ガーデンアドベンチャー in ニュージーランド! Part1

世界にはその土地ならではの素晴らしいガーデンがたくさんあります。この記事では、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが、初秋のニュージーランドで過ごした10日間の滞在記をお届け。第1回は、滞在したファームのストーリーをご紹介します。
目次
ニュージーランドで過ごす10日間

今年、娘と共に、ニュージーランドの美しいガーデンのあるファームに滞在する機会を得ました。もともと、私は習慣的に世界のガーデンの特徴や話をいろいろ蒐集しています。例えばテレビ番組で紹介されるストーリーや、友人から聞いた宝物のようなちょっとした秘密など。こんなことを始めてかれこれ30年以上経ちますが、時には遠く離れた地の情報を手に入れるのが難しいときもあります。
もっとも、現代では、ネットで検索するだけで、素晴らしいガーデンがたくさん表示されます。しかし、旅行などを通じ、このようなネット上の情報ばかりに頼りすぎず、自分の目で見ることが大切だということも学びました。

そんなことから、ニュージーランドとその地の美しいガーデンを訪れようと決意したのです。これは、10代の娘と一緒にニュージーランドを旅することができる、滅多にない素晴らしい機会でもありました。単に旅行するだけでなく、2週間ほど滞在し、その地のリアルな生活をしたいと考えていたため、ホテルではなくホストファミリーを探し、ホームステイをすることにしました。その際の条件として欠かせないのが、美しい庭があること。いくつかの場所に打診した後、そのメールは届きました。
“You and your daughter are very welcome to join our family…”
こうして私たちは、ニュージーランドの素敵なファームにホームステイできることになったのです。実際にその場所でどのような時間が過ごせるかはまだ分かりませんでしたが、ホストファミリーを見つけて、ひとまずほっとしました。
日本を発ったのは2019年の3月半ば。ニュージーランドは夏の終わり、ほとんど秋に入る時期でした。
ニュージーランド南部に滞在
私たちは、ニュージーランド全土を巡るのではなく、特定の地域について深く知りたいと考えていたため、南部にのみ滞在することにしました。はじめに滞在したのは、クライストチャーチから車で2時間半ほど曲がりくねった起伏のある道を走ったところにある、バンクス半島と呼ばれる場所です。クライストチャーチの空港からバスで2時間半ほどの場所にある可愛らしいアカロアという町まで行くと、ありがたいことに、ホストマザーが車で迎えに来てくれました。ファームからは車で30分程ですが、近くにはバス停もないので、実際のところ、車が無ければどうしようもなかったことでしょう。

さて、クライストチャーチを出た時は晴れた青空が広がっていましたが、しばらく移動しているうちに曇りだし、丘を下ってバンクス半島に着く頃には霧が出て灰色がかった景色になり…と、道中で大きく天気が変化しました。後に何度も体験したことでもありますが、ニュージーランドでは天気の移り変わりが非常に早く、たとえ朝は青空が見えていたとしても、一日の天気を保証してくれるものでは全くないのです。ちなみに、丘から見えたニュージーランド固有の植物やその大自然についての第一印象は、まるで歯ブラシのような姿のトゥースブラシ・ツリー(サルバドラ属の樹木)が立ち並んでいるものでした。片側にだけ枝が伸び、まるで歯ブラシのように見えるこの木は、私たちの中でニュージーランドのランドマークのような存在になっています。
迎えてくれた心地よいファーム


さて、ドライブを終えた私たちは、ついに丘の中にある素敵なファームにたどり着きました。360°どこを向いても美しい緑の丘が続き、牛やたくさんのヒツジたちが草むらの中で過ごしています。このファームには、ほかに1頭の馬と2頭のポニー、6羽のニワトリと6匹の犬も暮らしていました。

滞在中、私たちが宿泊したのは、素敵な庭のある部屋。中にはダブルベッド1台と家具があり、少しフレンチスタイルを思わせる装飾が施された、美しい眺めの部屋でした。隣には、リンゴの木のある果樹園と、風を防ぐために周囲を背の高い生け垣で囲んだ菜園があり、手入れの行き届いた菜園の中には、たくさんのハーブとトマトでいっぱいの小さな温室もありました。

ホームファミリーが暮らす本館は、白くペイントされた平屋の建物。白い壁に白いバラが咲き、青い海や空に映えて美しい景色をつくっていました。内装も素敵で、煙突がある暖かなキッチンやゲスト用の部屋などがある、くつろげる空間。家の周囲には芝生の庭やプール、露天風呂、そしてパウア・ベイの素晴らしい景色を眺めることができる、いくつかのエリアを持つ大きなガーデンがありました。

家の南には屋根付きの長い木製のバルコニーがあり、そこに沿ってトレリスに絡むブドウの木が植えられていました。ブドウはちょうど熟したところで、摘み取っては口に放り込んで味わうことができました。ああ、美味しかった!

さらに、このファームにはプライベートビーチまで。入り江から30分ほどの場所に、クルーズ船の船着き場があり、観光客もよくやってきていたのですが、プライベートビーチはとても静か。朝早く散歩に出かけると、誰もいないニュージーランドの美しい海を満喫することができました。
ファームで過ごす忙しくも楽しい時間

私たちが滞在したファームのホストファミリーは、みんなオープンで勤勉な、素敵な人たち。とても素晴らしい時間を過ごすことができました。今回、私たちはできるだけその土地の人に近い時間を過ごしたかったので、滞在の間、彼らと共にファームの一員として仕事をさせてもらいました。例えば庭仕事のお手伝い。ファームのガーデンには宿根草や低木の長いボーダー花壇があり、アガパンサスが見事に咲き、あちらこちらに植栽されたバラは、夏が終わってちょうど見頃を過ぎたところでした。そこで、ホストマザーが雑草を抜いたり、宿根草を切り戻したり、伸びすぎた木の剪定をしたりといった庭仕事をするのをサポート。もう一つ大きな作業として、宿根草やバラの間の土が見えているところをマメガラで覆うという作業も行いました。これは土壌を保護するとともに、秋から冬にかけて土の中の生物に栄養を与えるという役割もあります。また、土の表面を覆うことで、雑草もそう簡単には生えてこないようになります。

ガーデンでの仕事だけでなく、動物たちの世話も行います。毎朝ニワトリたちの世話をし、エサを与えたり卵を集めたり(そして味わったり)というのも、この地で過ごす楽しみの一つでした。ポニーや馬たちの世話もしましたし、時には3~5歳くらいのお孫さんたちが遊びに来て、ガーデンに一緒に行ったり、パドックから出かけたりもしました。このような形で、私たちは、およそ10日間ニュージーランドのカントリーライフを満喫しました。


こうして美しいファームの中で過ごすファームステイができたのは、素晴らしい体験でした。昼の景色はもちろん、夜も美しく、数えきれないほどの星と天の川が輝く空…まるで夢の中にいるようでした。
というわけで、手付かずの自然やフレンドリーな人々、美しいガーデンを訪れたいのなら、ニュージーランドはまさにぴったりの場所です。このファームでは最短で2泊から泊まることができます。ちなみに、私たちがしたような農場の手伝いは必須ではないので、心配しなくても大丈夫ですよ。
Paua Bay Farmstay
https://www.pauabayfarmstay.co.nz/
さて、次回はニュージーランド滞在中に訪れた素敵なガーデンをご紹介したいと思います。
●ガーデンアドベンチャー in ニュージーランド! Part2
Credit

写真・ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
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