国土交通省が、地域の活性化と庭園文化の普及を図るために創設したガーデンツーリズム登録制度。令和元年5月30日に第一回目となる、その登録証を交付された注目のスポット「北海道ガーデン街道」は。十勝~富良野~大雪を結ぶ全長250キロの花の道を巡り、8カ所もの美しい庭に癒やされるという新しい取り組みです。その8つのガーデンの一つ「上野ファーム」のガーデナー、上野砂由紀さんに第2回の今回も4つのガーデンの見どころをご案内いただきます。
目次
個性的なガーデンが集まる「北海道ガーデン街道」
北海道には、たくさんの観光庭園や花の名所がありますが、中でも、上野ファームも活動に参加している”十勝~富良野~大雪を結ぶ全長250キロの花の道「北海道ガーデン街道」”は2019年、ついに活動10周年を迎えます。
バラや宿根草が生き生きと育つ豊かな植生や広大な風景、昆虫や動物たちとも触れ合えるスポットや、多彩なガーデンデザインのバリエーション……。年々魅力が増す8つのガーデンのうち、前回は「大雪 森のガーデン」、「風のガーデン」、「十勝千年の森」、「十勝ヒルズ」の4つのガーデンをご案内しましたが、今回はさらに「真鍋庭園」、「紫竹ガーデン」、「六花の森」、「上野ファーム」の4つのガーデンをご案内したいと思います。
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「真鍋庭園」
北海道ガーデン街道の庭の歴史の中で、もっとも古くから庭づくりをしているのが「真鍋庭園」です。日本初のコニファーガーデンとして始まり、今では広大な敷地25,000坪の中に日本庭園、西洋風庭園、風景式庭園があります。真鍋さんは樹木の生産でもとても有名な方で、このガーデンはそういった樹木の見本園として公開されています。私が初めて伺ったときに、とにかく驚いたのは、今まで見たこともない樹木がこんなにも多種あるということでした。花よりも樹木のほうが多く、木の面白さを改めて感じさせてくれる庭園です。「真鍋庭園」で見た美しい樹木は、上野ファームの庭の木を選ぶ時にもとても参考にさせてもらい、アドバイスもいただいています。木のことなら何でも「真鍋庭園」です!
木の葉の色や形の変化で、ここまで美しい風景をつくり出せることに、とにかく感動! 歩いていると、途中エゾリスに出会えるのも嬉しいところです。犬と一緒に入園できるので、毎朝散歩に来る人も多いそう。こんな森の中を毎日歩けたら、本当に幸せですね。
左右対称に葉の色が違う樹木を配置した、とても斬新なデザインのガーデンもあります。まだ秋でもないのに紅葉したように美しい樹木多く、カラーリーフで楽しむ木の選び方の参考にもなります。もちろん低木もたくさん扱っているので、広い庭から狭い庭まで、たくさんのヒントがここにはあります。
美しい紅葉シーズンの9月、10月もオススメです。こんなに見事な紅葉を見られる場所はなかなかありません。葉の色も形もさまざまで、紅葉した葉を集めるだけでも楽しいです。
ガーデン=花というイメージもあるかと思いますが、庭の骨格ともなる樹木は庭づくりの重要な存在です。そのすべてが分かる「真鍋庭園」で、木の魅力を発見してみてはいかがでしょう。
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「紫竹ガーデン」
北海道の観光ガーデンのパイオニア的存在が、「紫竹ガーデン」です。北海道を花畑にしたいという紫竹昭葉さんの思いが詰まった、チャーミングなガーデンです。チューリップのシーズンも人気が高く、いつも世界中からお客様がやってきます。紫竹ガーデンを訪れるお客様は皆さん、花を見るだけでなく、この庭をつくりあげた紫竹昭葉さんに会いにやってきます。花よりも会いたい人がいるガーデンは、ここだけではないかと思います。皆さんは尊敬の気持ちを込めて「紫竹のおばあちゃん」と呼んでいるんですよ。18,000坪のガーデンには2,500品種の花たちが植えられていて、まるで壮大な野原のような美しさです。「一日中、花と遊んでいたい」と話している紫竹さんの思いが、この庭いっぱいに溢れている気がします。
どこまでもつづく宿根草ボーダー。ガーデン全体が花で遊ぶような雰囲気で、華やかに、伸びやかに、自由に植栽されています。紫竹さんに会うために海外から訪れるファンもたくさん。「言葉も違うお客様とどうやってコミュニケーション取るのですか?」と尋ねたところ、「歌を歌うの!」と教えてくれました。たとえ言葉が分からなくても、その国で親しまれている国の歌をワンフレーズ歌えば、すぐに仲良くなれると。素晴らしいおもてなしの心ですよね。紫竹さんの生き方は、そのまま庭づくりにも表れ、本当にいろんなことを教えられます。
