グルメも注目! 【サボテンのまち春日井】を全力取材! 知れば必ず行きたくなる! 前編
日本一のサボテン産地である愛知県春日井市。この街が、「サボテンのまち春日井」をテーマにサボテンで街おこしをしていると聞き、サボテン溺愛好家を自認する不肖編集部員Kが、日本で最もサボテンを愛する街を訪れ、グルメに、学びにと、そのサボテン愛を探りに行ってきました。お土産の抽選プレゼントもありますので、お見逃しなく!
目次
はじめに
サボテンの産地、愛知県春日井市。
しかしそれをご存じの方は多くないのではないでしょうか。
私編集部員Kも中部地方でサボテン栽培が盛んなのは知っていましたが、愛知県春日井市がサボテンで街おこしをしているということはまったく知りませんでした。
そのユニークな試みを知った以上、そして私自身がサボテン溺愛好家を自認している以上、この目で事実を確かめてこなければ!
というわけで7月上旬、現地に行ってまいりました。
春日井市ってどんなとこ?
愛知県春日井市は、名古屋市の北側に隣接している人口約30万人を擁する街。
名古屋へのアクセスが良好な場所であることから、名古屋のベッドタウンとされています。
都市空間と自然とがバランスよく調和したこの街は古くから農業が盛んで、特に桃や葡萄といったフルーツの産地として知られていますが、昭和初期から始まったサボテンの栽培は特に盛んで、現在では国内有数のサボテンの産地となっています。
また、春日井のサボテンは、タネから手間暇かけて作る高品質な「実生(みしょう)栽培サボテン」ということでも知られています。
それを象徴するかのように、春日井市役所庁舎の正門前のファサード(植え込み)にはサボテンの自生地を模したロックガーデンが設けられており、マニアも唸る立派なサボテンたちが来庁者を迎えてくれます。
また、サボテンだけでなく、春日井三山をはじめとした豊かな自然や、多くの埴輪や土器が出土した二子山古墳、国の重要文化財に指定されている密蔵院多宝塔や徳川家康にゆかりのある太清寺、縁結びと学業成就祈願の勝川大弘法、明治33年の建造当時のままの姿で現存し、毎年春と秋に一般公開されるJR中央本線旧線上の愛岐トンネル群など、歴史的な遺産も多い街として知られています。
「サボテンのまち春日井」プロジェクトとは
春日井市では地元の特産であるサボテンで地域の活性化や観光振興を目指し、商工会議所が中心となり2006年に春日井サボテンプロジェクトが発足。
2022年には春日井市役所にサボテン担当部署が発足し、経済振興課の柴田知宏主査の指揮のもと、「サボテンのまち春日井」プロジェクト(以下プロジェクト)として新たに展開し、多種多様な取り組みを行っています。
どんな人が関わっているの?
このプロジェクトは、春日井市観光コンベンション協会、そして前出の柴田知宏主査が連携し、中部大学准教授でサボテンによるソリューション研究の第一人者である堀部貴紀氏がプロジェクトの振興アドバイザーを務めています。
そして、地元の農家は生産の面で、飲食店は食の面で、中小企業は商品開発、大企業は催事面で、アーティストやデザイナーはクリエィティブの面で、教育機関はサボテンを用いた情操教育の面でと、それぞれが自分たちの専門分野で培った技術や知識を活かし、サボテンを軸に地域を盛り上げ活躍しています。
このように、官産学民が一体となり地元特産のサボテンに関する新たな体験と学びを創造し、春日井=サボテンのまちを全国規模で認知してもらうのが本プロジェクトの目的です。
またサボテンを通じたコミュニティの結束力が、春日井市をさらに魅力的な場所にしています。
どんなことが行われているの?
イメージキャラクターが活躍
サボテンのまち春日井を賑わしているのは何も人間ばかりではありません。
見てくださいこの胸キュンのかわいらしさ!
この子たちは、左から、おしゃれでおしゃまな春代(はるよ)、元気で食いしん坊の日丸(にちまる)、無口で照れ屋の井之介(いのすけ)という本プロジェクトのイメージキャラクターで、サボテンのまち春日井を内外にアピールするべく大活躍中!
