SNSで全国のガーデニング仲間とつながりながら、自身も千葉の自宅でDIYと庭づくりを楽しむ橋本景子さんによる旅案内。今回は、日本を飛び出し、初訪問となるシンガポールへの旅。第1回目は、行く先々で見つけた驚きの施設から街中の親しみ深い植物など、シンガポールの今の植物をレポートします。
植物目線がキャッチしたシンガポールの今
先日、ディズニー映画の『アラジン』を見ていて、突然ちょっとエキゾチックな異国を旅したくなってしまった私。こっそりと旅行の計画を立て、当日の夕方まで集まってワイワイしていた友人達にも内緒で、その帰り道にみんなと別れて羽田で途中下車。深夜発の便に乗って、初めて訪れる国、シンガポールに降り立ちました。
7時間という中距離の飛行時間ですが、機内では軽食や朝食のサービスがあるため、到着した日はやや寝不足気味。でも幸いにもシンガポールは日本との時差が1時間のため、身体は楽でした。
今回は、久しぶりの海外一人旅を、私の植物目線で3回に分けてレポートします。
まずはシンガポール チャンギ国際空港のご案内から。

JAL便が到着するターミナルには、多肉や観葉植物でできた昆虫のオブジェが。深夜便の利用だったので到着時はまだ夜が明けてなくてちょっと写りが暗いのですが、「あぁ、これがシンガポールの植生を代表するものなのだな」と思ったのでした。

4つもある大きな空港ターミナルは、スカイトレインでも移動できますが、歩いて移動中に見かけた巨大な球形のオブジェは、エアープランツのチランジア・キセログラフィカやチランジア‘コットンキャンディー’、胡蝶蘭などの大集合体でした。思わずフェイクかしらと二度見してしまったけど、そんな訳はないですよね。私の1カ月後にここを歩いた知人の報告では、シダを使った違う形のオブジェに変わっていたそうです。

ターミナルによっては、従来の航空会社のカウンターは置かれておらず、“チェックインキオスク”と呼ばれるこんなマシーンでの自動チェックインができ、まるで宇宙ステーションのようなチャンギ国際空港でした。
ドーム型の商業施設「JEWEL」の植物

2019年4月に、4年間の工期と1,400億の費用をかけて完成したばかりの新しい施設が「JEWEL」と呼ばれるドーム型の商業施設です。
5階建てという高さのドームの中には、数千株の熱帯植物が植え込まれていて、シンガポールで最大級の屋内庭園となっています。

「資生堂フォレストバリー」と呼ばれるこの植物園の中央には「Rain Vortex」(雨の渦)が流れます。40mという高さは、室内としては世界最大のスケールの滝だとか。
滝の周りをぐるりと取り囲むように、地下2階から地上5階までは大型ショッピングセンターとして営業していて、この植物園はなんと無料の施設です。
5階には、植物の生け垣でつくられた迷路や鏡の迷路があったり、高さ23mの場所に設置されている「キャノピーブリッジ」という強化ガラスの橋の上から滝を見下ろすこともできます。
シンガポールの街路樹と緑の風景

シンガポールで街路樹として一番たくさん植えられているという「レインツリー」です。モンキーポッド、アメリカネム、アメフリノキなどとも呼ばれ、日本で見かけるネムの木と花はよく似ていますが、同じマメ科のフリーシア(ニセアカシア)のように葉が丸みをおびています。
『この木なんの木』のCMで知られる大きな木が、じつはこの木です。
他にもテンブスやサガと呼ばれる木が街路樹として植栽されていて、高さが10mを超えるような樹木が、広い道路の両サイドからゆったりと枝葉を広げている様子は圧巻でした。

ホテルが入っているビルの出入り口に植栽されていたのは、モンステラやシンゴニウム、ポトスなど、どれも日本では室内で越冬させるいわゆる観葉植物類でした。
いずれもすくすくと大きく育ち、屋外に観葉植物の植え込みがあるなんて、私にはやっぱりとても不思議な光景です。

建物付近には、マドカズラ、クシフィディウム・カエルレウム、コスツス・プロデュクツス(ドワーフ・オレンジ・ジンジャーとか、ドワーフ・スパイラル・ジンジャーなどと呼ばれるオレンジの花)などの植物がたくさん広がっていて、ここで休憩をしている人もいました。
シンガポールのインスタ映えスポット

そこからほんの3分も歩けばアラブストリートです。イスラム教を信仰するアラブの諸国とマレーシアやインドネシアなどの東南の諸国の文化が混じりあい、若手アーティストによる個性的なウォールアートが目立つ楽しい店やおしゃれなカフェが路地裏にオープンし、インスタ映えする発信地として人気を集めています。




シンガポール最古で最大のイスラム教の寺院「サルタンモスク」の前のブッソーラ通りを歩いていて、ふと足元の植え込みに気がつきました。
植え込みと呼ばれるほどのたいそうなものではなく、勝手に繁殖していたのかもしれませんが、シンプルに「ヤブラン」だけ。シンガポールの暑さにも大丈夫なヤブランは日本でも活用できますね。こうして何かつる系のものと合わせれば、何だか「ヤブラン」がとってもスタイリッシュに見えます。

ヤブランは、「ロイヤルパーム」といわれるこのダイオウヤシの株元で育っていました。
シンガポールの樹木探訪

モスクの敷地の周りに密に植栽されていた樹木の仕立てが面白くて、何の木なのかを確認しようと思ったのですが、これは「シルバープリペット」に似ている木でしたが、正しい名前は残念ながら不明。

これもモスクの前のお土産物屋さんの前に植わっていた樹木ですが、これは「大花サルスベリ」。
実が残っていましたが、花は日本で咲く一般的なサルスベリの何十倍もあるそうですから、ハイビスカスくらいあるのでしょうか? 咲いているところを見てみたいものです。

モスクからの帰り道、お店の前のこの植物に水やりをしているおじさんと目が合って立ち話。赤いリボンがついたままだったので「誰かからのプレゼントなの?」と聞くと「お正月のお祝いの飾りだよ」とおじさん。
「なんという名前の植物?」「ミカンの仲間だと思うけど分からない」
不思議に思って何度も確認したけれど、青い実を食用にして、黄色く色づいたのは食べないそうで……。でも、どう見てもこれは「金柑」なので、教えてあげようかと思ったけれど「金柑」を英語でなんというのかを知らなかった私でした(笑)
チャイニーズ系の人種が多いシンガポールの旧正月には、金運を呼び込むために飾るラッキーアイテムの一つだそうです。
今度シンガポールに行くことがあったら、おじさんに名前と食べ方を教えてあげようと思います。

ホテルの部屋からの眺めは、近代的な建築と金色のサルタンモスクの玉ねぎのような形の屋根、アラブ・ストリートに並ぶショップハウスの赤茶色い屋根。新旧の文化が入り混じった景色をグリーンの木々が引き締めていました。
Credit
写真&文 / 橋本景子
はしもと・けいこ/千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも5.2万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
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