季節の花が次々と咲くガーデンは、写真撮影も楽しい場所です。咲いているそのままの風景を撮るのも素敵ですが、自分の庭なら、咲いている花を切って集めて撮影すると、まさにインスタ映えの写真が撮れます。また、撮り方を工夫し、見直す体験は、庭づくりのアイデアや発見に役立つこともあります。北海道旭川の「上野ファーム」のガーデナー、上野砂由紀さんが実践しているオリジナルの写真撮影の楽しみ方をご紹介します。
目次
美しく記録を残すガーデン写真
ガーデナーにとって、庭の記録はとても大切です。数千種類の植物を扱うようになると、頭では覚えきれなくなってきます。そんな時役に立つのは、やはり写真です。どんなに頭で記憶しようと努力しても、あいまいにしか覚えていないこともたくさん。いつ、どんな時、どんな色の、どんな形の花がそこで咲いていたか。過去の写真を振り返れば一目瞭然で分かります。
数年分の記録写真があれば、庭の変化も手に取るように分かります。これから雪に閉ざされる北海道の長い冬の間は、蓄積した写真データを見返す絶好のチャンスです。上野ファームの1年間の記録写真は、1万枚を超えることもよくあります。私の場合は、すべての季節の写真を見ながら、今年の反省点や改善箇所、新しい植栽デザインなどを振り返り、来シーズンの計画を念入りに立てていきます。
写真はただ記録のためにではなく、例えば、「このシーンがポストカードになるとしたら」などと想像しながら、最高の瞬間や美しいアングルを切り取る意識でシャッターを切っています。こうした姿勢で残している記録は、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSでも大活躍するので、やはり写真映えすることがとても重要です。
また、最高に美しいガーデンの瞬間を写真で残せるのは、ガーデナーだけ。一番いい光や、絶好の開花タイミングを選んで撮影できる環境にいるガーデナーは常に、写真のうまい下手にかかわらず、カメラを構えた瞬間は写真家であるべきだと思っています。
インスタ投稿でも人気の手法
同じ種類の植物全部盛り写真
植える植物の種類が増えてくると、自分の庭でどれくらいの種類が咲いているのか把握しきれない時があります。そんな時に便利なのは「同じ種類の植物全部盛り」の写真です。
花の部分だけを切り取って、1カ所に集めて撮るだけの簡単な方法ですが、集めるだけでいとも簡単に華やかな写真が撮影できます。どんな色合いでも組み合わせでも、花を集めるだけで絵になってしまうのは写真ならではのマジックです。フラワーアレンジのように、高さや組み合わせを気にすることもなく、アングルを気にする必要もなくて、真上から撮るだけでOK。写真が苦手な方も、きっとこれなら気軽に挑戦できると思います。
全部盛り写真のバリエーション
咲き方に特徴があるような花は、咲き方でグループにして撮ると、さらに分かりやすい資料になります。クリスマスローズの場合は、シングル、セミダブル、八重咲きをグループにしてみることで、それぞれの個性の比較写真としても、とても便利。自分だけの花カタログになります。
そんなにたくさん同じ種類の花がない場合は、その季節に庭で咲いていた花全部を並べてみるのもオススメです。こうして写真を撮っておけば、その時期にどんな花が咲いていたかがたった一枚の写真ですぐに分かります。
早春の花だけを集めてみると、優しい色の花がいっぱいあるということが、この写真を見てよく分かります。
芝生をキャンバスに
絵を描くように並べるのもオススメ
花の大きさなどが揃っている植物のグループは、一枚の絵を描くように、並べてみるのもアイデアです。すらりとした草姿が美しいスイセンは、茎がついたまま、そこにすべての種類が咲いているように並べると、どの花もくっきりと形が伝わる写真に(下写真)。並べて観察すると、似たような品種でも微妙な花びらのつき方の違いや、大きさや色の違いがよく分かります。額に飾れるような、とても可愛い写真になりました。