ちなみに、三人の頭文字を合わせると「春日井」になるんです。
でもね、ただ可愛いだけじゃなくて、けっこうコンセプトが深いんですよ。
「彼らに出会った人々は、いつのまにかサボテンよりも人間のほうがトゲトゲしていることに気付かされる」、という、何やら耳が痛くなるような・・・。
春日井に行ったらぜひ、出会った人を老若男女問わずハッピーにする春代、日丸、井之介に会いに行きましょう!
サボテンダンスミュージックでDancing!
プロジェクトは音楽の面でもサボテンのまち春日井を盛り上げています。
このサボテンダンスミュージック『かすがいサボテンピース』は、春日井広報大使で保育士シンガーソングライターの桃乃カナコさんが制作したもので、プロジェクトを象徴する曲として春日井市民、特に子供たちを虜にしています。
私も子供たちに混じってPVに参加したかったな・・・。
“さぼがーる”が活躍
旗振り役を務める市役所も負けてはいません。
市役所の新人女子職員によって結成された「さぼがーる」(上写真)は、サボテンでやってみたいさまざまなイベントを企画したりリポートすることにより、春日井の内外に春日井サボテンの魅力を日々発信しています。
イベントでサボテンを満喫
無印良品 イーアス春日井
プロジェクト発足以来、市内ではサボテンにまつわる数々のイベントが開催されていますが、中でも注目したいのが、「無印良品 イーアス春日井」で行われるサボテンイベント。
市内の大型ショッピングモール、イーアス春日井内にある、国内最大規模の売場面積を誇る「無印良品 イーアス春日井」では、サボテンの実食体験イベントや、寄せ植え体験など、サボテンをテーマにしたさまざまな催事が行われています。
無印良品といえば、衣料品、生活雑貨、食品を取り扱っていることで知られていますが、ここ無印良品 イーアス春日井は、地元のサボテン農家と連携し、食と園芸の両面で特産のサボテンの普及に努めているとても珍しい店舗なのです。
スカイサボテン
市役所庁舎隣にある文化フォーラム春日井4階屋上庭園「スカイフォーラム」では、サボテンイベント「スカイサボテン」が行われています。
スカイサボテンは毎年秋におこなわれ、観賞用サボテンの展示や食用サボテンの試食、サボテングルメの販売、ワークショップやゲームなど、秋空のもとでサボテンを満喫できるイベントとして人気を博しています。
”さぼがーる“による「スカイサボテン」のリポート(上:前編 下:後編)
こうしたイベントの開催により地域の活性化が図られ、サボテンを通じた新しい観光資源としての可能性も広がっています。
さらに、地元の商店や農家と協力することで、地域経済の振興にも寄与しており、イベントを通じてサボテンが春日井市のシンボルとして定着しました。
サボテングルメ
春日井市を訪れたなら、ぜひ試していただきたい「サボテングルメ」。
サボテンのまち春日井プロジェクトでは「サボテングルメをカルチャーへ」をスローガンに、サボテンを食の面でもクローズアップしています。
え、サボテンって食べられるの? と日本ではあまり馴染みがないサボテン食ですが、じつは海外ではごく一般的な食材として、さまざまな料理で親しまれているんです。
もちろん食べられるのは食用として栽培されたサボテン(主にウチワサボテンのバーバンク種、マヤ種)に限られますが、その味はさっぱりとしていて、酸味とオクラのようなとろみがあるのが特徴。
パスタや肉料理に使われるほか、メキシコやカリフォルニア南部などではサラダのトッピングや、中にはサボテンそれ自体を「カクタスステーキ」としてメニューに加えている店もあります。
サボテン食において特筆すべきはその栄養価!
驚きでしょう? サボテンは栄養価が非常に高く、ガンや動脈硬化症、高コレステロール症の予防に役立つほか、抗アレルギー作用もあるため花粉症対策にも効果的。さらに疲労回復や精神安定、美容にもよいとされる奇跡の食材なのです!
