにありません。

このリュクスな館の花を担当しているのは、MOF(フランス最優秀職人)フローリストのジュリアンさんです。


ホテルの客室に毎日、花を届け、パブリックスペースの花は週2回、完全に活け替えるのだそう。館内に花専用のアトリエはありませんが、とても綿密な仕事ぶりです。
空間の魅力を引き立てるのは、赤~ピンクの同系色の花演出
「『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』の花は、ピンク、赤、オレンジ、ピーチなどの色調を使うようにしています。花の種類は季節ごとに変わりますが、クリスマスなどの特別なシーズンをのぞいて、花のトーンは変わりません。同時に、アレンジの基本形も大きくは変わりません」と、ジュリアンさん。

「ホテルのオープン前にディレクターとよく話し合い、このアレンジスタイルを決定しました。彼女の要求は、花だけが目に飛び込んでくるような奇抜なアレンジをしないことでした。ホテルの内装建築は、フランスでも特に人気の高いジャック・ガルシア氏が手掛けています。彼が作りあげた場の魅力を、花が損なってしまっては意味がありませんからね」
ジャック・ガルシア氏が選んだ色、赤を基調としたサロンとバーの内装には、同系色の花々がよく調和します。そして、スタイルそのものはクラシックでも、そのなかにモダンさが感じられるよう工夫しながら、ジュリアンさんはアレンジをしているそう。主張しすぎず、場に華やかさを盛り込むことが『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』の花スタイルなのです。

『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』には、エントランスホールは存在しません。玄関を入って左側に『サロン・ルイキャーンズ』(ルイ15世の間)があります。ここがいわゆるロビーですが、チェックインはロビーではなく、ゆったりと客室で行うのが、このホテルの流儀です。ゲストには、ホテルに到着すると同時に我が家のようにくつろいでほしいというホテル側の思いと、居心地のよさが随所に表れています。
『サロン・ルイキャーンズ』は、ホテルの顔であることは間違いありません。だからこそ、お迎え花の存在感は格別です! この日はバラとアジサイを中心に、アルストロメリア、トルコギキョウ、ユーカリなどをたっぷりと。

変わって、玄関を入って左側にあるのが『ル・バー』。『サロン・ルイキャーンズ』同様に、なんとも重厚な内装です。作り込んだアレンジが飾られていました。

「花器がアンティークの特別な品物なので、それに見合う構築的なアレンジを採用しています。花はあらかじめアトリエで整え、『ル・バー』に搬入してから花器にセットします。『ル・バー』はクラシックでありながらも、細部にゴールドを使ったモダンな装飾を施し、じつにスタイリッシュ。その空間にふさわしいアレンジだと思っています」と、ジュリアンさん。

このアレンジのスタイルも、年間を通して変わりません。花の種類だけが、季節に合わせて変化していきます。
『ル・バー』ではカクテルはもちろん、ランチタイムやティータイムに軽食を取ることができます。バーとはいっても夜だけの存在ではなく、ちょっとした休憩にも利用できます。
有名建築家でデザイナーの、ゴージャスな世界観に注目
『ル・バー』の奥は、2つ星レストラン『ル・ガブリエル』です。ここは花ではなく、内装の美が強烈! 壁全体が、細工を施したレザーで覆われているダイニングなど、ほかにどこがあるでしょう? それでいて華美で落ち着かない空間にはなっていないのですから、ジャック・ガルシア氏の手腕に感服するばかりです。

料理は、伝統に則ったモダンなフレンチです。
もちろん、カジュアルレストランもあります。『サロン・ルイキャーンズ』の先にある『ル・パゴド・ド・コー』がそれ。朝食はここでサーヴされます。

パゴド(パゴダ。フランス語では五重の塔のような建築を指す)という名のとおり、どこかオリエンタルなムードの漂う内装に、キクや実もの、ツバキの葉やゲッケイジュのようにしっかりとした葉ものを使ったアレンジが、素晴らしく調和しています。そしてやはりここも、花は赤のグラデーションです。

『ル・パゴド・ド・コー』の先には中庭があり、夏はここで朝食や食事を摂ることができます。この中庭に面した『ビブリオテック・デュック・ド・モルニー』(ド・モルニー公爵の図書館)は、もっとも『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』らしいスペースといえるかもしれません。
ホテルを手掛けた建築家、ジャック・ガルシア氏のゴージャスな世界観で作りあげた親密さ! 本棚に並ぶ本は、もちろん本物の古書です。さらに奥へ進むと、最近の書籍を集めたコーナーがありますので、実際に読書を楽しむことができます。『ビブリオテック・デュック・ド・モルニー』で本を読むときは、紅茶よりもシャンパンを注文したいですね。ちなみに『ビブリオテック・デュック・ド・モルニー』も、バーと同じように、昼夜を問わず利用できます。

最後に、『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』でいちばん広い客室、スイート・グランパレを見せてもらいました。

バラとアジサイを中心に、白のグラデーションでいけたラウンドの花が、そっと置かれています。『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』は、ジャック・ガルシア氏手掛ける内装に加え、オーナーのミッシェル・レイビエ氏がコレクションする現代アートを飾るホテルでもあります。花は、個性の強いそれらの要素を引き立て、盛りあげる役割に徹しています。

ジュリアンさんが、ここならではの「花」について語ってくれました。「花をアレンジする際に、もっとも大切なことは、花そのもののクオリティです。私は毎日ランジス市場へ足を運び、自分の見立てにかなった花だけを仕入れています。アレンジをする際は、数種類の花をミックスし、飾るスペースに合わせて3種類、4種類、5種類、と必要に応じて大きくしていきます」
前述したとおり、『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』では、花だけが目に飛び込むようなアレンジに価値を置いてはいません。空間に調和してこそ、花を飾る意味があると考えています。
これは、花のなかで生まれ、花とともに成長した人ならではの美学。パリの老舗フローリストの5代目であるジュリアンさんだからこそ、です。彼の花アレンジは、実際にその場に立って体感することで、真髄とよさが理解できるのかもしれません。花アレンジとは何か、ラグジュアリーとは何か、心地よさとは、サービスとは? 『ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ』には、その答えがたくさん詰まっていました。
ジュリアン・フローリスト
ホームページ/http://julian-fleuriste.com/fleuriste-paris

ラ レゼルヴ パリ ホテル&スパ La Réserve HOTEL & SPA
ホームページ/https://www.lareserve-paris.com/fr
住所/42 avenue Gabriel 75008 Paris
Credit

角野恵子 Keiko SUMINO-LEBLANC
在仏日本人ジャーナリスト、コーディネーター。日本の企業に就職後、東京在住フランス人ジャーナリストのアシスタントを経て、1997年よりパリに移住し、在仏歴21年に。食とライフスタイルを中心に、日仏の雑誌およびwebで活躍中。共著に「DIYでつくるパリのインテリア」(エクスナレッジ)「パリでうちごはん そして、おいしいおみやげ」(小学館)など。プライベートでは、ふたりのパリジェンヌの母。
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