バラやクレマチスなど、表情や色が豊富な花のグループは、色別に分けても素敵です。カラーバリエーションがよく分かり、組み合わせを考える時にもイマジネーションが湧きやすくなります。さらにインスタグラムで紹介することを意識して、私の場合は正方形に収まるような並べ方も合わせて撮影しています。
素敵な写真が撮れたら、いろんな方に見てほしいなと思うのは誰もが思うことではないでしょうか、“インスタ映え”もこの方法なら、簡単に可愛く撮影できます。
同じ花を集めるだけでなく、その時期に咲いている同系色の植物だけを集めてグラデーションをつくる方法もオススメです。淡い色から濃い色へ並べるだけなので、それほど難しくなく、でもとても素敵に撮影ができます。この撮影方法は、色の組み合わせを考える訓練にもなるので、植栽デザインにも生かせます。
庭の植物選びにも重宝する
全部盛り記録写真
一輪の花それぞれがもつ特徴や美しさをしっかりと自分で把握しておくと、一瞬で忘れそうな名前も覚えることができました。私にとって、この撮影方法は、とても理にかなっていたため、ここ数年、品種が増えるたびに、こうして“全部盛り”写真を撮りためています。植物を選ぶ時、自分好みで、ついつい似たような品種を選んでしまうので、まだ育てたことがない新しいコレクションを増やすための参考としても、この撮影方法はとても重宝しています。
流れるようなしっぽが特徴の西洋オダマキは、正面の顔だけでなく、かわいい横向きもしっかり撮影。庭に育っている状態ではなかなか撮影できないアングルも、芝生の上に並べると思い通りに撮れます。
開花中の花は撮影後も
水鉢に浮かべて眺める
切った花は、せっかくなので撮影後も観賞したいものです。そんな時便利なのが「水鉢」。水を張ることができる器や鉢などがあると、撮影後もしばらく花を浮かべて楽しめます。全部盛り写真を撮るようになってから、素敵な水鉢を探すようになりました。
オススメの撮影場所は芝生の上
夏に大きな花を咲かせるホリホックとヘメロカリスも、並べて撮ると、咲いている状況では気がつかない、一輪一輪の表情と個性が見えてきます。
こうして、小さな花から立体感がある花まで、いろいろな花をいろいろな場所で撮影してきました。その結果分かったのが、ほどよく伸びた芝生の上が撮影にベストだということ。植物が転がらずにほどよく固定され、並べやすいことを発見。
花だけでなく葉も木の実も
インスタ映え写真になります
庭に花が少なるくなると、さびしい印象になりますが、花以外でも、タネや、葉、木の実などを並べてもとても素敵です。並べてみると美しいなぁ〜と思えるような、魅力的なものを探そうと思う気持ちを持つことは、新たな庭の魅力の発見につながることもあります。常に「美しいものを組み合わせたい」という感覚は、庭づくりにおいてもとても大切なものだと、このような写真を撮っているとよく思います。
西洋ニワトコやホウの実、ローズヒップなど、実が美しい秋も撮影したくなる素材はいっぱいあります。葉っぱと実をセットにして、生きた植物図鑑のような撮り方もオススメです。後から実だけを見ても、同じような形だと判別がつかなくなることもありますが、特徴的な葉が添えてあれば図鑑でも調べやすくなります。
このように、花や葉、実を集めて撮る楽しい“全部盛り”写真。ただ撮るだけでなく、SNS映えなど美しさを意識して、楽しみがら自分の庭の魅力のすべてを一枚の写真に収めてみてください。庭の大切な記録が、美しい記憶として、いつまでも残ると思います。
併せて読みたい
・上野ファームの庭便り「北国だからこそつくれる超簡単“雪あかり”」
・花好きさんの旅案内 シンガポール「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」
・芝生の庭をつくろう!実は簡単、芝生の張り方&お手入れ
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