冬の季節だからこその特別なデコレーション。『マンダリンオリエンタル・パリ』|パリ発、季節の花だよりVol.3

クリスマスシーズンのパリは、街がとても華やかです。今回は、香港を拠点に世界展開するラグジュアリーホテル『マンダリンオリエンタル・パリ』の、ある年のデコレーションをお見せしましょう。12月から1月にかけて、パリではホテル、ショップなどがどこも、冬だけの贅沢な装いに。見ているだけで、心が浮き立ちます。
目次
1年でいちばん長いディスプレイのテーマは、静かな森

前述したように、12月から1月、キリスト教の文化圏にある国々では、クリスマスの装飾で街中が賑やかに彩られます。クリスマス飾りは日本では12月25日を過ぎると、あっという間に片付けられますが、これらの国々では翌年1月6日の公現祭までは飾っておくのが習わし。キリスト教におけるクリスマスは単なるパーティーイベントではなく、イエス・キリストの誕生を祝う大切な期間を意味するのです。「1月にクリスマスツリー?」と、私たち日本人は違和感を覚えますが、ヨーロッパの国々ではこれが本式の伝統です。
今回は本連載Vol.1で紹介した、フランスにおけるホテル格付けの最高ランク、パラスに認定されている「マンダリンオリエンタル・パリ」のデコレーションをお見せしましょう。
「マンダリンオリエンタル・パリ」は、ハイブランドのメゾンが並ぶ、パリ屈指のファッションストリート、サントノレ通りにあります。ホテルの冬のデコレーションは、12月中旬から翌年1月上旬まで続く1年でいちばんディスプレイ期間の長い装飾です。
まずはエントランスから。

この年のクリスマス装飾は、フランス北東部ヴォージュ県の森をイメージしていました。アートディレクションは、ホテル専属フローリストであるバティストさんが担当です。
雪深い白樺の森に、鹿が隠れているのがわかりますか? フランス人にとってヴォージュ地方は、山であり森であり、クロスカントリースキーの名所でもあります。そんなヴォージュ地方の静かな森を思わせる、色を抑えた装飾です。
今回、ヴォージュ県がイメージソースになったのは、ホテル総支配人のフィリップ・ルブッフさんとシェフパティシエのアドリアン・ボゾロさんが、この地方の出身だから、とのことでした。

ホテルのエントランスホールから見える中庭も、見事にヴォージュの森に変身しています。パリきってのファッションストリート、サントノレ通りに、突如と現れた白樺の森。眺めているだけで癒やされます。その森には、よく見ると鹿がいました。

フランスの森を歩いていると、時々、鹿や他の動物に遭遇します。しかし、動物たちは森の景色に溶け込んでいて、人間のほうでは気づかないこともしばしば。鏡で作られた、この中庭の鹿たちは、そんな自然の不思議を巧みに、かつ幻想的に表現しているようです。
ホテルのイメージカラー、ピンクをまとって華やかに

一方、エントランスホールには、ゴールドとビビッドピンクで飾られた賑やかなクリスマスツリーも。パッと目に鮮やかな2色のオーナメントを選んで、ツリーにたっぷりと盛り込むだけ! 私たちでもマネができそうです。

こちらは中庭へ向かう通路にある、ちょっとしたサロン・ド・テのコーナー。

写真は光が当たってわかりにくくなってしまいましたが…。白樺とピンクのオーナメントで構成された、シンプルながらも華のある装飾が施されていました。
テーブルの上には、ドライフラワーの実ものをビビッドピンクにペイントしたものが。

いつも高さのある花がたっぷりと飾られている「バー8」の入り口には、先ほど紹介したテーブルの花と同じアレンジが並んでいました。

花の組み合わせは同じなのに、それらをふんだんに使っているだけで、こんなにも印象が変わります。

「バー8」の中に入ると、大理石のカウンターが広がります。卓上には、ミニサイズのクリスマスツリーが数カ所に。このクリスマスツリーも、雪深い森を連想させますね。
最後は、スパの花を。

スパの入り口は、ピンクの実の代わりに、ゴールドの実が使われていました。同じテーマで一貫性をもたせながら、空間に合わせた色使いとボリュームで花を魅せているところは、さすが、パラスです。

こちらは、スパのカウンター。多肉植物とコケで作られた小さな庭のようなオブジェ。白とゴールドで構築されたモダンな空間にある、くつろぎの演出です。
ゲストがホテルのどこを歩いても花のストーリーが一つに繋がるよう、計算しつくされたデコレーション。何度でも訪れたくなる魅力に、今回もまた溢れていました。

マンダリンオリエンタル・パリ Mandarin Oriental, Paris
ホームページ/https://www.mandarinoriental.co.jp/paris/place-vendome/luxury-hotel
住所/251 rue Saint-Honore, Paris, France
電話/+33 (0)1 70 98 78 88
Credit

角野恵子 Keiko SUMINO-LEBLANC
在仏日本人ジャーナリスト、コーディネーター。日本の企業に就職後、東京在住フランス人ジャーナリストのアシスタントを経て、1997年よりパリに移住し、在仏歴21年に。食とライフスタイルを中心に、日仏の雑誌およびwebで活躍中。共著に「DIYでつくるパリのインテリア」(エクスナレッジ)「パリでうちごはん そして、おいしいおみやげ」(小学館)など。プライベートでは、ふたりのパリジェンヌの母。
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