そんなサボテンを多くの人に食べてもらおうと、春日井市内の飲食店が協賛し、各店舗でサボテンをメニューに加えたさまざまな料理を楽しむことができます。
市内ではそんな魅惑のサボテンメニューを楽しんでもらおうと、協賛飲食店32店舗による「サボテングルメスタンプラリー」を開催。(今年2024年は8/10~9/23まで開催)
[協賛各店舗の詳細はこちらから] ※各店舗のサボテンメニュー写真クリックでお店のHPに飛びます。
協賛店舗でサボテングルメを飲食あるいは購入してスタンプを押し、スタンプが3つ以上たまると、サボテンの寄せ植えか、参加店舗で使える食事券が抽選で当たります。
[参加方法詳細はこちらから]
春日井市役所のサボテン振興チームは、市内の飲食店にサボテンを食材として取り扱ってもらうために一軒一軒足を使って回り、ようやく32店舗までこぎつけたという、まさにサボテンへの情熱が成し得たサボテングルメ企画。
「食べるサボテン」をここまで楽しめるのは、日本全国津々浦々探してもここ春日井市だけです!
商品開発
市内ではサボテンをフューチャーしたさまざまな商品を入手することができます。
例えば、サボテンを原料に使った食品。
サボテンを使用したアイスクリームは低脂肪でサッパリとした後味が特徴で、アンテナショップなどでも売れ筋の人気商品です。
また、サボテンを練り込んだきしめん「サボヽめん」や、サボテンを原料に使用したビールまであり、サボテン食のレパートリーの多さに圧倒されます。
化粧品ではサボテンの保水力が威力を発揮します。
市内の化粧品メーカーはサボテンコスメブランド「SABO LABO」を展開し、化粧水や洗顔フォーム、ハンドクリーム、ヘアケア商品と、さまざまなサボテンコスメを販売しています。
もちろん、これらの商品のおおもととなる食用サボテンも、市内の老舗サボテン園「後藤サボテン」で購入できます。
このほか、Tシャツやキャップをはじめとした衣料品や、文房具など、ここでしか手に入らないサボテンをテーマにしたアイテムが目白押し。
店舗によっては通販も行っているので、お住まいの地域でサボテングルメやサボテンコスメを楽しむことができますが、ぜひ観光で訪れて「おみやげ」として体験と一緒に持ち帰ってほしいですね。
教育
そんなサボテンに子供の頃から親しんでもらおうと、平成19年に学校給食でもサボテンを食材に使ったメニューがスタートし、現在も続いています。
また、春日井市観光コンベンション協会が配布している栽培キット「育てる春日井サボテン」などを通じ、春日井で技術が確立されたサボテンをタネから育てる実生を体験したり、小学校3年生になると実際に地元のサボテン農家後藤サボテン園に赴き、トゲがない品種(あるいは少ない品種)の苗を自分で選び、植え替えて持って帰るという実習も行われています。
このように子どものうちからサボテンに慣れ親しんでもらい、ひいては家庭でもサボテンに親しみを感じてもらい、郷土愛を育む。
それが春日井市のサボテン教育なのです。羨ましい・・・。
春日井の子どもたちは幼い頃からサボテン振興の一翼を担っているのですね。
究極としてはサボテン農家が抱えている現在の後継者不足という問題の解決にもつながれば、とても素晴らしいことですね。
中部大学堀部先生と連携し、サボテンの科学的な魅力を発信
春日井市に校舎を構える中部大学。
大学の応用生物学部環境生物科学科で教鞭を執る堀部貴紀准教授は、国内でも著名なサボテン研究の第一人者です。
特に食用サボテンに関する研究では国連からも期待されている人物です。
というのも、国連の食糧農業機関FAOが2017年に「環境適応力が非常に強く、非農業適地でも比較的容易に育つウチワサボテンは、食料安全保障にとって食糧危機を救う重要な作物になりうる」と発表したことにより、ウチワサボテンがサステナブルな食材として注目を集め、その分野のエキスパートである堀部先生の研究がFAOから注目されているのです。
プロジェクトはそんな堀部先生の研究とも連携し、春日井市がサボテンの名産地にして、その文化的価値を創造している街であることを、全国はもちろん、将来的には世界中に広めたいとも考えています。
サボテングルメを実食!
