ガーデニングは生き物と自然が相手。植物の育て方や庭づくりには人それぞれにいろいろなやり方があり、セオリーも正解も一つではありません。晴れの日もあれば雨の日もあり、期待通りに育つこともあれば、手をかけたのにうまくいかないこともあります。だからこそガーデニングは面白い。人生もまた同じ。ガーデニングとそれにまつわるお悩みに、園芸&人生経験豊富なマエストロGがお答えします。今回は、トマトの栽培方法を巡る夫婦げんかのお悩み。「それ、違うんだけどなぁ…」という主張をしてくる人にも応用できる回答です。
目次
お悩み「トマトの脇芽を摘むなと言う妻。その屁理屈が腹立たしい!」
トマトの脇芽摘みについて、妻が「せっかく伸びた芽を、そんなに摘まないでよ」と言ってきます。
僕が「トマトは脇芽摘みをして一本立ちにしないと、一つひとつの実が小さくなってしまう。だから、脇芽摘みをするんだよ」と説明しても、「あなたが摘んでいるのは芽じゃない。もう大きく育っているんだから摘んじゃダメ!」と、全く見当違いの反論をしてきます。
確かに、トマトの脇芽はつい見落としがちだし、1週間ほどで芽というよりは立派な側枝になってしまいます。だけど、そういう場合でも、脇芽はやはり摘み取らなくてはいけないんですよね?
だいたい、僕は何年も前から、毎年そうやって美味しいトマトを栽培していて、彼女はいつも「うちのトマトは最高に美味しいわね!」と、まるで自分が栽培したかのように言い、満足げに食べてきたのです。
妻はいつもそんな調子で、自分は脇芽摘みなんか一度もしたことがないくせに、急に横から僕のやり方に異論を唱えてくることに、本当に腹が立ってなりません。どうしたら妻の屁理屈を封じ込め、黙らせることができるでしょうか?
お答え「まずは忍法をいくつか伝授します」
それは、さぞかし腹が立つことでしょう。お気持ちはよく分かります。
けれども、奥さんを黙らせる必要はありません。言わせておけばよいのです。好きなだけ言わせておいて、あなたはそれを「ふん、ふん」とか「あー、ハイハイ」とか言いながら聞き流しておけばよいのです。
これを「忍法・聞き流しの術」といいます。夫婦円満に家庭生活を営んでいくためには、夫たる者はこのような忍法をいくつか心得ておかなければならないのです。
で、実際にはどうしたらいいかですが、あなたはこれからはぜひ、早朝、一人で菜園に足を運ぶようにしましょう。そしてトマトの脇芽を見つけたら、迷うことなく速やかに摘み取ってしまいましょう。
もちろん、そのことを奥さんには報告しません。黙って、何食わぬ顔をしていればよいのです。
やがて季節は移り、大きくて真っ赤な、見事なトマトがたくさん実ることでしょう。
すると奥さんは、きっとまた「うちのトマトは最高に美味しいわね!」と、まるで自分が栽培したかのように言うことでしょう。
あなたはそんな奥さんを見て、ただ静かに笑っていればよいのです。これを「忍法・微笑みの術」といいます。
「原理原則を押しつければ破綻するだけ」
あなたが言うように、トマトの脇芽は放置しておくと側枝として成長し、そこにも花を咲かせるので、小さなトマトしか実らなくなってしまう。だから、脇芽は摘み取らなければいけないというのは、まったくその通り。トマト栽培の原理原則です。
けれども、そういう原理原則をあまりにも強硬に主張し、無理矢理相手に押しつけて屈服させ、黙らせようとすると、夫婦やカップルの関係は必ず破綻します。
ですから、原理原則を一応は主張するけれど、これ以上の説得は無理だと判断したら、主張するのをあっさりとやめてしまうほうがよいのです。
山登りのときも、途中で天候が悪化したら、山頂は諦めて引き返す勇気を持たなくてはなりません。それと同じです。
「奥さんの屁理屈は可愛い小鳥のさえずり」です
じつは、私の妻もあなたの奥さんと同じタイプで、私がカブや大根の間引きを始めると、必ず「やめて! 可哀想じゃないの」と言います。
私も、せっかく頑張って芽を出した幼い苗を引き抜くのは心が痛むし、苦手な作業なのですが、しかしカブはある程度間引いて株間を十分に空けないと大きく育たないし、大根もなるべく生育のよい苗だけを残して一本立ちにしないと、立派な大根が採れないのです。
私は妻にそのことを何度も説明しました。しかし、妻はいまだにそれを理解しようとしません。
で、私が間引いた小さな苗を、菜園のとんでもない場所に移植したりするのです。育つわけがないのに。まあ、要するに、ちょっとケチなんですね。
ちなみに、妻は自分で野菜のタネ播きをしたことなど一度もないし、菜園の雑草取りもほとんどしません。
それなのに、カブや大根が見事にできると、「うちの野菜は採りたてだから本当に美味しいのよね」なんて、ご近所の人に自慢したりするのです。もう、笑っちゃうしかないじゃありませんか。
あなたもトマトの脇芽のことぐらいで、奥さんと言い争ったりしてはいけません。奥さんが唱える異論や屁理屈は、可愛い小鳥のさえずりだと思うようにしましょう。
賢く、優しい夫になって、奥さんといつまでも仲良く幸せに暮らしてください。
Credit
文/マエストロG
園芸&人生経験豊富なガーデンマエストロ。ガーデニングに限らず、心配ごとやお悩み、理不尽・不合理への対処方法を、ときに辛口に、ときにユーモアを交え真摯にお答えします。
Photo&Illustration/ 1,7)miniwide/ 2,3,6,9)autumnn/ 4) ArtCookStudio/ 5)encierro/ 8)tamu1500/Shutterstock.com
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