植物を育成するメンテナンスとディスプレイデザイン、両方の立場から緑化の提案を行い、想いやストーリーを感じられる、花と緑の空間づくりを目指す。
https://www.park-ers.com/
日常に緑ある豊かさと公園のような心地よさを提案しているparkERsが、観葉植物を日本の四季のある暮らしに取り入れ、新しい植物の楽しみ方をご紹介するこの連載。今回は、parkERsの田村未和さんに、香り文化の起源や、自然の恵としての香りと人との関わりなどについて語っていただきました。
目次
懐かしいと思う香りはありますか?
朝のお味噌汁の香り、昔付き合っていた恋人の香水の香り、おばあちゃんの家の香り…
ふとした瞬間に香りを感じ、記憶の扉が開く時があります。
香りは脳まで伝わる速度が0.2秒、痛みが伝わるよりも早く、脳へ届くとされています。
それほど、香りは私たちの「記憶」と結びついているのです。
そして私たちが扱う香りには、人と植物の結びつきを意味しています。
人類は、火を手に入れることによって、香りと出逢ったと考えられています。
香りの英訳「Perfume」は「Per(throught)+fume(煙)」=「煙を通して」を意味します。
人類はこの香りに神秘的な力を感じたに違いありません。現に香りは祈りと一体となり、宗教的な儀式に結びついて使用されました。
紀元前3,000年頃、古代メソポタミア時代には、すでに乳香(カンラン科の樹木から分泌される樹脂で香料の原料)が祭壇で焚かれ、粘土板にはその輸入の記録とともに、サイプレスやシダーウッド、カラムス、没薬などその他の香料素材の名前も記録されています。つまり、植物の香りを生活の中に取り入れた芳香文化のルーツは、文明発生期のメソポタミア時代にまで遡ることができるのです。
日本では飛鳥時代、お香が仏教と共に中国から伝わってきます。これが日本の香り文化の源流となりました。
時を経て平安朝の貴族たちによって香りは生活文化へとより密接に変化します。部屋・衣類へ香りを焚きしめたり、菖蒲湯や柚子湯など暦行事にも香りは欠かせない要素となり、「暦・四季の変化」を香りで楽しむようになりました。さらに、香りを芸術として鑑賞する香道という独自の芸術世界へと昇華させ、その風雅な精神性とともに香り文化を伝承してきました。
このように、香りは人間の生活習慣や文化の成熟と共に進化していきました。
しかし現代では、文明の発展とともに人の生活は人工物に囲まれることが多くなり、いつしか人と植物の間に大きな距離が生まれています。
特に都会の日常からは、自然が生んでいたいくつもの香りが消えていってしまったのです。
夏場の蒸された土の香りはアスファルトの香りへと変化し、
春夏秋冬を知らせる自然の暦としての香りは消え、
踏んだ草木の移り香が服につくこともなくなったように感じます。
そこで私たちは、再び香りある日常を届けるために、オリジナルアロマを開発しました。
私たちは、日常に公園のここちよさを…という思いのもとに植物や什器・家具制作、内装設計等の空間設計を行っています。香りもまた、お客様が過ごす空間づくりの一部になると考えています。
私たちのオリジナルアロマは、parkERsのコンセプトに沿って、公園という場所をイメージしました。一日の中で変化する公園の情景…、その公園の香りの先には、植物たちと共に過ごす私たちがいます。
それでは私たちのオリジナルアロマ「parkERs aroma」をご紹介しましょう。
まだ夜の冷たさが残る公園の一角。
空からうっすらと光が差し、しっとりと濡れた草木の気配を感じて目を覚まします。
植物たちは朝露をまとって気持ちよさそうにそよいでいるようです。
深呼吸して、神経を研ぎ澄ませて。一日が始まる時間。
高く広がる青空、公園は昼を過ぎて賑やかな顔を見せます。
樹木の枝葉の間から差し込むやわらかい太陽の光、葉と葉が繊細な影を織りなし、葉音が耳に心地よく感じられます。太陽を一身に浴びて、キラキラと輝きに満ちた植物たち。
心のエネルギーを充電して、力を込めて挑む時間。
日が陰り始め、公園の草木もゆっくりと夜のシルエットへと姿を変えます。
冷えた土の香り、厚い樹皮に落ちる葉陰、しっとりと落ち着いた空気が漂って、植物たちは日を見送って優雅で穏やかな表情へと変化します。
心と身体をゆるめて、自分時間へ。
「自然の香り」とはどんなものなのでしょうか。
木は人間よりもはるかに長生きです。大地に根を張り何千万、何万年…生き延びるために、植物には有効な免疫が備わっています。
精油といわれる、植物から抽出された香りは、そんな植物の力を濃縮したものといえます。
香道において、香木の香りを嗅ぎ分けることを「聞く」(「利く」)といい、香道は「聞香」といわれます。“香りを聞く”ことは、つねに香りを嗅ぎ分けることから始まり、感覚を呼び起こすことで終わります。
ですが私たちは、香りを「聞く」(「利く」)ことは、「自然の声を聴く」ことへ通ずると考えています。
parkERsは、香りの専門家でもなければ、アロマセラピーを行っているわけでもありません。
私たちが伝える香りとは、香りが「自然の恵み」であることを謳い続けること。
そして、その「自然の恵み」をライフスタイルに組み込んで、お客様へお届けします。
一般社団法人プラスアロマ協会の代表理事をされているアロマ調香デザイナー斎藤智子さん。
parkERsが提案するオリジナルアロマ「parkERs aroma」は、齋藤智子さんとのコラボレーションで実現しました。
京都で10代続く家の長女として生まれ、幼い頃より伝統的な香り文化に親しみ、独立後はアロマ調香デザインのメゾットを確立し、企業や美術館、コンサート等でもアロマ空間演出として、国内外での香りプロデュースを手がけています。
「本物の薫りだけが、人の心を動かす」
植物の素材や天然精油にこだわり、自然本来の魅力を香りで表現することで、植物と香りの新しい可能性を生み出しています。そして何より、楽しそうに香りの在り方を語る斎藤さんに私たちも魅了され続けています。
田村未和(Miwa Tamura)
美術大学を卒業後、アーティストのもとで生花(切り花、生け込み、プリザーブドフラワー)を学ぶ。その後、parkERsのメンテナンス業を経てプランツコーディネーターになる。
植物を育成するメンテナンスとディスプレイデザイン、両方の立場から緑化の提案を行い、想いやストーリーを感じられる、花と緑の空間づくりを目指す。
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