さまざまな取り組みが行われているプロジェクトですが、やはり一番気になるのはサボテングルメ。
バラエティーに富んだサボテン食体験ができるサボテングルメスタンプラリー参加32店舗の中から、今回は市役所の柴田さん推薦の2店舗と、街の人に教えていただいた田中食品製麺の「サボヽめん」といった、サボテングルメの一部をご紹介します。
IZUMI café &bistro
地域の家族連れに人気のお店 IZUMI café &bistroは、肉厚の牛タンを使用した絶品タンシチューや手作りハンバーグ、パスタ料理が自慢のお店。
オーナーの谷本健一郎さんは、無印良品イーアス春日井が主催した料理コンテストで優勝したほどの腕の持ち主なんです。
そんな実力派の谷本さんが作るサボテンメニュー。
今回はサボテンのペペロンチーノを試食、というより空腹MAXだったため、本気で食べてきました。
実食の感想
こちらが出来上がったサボテンのペペロンチーノ。
スープが付いて1,310円(税込)。
フェットチーネのもっちりとした食感と、芳醇なソースの味わいが極上のパスタです。
さてサボテンはというと、実際に食べてみると、ちょっとした酸味とほのかな苦味のある野菜といった感じで、食感はメカブに近く、これはちょっとクセになりそうです。
また、サボテンがオクラのようなとろみを出していて、それによりパスタソースが麺によく絡む。
だからといってまったくクドさはなく、むしろサボテンの爽やかさが料理全体を好アシストしてくれている、そんな印象。
サボテンの持つ独特の風味は他の素材を上手に引き立てるのだな、ということがわかりました。
でもこうして素材として見事に羽ばたかせることができるのは、料理に対して真摯に向き合い、お客様に愛情を注いできた谷本さんの手腕なればこそ、なのでしょうね。
オーナーのお話
店に入って一際存在感を放っているのが、ホールの中央奥にある、普通のレストランでは考えられないくらい広いキッズスペース。完全個室の授乳室も完備しています。
実はIZUMI café &bistroは、子ども連れのお客様が食事を気兼ねなく楽しめる、というコンセプトのもとに作られたお店。
これは個人営業のレストランに未就学児入店NGの店が多いことに谷本さん自身が疑問を感じ、自分が店をやるときは毎日頑張っているママたちが気兼ねなく食事を楽しめる店にしよう、という想いがこめられているのです。
料理に、店作りに、谷本さんの愛情が溢れている、そんな印象のIZUMI café &bistroでした。
最後に、このプロジェクトへ参加してどうですか? と感想を聞いたところ、「昨年、市の担当者柴田さんが“ノンアポ飛び込み営業”で企画を持ち込まれた時はびっくりしましたが、その情熱に賛同してこの企画に参加して心底良かった。他の店のオーナーさんとも強い絆ができたのはよい収穫でした」と。
これからも春日井サボテングルメの魅力を発信し続けてください!
