「私の庭・私の暮らし」立体仕立てのワザで花で満たされる群馬県・岸邸

花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。SNSで全国のガーデニング仲間とつながりながら、自身も千葉の自宅でDIYと庭づくりを楽しむ橋本景子さんが、お気に入りの庭をご案内。今回は、さまざまなクレマチスが壁面や頭上に咲き乱れる群馬県・岸真由子さんの庭をご紹介。クレマチスを上手に咲かせる栽培テクニックや、おすすめ品種もお見逃しなく。
目次
多品種のクレマチスが咲く庭を訪ねて

2022年5月20日、群馬県在住の岸 真由子さんのご自宅を訪問しました。
私が真由子さんのガーデンの存在を知ったのは、インスタグラムのギャラリーでした。
時々登場するかわいい猫たちと、これまで見たことのない多品種のクレマチスの素晴らしい咲きっぷりに、すっかり魅了されました。なんとかこの目で確かめたくてダイレクトメッセージを入れたところ群馬県在住だと分かり、2020年の5月、コロナ禍でしたが初めて訪問させていただきました。

その際の写真を確認してみると、残っているのはほんの数枚。
初対面にもかかわらず、真由子さんとの話が盛り上がりすぎて、写真を撮る時間もほとんどなかったのです。
今回の訪問は2年ぶりとなりましたが、さらにボリュームアップしたクレマチスと、たくさんのバラが美しくコラボして私を出迎えてくれました。
地植えができなくても花いっぱい!

真由子さんのご自宅は静かな住宅街の一角にあり、樹木などが植わる地植えスペース以外にも、華やかにたくさんの花が咲いています。その理由は、駐車場として使っているコンクリート敷きのスペースをうまく利用しているからです。
カーポートを撤去し、DIY担当のご主人が手がけたシーティングアーバーや物置小屋を組み合わせて、それほど広くないスペースにもバラやクレマチスを立体的に誘引しています。高い位置に誘引することで植物にまんべんなく日が当たって花が溢れ咲くという、工夫に満ちたガーデンなのです。

真由子さんがガーデニングを始めたきっかけ

「2003年にここに引っ越しをしてきて、地面がむき出しだと雑草が生えるから、とりあえず何かを植えようと考えたのがきっかけでした。
それまでは庭仕事を全くしたことがなかったので、黒ポットのまま苗を植えようとしたところ私に、当時小学校3年生だった息子に『ママ、それってポットから抜いて植えるんだと思うけど……』と言われてしまうほどの超初心者でした(笑)。
でもそれ以前に、業者が残していったガラだらけの土に植えられた苗は、無残にもすぐに枯れてしまって。でも、めげずに次はヒマワリに挑戦したんです。
ヒマワリは順調に育ちましたが、苗を植えるときには土を入れ替えないといけないと気がついて、次はハーブにも挑戦しました」
クレマチスは一年草⁉︎ 書物で猛勉強

ヒメシャラなどの樹木を植えつつ、2011年頃にはバラを。そして雑誌やブログなどで情報を得ながら、バラと合う植物の一つとしてクレマチスも買ってみたそうです。その時植えたのは、一年生の苗。いきなり地植えして、その年は咲いたものの、翌春には芽吹いてきませんでした。
「その時、あれ?クレマチスって一年草じゃなかったはずよねと、疑問を持ち、それを解決するために図書館でバラとクレマチスの本を借りて猛勉強したんです。それから苗を掘り上げてポット植えにしてみたら、うまく育てられるようになったことで自信がついて。それを機に“クレマチスは難しい”という呪縛から解放されました」
さらに2015年頃からはインスタグラムの影響で、たくさんのクレマチスやバラを見つけては少しずつ増やしていって、育てることに生きがいを感じるように……。今ではバラが60品種、クレマチスが55品種にも増えたと言います。
真由子さんに聞く「クレマチスを上手に育てるコツ」

地植えせずポットで育てる理由
初めの頃、‘プリンセス・ダイアナ’を地植えにしたら、育ちすぎて50cmも離れた場所にあったバラを呑み込んでしまい、枯らしてしまったという経験があって、それ以降、クレマチスはほとんどポットで育てています。
クレマチスの肥料は年4回
クレマチスは肥料が好きなので、冬肥、春の芽出し肥、お礼肥の後、9月末から10月頃の秋と、年間を通じて合計4回肥料を施しますが、ポット植えだと他の植物への影響を考えずに施肥できることがポイントだと思います。
今年のように初夏に暑さが急にやってきてしまって、お礼肥ができなかった場合は、規定の量よりはるかに薄くした液肥を週に1回くらいあげています。
株元に直射日光を当てない工夫を
クレマチスは太陽が好きですが、ポットに直射日光が当たると根っこが暑さで弱ってしまうので、株元は半日陰に置いたり、ポットカバーをしたりする工夫が必要だと思います。

クレマチスを育てる際の注意
買ったばかりの小さな苗をいきなり大きなポットに植え込むと、根が回っていないため、多くの場合、枯れてしまいます。三年生苗の場合、最初は8号鉢くらいに植え付けて、翌年は鉢替えをおすすめします。
また、移植は苦手だと思われているクレマチスですが、意外と根っこは丈夫で、多少は切っても大丈夫です。
ポットで育てるメリット
ポット植えだと移動が簡単にできるので、一番花が終わったら二番花のタイミングで移動して、咲かせる場所を変えてみたり、調子の悪い株を移動したりと、レイアウトを毎年変えられるくらい自由です。
ですから、クレマチスの咲く時期やコラボする期間を考えながらバラと組み合わせていくと、そのパターンは無限にあります。
クレマチスをたくさん咲かせるコツ
花数を多く咲かせるために何よりも重要なのは日光です。春の芽出しの時には、新枝をなるべく横に広げて誘引するなど、たくさんの花芽ができるように手助けしてあげるといいですね。
真由子さんセレクトのおすすめクレマチス9選

左は‘花園’、右は‘華川’(どちらもパテンス系)。
今いちばん注目している新品種です。

左は‘ブルーライト’、右は‘ドクターラッペル’。
繰り返し咲いて、とても花期が長い種類です。

左は ‘白万重’、右は ‘紫子丸’。下は ‘カシス’(フロリダ系)。
花もちがよく、外側の花びらが落ちても美しいタイプです。高温多湿に弱く、立ち枯れするので要注意。

‘うさぎの雪遊び’(パテンス系)。
花心がうさぎの目のように赤く、かわいらしい。

‘雫’(ヴィオルナ系)。
壺形で耐寒・耐暑性に優れて丈夫ですが、うどんこ病が出やすいので注意。
Credit
写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも5.2万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
Youtube https://youtu.be/lpvD3ml8W-A
写真(*)岸真由子
岸真由子さんのインスタグラム rainylove0314
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