緑の多い都市は犯罪発生率が少なく、経済も安定していることをご存知ですか。アメリカやシンガポールでは安全で美しい町づくりのために、緑を積極的に取り入れています。国家戦略として緑を活用し、短期間で国を発展させてきたシンガポールの例を中心に見てみましょう。
緑の多い町は、住みやすいというイメージがあります。また、これを実証するアメリカの研究データもあります。2010年、ワシントン大学環境科学部は、都市の治安について、緑地と犯罪発生率を調べる調査を行いました。この調査は一部の防犯スペシャリストが、緑地帯や植栽が犯罪者の隠れ蓑になっているという見解を示したことに、疑問を呈する形でスタートしました。その結果、住宅の周辺に豊かな植栽がある地域は、緑が少ない地域と比較し、窃盗罪は48%、暴力犯罪は56%少ないということが分かり、防犯スペシャリトの見解とは全く正反対の数字が示されました。この決して小さくない数字は、当然不動産価値にも影響を及ぼし、街づくりにおける緑の相乗効果が注目されています。
「緑の美しい街並み=安全・安心=土地の価値」という図式を、国家的戦略として行っているのがシンガポールです。今やガーデン・シティの名が定着するほどに国全体が美しい緑の景観を展開するシンガポール。しかし、1965年の建国当初、シンガポールは今とは全く異なる姿でした。熱帯特有のスコールのたびに赤土が流れ出し、照りつける太陽を遮る街路樹もなく、決して暮らしやすい環境とはいえませんでした。そのうえ特別な産業や資源もなく、多民族国家という難しさを抱えながら、国をどのように発展させていくのか。そこで初代首相リー・クアン・ユー上級相(元首相)が考えたのが、「ガーデン・シティ」というビジョンでした。緑の美しい街並みを国中に展開することによって、清潔で安心、快適というイメージを作り、海外企業や観光を誘致して経済発展を図るというイメージ戦略です。最先端の緑化技術を積極的に取り入れ、自然公園や都市公園を次々に整備し、街中にも街路樹や花壇を増やしていきました。1967年に700ヘクタールだった緑地面積は、2000 年には5,955ヘクタールに増え、それに伴い企業や観光の誘致は飛躍的に促進。2012年にオープンした国内最大級の庭園テーマパーク「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は世界的な観光地として700万人近くの入場者数を記録しています。シンガポールの総人口が約550万ということから考えると、いかに海外から多くの観光客が訪れているかが分かります。シンガポールは大いに経済発展を遂げた今も、緑を手放すことはありません。「ガーデン・シティ計画」は、「シティ・イン・ザ・ガーデン」という新たなテーマとなって進化し続けています。
こうした植物が人の心身に与える作用について、専門家による医学的な検証と有効な活用方法の確立を目指し、2016年に「日本ガーデンセラピー協会」が発足しました。各分野の専門家によるセミナーを定期的に行っており、一般参加も受け付けています。次々に明かされる植物の効能と活用方法について、いち早く情報を得られる貴重な機会です。
詳細情報
- 店舗・施設名
一般社団法人日本ガーデンセラピー協会 - 住所
〒106-0032 東京都港区六本木6-15-21 ハークス六本木ビル - 電話番号
03-5413-3865 - FAX
03-3475-8682 - ホームページ
http://www.garden-therapy.org
Photo/1)Philip Date/2)Filipe Frazao/3)Alan Tan Photography/4)Zhukova Valentyna/Shutterstock.com
参考文献:『 Crime and Public Safety / Green Cities : Good Health UNIVERSITY OF WASHINGTON, COLLEGE OF THE ENVIROMENT
『シンガポールの緑化政策の概要』/財団法人 自治体国際化協会シンガポール事務所
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