IZUMI café &bistro
URL:https://www.izumicafe.com
【営業時間】月〜土 8:30〜16:00(Lunch L.O14:30、Tea L.o 15:30)まで
【定休日】日曜
【住所】愛知県春日井市大泉寺町136-3
【電話】0568-29-6123
【駐車場】有(20台)
bistro Futatsuboshi
2008年の開店から16年を数えるbistro Futatsuboshiは、今ではこの春日井市内では知らない人はいない名店中の名店。
取材前にいろいろ調べてみましたが、「春日井に行ってここに行かずして帰ると後悔する」とまで言う人も。
ならば、と期待に胸膨らみます。
マンションの一階フロアを占有する広い店内に入ってみると、どこかノスタルジーを感じさせてくれる雰囲気が漂い、ここで食事をすることが幸福な時間なのだということを感じさせてくれます。
お迎えしてくれたのはシェフの今泉錠二さん。
詳しい話よりまずは料理を、ということで早速名店の味を支える腕を奮っていただきました。
いただいたのは、知多ハッピーポークという愛知県産銘柄豚を使用した「豚バラ肉とサボテンの白ワイン煮込み ハリッサソース」。
煮込みと相性のよい、見た目ふんわりのマッシュポテトと、そこに鎮座する知多ハッピーポークの色合い。
この色合いだけでごはんのおかずになりそうです。
かけるソースにはすでにサボテンが溶け込んでいて、濃厚なソースとサボテンの爽やかな酸味が調和した、独特な風味を楽しむことができます。
そこに「ハリッサ」で和えたサボテン、パプリカ、赤玉ねぎをトッピングし完成。
ちなみにハリッサとは、唐辛子ベースにコリアンダー、キャラウェイ、クミンといったハーブとニンニクをブレンドした北アフリカ地域で用いられるスパイス。
ハリッサは豊富な輸入食材を取り扱うカルディでも人気の商品で、一度使うとやみつきになります。
こちらのサボテン料理は基本的にコース料理の中の一品のため、アラカルトとしてメニューに記載はありませんが、事前に連絡すれば単品としてオーダーすることも可能です。
価格は時価となり、およそ2,500円くらいです。
実食の感想
ハリッサとサボテンがどう展開するのかワクワクしながら、いざ実食です。
まずはその芳香に陶酔。
見た目はフレンチなのですが、スパイスとして使われているハリッサがエキゾチックな風味に仕上げていて、とても私好みの味わいでした。
舌の上でほろほろとほどけていく柔らかな知多ハッピーポークを、サボテンのエキスが溶け込んだ濃厚なソースが包み込み、そこにサボテン由来のほのかな酸味が乗っかってくる感じ。
両方のバランスがとても心地よく、時折トッピングのサボテン果肉が食感で遊んでくれるという、とても印象的な一皿でした。
サボテンをかくも記憶に残る料理として振る舞える手腕はお見事! サボテンたちも冥利に尽きるというものです。
改めて再訪し、ぜひコース料理を食べてみたい欲求に駆られました。
シェフのお話
見事な料理でお客様を夢心地にしているbistro Futatsuboshiですが、名古屋駅近くの著名レストランでシェフとして腕を奮っていた今泉さんが自分の店を持つという夢を実現させ、現在の場所で店をスタートさせたのは16年前。
当時の店は今の1/3の面積でした。
しかし、今泉さんご夫妻のお客様に対する愛情と料理に対する探究心に呼応するかのように、開店以来お客様は増え続け、現在では店のキャパも開店当時の3倍に。
新たに加わった個室(写真下)では誕生会や歓送迎会など、今泉さんの料理で人生の節目を飾ろうというお客様で連日賑わっています。
そんな地元に根付いたお店だからこそ食材の地産地消にも熱心なんです。
でも、ある日突然店にやってきた市役所の柴田さんから「地元食材サボテンをぜひ使ってください!」 と猛烈プッシュされた際はちょっと戸惑ったそうです。
がしかし、試しに使ってみると、サボテンの食材としてのポテンシャルは今泉さんの料理人魂に火をつけ、辣腕料理人をもってして「サボテンって面白い!」といわしめるほど、なくてはならない食材となりました。
このほか、お店のイチオシはベーコンとほうれん草のキッシュ。
面白いのはシェフのつぶやいた一言。
