2019年12月、埼玉県熊谷市にオープンした「花音の森」。植物と快適に暮らせるように設計された場所で、植物のある暮らしで健康寿命を考える“ガーデンセラピー”をコンセプトに、植物の楽しみ方が学べるレッスンが行われています。今回は、こだわりの詰まった庭づくりをお伝えします。

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花音の森を作るまでの経緯

昔は、植物(庭)がここにあるから、家をこの向きに建てようとか、植物(庭)が先にありましたが、現在は、家をつくるというと、建ぺい率ぎりぎりに家を建て、庭はちょっとだけ…という付属品扱いが当たり前。そして、植物はめんどくさいから、庭はいらない。草が生えないようにコンクリートにしてしまいたいという方が多いのが、悲しい現実。

花音の森を作るまでの経緯

私は、単なる家でも、単なる庭でもなく、家と庭が、お互いを補い合ってできる快適な住まいができないかと考え、日本一暑い街・埼玉県熊谷市で、植物と快適に暮らすために、家と庭の専門家とタッグを組み「花音の森」をつくりました。

太陽や風のチカラを取り入れて、自然と快適に暮らすために

太陽や風のチカラを取り入れて、自然と快適に暮らすために

家の周りと敷地を囲むように、2m以上のサイズの木を200本以上、植えています。

この庭をつくる際に大切にしたことをご紹介しますね。

庭づくりで大事にしたこと1:土中環境からデザインする!

ここは敷地を囲うように三方をコンクリートに囲まれています。

現代の環境は、コンクリートやアスファルトなどの人工物に囲まれている

このように、現代の環境は、コンクリートやアスファルトなどの人工物に囲まれていることで、土の中の水と空気が抜けず、滞りがちに。いわゆる「水はけの悪い土壌」というのが往々にして起こりやすい環境なのです。

また、最初は大丈夫でも、何もしなければどんどん土は固くなり、締まっていきます。それが、植物の生長を妨げる要因になり、結果、虫にやられやすくなったり、病気になりやすくなることにもなります。
昔ながらの石垣や垣根は、石と石の隙間から水が抜けたり、植物の根が支えてくれたりと、適度なゆるみがあり、空気と水が循環していたのです。それと比べると、現代の建物や周辺環境とは、大きな差がありそうですね。

土中環境もデザイン

というわけで、花音の森の施工は、現代に合った形で、土中環境もデザインすることを大切にしました。どんな植物を植えるかの前に、土中の環境を整えることが、とても大事だと思っています。

庭づくりで大事にしたこと2:土の中で、空気と水が滞らないようにする!

土の中の水と空気が滞ることのないように工夫をします。

植物は、土の中の空気を求めて、四方八方に根を伸ばします。じめじめした土の中には空気がないので、土は乾いている必要があるのです。これは寄せ植えを育てる時、よく言われる「土が乾いていたらたっぷり水をあげる」と同じことですね。一旦乾かした土に水をあげることで、新しい空気を送りこむことになります。つまり、水が溜まってじめじめしている状態ではなく、土を乾かすという流れが大事なのです。

そのために、敷地全体の水の通り道を確保します。

まずは、敷地全体に緩やかな傾斜をつけて、盛土(高畝)にして植物を植えこみました。そして、植物の周りに、土中の空気を抜くための通気の穴を掘ります。

40~50cmほどの縦穴を掘って、底に炭を入れ、透水管を通します

40~50cmほどの縦穴を掘って、底に炭を入れ、透水管を通します。そこに、竹や庭で出た剪定枝を入れて、固定していきます。適度なゆるみを持たせたら完成です。

この穴を敷地全体に70か所ほど掘るのと同時に、穴をつなぐように横方向に溝を掘っていき、最終的に、一番低くなっている敷地の隅に水が流れていくように、透水管がつながっています。

穴をつなぐように横方向に溝を掘っていく

庭づくりで大事にしたこと3:農薬と化学肥料は使わない

そもそも、いい土とはなんでしょうか?

いい土とは、団粒構造を持った土です。大小の粒が混ざり合った土のことを団粒構造と呼びます。粒と粒の間には適度な隙間がたくさんできるため、水はけがよく、空気もよく通ります。そして、土の塊に水や養分を蓄えるので、水持ちがよく、肥料持ちもいい、というよい循環になります。

土の中は微生物の住処

また、土の中は微生物の住処にもなっています。微生物が枯れた植物や根を食べながら活動し、団粒構造を作り、最終的には“窒素・リン酸・カリ”の状態となって、植物の栄養になる仕組みです。この理想の土中環境だと、植物は細根を伸ばすことができ、大地にしっかり根を張れるという仕組みになっているのです。そして、この環境ができている場は、植物を害する病気や虫の発生がしにくくなります。

これには年月がかかりますが、そんな土中環境を作ることが、植物が長く健全に育っていく環境になるはずです。

土中環境を作ることが、植物が長く健全に育っていくかぎ

そこには、科学的な肥料や薬剤は不要だと思っています。化学肥料は植物に直接届く栄養素ではありますが、微生物の食べ物ではないため、使い続けることで土の中の微生物は減っていき、団粒構造が機能しなくなり、土中も固くなると植物の根は張りにくい状態になり、元気もなくなる。そうすると、虫や病気に狙われやすくなり、薬剤を使う。そうするとさらに土は固くなる…という悪循環に陥ります。

そんな考えのもと、ここでは食べるもの・食べないものに関わらず、農薬と化学肥料は使わず、微生物を大切に育てていきます。

庭づくりで大事にしたこと4: 庭で出たものは庭で再利用! ゴミにしない

庭作りで大事にしたこと4: 庭で出たものは庭で再利用!ゴミにしない

例えば、この石。これはこの場の土を掘り返した時に、中から出てきたものを再利用しています。

敷地全体を通して、水はけがいいように、盛土をして(高畝を作って)植栽をしてあるため、土が流れ落ちてきてしまうのを止める対策のために、石を土留めとして活用しています。施工をするとき、ともすれば、これはゴミとみなされ、処分に困るアイテムになるのですが、「庭で出たものをゴミにしない」という視点を持って、利用できるものは再利用して庭の中で使う、というのも庭をつくる時に大事にしたいと思っています。

そう考えると、嫌われものの雑草や落ち葉、捨てるのが面倒といわれる剪定枝も、考え方次第で、資源に変わるのです。

花音の森をコミュニティの場に

去年の12月、更地の状態から、花音の森がどうやってできるのかを見て、土中環境改善の方法を体験してもらうワークショップを開催しました。

花音の森をコミュニティの場に

そして、ここはプライベートサロンのため、一般公開はしませんが、見守ってくれる方と一緒に、経過観察も楽しめるような、緑と共に人間関係を育んでいくコミュニティの場になったらいいなと思っています。今後も、お庭メンテナンス、植え込み管理作業なども、定期的に開催していく予定ですので、一緒に花音の森を楽しんでいただけたら嬉しいです。

次は、夏の暑さ対策に着手する予定です。またその様子もレポートさせていただきますね。

Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)

花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。

生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/

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