世界でもっとも多種多彩なバラが手に入るのは、日本といわれます。ヨーロッパやアメリカが、栽培適地のアフリカや中南米の高冷地で生産するバラに頼っているのに対し、日本は国内に個性的なバラを生産する多くの農園があります。なかでも、もっとも個性的なバラで知られるのが『やぎばら園』です。
やぎばら園の代名詞は、個性派のバラ
「うちの農園に限らず、日本のバラ園の多くはさまざまな品種を生産しています。それは、小さな農園だからできること。生産しやすい売れ筋のバラを大量に作るほうが経営的にはいいのですが、小さなバラ園だから作れるバラがあるんですよ」とやぎばら園の2代め、八木勇人さん。
早速、個性的なバラで知られる、やぎばら園のバラたちを紹介しましょう。
ヴァーズ

花形も、咲き方も独特なバラ。「造花のようですね、といわれることもありますが、中心の小さな花びらまでしっかり咲くバラです」と八木さん。やぎばら園のなかでも特に、人気の高い品種です。
シュエルヴァーズ

ヴァーズの枝変わり品種。花びらはまるで貝殻の内側のような色と艶があり、独特なムードが漂います。
HANABI

打ち上げ花火のように美しく、力強い咲き方をすることから名づけたそう。冬になると、咲き始めから中心の緑色のしべが見えます。
ヒラリ


やや紫がかった花色。つぼみから想像できないほどよく開きます。平たく咲いて、鋭くとがった花びらが特徴。
ラロック

中心に緑色のしべがのぞき、花びら全体にフリルが入る独特の花形。花色はアプリコット色から、緑色へと変化します。

個性的なバラに限って、育てにくい、生産性がよくないなど、ひと筋縄ではいかないバラが多いそう。ラロックもそのひとつ。手間がかかるバラですが、変化に富んだ表情を見せてくれる、八木さんのいう“おもしろいバラ”です。時期やタイミングにもよりますが、畑で長く咲かせ、花びらが緑色を帯びてから出荷することが多いそう。
名前は、言葉遊びをするようにつけています
ひらがなで書く『やぎばら園』の園名は、やさしく、ほのぼのとしたイメージ。その名前を聞いて、「やぎばら」?「山羊バラ」?と思う人もいるかもしれません。そんなふうに、おもしろい仕掛けが、同園のバラの名前にもちりばめられています。
「バラの名前は、言葉遊びをするようにつけています」と八木さん。たとえば、ヴァーズの枝変わり、シュエルヴァーズを命名したときは、まず、花色から貝(英語のshell)の内側の色を連想。シェル+ヴァーズを、口のなかで転がすようにして音を確かめ、結局、ひとひねりしてシュエルヴァーズ と命名。何度も繰り返してつぶやいて、耳障りのいい名前、言いやすい名前を探すそうです。
「ジューク(写真は次の項参照)はどういう意味?とよく聞かれますが、意味はないんですよ。名前をつける前、株に19の番号をつけていたから」と八木さん。名前が決まるまでには、いろいろなストーリーがあります。
根強い人気がある、正統派の美しいバラたち
同園のバラは個性派が注目されていますが、じつは、エレガントなピンク系のカップ咲き、根強い人気を誇る濃い緑色の剣弁高芯咲きなど、たくさんの正統派のバラもあります。
ヤギグリーン

花名どおり、やぎばら園を代表する品種です。外弁は緑色が強く、中心に向かってクリーム色になるグラデーション。もっとも古い品種のひとつで、2004年に作出。
ジューク

高芯剣弁咲きのきれいな花形。とても花もちがいいことが特徴です。
ピンクジューク

ジュークの枝変わり。花色はやさしいピンクです。
ヤギパープル

マットな質感のしっかりした花びら。花色は濃い赤紫色。
フラッフィ(Fluffy)

カップ咲きのスプレータイプ。名前はフランス語でふわふわした綿毛の意味。柔らかな花の雰囲気から命名したとか。香りのいい品種です。
ベビーチーク

赤ちゃんの頬のようにかわいらしいバラ。フリルの入るカップ咲きで、アプリコット色です。
ガランス

小さなつぼみから、とても大きな花になります。名前は茜色という意味のフランス語。
ヤギモーブ

ヤギパープルの枝変わり。花色は上品な藤色。よく開いて咲きます。
Data:やぎばら園
HP/https://yagirosebreedingfarm.com/
ブログ/http://yagibara.i-ra.jp
所在地/静岡県菊川市
Credit
撮影・八木勇人 構成と文・瀧下昌代
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