旬の果実を採れたてで味わうことができるのも、ガーデニングの楽しみの一つです。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんは、この時期しか味わえない美味しいサマーフルーツが実る風景を眺め、味わって夏を実感するといいます。ここでは、日本でも馴染みがある種類から、ちょっと珍しいものまで、ドイツの夏に実る代表的なベリー類6種をご紹介します。

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ドイツの夏の楽しみ
サマーフルーツ

サマーフルーツ
© StockFood / Krieg, Roland

年に一度、私の夏の一番の楽しみは、ドイツの実家に帰ることです。南ドイツにある家は、美しい小さなひなびた村と可愛らしい川のすぐ近くにあり、たくさんの木々や緑の野原に囲まれています。空港から家に帰る道すがら、いくつも通り過ぎるのが、農場の前に出された看板。これらは、果樹園でサマーフルーツを摘み取る準備ができたということを示すものです。5月だったらイチゴを摘むことができますし、夏ならチェリーなどの季節。チェリーには甘いチェリーとサワーチェリーのバリエーションがあり、サワーチェリーはジャムやマーマレードにぴったりで、甘いチェリーならそのまま食べたりケーキに入れたりして味わいます。

・ドイツのチェリーの記事はこちら

また、1種類のフルーツだけでなく、たくさんのリンゴや洋ナシ、プラム、チェリー、ナッツ、そしてもちろん種類豊富なベリー類などが実る、素敵な果樹園を持っているところもあります。このような果樹園を訪れたり、自宅のガーデンで育てたりしてサマーフルーツの収穫をするのが、ドイツの夏の大きな楽しみです。

夏に実るベリー類

サマーベリー
レッドカラントにラズベリー、ブルーベリー、グースベリーなど夏のベリーをテーブルに並べて。

ドイツでサマーフルーツとされるものには、洋ナシやチェリーなどたくさんの種類がありますが、ここでは夏に実るベリー類をピックアップ。ベリー類には育てやすいものが多く、自宅でラズベリーやブルーベリーを栽培している人も多いのではないでしょうか。夏のベリー類には、グースベリーやブラックベリー、ラズベリー、それにカシスと呼ばれるものなどがありますが、これらの中から私がよく食べるものを6種ご紹介します。

カシス(Schwarze Johannisbeeren)

カシスはフランス語で、英語圏ではブラックカラント、赤いものならレッドカラントなどと呼ばれます。ドイツでは大抵どこの農場にも植えてある果樹です。栽培がとても簡単で、枯れることはほとんどありません。比較的コンパクトに育つ低木で、ドイツの気候では1.3mほどの高さに収まります。時にスタンダード仕立てにしている農場もあり、そうすればさらに省スペースで栽培することができます。品種によって収穫期は異なりますが、6~8月頃、ブドウよりもずっと小さな房状に実をつけます。

大人も子どもも、栽培が簡単で、ちょっと摘んで食べても美味しいカシスが大好き。美味しい実をたくさん実らせるには、2種類以上の異なる品種のカシスの木を隣に植えて交配させましょう。黒や赤、白いカシスなどがありますが、個人的には黒いカシスが一番甘く感じられます。もっとも、日本の友人たちにカシスをすすめてみると、大抵「酸っぱい!」というような反応が返ってきます。カシスはそのまま食べるとあまり甘くなく、かすかな苦みも感じられるフルーツなのです。

グースベリー(Stachelbeere)

グーズベリー

グースベリーの実は緑色で小さな卵形。濃い紫色をしていることもあります。小さなトゲがある低木に実り、Stachelbeereというドイツ語の名前は、トゲのあるベリーを意味しています。そのため、収穫はちょっと大変。トゲがあるだけでなく、果実や葉にも細かな毛が生えています。ドイツでは、そのまま食べるよりも、マーマレードにしたりフルーツケーキに入れたりして楽しむことの多いベリーです。

ブラックベリー(Brombeere)

ブラックベリー

ブラックベリーは、春には可愛らしい白い花を咲かせる、とても成長の速いベリー。トレリスを用意したり、壁やフェンス沿いに植えて誘引して育てます。乾燥に強く、日当たりのよい場所を好みます。シロップやマーマレード作りにぴったりのサマーフルーツです。

ここで、私の経験したちょっとしたハプニングをお話ししましょう。ブラックベリーを栽培する際、うっかりよく繁殖する品種をガーデンに地植えにしてしまったのです。その結果、庭のあらゆるところからブラックベリーが顔を出し、排除するのがとても大変でした。ガーデンショップで苗を購入するときは、生育が旺盛すぎる品種でないか、よくよく確認しておくことが大切ですね。庭を侵略されないようにするには、コンテナや大きな植木鉢で栽培するのがベストです。

