みなさんは「里山」とは何か知っていますか。里山とは、その名の通り、「里=人が住む空間」と「山=動植物が住む空間」の間の空間を言います。里山が多くあった時代には、自然と人は上手に共生をして生きていたように思います。
今回は、里山を通じた自然と人との関係性について、専門家からきいたこぼれ話をみなさんにも少しだけお話しましょう。

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人を守る森とそれを繋ぐ里山のいま

写真/dugdax/Shutterstock.com

今では、すっかり少なくなってしまった昔懐かしい里山。私たちはそこに生きる植物や昆虫などを通して、人と自然の接点をつくってくれる里山の重要性を感じています。もちろん里山に限らず、森にはいろいろな役目があり、例えば災害を防ぐのもその一つです。高い木々は、台風や砂埃などをやわらげ、木々が根をはる大地はスポンジのように水を吸い、土砂崩れや洪水を防いでくれます。近年の異常気象などもあり、人工林で根が浅く、保水効果が薄れている山や森では、山崩れや鉄砲水などがしばしば起きてしまいます。

日本の多くの里山には、40年程前から急に人がいなくなりました。その結果、草木が乱雑に茂ったやぶになり、場所によってはゴミ捨て場にも…。昔は子どもの遊び場や地域に住んでいる人たちの憩いの場だったのに、今は誰も寄りつかなくなっています。すべては「効率」という言葉の元に、人口が都会に集中し始めた頃から変わりました。

ですが今の時代、果たしてそれだけで「豊か」と言えるのでしょうか。ある時は自然に逆らわず、ある時は自然の力を認め、自然を取り込み共生して生きていく世界。人の在り方も、住まいの在り方も、本当の豊かさとは何かを見つめ直す時がきています。

幸福感をもたらすガーデンの本来の役割と里山の関係

写真/Alina G/Shutterstock.com

あるアンケートによると、日本人の85%は人工的につくられた自然より、生の自然が良いという結果が出ています。もともと人は、里山の一部を借りてそこに住まいとして家を建てていました。庭はさまざまな生き物たちとの共生の場であり、家と自然との繋がりの場として大きな役割を果たしていました。

自然とふれあえる場として、家の中では得られない「視覚」、「聴覚」、「触覚」、「味覚」、「嗅覚」の五感を育てるのもガーデンならではの役割。例えば5月のバラが一斉に咲き誇る季節、テラスで光を浴びながら、芳しき甘い香りを嗅ぎ、初夏の風を心地よく受けて、ガーデンの柔らかいフカフカの椅子に腰を掛けて、昼下がりの紅茶をいただく…何ものにも代えがたい幸福感です。

しかし今を生きる私たちは、せっかく自然の恵みを享受できるにも関わらず、それを遮り、ともすれば自然に環境悪化をもたらしながら、消費し尽してしまいそうです。少なくとも私たちには、祖先から受け継いだ自然環境を損なわず、そのまま次の世代へ引き渡してゆく責任があるのではないでしょうか。

最後に・・・

写真/bearacreative/Shutterstock.com

自然を大切に、人に優しく、また暮らしに思いを持った庭づくりをすれば、その庭は地域の自然と繋がり、生き物たちが訪れるようになります。そして庭は隣人とのコミュニケーションを繋ぎ、町の風景を繋ぎ、鳥や動物や植物や虫など、すべての命を繋ぐ大事な場所になるはずです。

今はモノの豊かさを超えて、心の豊かさが求められる時代です。心の豊かさをどのように庭の中に取り込むかが、これからの課題。「ガーデン」もその文化の大きな変革の時期にきています。家の暮らしと庭の暮らしの調和を計りながら「家庭の豊かな暮らしをつくる場」が重要なテーマ。家の設計も、今までのような「住めればいい」というものではなく、地域ごとに住まい方や暮らし方、文化や風習など、庭とともにバランスよく変革させていかなくてはいけません。

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