ガーデンデザイナーとは、草花や小道、構造物などを敷地に配置して、植物が健やかに育つ心地よい空間をつくる仕事です。これまで、数々のガーデンイベントに関わり受賞歴もあるガーデンデザイナーで造園家の竹谷仁志さんが、今、花業界をもっと盛り上げようと活動をしいます。そこにはどんな思いがあるのか、教えていただきます。
テンガロンハットがトレードマークの竹谷仁志さんは、東京を拠点に活躍するガーデンデザイナーで造園家です。2018年2月に東京ドームで開催された「テーブルウェア・フェスティバル」では、2年連続でセンターガーデンのプロデュースとデザインをつとめました。
これまで竹谷さんは、2004年「浜名湖花博」にて、ワールドガーデンコンペティション・グランプリを受賞し、2005年からは東京「六本木ヒルズけやき坂花壇プロジェクト」のプロデュースや、池袋「サンシャインシティ」の花ひろばのプロデュースなど、全国各地のイベントで花を咲かせる仕事を続けています。そんな竹谷さんの活動の背景には、“日本の花業界を救わなくては!”という思いが強くあるといいます。東京ドームで2018年2月に開催された「テーブルウェア・フェスティバル」の会場で、その理由を語っていただきました。
今が一番、日本は花のある暮らしから遠ざかっている
さかのぼれば江戸時代から日本人の暮らしの中には、いつも花が身近にあった。でも、ライフスタイルが変わり、現代は、これまでの歴史の中で一番、暮らしから花が遠ざかっている時代なんじゃないかと思うんだよね。花の暮らしがなくなった。“花って楽しい”を知る人が少なくなった。そして花は売れなくなった。
だから改めて、“花の楽しさ”を知ってもらう機会をつくる仕事に力を入れてるんだ。魅力を知らないから花を買わないわけで、「魅力的なものが世の中に溢れているから、花に興味を持ってもらえないんだよね」、なんて諦めていたら何も変わらない。だったら、イベントや人が集まるランドマークに花と触れ合うきっかけを仕掛けて、知ってもらうことがまず大事だと思うんだよね。
日本の花の生産技術は世界一
花の国であるオランダと並んで、日本も花をつくり、育てる技術はトップレベルにある。ただ、そのよさを知っている生活者が減ってしまったから、使い方も分からないし、知らないから売れない。花の質が悪いから売れないのではないんだ。今、花業界にいて実感している“花の楽しさ”を、日本でどうすれば多くの人に知ってもらえるかが課題だね。
それに、他国と違って日本は切り花と鉢花(花苗)の市場や業界も分かれている。でも、どちらも暮らしにプラスして、楽しんでもらえる花だという思いもあって、2018年の「テーブルウェア・フェスティバル」では、その垣根をなくしてセンターガーデンをつくったんだ。
もしこのブースをガーデンデザイナーが手がけたなら、庭に植えるように花苗をメインに使って庭を再現することでしょう。でも、僕はどちらのよさも知ってもらいたいから、花の流通センターやナーセリー、石積みの技術をもったアーティストにも協力してもらいながら、花が咲く素敵な空間を一緒になってつくり上げたんだ。
「テーブルウェア・フェスティバル」に来たお客様だって、「私は庭だけつくります」「私は切り花だけを使います」という人はいないはず。こうして、女性達の生活にとても身近なテーブルウェアを見たり買いに来たら、思いがけず「あら、この花が咲く空間、素敵ね。そう、私の庭に花が咲いていたらいいかも」とか「テーブルに花を飾ると、もっと暮らしが豊かになるわね」と、気づいてもらえればいいと思ってガーデンプランをし、協力者に声をかけて実現したんだ。
あえて花や庭が主役ではないイベントに花を咲かせる
現代の生活者の何パーセントの人が「花が暮らしにあると素敵ね」と感じているだろうか。実際とっても少ないだろうね。だから、この「テーブルウェア・フェスティバル」のように、もともとの興味は食器に向いているような場所にあえて花を咲かせたら、きっと食器と一緒に花をコーディネートするヒントになるはずと思ってね。小さなブースからスタートして、かれこれ6年、花を提案するブースを「テーブルウェア・フェスティバル」の会場につくってきたんだ。
花や緑を暮らしに取り入れる生活者が増えることを願って
最初は小さいスペースだったけど、年々大きくなっていって。2017年からは東京ドームの中央の広いスペースを提供してもらって、センターガーデンをつくるようになったんだ。2018年で2回目だけど、このセンターガーデンが来場者のアンケートで評価が高かったことから、連続で手がけることになったんだ。
食器を求めて来場した人たちが、ガーデンや花に好印象を抱いたという結果は、本当に嬉しい兆しだね。日常的に花と緑を取り入れる人たちが日本に増えてくれることを信じて、これからも花をつくる人、花を楽しむ人をつなぐお手伝いを続けていきたい。
Credit
写真&インタビュー/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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