紫竹ガーデンで今大人気なのが、ボリュームいっぱいの朝食! 写真は秋のメニューです。ランチやスイーツを楽しめる時間帯も人気なのですが、何よりも魅力なのが、紫竹さんと一緒にいただく朝ご飯。北海道を感じるボリュームいっぱいの朝ご飯からガーデン散策がスタートするなんて素敵ですね。
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「六花の森」
全国的にも知られている北海道を代表するお菓子屋さん「六花亭」が手がける、美しい北国の野草の庭が、幕別町にある「六花の森」です。六花亭といえば、特徴ある植物が描かれた包装紙を思い浮かべる方も多いと思います。あの包装紙に描かれているのは、十勝六花と呼ばれる十勝を代表する野草たちです。その植物たちをいっぱいに植えている山野草の森は、美しい小川が流れ、エゾリュウキンカやオオバナノエンレイソウ、ハマナシ(ハマナス)などが群生しています。
自然風な庭の雰囲気も素敵ですが、もちろん六花亭のお菓子も買えますし、その包装紙を手掛けた山岳画家、坂本直行氏の絵を一面に展示したギャラリーなどもあり、花のファンだけでなく、アートもあわせて楽しめるガーデンです。植物を愛し、十勝を愛し、自然を愛する六花亭ならではの素晴らしいこの森に点在するギャラリーは、クロアチアの古民家を移築した、こだわりのある建物。
秋になるとリンドウが咲き始めて、静かなガーデンはさらに味わい深くなっていきます。北海道の代表的なお菓子をお土産に、北国ならではの野草の庭を、ぜひ楽しんでください。
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「上野ファーム」
最後は私がガーデナーを務める「上野ファーム」をご紹介します。「上野ファーム」も昨年たくさんの植物の入れ替えをしたので、今年はまた今までにない雰囲気の場面をご覧いただけます。宿根草は同じ場所で、同じ季節に咲く植物ですが、その年の気候や雨量などによっても変化して、毎年同じ庭になることはありません。季節が移るにつれ、魔法のように雰囲気を変えるデザインを日々心掛けて、毎年植え替えをしたり、新しい植物の栽培にも挑戦しています。
7月になると背丈を超えるくらい迫力ある植物たちが、庭を彩ります。2mを超すアンジェリカやエゾクガイソウ、フィリペンデュラ……。足元で咲く小さな花から、見上げるような大きな植物まで。植物を見ることが楽しいと思っていただけるよう、いつも個性ある植物を選んでいます。
上野ファームの四季のガーデンの魅力は、こちらでもご紹介しています。
以上、「北海道ガーデン街道」の8つのガーデンのうち、4つをご案内しました。北海道地域は、本当に素晴らしい庭園がたくさんあります。こんなにも庭が集中している地域は珍しいと思います。観光庭園や個人の美しいオープンガーデン、また自然の花たち、すべての植物たちが、魅力ある北海道をつくっています。北海道の庭めぐり、ぜひ、たくさんの方にお越しいただきたいと思います。
10周年記念のスペシャル企画開催
2019年の「北海道ガーデン街道」は、活動10周年を記念して、今までにないスペシャル企画がスタートしています。ガーデン街道の4つのガーデンがお得に回れるチケットをご購入いただくと、オリジナルのワイルドフラワーのタネをプレゼント! さらにそのタネ袋を関係施設、ガーデンで見せると、何といろんなプレゼントや割引が受けられるという、”特典付き種袋”です。
さらに、北海道ガーデン街道の8つのガーデンをすべて回ってスタンプを集めると、10周年特別記念クリアファイルを最後に訪れたガーデンでプレゼントしています。
10年の歩みの中で、私たちガーデナーもより素晴らしいガーデンになるよう、切磋琢磨してきました。スタート時とはさらに雰囲気を変えて、どのガーデンも素晴らしい仕上がりの10年目。昨年2018年は、台風の直撃や震災などもあり、北海道全体が肩を落とす年となりましたが、これからがベストシーズンの北海道に、ぜひ遊びにいらしてください。花たちと一緒にお待ちしております‼
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