2019年12月、埼玉県熊谷市にオープンした「花音の森」。植物と快適に暮らせるように設計された場所で、植物のある暮らしで健康寿命を考える“ガーデンセラピー”をコンセプトに、植物の楽しみ方があれこれ学べるレッスンが行われています。今回は、「花音の森」の大きな野望「日本一暑い街・熊谷で夏もクーラーなしで暮らす!」を掲げることになったいきさつをお伝えします。

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日本一暑い街・熊谷に生まれ育った宿命…

私が住んでいるのは、暑い街として有名な埼玉県熊谷市です。全国的に猛暑だった2004年には連続猛暑日日数28日、2018年には日本一暑い41.1度を記録した場所です。

ご当地名物・雪くま(というかき氷)
夏場はかき氷が欠かせません。ご当地名物・雪くま(というかき氷)。

熊谷市がなぜ暑いのかというと、理由は2つあります。1つ目は都心のヒートアイランド現象により温められた空気が、南寄りの風に乗って運ばれてくるため。2つ目は、上空を吹いている西風が秩父の山を越えて吹き降ろしてくる際に圧縮されて、温度が上がるフェーン現象が発生し、温度の上がった空気が流れ込むためです。このフェーン現象と、東京都心から流れるヒートアイランドの空気が重なる「交差点」が、熊谷市あたりだといわれています。

私は、生まれも育ちも仕事の拠点も熊谷市で、当然地元への愛着もありますが、年々暑さが増して、暮らしにくくなっていることを実感しています。加えて、2018年の猛暑の年は、エアコンは夏中フル稼働で、夜もつけっぱなし…スイッチを切れませんでした。

エアコンは、スイッチを入れればすぐ涼しくなりますし、まさに熊谷の夏にはなくてはならないアイテムですが、エアコンの室外機から排出される温められた熱が、熊谷が暑くなる原因・ヒートアイランド現象にも繋がっていることも、気になっていました。エコではないことに加え、家族4人エアコンを使い続けると電気代も当然かかり、2018年の夏は一番高くて3万円弱にも。

この経験から、この熊谷に住み続けることへ不安を感じるようにもなってきました。

「まちなか緑化士」という資格を学ぶ

「この暑さはこのままでいいのかな…私にできることって、何かないかな?」と思っていた時、「まちなか緑化士」という資格を勉強する機会がありました。

資格の対象は建築・造園などを仕事にしている人。都市に緑を増やすことの意義や、植物を活用したまちづくりの手法を学び、各自が持っている技能を掛け合わせ、緑を繋げて増やしていく先駆者として活動しましょう、という主旨のもと、具体的な考え方や方法を学びました。

その講師のひとりが、環境共生をテーマに、住環境のプロデュースを行う会社を経営されている株式会社チームネットの甲斐徹郎さんでした。

住環境のプロデュースを行う会社を経営されている株式会社チームネットの甲斐徹郎さん
先日、完成した花音の森にも遊びに来てくださいました。

講座内で、甲斐さんから「住まいの断熱性を高めて植物を使えば、夏もエアコンに頼らず暮らせる」という実例を見せてもらい、衝撃を受けました。

ちょうど、「ガーデンセラピー」をコンセプトとして、新しい施設・花音の森を作るために動いていたタイミングだったこともあり、これは熊谷でできたらすごいかも! と、ひとり大興奮…ワクワクしすぎて、講座の後に知恵熱が出たほどです(笑)。

自然を活用して快適に暮らすために。「パッシブデザイン」とは?

こうして、エアコンに頼らないで暮らす・住み続けられるまちづくりという視点も加えて、花音の森を作っていくことを決意しました。

テーマは「家×庭 自然を活用して快適に暮らす」。まずは、夏はエアコンなしでも過ごせ、冬は薪ストーブで暖かく暮らせる環境を目指します。

冬は薪ストーブで暖かく暮らす

エアコンなどの機械をできるだけ使わず、太陽の熱・風・水・庭の植物といった「自然エネルギー」を最大限に活用・調節して、快適な住まいづくりをする手法を「パッシブデザイン」と呼びます。

特に住宅は、パッシブデザイン住宅といわれ、太陽光蓄熱システムや、床暖房、発電などを搭載したエコな家づくりも人気がありますね。

私は植物に関わる仕事をしていますから、植物の可能性をもっともっと感じたいと思い、庭のプランにもパッシブデザインを取り入れることにしました。しかも、ソーラーなどのシステムは使用せず、植物でどこまで快適に暮らせるかチャレンジ! という道を選択します。

家と庭、それぞれを補い合うようにプランニングして、建築士さん・造園士さんと相談を重ねて、花音の森を一から計画していきました。

住み続けられるまちづくりを植物から

最近、よく「サステナブル」という言葉を耳にするようになりましたね。サステナブルは、sustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉で、「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。

現在、国連が世界共通の目標として取り組み始めているのが「持続可能な社会」の実現。英語では、Sustainable Development Goals。この頭文字をとって、SDGs〈エスディージーズ〉と呼ばれます。SDGsは、貧困、環境問題、経済成長やジェンダーなどの課題に対して17の目標が掲げられています。豊かさを追求しながらも、地球環境を守り、ずっと美しい地球で生活し続けていける社会を目指して、私たちひとりひとりが動くことが求められ、これからその勢いは増していくでしょう。

まさに、2018年の猛暑に思った「この地で快適に暮らし続けるためにはどうしたらいいか?」という、熊谷の暑さ問題は、私にとってSDGsを考える入口でした。

スイッチを入れればエアコンで涼しくなる便利さの恩恵に頼りっぱなしになるのではなく、クリーンエネルギーについて考え、植物で工夫をすること、そして、植物が生長する様子や管理も楽しみながら行えば、ガーデンセラピーにも繋がる…そんな植物がもたらしてくれる可能性に、ワクワクします。

住み続けられるまちづくりを植物から

また、こうした取り組みが1軒1軒と増えて、緑が繋がっていくことで、植物がある街の風景もでき、環境問題改善の役に立つことができるかもしれません。

というわけで、まずは、花音の森を実験の場にして、私がやれることをちょっとずつやっていこうと決心したところです。引き続き、様子をお伝えしますので見守っていただけたら幸いです。

次の記事では、自然を活用して快適に暮らすために実際に工夫した点を具体的に紹介していきますね。

Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)

花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。

生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/

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