「なんの変哲もないキッシュなんだけど、なぜかすごく出るんですよねぇ〜。」
何の変哲もないからこそ、めっちゃ美味いのではないでしょうか。
bistro Futatsuboshi、再訪を固く誓った店でありました。
bistro FUTATSUBOSHI
URL:https://www.futatsuboshi.com
【営業時間】
ランチ 11:15~14:00(L.O.13:00)
ディナー 18:00~21:00(L.O.19:30)
テイクアウト 11:15~14:00/17:00~18:30
【定休日】日曜日・木曜日のディナー/不定休月2回
【住所】愛知県春日井市八田町2-27-27
【電話】0568-83-4441
※予約・問い合わせの電話は9:30~11:00/13:30~14:15/17:00~18:00/21:00が繋がりやすい。
【駐車場】有(19台)
サボヽめん
地元で人気の製麺店、田中食品製麺で「サボヽ(テン)めん」というサボテンが練り込んであるきしめんを購入し、帰京後に食べてみました。
この田中食品製麺、じつは、bistro Futatsuboshiへ向かう途中に立ち寄ったコンビニの駐車場で、車から降りてきた主婦らしき方に「突然すみません決して怪しい者ではありません、東京から春日井のサボテングルメを取材に来ていまして、地元の方が普段口にされるサボテンを使ったおすすめの食材ってありますか?」と尋ね、紹介してもらった店なのです。
そしてこの「サボヽめん」、偶然にも春日井土産品コンテストで入賞した商品ということで、期待大です。
1袋で2人前、特製の麺つゆも付いています。
沸騰させたたっぷりの湯に麺を投入し待つこと12分。
茹でた麺を入念に水で冷まし、ざるに盛り、いざ実食。
実食の感想
麺はサボテンの色素が反映されていて薄い緑色。
一口食べると、すっかり私の味覚に馴染んだサボテンの酸味が爽やかに鼻腔から抜けていき、同梱の少々甘口な麺つゆの鰹節風味があとから追いかけてきます。
心地よい噛み応えを生むコシのある麺は、さすが製麺所直売の麺です。
感想はズバリ「麺好き食うべし。」
ただ量的な部分では、1袋2人前のうちの1人前では、よほど少食な方でない限り、男性には確実に足りないですね。
うちは夫婦で1人1袋をいただきましたが、ちょうどよい感じでした。
この「サボヽめん」をお土産として、読者の方に抽選で1名様に2袋お送りします。
詳細は後ほど。
田中食品製麺
【営業時間】8:00~17:00
【定休日】日曜
【住所】愛知県春日井市弥生町2-12
【電話】0568-81-3811
【駐車場】有(2台)
グルメに、エンタメに、教育に、春日井のサボテン産業を支える農家
ここまで、サボテンのまち春日井プロジェクトの内容をご紹介しましたが、その全ては春日井市が世に誇るサボテン農家があってこそ。
ここからは、春日井とサボテン農家の関わりについてご紹介します。
伊勢湾台風が全てを変えた
実生栽培で名高い春日井のサボテン。
その歴史を紐解くと、サボテンと春日井農家の運命的な出会いにたどりつきました。
春日井市は古くから果樹栽培で有名な街。
時は昭和の戦後間もない頃、その果樹農家の1人伊藤龍次氏は、趣味でサボテン栽培を行っていたのですが、とあるサボテンの交換会で「緋牡丹(ひぼたん)」という、それまで見たことがなかった赤いサボテンに出会い、すっかり心を射抜かれました。
時を経ず、友人で同業者の関戸貫一氏を誘い、一緒に緋牡丹栽培を行うようになりました。
しかし、色素が赤いが故に葉緑体がほとんどなく、成長させるのが難しい緋牡丹栽培はなかなか上手くいきませんでした。
そこでメインが果樹農家の伊藤氏は、果樹栽培を行う時の接木技術を応用できないかと考え、タネも安価で旺盛に育つ柱サボテン「竜神木」の先端を切り、緋牡丹をつなげてみました。
今ではいろんな種類のサボテンで行われている「サボテンの接木」誕生の瞬間です。
台木から栄養が送られスクスクと育つ緋牡丹は、見た目の可愛らしさも相まって大人気に。
やがて、手間もかからず痩せた土壌でもたくましく育ち、見た目もユニークなサボテンの魅力が周囲にも伝わり、桃山町を中心に緋牡丹に関わらずサボテン栽培を副業とする農家が増えて行きました。
