秋から冬にかけて、よく食卓に登場する果物といえば、そうリンゴ。甘酸っぱいリンゴは、世界各地で愛されているフルーツです。それはドイツでも同じこと。秋にたっぷりと収穫し、冬の間中楽しむリンゴについて、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに伺います。

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ドイツの食卓に欠かせないリンゴの実

リンゴの木と実

今回お話ししたいテーマは、Apfel、リンゴ。みなさんは、リンゴというとどんな実を思い浮かべますか? 日本では、リンゴは真っ赤で大きな‘フジ’などが主流のようですが、ドイツでは、とてもたくさんのバラエティー豊かなリンゴが食べられています。赤いものだけでなく、黄色がかったものや緑色のもの、大きさも日本のリンゴに比べてやや小ぶりなものが多いですね。みずみずしくて甘酸っぱい、美味しいリンゴは、ドイツの食卓には欠かせません。

食卓に並ぶリンゴ

リンゴの実とケーキ

保存性のよいリンゴは、ドイツの秋から冬にかけて欠かせない果物です。ほとんどのリンゴは冷暗所や貯蔵庫などで簡単に保存できるので、フレッシュなまま冬の間中食べ続けることができます。リンゴは伝統的に、アップルトレーと呼ばれる木製のトレーを用いて、貯蔵庫に積み重ねて保存されてきました。保存の際には、時々貯蔵してあるリンゴをチェックして、病気のものや腐ったものがあれば取り除くことが大切。放っておくと、他のリンゴまで傷んでしまうことがあります。ちなみに、このようなリンゴ、もちろん見た目はよくないのですが、口にしてみると意外と味はいいんですよ。

寒く長い冬の間、リンゴはドイツの人々にとって、とても大切な果物で、私の家でも毎日の食卓に登場しました。朝食のミューズリーに切ったリンゴを加え、おやつとして丸ごと学校に持っていき、ケーキやパンケーキを焼き…。リンゴの皮をむいてざくざくと粗く切り、水を加えて煮てつくる、ちょっと酸っぱいアップルソースも、日々の食卓に欠かせません。アップルソースは、好みで砂糖やシナモンを加えてもOK。でき上がったソースは、お米を牛乳で柔らかく炊いたポリッジのような料理や、ジャガイモをすりおろして水気を絞り、卵と小麦粉を加えてフライパンで揚げ焼きにしたポテトのパンケーキなどにかけていただきます。砂糖やシナモンを加えたアップルソースはポリッジに、シンプルなものはポテトパンケーキによく合いますよ。

最近ではドイツでも、リンゴを丸ごとたくさん保存して置けるほどのスペースがない家に住む家庭も多くなってきました。その場合にも、アップルソースに加工すれば保存しやすくて便利なので、このソースはドイツの食卓ではよく登場します。一度作ってしまえば、密閉容器で1年ほどは問題なく保存できるので、小分けにしておくと年間を通して味わうことができるのも嬉しいですね。

バラエティー豊かなリンゴの種類

リンゴの品種バリエーション

さて、食卓にリンゴがよく登場するドイツでは、スーパーにも何種類ものリンゴが売られています。中でも特によく食べられているのが、‘ジョナゴールド’や‘グロスター’、‘Berlepsch’など。もちろん、他の品種も食べられていますよ。リンゴ農家の多くが、あまり流通量がない、珍しい品種を育てています。それらは概して味がよく、個性的。種類がたくさんあるので、人によってお気に入りの品種も異なりますし、どんな料理を作るかに合わせて、適したリンゴを選ぶ必要もあります。しかしながら、流通量が少ない珍しい品種は、スーパーにはなかなか並びません。

そのようなちょっと珍しいリンゴを購入するには、ファーマーズマーケットが一番。スーパーで探すのは難しい品種のリンゴも、ファーマーズマーケットなら簡単に見つかります。週に一度、決まった曜日に開くマーケットには、たくさんの農家が集まり、珍しい品種のリンゴもずらりと並びます。他に、農園に行って直接買うことも。また、例えばドイツ南部にある大きな湖、ボーデン湖周辺のように、果実の栽培が盛んな地域から、旬を迎えた果物をたっぷり積んだ農家が、家々を訪れて新鮮な果実を販売することもあります。

リンゴを農家から購入するだけでなく、ガーデンやバルコニーの一角で、お気に入りのリンゴの木を育てている人もいます。リンゴの育て方を教えてくれるワークショップでは、基本的な手入れの仕方はもちろん、農家と同じように目的の品種を増やして栽培するための接ぎ木方法なども教えてくれるんですよ。

リンゴの鉢植え
バルコニーに置かれた鉢植えで育つリンゴ‘Rajka’。自分で育てれば、好きな品種のリンゴを毎年味わうことができます。

リンゴの思い出

リンゴの花

ドイツに住んでいた頃、私の家族は、幸運なことに丘の上に小さな土地を持っていました。北東と北西は木々に守られ、南側には開けていて、光がたっぷりと当たる環境です。そこは、丘の上にあるために暮らしていた村よりも少しだけ暖かい場所でした。小さな川がある村は、数百m上の丘の上よりも、2℃ほど気温が低かったのです。ちなみに、なぜこんなに詳しく描写したかというと、土地の条件や地域により、どのようなリンゴの品種がうまく育つかが異なるためです。

ともかく、私たちはその土地に果樹園をつくることにしました。植えようと決めた果樹は、たくさんの種類のリンゴ、洋ナシ、プラム、サクランボ、クリなど。リンゴは、主に伝統的な品種から選ぶことにしました。例えば、初めに植えた木の一つが、‘Klarapfel’で、アップルソースをつくるのにぴったりの品種です。他に比べて実りが早く、爽やかな黄緑色に色づく美味しいリンゴですが、貯蔵性はあまりよくないので、ソースにして保存します。

リンゴの収穫

こうして始まった果樹園計画は順調に進み、数年後には大きなボックスいっぱいになるほどたくさんのリンゴが収穫できるようになりました。収穫したリンゴの一部は、一日がかりで機械で小さく切り、圧搾してアップルジュースに。その日は友達がたくさん来て手伝ってくれるので、毎年、アップルジュースづくりパーティーのような時間となりました。このアップルジュース、飲みすぎるとトイレが近くなったり、お腹を壊したりとなかなか大変なのですが、絞りたてのジュースはとても美味しいので、誘惑には打ち勝てず、ついつい飲みすぎてしまったものです。

さて、この果樹園での果樹栽培経験から学んだことは、果樹の手入れに掛ける時間は、決しておろそかにしてはならないということ。適期に剪定を行い、周囲に雑草が生い茂らないように除草をして、必要な肥料を必要な時に与えます。植物たちはとても正直。きちんとよい手入れをすれば、よい結果を返してくれ、たくさんのリンゴが収穫できますよ。

英語には、こんなことわざがあります。「AN APPLE EACH DAY KEEPS THE DOCTOR AWAY」。直訳すると、「一日一つのリンゴが医者を遠ざける」、つまり、リンゴを食べることによって病気にならず健康に生活できるということ。日本でも、似たようなことわざが親しまれていますね。

美味しくて健康によく、たくさんのバラエティーがあるリンゴは、これから旬を迎えます。今年も、たくさん味わいたいものですね。

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Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子ども向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood

取材/3and garden

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