「縄文時代の“自然との共生”本能を現代に…」植物の文化を運ぶ plants culture caravan vol.6

日常に豊かさと公園のような心地よさを提案しているparkERsが、観葉植物を日本の四季のある暮らしに取り入れる新しい植物の楽しみ方をご紹介。日本の文化には移り変わる季節に合わせた行事や習わしがたくさんあり、それらを大切にして暮らしてきました。慌ただしい毎日に、その時々の旬の花や自然の情景を取り込んで、日本人らしく植物と生きる考え方を未来へ運びます。

人はいつから植物を育てているのか?



現代の私たちは、タネを播いたり、枝を切るなどして、当たり前のように植物を育てていますが、人間はいつから植物を育てることを始めたのでしょうか。
約1万5千年前、氷河期が終わり、温暖化によって植物が生い茂って森が出現した縄文時代、人類は栗を植えて収穫していたといわれています。もしかすると、それが始まりかもしれません。
目的は、生きるための食料として、そして時代が移るにつれて園芸文化も生まれ、観賞のための植物育成が進み…。今私たちは時代を経て培われた先人の知恵や経験を受け継いで、植物とともに暮らしています。
さらに縄文時代の人々は、土器や釣り針にもこだわりを持ち、個性的な形や機能性を追求した道具を生み出していたそう。それを知ると、プランターに植物を植えたり、鋏を持って植物と向き合う現代の私たちと通ずるところがあります。そして、改めて祖先との繋がりを感じます。
自然と共生する本能を“自然に触れる”ことで研ぎ澄ます

縄文時代の人々は、例えば住居についても、雨風を受けない安全な場所を選び、土を掘って、木で柱を組み、樹皮やカヤで屋根を作っていました。彼らは私たちよりも自然に溶け込んで暮らし、野生の本能を研ぎ澄まし、循環と調和を身体で感じながら生きていたように思います。海と森の間に村を作り、そこには海と村と森とを結ぶ一本道があったそうです。海と森の繋がりなど、自然の生態系を本能的に知っていたのでしょうか。
また、縄文時代のファッションは、木や貝殻でできた大きなピアスや腕輪を身につけたり、布を赤く染めた紐で服に模様を描くなど、おしゃれに飾り立てるのが好きだったようです。
きっと私たちにも、当時の人々の野性的かつ繊細な美意識が受け継がれているのだと思います。
そんな自然とともに生きる本能を、日常から生命力あふれる樹に触れることで呼び起こしてみませんか。


掘り起こされた貝塚から感じること


縄文時代の貝塚が各地で発掘されており、「当時はゴミ捨て場のように使われていた場所」と説明されていることが多いですが、貝塚の中からは、食べた後の貝殻のほかに、大切にされていたと思われる土器や釣り針、さらには人の骨までもがきれいに並んで見つかっているそうです。縄文時代の人々にとって貝塚は単なるゴミ捨て場ではなく、すべての生物の命の再生を願う、祈りの場だったのではないでしょうか。
現代の私たちも、持続可能な循環を大切にする気持ちを忘れないように。そんな願いも込めて、私たちparkERsは空間作りを行っています。
約4億年前から活躍する“縁の下の力持ち”


さらに遡って約4億年前、植物が陸上に上がり根を土に張り巡らせ、太陽の光を直接浴びながら思いっきり光合成して成長し始めたころ、その動きに土の中で協力していた存在があります。それは、菌根菌です。菌根菌の多い土では、植物は病気にもなりにくく、根の張りもよく、丈夫に育ちます。菌根菌は、植物の養分を生み出し、土壌の環境を改良してくれて、一方で植物側も、光合成で得た養分を菌根菌に与えます。まさに共生をしていて、恋人のように支え合う関係なのです。
私たちparkERsは、植物を植えるときに使用する用土にも菌根菌を入れています。プランターの中でも植物と一緒に暮らし、小さな生態系を築いてくれています。数億年前の育みがここにもあり、人に見えないところでも微生物が休まず活動していて、植物を丈夫に育ててくれているのです。
いにしえの感覚を呼び起こし、自然と生きる豊かな日々を…



現代の私たちの暮らしに必要なコトが、もしかしたら、はるかいにしえの縄文時代に置き去りになっているのかもしれません。
言葉の始まりでもあったこの時代、顔のパーツを“め”、“はな”、“は”と発したのも、植物の“芽”、“花”、“葉”に見立てて、同じ発声の言葉が生まれたといわれています。当時の人々は、常に植物を身近に感じ、自然の変化に気づき、自然に感謝しながら生きていたからではないでしょうか。
植物を育て始めた時代から、人の暮らしや文化が大きく変動し続けるなかで、今も変わらず、私たちは植物を育て愛でています。自然と共生していた縄文時代の人々の生活を知ると、なんとなく温もりを感じます。現代に生きる私たちも、いにしえの感覚を呼び起こし、自分も自然の一部だと感じることで、より一層豊かな日々を過ごせるのかもしれません。
今月の植木屋:芦沢プランオブガーデンの“自然と生きる職人”


植物の状態を一目で判断する鋭い直観と熟練した手さばきで、植物を生き生きと育てているのは、爽やかなブルーにペイントしたユニック車を巧みに扱い、身軽に動く芦沢プランオブガーデンの芦沢さん。
高い場所や狭い場所の植物も器用に剪定したあと、アジサイやヤシの皮などをオフィスに吊るしてドライにするほど、植物が朽ちるまでの美しさを知っている人です。
芦沢天気予報はだいたい当たり、雨で施工できない日は、気持ちを切り替えて海へ行って波を楽しむ。全身で地球を感じて生きている姿がうらやましく、だからこそ信頼できる植木屋さんなのです。
芦沢プランオブガーデン
東京都武蔵野市の植木屋。造園全般からアパレルのデイスプレイまで幅広く植物の施工を手掛けています。
併せて読みたい
・「室内にも水と植物の織りなす風景を」〜植物の文化を運ぶplants culture caravan vol.5
・「植物と人が共に過ごす時間づくり」〜植物の文化を運ぶplants culture caravan vol.4
・観葉植物生産者がオススメする、花がなくても楽しめるラン6選
Credit

児玉絵実(kodama emi)
パーカーズ。プランツコーディネーター。
農学部を卒業後、切り花や造園、観葉植物、生産とあらゆる角度から植物に携わる経験を経て、現在室内から外構まで植物に関する幅広いプラン、デザインを担当。
植物と人との関係を園芸療法士の立場からもご提案し、「人と植物が気持ちよく生活できる空間」をご提供するために、企画から施工までお客様にとってベストな植物選びを心がけています。

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