それから時を経て昭和34年、中部地方に壊滅的な被害をもたらした「伊勢湾台風」の襲来により、春日井市内の果樹園は甚大な被害を被りました。
その一方、温室で栽培していたサボテンは被害が少なかったため、多くの果樹農家が栽培主体をサボテンに切り替え、サボテン栽培は市内全域に普及しました。
おりしも昭和30〜40年代の日本はサボテン栽培が空前のブーム。
しかし当時、国内で生産されるサボテンは、親株から切り取った子株から増やしていく、生産効率の高い挿し木栽培が主流でした。
対して、タネまきから行う実生栽培は、タネを買い、元来成長速度が遅いサボテンをゼロから手間暇かけて育てなければならないため効率が悪く、そもそも技術が確立されていなかったため、商売には向かないとされていました。
ただその反面、実生栽培には、天塩にかけただけ質の面では最高品質のサボテンを作ることができ、また、タネを自家採取でまかなえるためコストを下げることができるというメリットも。
そこで春日井のサボテン農家は、発芽から出荷までの工程を分業生産化することで効率を高め、また、サボテンに特化した温室を発明するなど、工夫に工夫を重ねて実生技術を確立。日本で初めて実生サボテンの大量生産が可能になりました。
実生による、色に形に質の高い春日井サボテンの噂は、インターネットが無い時代にあっても瞬く間に全国に広がり、これにより昭和の時代、サボテンのまち春日井の地位は不動のものとなりました。
時は平成に移り変わっても、平成18年(2006年)まで実施された「農林水産省作物統計調査」では春日井市が「サボテン及び多肉植物」の出荷量で全国1位を獲得するなど、先人たちの知恵と情熱は確かに受け継がれ、今日の「サボテンのまち春日井プロジェクト」を生み出す苗床となりました。
実際にサボテン園を訪ねてみた
サボテンのまちとして昭和から平成を彩った春日井市。
最盛期は80軒ほどあったサボテン農家も、残念ながら現在は1/10に満たないほどになってしまいましたが、そんな貴重なサボテン農家の中から今回は安田サボテン園を訪ねました。
安田サボテン園は卸し専門の農家。ネットも含め一般販売は行っておらず、農園自体も一般公開はしていないのですが、今回は市役所の柴田さんの計らいで特別に訪問させていただきました。
安田サボテンの園主安田勝さんは現在御歳79歳。
サボテンを始めたのは昭和39年、19歳の時だというから実に60年にわたりサボテン栽培を行ってきた、まさにプロ中のプロ。
現在、マミラリア「月影丸」や「星月夜」、ギムノカリキウム「緋花玉(ひかだま)」や「牡丹玉(ぼたんぎょく)」などを中心に、約50種類のサボテンを手がけています。
代々続く果樹農家に生まれた勝さんは、中学生の時に前述の伊勢湾台風に実家農家が被災し、窮地にあったお父様が、隣でサボテン兼業果樹農家を営む伊藤さん(前出の伊藤龍次氏)の誘いでサボテン農家として再出発したのがサボテンとのストーリーの始まり。
春日井のサボテン農業は、前述のように完全分業制で成り立っていたため、当初安田サボテン園は、タネまきと発芽を担う第一次生産農家から送られてきた稚苗を大きくする第二次生産農家でした。
やがて3代目を継いだ勝さんは、平成4年から自らも実生を手がけ、タネまきから出荷までをトータルに行う実生農家になりました。
その頃サボテン農家は後継者問題に直面し、特に第一次生産農家が著しく数を減らしていったため、実生栽培に情熱を傾けていた安田さんの存在は、春日井のサボテン農家全体の原動力にもなっていたのではないかと推察します。
「タネから育てるのはこれほど面白いことはないね」と、根っからのサボテン溺愛好家の安田さんですが、ここに至るまでに最も苦労したのは、タネをまいてから1〜2カ月の間の管理なのだとか。
稚苗を管理する温室を見せてもらいましたが、愛好家が数十〜百前後の稚苗を育てるのとはワケが違います。
数万株の稚苗を育て上げなければならないのですから、ここに至るまでのご苦労は想像を絶します。
ところで先にも触れましたが、春日井のサボテン農家は、先人たちの知恵が詰まった特殊な温室「ピット型温室」を用いてサボテンを育てます。
もちろん、安田サボテン園にもピット型温室があります。
