「自然によりそう暮らしのかたち」を掲げ、自然素材と庭にこだわった家づくり。家じゅうに緑が入ってくるよう家と庭を計画し、日常的に四季が味わえる仕掛けをつくる。住むほどに愛着がわく、心安らぐ住まいは、里山のような自然に溶け込んだ庭とともにある。
里山の中の社屋で自然を肌で感じてもらう
長崎県諫早市を中心に住宅を手掛けている浜松建設。
本社は橘湾を見下ろす小高い丘陵地「風の森」の入口にある。
「ミカン畑を切り拓いた」4000坪の斜面地だ。
周囲の反対を押し切り、商売の利便性が高い街中ではなく、のどかな場所をあえて選んだのには、浜松建設社長・濵松和夫氏の強いこだわりがあった。
「柳生博さんの著作や八ヶ岳倶楽部に感銘を受けて、自分でも里山をつくりたいと思ったんです」。
4000坪の斜面地に広がる「風の森」
最初は社屋とモデルハウス、小さなカフェのみだったが、オープンから十数年経ち自然の心地よさに魅せられて集まってきたレストランや雑貨店など8店舗が森の中に点在し、人と人とがつながるコミュニティの場としても「風の森」は賑わいを見せている。
住宅内に緑や風を取り込む「自然とよりそう暮らし」の提案
「風の森」という自然を肌で感じることができる里山に本社を置く浜松建設では、「自然によりそう暮らしのかたち」という暮らし方を含めた住まいづくりを提案しており、家と庭は必ずセットで計画している。
窓の位置や、風が通る場所、リビングや居室に緑が入ってくるように全体を見渡しながら設計を進めているという。
住宅は長崎県産材やシラスの塗り壁など自然素材で構成されており、木に包まれたぬくもりを感じさせる。
里山をイメージした自然に溶け込む住まいの庭
同社の庭づくりに欠かせないのは風の森カンパニー社長の古賀勝彦氏。
長崎市出身の庭園デザイナー・石原和幸氏の下で修業を積んだのち、景観デザイナー、ガーデンデザイナーとして活躍している。
「風の森」計画で濵松氏と協働したことを機に浜松建設へ入社、その後、ガーデニング事業に特化した風の森カンパニーを設立した。
古賀氏の考える住まいの庭のイメージは里山。
自然に溶け込み、手入れの簡単な雑木を中心に構成し、クリやコナラなど実が落ちるものを好んで使う。
シンボルツリーには、久留米市田主丸町で買い付けた山採りの木を選ぶ。
温暖な九州の地で伸びやかに育つシンボルツリーは、家と家族と一緒に時を刻んでいく、大切なものだと考えている。
庭を立体的に造り、心が落ち着く自然な景色に
「2Dではなく3D、立体的な庭づくりを心がけています」(古賀氏)
例えば、木の根元が見えるように地面を盛る。
視線と地面の高さが近いほうが、心が落ち着くからだという。
一見、素朴に見える庭には、古賀氏のこだわりが随所にちりばめられている。
庭から四季の変化を感じる
南島原市にある体験宿泊型のゲストハウス「居里」は、有明海と普賢岳を一望できる広々とした敷地に建ち、ゆるやかな傾斜の長いアプローチがとても印象的だ。
濵松氏は、同社が提案する空間や環境が生み出すゆとりの時間を住まい手に楽しんでほしいと語る。
「家の庭から四季の変化を感じる暮らしをしてほしいので、ガレージから玄関までわざわざ歩かせるプランを提案しています」(濵松氏)
そうした思いを形にしたのが「居里」。
アプローチの脇には小さな水場があり、涼しげな点景をつくり出す。
リビングから望む庭、檜風呂から眺める庭。廊下の窓からは雲仙・普賢岳の雄大な景色も見え、一枚の絵画が飾られているようだ。
小さな家にも大きな自然を
諫早市にあるモデルハウス「ちいさな木の家」は3人家族にちょうどいい広さとして計画されたもの。
庭を眺めるデッキは、昨年の夏に改築して広げられた。
デッキが庭と室内を繋ぐ
庭とデッキが溶け込み、「ちいさな家」に添えられた小さな庭だが、まるで森の中にいるような濃い緑が目に映る。
同社がこだわる〝里山〞に家がひっそりお邪魔したかのようだ。
ここにも「自然によりそう暮らし」の豊かさが存分にあふれている。
引用元/『HomeGarden&EXTERIOR vol.2』より
写真提供/(株)浜松建設
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