食用の花“エディブルフラワー”の中でも、バラに着目し、“食べられるバラ”の栽培から、バラを使った食品やコスメの販売までを行うROSE LABO(ローズラボ)株式会社代表取締役の田中綾華さんがお届けする連載「ROSE LABO通信」。今回は、パリ出張で体験した海外のエディブルフラワー事情をレポートしていただきます。
目次
バラの花びら1枚で特別感を演出するパリのカフェメニュー
私たちROSE LABOは「食べられるバラ」を育てていますが、こうした食用の花のことを「エディブルフラワー」といいます。エディブルフラワーは、海外のほうがはるかに普及が進んでおり、私が昨年、海外の花事情を勉強しにパリへ出張した際も、たくさんのエディブルフラワーを目にしました。レストランはもちろん、ふらっと入った喫茶店やパン屋さんでも、たくさんのメニューにエディブルフラワーが使われており、日常の食生活への浸透度を実感しました。
例えば、こちらはカフェでいただいたケーキ。ケーキの上に大輪の食用バラが1枚のっており、たった1枚の花びらなのに、その存在感は抜群でした。味もベリーとローズの相性がとてもよく美味しかったです。やはりバラがあるかないかで印象は全く違うものになると思いますし、その瞬間がドラマチックにすら思えて、とても幸せな時間を過ごさせていただきました。
フランスでは、しばしばこのようにスイーツにバラが使われており、ピエール・エルメの代表作「イスパハン」やラデュレの「サントノレ・ローズ・フランボワーズ」など、目にも麗しい名スイーツがたくさんありますが、もはやバラの花びらのケーキは、そうした有名メゾンの専売特許ではなく、パリではもっと気軽にバラがドリンクや料理に使われているのを今回の旅で体験しました。
これはカフェでいただいたアイスティーです。ただのアイスティーなのですが、真紅のバラの花びらが1枚乗っているだけで、一気に特別感が生まれ、飲んでいる私も断然優雅な気分です。これならすぐに真似できそうだと思いませんか。ごく簡単なあしらいですが、意外に気がつかなかった使い方です。
また、サラダにもバラの花びらが活用されていました。驚いたのは、使われている花びらが、どこも大輪種のバラであったことです。日本だと小さなバラを1輪使うことが多いのですが、パリでは大輪のバラの花びらを使っているケースが多く見られました。
じつは、ローズラボのバラも大輪種なので、私はとても嬉しく思い、思わず店員さんに「なぜ大きいバラの花びらを使用するのですか?」と聞いてみました。すると、店員さんは微笑みながら「It’s art」と答えてくれました。続けて「Roses make us happy(バラがみんなを幸せにするんだ)」とも。その言葉に私はとても感激し、そしてとても勇気づけられました。
パリでは気軽に手に入るエディブルフラワー
スーパーマーケットに立ち寄ってみると、そこにも野菜と一緒にエディブルフラワーが並んでいました。ですから、パリの人々はレストランやカフェだけでなく、自分の家でエディブブルフラワーを使った料理やお菓子を気軽に作って楽しんでいるのでしょう。食卓が色鮮やかになり、料理をするのもいっそう楽しいだろうなぁと思いました。
日本では一部のデパートやネット通販など、エディブルフラワーが購入できる場所は、ごく限られています。早く日本でも流通網が整い、エディブルフラワーがもっと皆さんに気軽に使っていただけるアイテムになるよう、私たちができることについて深く考えるきっかけになりました。
バラは栄養価が高い!
私たちローズラボのバラは、レストランやカフェ、パティスリーにエディブルフラワーとして卸していますが、もっと多くの皆さんが気軽にご自宅で料理に使えるようになったらいいなぁと思っています。
というのも、バラは美しいだけでなく、食品としての栄養価も野菜に負けず劣らずどころか、秀でている部分も大いにあるからです。
花は植物にとって次世代へ命を繋ぐための大切な器官で、種子を作るために植物は花へ集中的に栄養を注ぐため、栄養素がとても豊富なのです。バラにはビタミンA、ビタミンC、女性ホルモンにアプローチするゲラニオール、エイジングケアに欠かせないポリフェノールの一種であるケルセチンなどの有用成分が豊富に含まれています。
さらに、私たちが品種改良したオリジナル品種「MRL-24(上の写真)」には、他のバラよりビタミンAが10倍以上、ビタミンCが2倍以上含まれ、ゲラニオールの含有量も非常に高いことが成分分析によって分かっています。現在、MRL-24は化粧品にのみ使用していますが、エディブルフラワーとしての有用性も大いに感じます。
また、ローズラボでは現在のところ生花でのバラの通販は行っていませんが、コンフィチュール(ジャム)やコーディアル(シロップ)、お茶などの加工品は通販で販売していますので、エディブルフラワーとしてのバラの魅力をぜひ味わっていただければと思います。
日本でのエディブルフラワーの現状は、市場流通品で約2~3億円のマーケットといわれています。まだまだ小さい市場規模ですが、その分たくさんの可能性を秘めていると感じます。パリのように、もっと手軽に、気軽に野菜感覚で手にとってもらえるように環境を整えていきたいと思いました。
不安なときこそ発揮される花の力
さて、パリ出張中には郊外の庭でもバラをよく見かけました。
お散歩していたら、たくさんの家の庭にバラやお花が咲いていて、素敵だなぁ、と癒されたり、なんだかオシャレに見えるなと改めて感じました。
海外では花き業界が日本より活発です。その理由は、やはり「花をプレゼントする文化」にあると思います。韓国の友達は、韓国ではカップルはしょっちゅう花を贈り合うと話していました。記念日がとても重要視されていて、お互いの誕生日はもちろん、付き合って100日目の記念日、1年目の記念日というように、記念日ごとに必ず花を贈る習慣があるそうです。
日本の場合は、花を贈るのが照れくさいなぁと思う方が多いかもしれませんね。ですから、日本の花き業界では、「自分のための花」というコンセプトでお客さまにアプローチしているのが最近のトレンドだと思っています。一方で、ギフト需要を増進するためにフラワーバレンタインなどのキャンペーンも行われていますし、農家も花屋さんも、いろいろなアイデアを出して、花き業界を盛り上げています。
最近、とても面白いサービスだなぁと感じているのは、花の定期便を行っている「Bloomee LIFE」さんです。3種類のプランからコースを選ぶと、ポストに自分の好きなタイミングで花が届きます。忙しい現代人に、癒やしや安らぎを届ける最適なアプローチだなぁと思いました。
新型コロナウイルスの不安が広がるなか、花が身近に1輪でもあると、ちょっとホッとしたり、少し前向きな気持ちになれたりするものです。このような時だからこそ、エディブルフラワーを含め、花を暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。バラの香りたっぷりのローズラボの製品も、皆さんの癒やしになればうれしいです。
Credit
文 / 田中綾華 - ROSE LABO株式会社代表取締役 -
たなか・あやか/農林水産省農林女子プロジェクトメンバー。世界56カ国から世界一の学生起業家を決めるGSEA2016日本代表。SNB女性起業家賞受賞。埼玉県深谷市にある約1,000坪(約3,000平方メートル)のビニールハウスで、無農薬の“食べられるバラ”を栽培している。栄養も摂りながら、五感で楽しめる加工食品やコスメなど、オリジナル商品の生産・販売も行う。https://www.roselabo.jp/
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