その特徴を交え、実際の映像でピット型温室がどのようなものかを見てみましょう。
先人たちの知恵を継承し、それを60年にもわたりやり続け、周囲のサボテン農家が後継者不足などさまざまな問題に直面し廃業していく中で、今もなお現役という安田さんの姿には畏敬の念を覚えます。
それも、手をかけた分だけ応えてくれるという、やり甲斐があればこそ、と語る安田さん。
これから先は斑(ふ)入り(=突然変異でできる特殊な模様)のものを今以上に多く手がけていきたいと抱負を抱いています。
ちなみに安田さんは幸いにも後継者(ご子息)に恵まれ、その技術が絶えることなく次世代に引き継がれているのは、私たち愛好家にとっては嬉しい限りです。
また安田さんは、春日井のサボテン栽培を次世代に継承するために、なんとサボテン栽培業のノウハウを解説したいわゆる「秘伝の書」的なものを映像に収め、これを春日井市観光コンベンション協会が大切に保管しています。
「本気でこの地でサボテン就農を考えている人がいたら、ぜひ見てもらいたいです。」と、目を細めて語る安田さんですが、長生きしてぜひ生身の安田さんご自身による後進育成を頼みますよ、と誰もが思っていることでしょう。
ただやはり、収入を得られるようになるまで最低でも2年はかかるサボテン栽培、生半可な気持ちでは務まらないのは当たり前。
それでも「春日井でサボテンをやりたい!」という猛者が現れ、春日井サボテンに旋風が巻き起こる日が実に待ち遠しいですね。
そんな安田さんに最後に、サボテン業界の未来とご自身の未来の抱負、そしてガーデンストーリー読者へのメッセージをいただきました。
おみやげプレゼント!
春日井市経済振興課よりいただいた、サボテンのまち春日井のプロモーショングッズ7点セット(春代・日丸・井之介のクリアファイル、育てる春日井サボテン栽培キット、春代・日丸・井之介のシール、春日井サボテンの歴史が学べるマンガ、春日井サボテンハンドブック、しおり、ウェットティッシュ)を、抽選で2名様に。
田中製麺食品の「サボヽ(テン)めん」を2袋1組を、抽選で1名様に。
それぞれお送りします。
応募方法
下記ロゴをクリックし、応募フォームに必要事項を記入の上、ご応募ください。
当選された方にはご当選商品を明記したメール※をお送りしますので、折り返しお名前と発送先情報をご返信ください。
※当選商品に関しては編集部で選定させていただきます。
応募締切
9月30日(月) 23:59
編集後記
サボテンを愛する地域の人々の情熱、そしてその情熱から生まれる数々のイベントや美味しいグルメ。
そのすべてが、この街を特別な場所にしています。
今回の取材はレンタカーで各所を回ったのですが、どこへ行ってもとにかく皆がフレンドリー!
春日井市民は誰に対してもYo Amigoなのでしょうか!?
そんな人々のぬくもりが心に沁み入る取材となりました。
この記事を読んで興味を持たれたら、ぜひ春日井を訪ねてみてください。
サボテンとサボテンを愛する人々が優しく迎えてくれるでしょう。
さて、後編ではサボテンのまち春日井プロジェクトのさらにディープな部分にスポットを当て、市役所の柴田さんにはプロジェクトにかける想いやさまざまなエピソードを、そして中部大学堀部先生には、サボテンが解決のカギとなる!? 世界の環境問題の未来についてお話いただきましたので、近日公開いたします。乞うご期待!
おまけ
私編集部員Kのワイフが、春日井市の「後藤サボテン」から取り寄せた食用サボテンで料理を作ってみました。
ご家庭でもぜひお試しください!
ちなみにMyワイフ、すっかりサボテン料理の虜になってしまいました。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 編集部員K - ライター・エディター -
フリーランスのロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。精力的に取材、執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂4歳)」に日々翻弄されている。
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