かつて日本人は、里山の一本の大きな木の下に、縁側を隣にし、住宅を建てて暮らしました。風、光、そして四季を感じる庭と一体化した家。あえて今、古い伝統的な住まいに学ぶことに、未来の暮らし方の大きなヒントがあるのではないかと思います。今回は、古い伝統的な住まいの自然との共生の仕方と特性について、専門家からきいたこぼれ話をみなさんにも少しだけお話しましょう。
その土地に適した植栽で美しい庭を
四季折々の草花や樹木を楽しめる日本の庭。春は新緑、夏は木陰の涼しさ、秋は紅葉、冬は暖かな日だまりと、季節を彩る自然空間は住まい手の体や心を日々癒やします。さらに、地域の生態系を考慮した植物を配置すれば、よりナチュラルで生き生きとした美観の庭をキープすることが可能。かつてブームになったシマトネリコですが、もともとは亜熱帯に生息する植物で繁殖力が強いため、さまざまな宿根草や樹木が負けてしまうこともあり、植栽のバランスを考える必要があります。
その土地ならではの自然環境に適応した植物なら、葉雑草や雑木林は案外気にならないもの。宿根草として、クリスマスローズやフッキソウ、ヤブラン、ベニシダ、ギボウシ、ハーブ類などたくさんの種類があります。雑木林はモミジやヤマボウシ、ヒメシャラ、ムラサキシキブ、カツラ、アオダモなどがそろい、住宅の家と外構の間にきれいに植えることで、木漏れ日の美しさを感じさせる庭ができあがります。
懐かしい縁側で快適に過ごす
室内に居ながら庭の自然美を体感できるスペースに、日本の家屋の特徴の一つである縁側があります。庇(ひさし)により雨や日差しを防ぐ縁側は、四季が暮らしに溶け込む居住スペースの役割を昔から果たしていました。
夏は日光の暑さ予防になり、梅雨の時期は乾いた空気が維持され、雨の日でも吹き込みがなく、網戸だけで十分涼しく生活できます。また冬場になると、傾いた南の日が暖かく注ぎ込み、猫も丸くなって一緒に居眠りできそうな陽だまりを楽しめます。ちなみに、簡易に庇を付ける場合は、木やアルミ材のようなものでパーゴラ風のものをつくり、そこに夏はシェードを付け、冬は外して日光を取り入れる、そんな手法もあります。
古い伝統的な住まいに学ぶ現代に沿った暮らし方
高気密・高断熱により、室内の温度や空調をコントロールするゼロエネルギー住宅が注目を集めています。しかし、庭や建築の造りによる省エネルギーが反映された住まいの心地よさ、そして住まう人の健康をまずは優先し、その中に高断熱や基本的な気密性を手段として取り入れる必要があるのではと考えます。
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