IKEA原宿「TREE TALK」-人と人、家具と人、樹と人。心の対話が育まれる場所。-〜植物の文化を運ぶ plants culture caravan vol.18
「connected」をテーマに、“日常に公園の心地よさを提案しているparkERs”が、自然と都会をつなげ、暮らしに取り入れる新しい植物の楽しみ方をご紹介。日本の豊かな自然を感じながら、植物と生きる考え方を未来へ運びます。今回は、2020年6月にOPENした「IKEA原宿」に設置した2本の樹に込めた想いと、サスティナブルな取り組みについてご紹介します。

目次
自然に近い都市型店舗
2020年6月、JR原宿駅前に開業した「WITH HARAJUKU(ウィズ ハラジュク)」内に、イケア初の都市型店舗となる「IKEA原宿」がオープンしました。国内初となる都心型店舗ということで大変注目され、原宿の新しい賑わいを生みだしています。
店舗内2Fには「スウェーデンカフェ」があり、私たちはこのカフェ空間の象徴となる2本のシンボルツリーの植栽デザインと、イケアならではのサスティナブルな取り組みについてご協力させていただきました。

この商業施設の目の前には明治神宮の森が広がり、都市で買い物をしながら自然との距離の近さも感じられる立地がとても魅力的です。
植栽計画当初より、この自然との距離感が、北欧家具メーカーとして木材の品質や森林を守ることを大切にしてきたイケアの企業背景とリンクし、貴重な店舗になることを感じていました。

シンボルツリーを2本ただ置くのではなく、お客様のショッピングという日常の一コマの中に、植物があることで生まれる「賑わい」と、企業文化が伝わる「取り組み」を目指したコンセプトと植物を次にご紹介します。
「TREE TALK」。2本の樹から生まれる対話の時間
突然ですが、近年海外で植物に関する面白い研究が発表されました。
カナダの森で30年間研究をされた生態学者のスザンヌ・シマード氏が、「TREE TALK(樹はお互いに会話をしている)」という発見をしたのです。

その実態は、「木々は地面の下で菌類によるネットワークを作り、ホルモンや化学物質を通して互いにコミュニケーションを取り影響しあっている」という現象を指すものですが、まるで植物も心を持って会話しているような「TREE TALK」という表現は、店舗に来たお客様の心情にも繋がるように感じました。
頭の中でコーディネートのイメージを膨らませる人、買い物中のパートナーとのワクワクする気持ち、樹の下でコーヒーを飲みほっと一息つく時間。
同じ場所でも、見えない心の部分でさまざまな賑わいや、コミュニケーションが生まれていく空間になることを意図した「TREE TALK」をコンセプトにしました。そして、その空間に相応しい対になる2本の樹のイメージがより具体的になりました。

樹は、東京都の持つ大自然、伊豆諸島は八丈島に探し求めました。
八丈島では、古くから観葉植物の「シェフレラ」が防風林として自生し人々の生活に寄り添ってきました。現地の生産者の方々は、このルーツを大切に、こだわりをもって付加価値の高い一鉢一鉢を育て上げています。
雨風を受け力強く育った自然樹形、土の恵みが色付いた独特の樹皮、大きく広がる樹冠などは、一般的な観葉植物にない、自然の情景を感じさせる魅力がありました。
今では店舗の環境にも適応し、スクスクと成長しながらお客様の対話にそっと寄り添っています。


企業の想いを伝えるサスティナブルな取り組み

企業文化を伝える新しい取り組みが、じつは2本のシェフレラの株元にあります。
イケアのクリスマスの人気商品「もみの木」を、シーズン終了後にお客さまから回収して、バイオマス加工の技術を用いてチップ化したものを敷いているのです。これは「森林の未来を守る」大切さを感じていただけるようなコーディネートとして、ショップに還元しています。
チップ化されたもみの木は、近づくと優しい香りがして、クリスマスの想い出と共に気持ちをリラックスさせてくれます。また、この循環の取り組みを伝えるべく、座った時に目線に入る場所にサインも掲示しています。

都市の買い物の時間に、楽しみながらサスティナブルなメッセージも伝えられる、イケアの企業文化が根底にあるからこその取り組みです。
小さな植物で、スタッフ一人一人を笑顔に
店舗のオープン初日には、スタッフ一人一人の方へ小鉢と、前述したもみの木チップをプレゼントしました。店長さまの、「オープンのお祝いと合わせ、シンボルツリーに対してもスタッフがより愛着を持ってもらえるようにしたい」という嬉しいアイデアと想いを受け、シンボルツリーのシェフレラと同じウコギ科の植物をご用意し、自宅で楽しんで育てていただけるようにしたプレゼントです。大変喜んでいただき、スタッフの皆様の反応から、改めて植物の持つ「人を笑顔にする力」を感じました。

「持って帰った植物がこんなに育った。」「水やりどうやってる?」など、共通の植物をきっかけに、職場の仲間ともまた新たな対話が生まれるのではないでしょうか。
2本の樹が並んだIKEA原宿。
ショッピングの時間から、環境に配慮した取り組みまで、今後もさまざまな形で心の対話、「TREE TALK」が育まれ、豊かな賑わいが生まれていくことと思います。


Credit

森 大祐(Daisuke Mori)
学生時代、野生動物や植物群落の生態調査、マングローブの栽培研究を通し、自然生態系について学ぶ。大学院修了後、建築系企業でLED野菜栽培の研究等を経て、parkERsへ入社。メンテナンススタッフとして室内緑化の育成経験を積み、プランツコーディネーターになる。人と植物、両方が共に育つ豊かな時間を過ごせる空間作りを目指している。
https://www.park-ers.com/

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