年々、注目度が上がる八重咲きユリの魅力。「湯浅花園」千葉・市川|知りたい! 花産地のこと Vol.4

キクについで、国内生産量が2番目に多い花はユリ。埼玉、高知、新潟などに大産地がありますが、個性的なユリを生産しているのが千葉県市川市にある「湯浅花園」。毎年オランダから最新品種を取り入れ、年間約50品種を生産・出荷するという、ユリひと筋50年の同園を訪ねました。
目次
進化し続ける八重咲きユリたち
通常、ユリは開花前に収穫します。そのため温室の圃場は堅いつぼみばかり。緑一色ですが、摘み取りが終わって地肌が見える一角に、色づくユリを見つけました。
「このユリを見てください。満開は過ぎましたが、不思議なユリですよ」と、湯浅花園の主、湯浅英雄さんが紹介してくれたのは、赤黒い花。花びらの先やおしベはカールし、開き切ったチューリップのようにも見えます。

「まれに、こんな規格外の花が咲くんです。商品にはならないけれど、おもしろい花があったら、手間を惜しまず増やしてみる。そこが花づくりのおもしろさです」。

1996年、ピンクのひと重咲きの畑で、八重咲きの枝変わり(突然変異)を発見した湯浅さん。今もそのときと変わらぬ思いでユリと向き合っています。その八重咲きは高度な培養技術をもつオランダの会社に託され、やがて誕生したのが「明日香」。この明日香を皮切りに、ユリにも八重咲きの波がやってきました。豪華で花もちがいい八重咲きが楽しめるのは、湯浅さんのおかげといってもいいでしょう。今年、この農園で出荷する八重咲きは10品種を数えるそう。そのうちのいくつかを紹介しましょう。
サマンサ

シアラ

デジマ

エディーサ

イザベラ

ジアニータ

「今、いちばん力を入れているのが、エミカという品種。ライトグリーンの爽やかな八重咲きです」。エミカは、2011年に、この圃場で湯浅さんが発見したもの。昨年から本格的に出荷がスタートしました。

「じつは、先日、そのエミカの畑で、外側が赤紫色に染まる枝変わりを見つけたところです」。そう語る、嬉しそうな表情の湯浅さん。まるで、宝探しの話をしているかのようです。

その枝変わりが、この写真。生まれたてのこのユリが、花屋さんに並ぶ日はそう遠くないかもしれません。楽しみですね。
「八重咲きは花びらが多いので、そのぶんデリケート。遠方の産地では1輪ずつ花を包んで出荷するそうです。うちは大田市場までは早ければ車で30分。そんなに手間をかけなくても、新鮮なまま花を市場へ届けられる。都市農業の利点ですね」。
東京に隣接する市川市という立地を生かしながら、湯浅花園は魅力的な品種を次々に生産し続けています。
併設のショップがあるのも嬉しい

取材時にちょうど出荷していた品種を紹介しましょう。併設のショップでその摘みたてが購入できます。ユリは1本さっと活けるだけで、十分に楽しめるし、香りのいい品種を交ぜて花束にしても素敵です。

ショップを切り盛りするのは、奥さまの美代子さん。選んだユリを手早く花束にしてくれます。時季によって品種は変わり、年間生産する50品種のうち、いつも数品種が並んでいます。
ホワイトトライアン

リトルキス

ランディーニ

茶花や珍しい植物にも出合えます
最後に湯浅花園の特徴をもうひとつ。ユリを専門とするいっぽう、じつは、ギガンジウム、デルフィニウム、サンダーソニアを、日本で初めて生産したのも湯浅花園なんです。季節になると農園の庭に咲くツバキ、ボタン、クロユリなど、茶花、いけばなの花材も出荷しています。

庭の珍しい植物コレクションを案内してもらいました。昭和30年代中ごろに見本でもらったという、南アフリカ原産の巨大ムスカリは、その直後ワシントン条約で取引できなくなったという希少なもの。同じく迫力満点の黄色い花は、中国原産のキンレンカ(金連花)。なんと一年中花が咲き続けるそう。ハウス内の青々と茂っていたのは、湯浅さんのお孫さんが大好きというマンゴー。ハワイ旅行で見たブーゲンビリアが咲く家に憧れて、作業小屋はツルウメモドキに包まれています。「正月用の赤い実のツルウメモドキは、ここから摘んで出荷しているんですよ。なかなかいいでしょう」と、どこを見ても遊び心がいっぱいです。
巨大ムスカリ

キンレンカ

マンゴー

ツルウメモドキ

Data:リリーズハウス湯浅花園
フェイスブック/https://www.facebook.com/yuasakaen
住所/千葉県市川市北方町4-1939-4
電話/047・338・1202
営業時間/9時30分~17時
定休日/水曜
アクセス/JR武蔵野線 船橋法典駅より徒歩15分
Credit
構成と撮影と文・瀧下昌代
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