ラズベリー(Himbeere)

ラズベリーは、品種も豊富で、早生のものは7月から収穫でき、晩生種は9月まで実をつけます。ガーデンセンターでも、樹形やサイズが異なる品種が、品揃えがよいと10種ほど並んでいることがあります。

ラズベリーは私の一番お気に入りのベリー。ドイツに到着して空港から出たら、まず初めに立ち寄るガーデンは私のベリーガーデンで、このガーデンの多くを占めるのがラズベリーです。バリエーション豊富に育てているので、日々色づく実を7月から9月まで楽しむことができます。このガーデンでは午後になると、ラズベリーの周囲や花の中をたくさんの蜂が行き交い、あたりは少しばかり騒々しくなります。そんなわけで、人間の私にとっては、ラズベリーを収穫するなら朝方が一番安全。ドイツでは朝は気温が低いため、蜂もまだほとんどいないのです。ラズベリーは日もちしないため、摘んだらすぐに口に入れるか、冷蔵庫へ、もしくは冷凍庫に入れておくのがオススメです。

ラズベリー

ラズベリーはドイツの夏に欠かせないサマーフルーツ。バニラアイスに温かいラズベリーソースを添えたものは、ドイツのGELATERIA(アイスクリームショップ)の定番メニュー。ずっと昔にアイスクリーム屋さんに買いに行った頃から変わっていません。ラズベリーケーキにホイップクリームを添えたものは、PATISSERIE(ケーキ屋)には欠かせません。

子どもの頃、家にあったガーデンでは、ほとんど手をかけていないにもかかわらず、ラズベリーが旺盛に育っていました。私の母の一番好きなベリーもラズベリーだったので、母のために少しベリーを摘んでいくと、いつも嬉しそうに笑ってくれたものです。

ブルーベリー(Heidelbeere、Blaubeere)

ブルーベリーは育てやすく、コンテナ栽培に最適のベリー。酸性の土壌を好むので、ブルーベリー専用の培養土を使って栽培します。収穫量を多くするためには、2品種以上を隣り合うように植えましょう。深い青色の実は見た目も美しく、もちろん味もグッド。でも、果汁が洋服につくとシミになってしまうのが難点です。ブルーベリーを食べた後は、歯も舌も指先も青色に。もし指先で実をつぶしてしまったら、あちこちが青く染まってしまいます。

ブルーベリー

ブルーベリーといえば、一度家から離れた場所にある農場で、パン作りのワークショップに参加した思い出がよみがえります。このワークショップの最中に、突然参加者たちがどこかに行ってしまったかと思えば、たくさんのブルーベリーを採って戻ってきたことがあります。農場の人たちが収穫されたブルーベリーを計量して、その重さに応じた料金が支払われたので、農家にとっても参加者にとってもよい買い物になりました。じつは私もブルーベリー畑に駆けていった一人なのですが、その畑は本当に広く、自動灌水装置が付いた黒いコンテナに、何百本ものブルーベリーが育っていました。そこではほんの短い時間で、持っていた小さなバケツいっぱいになるほど収穫できたのです。このブルーベリー畑の何が素晴らしかったかといえば、その農場の心地よさ。森に隣接する農地は南向きの斜面にあり、周囲ではたくさんの鳥たちがさえずって、まるでベリーの天国のよう。とてもリラックスできる場所でした。

西洋ニワトコ(Holunderbeere)

初夏に咲くクリーム色の花も愛らしい。

西洋ニワトコは比較的大きく育つ小高木で、実家のある地域では森や野原で非常によく見られる木です。実は黒色、熟しても生では食べることができません。学名のSambucus nigraは、この黒い実に由来する名前です。西洋ニワトコの実でシロップを作ると、美しい、ほとんど真っ黒なシロップができます。実を絞った果汁と砂糖を使って、透き通るようなジャムを作ることも多いです。西洋ニワトコのシロップやジュースにはやや苦みがあるので、好みが分かれる味かもしれません。

この木は「生命の木(tree of the life)」とも呼ばれ、かつては不思議な力が宿ると信じられていました。実際、他に何も実らないようなときでも実をつけて、人々や動物たちに食べるものを与えてくれるのです。また、この実にはビタミンAが豊富に含まれています。私は、大きな房状に咲くクリームホワイトの花も大好き。見ているだけでも美しいのですが、じつは花も食べることができ、薄いパンケーキ生地につけて焼き、天ぷらのように調理します。焼き上がったらパウダーシュガーを掛けて、まだ熱いうちにサクサクのものをいただきましょう。花の咲く5月にしか味わうことのできない、忘れられない季節の味です。

Credit


ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood, Stockfood

取材/3and garden 

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