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ガーデンセラピーを体験しながら学べる教室「花音」

ガーデンセラピーを体験しながら学べる教室「花音」

年齢とともに誰もが経験する、心身のちょっとした不調や違和感。そんなアンバランスな状態に振り回されないよう、植物を使って楽しみながら心身のバランスを整える方法を提案、実践しているガーデンセラピー教室「花音(かのん)」。自分で自分をケアできる、素敵な大人になるためのレッスンが女性たちの間で今、人気です。都内や県外からの受講者も少なくない、話題のアトリエを埼玉県熊谷市に訪ねました。

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植物から展開する、広がり豊かなレッスン

花音内装

緑の庭の先にある一軒家。その扉を開けた途端、出迎えてくれたのは清々しいハーブの香りでした。案内された一室は、陽光がたっぷり差し込み、窓の外にはユーカリやミモザが枝を伸ばす庭の景色が広がります。香りに包まれながら、ただ座っているだけで癒されそうなこの空間は、6年ほど前、堀久恵さんが自宅の一部をアトリエとして改造した場所。ここで毎月ガーデンセラピーの教室「花音」のレッスンが行われています。

現在行っているコースは「ハーブの活用レッスン」、「ガーデニング・ベーシックコース」、「アロマでセルフケア」。月1回(各全12回コース)、4名ずつの少人数制で、県外から通う熱心な生徒さんも少なくありません。

ボタニカルクラフト
ドライの花や実をフレームにレイアウトした植物標本クラフト。
ハーバリウム
光を透過し葉脈が浮き上がるハーバリウム。
多肉のリース
ガーデニング・ベーシックコースで作った多肉リース。

複数のコースがあるのは、堀さんの植物への興味の広がりがそうだったから。20歳でフラワーアレンジメントの仕事を始めて以来、育てること、植物の香り、食べる楽しみ、その効能へと、興味はどんどん広がり、知識も深まっていきました。

「なんでもやるんだねって言われることがあるんですが、私としては全部繋がっているから、ごく自然なんです。例えばアロマオイルは植物から採取されているわけですが、その効能は知っていても、実際にどんな植物か知らないという生徒さんも少なくないんです。でも、その植物がどんな風に育ったかによって、同じ植物から採取してもオイルの香りは違うし、実際に香りの成分にも違いが出ます。もちろん、フレッシュハーブの香りはまた違うし、育ててみて初めて発見することって、たくさんあるんですよ」。

ローズマリー

花音のレッスンで使うハーブはすべてオーガニック栽培されたもの。ガーデニングのレッスンでもオーガニックの苗を使い、無農薬栽培の方法も教えています。それは植物の成分をアロマや食物として身体に取り入れることを前提としているためでもありますが、堀さんは単に無農薬というだけでなく、植物が本来持つ力を引き出すための育て方にもこだわっています。

「ハーブはとても丈夫な植物なので、割と放任主義で草丈高く茂っているお庭をしばしば見かけますが、私の庭では伸ばしてもせいぜい30cmほど。こまめに切り戻ししながら育てると葉が常に柔らかく、味にも香りにも顕著に違いが出ます」。

自身の経験から実感した植物の癒しの力

ガーデンセラピー

堀さんが今、最も関心を寄せるのはガーデンセラピーという新しい分野です。30歳を過ぎ、中年以降になると多くの人が身体にそれまでとは違う変化を感じるようになります。眠れない、疲れが取れない、肌質や髪質が変わるというような微妙な変化。病気とはいえないけれど、心身に感じる違和感。そうした違和感を抱きながらも、家庭でも仕事場でも忙しいこの年代は、自身の身体に十分に向き合う余裕がなく、いつのまにか小さな無理を積み重ねて深刻な事態を招いてしまう場合が少なくありません。

ハーブティー

「ちょっとしたサインを見逃さずに、未病のうちに自分で自分をケアする術を持つことが、とても大切なんです。私自身、以前会社員時代に体調を崩して、長期間お休みしなくちゃいけない事態になってしまったことがあるんですが、それ以来、自分の身体の変化に気をつけて、少し疲れたかなと思ったらハーブティーを飲んだり、眠れないなという時にアロマを焚いたりして、自分でコントロールをするようにしています。そういう術を持っていると、身体の変化にむやみに不安にならずに済むし、実際、私はハーブを学んで日常的に暮らしに取り入れるようになってから、病院へ行くことがなくなりました」。

植物が人にもたらす力を実感したのは、自身のそうした経験に加えて、堀さんのお母さんを通してもその思いを強くしました。

「私の母はガンで60代で亡くなったんですが、ガンになったということが分かった時、50代でまだまだ若かったこともあり、すごく落ち込んでしまいまして。自分の人生はなんだったんだろう、これから好きなことをいっぱいやりたいと思っていたのにって」。

病気自体の身体へのダメージは薬や治療など科学的なアプローチがありますが、病気から生じる不安や焦燥感、無力感も決して小さくない苦しみです。

「ちょうどその頃、私が花音のアトリエを始め、植物を育てるための畑を借りて、母も畑を手伝ってくれるようになったんです。母はそれまで土に触るのを嫌がる人だったんですが、いろいろなハーブや野菜や花を育てていくうちに、母が病気を抱えながらもどんどん生き生きしていくのに驚きました。日の出とともに畑へ行って、植物の手入れをして、汗をかいて収穫して味わって。自分のやったことの成果が目に見えて分かる喜びが、植物を育てることで経験できて、それが母の生きる気力になっているのがよく分かりました」。

病気によって失いそうになった自尊心を、植物を育てることによって取り戻したお母さんの姿は、堀さんに自然がもたらす癒しの力を教えてくれました。

ガーデンセラピーは「緑の処方箋」

ガーデンセラピー

「こんな風に、植物に力を借りながら自分で自分を回復する術が、ガーデンセラピーだと思うんです。ちょっとした身体の不調やメンタルのコントロールまで、庭という身近な場所を起点にして、暮らしのいろいろなシーンに展開しながらケアできる。しかも楽しみながらできるのが、ガーデンセラピーの魅力です」。

ガーデンセラピーはいわば、「緑の処方箋」。

小さな違和感に不安を覚えたら、レッスンを受けてみては。あなただけの処方箋がきっと、見つかるはずですよ。

Information

花音(かのん)
https://kanongreen.com/
住所/埼玉県熊谷市拾六間(詳細の場所はレッスンにお申し込みの方へのみ、お伝えしています。

堀 久恵(ほり ひさえ)
花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピーなどを学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体をつくり健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭づくりを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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