ヤマヒロの住まいづくりを支えるのは先人の知恵と地場の素材、伝統の技術。日本人が古くから大切にしてきた〝感性〞を家づくりに生かした、自然に溶け込む暮らし。地元産の〝しそう杉〞や山採りの木の庭にこだわり、播磨になじむ、豊かな住まいを提案する。
山採りの木で播磨の里山を再現
姫路の中心地から車で十数分、往来の激しい国道沿いに緑が生い茂る一角がヤマヒロの住宅展示場「はりまの杜」だ。
ヤマヒロは、1958年に兵庫県の播磨地方、宍粟(しそう)市で製材所として創業し、太陽エネルギーを活用するOMソーラーシステムの設計施工を始めるなど、住宅建設会社へと転換。
「はりまの杜」は2012年3月に完成した、同社で初めての常設モデルハウスとなる。
播磨の原風景である里山を切り取ったようなモデルハウスを作る
「はりまの杜」計画では、約300坪の敷地に建つモデルハウス2棟のうち1棟は自社設計で、もう1棟を建築家の伊礼智氏に設計を依頼し、造園計画を造園家の荻野寿也氏に依頼することになった。荻野氏との初回の打ち合わせでは、提案に面食らったという。
荻野氏の提案は「敷地の中心に木を植えてロータリーをつくりましょう」。
住宅展示場のプランニングは来客用駐車場の確保が第一、そう考えていた三渡眞介社長には想定外のプランだった。
さらに、畳みかけるように「山採りの木を植えましょう」と言った。
半年以上かけて樹木を移植する
山採りの木の移植はとても手間がかかる。
樹種によって伐れる時期が異なるうえ、鉢巻きを行うなど移植の準備に半年以上を費やすからだ。
しかし、宍粟の山から持ってきた樹木で播磨の植生を形にした里山の風景を再現――そのコンセプトに感銘を受けた三渡社長は、半信半疑ながらも実現に奔走した。
家と庭との関係性においても、荻野氏の言う「緑を引きつける」手法が採用された。
水はけを考えると、庭とテラスのレベル差は400〜500㎜は欲しいところだが、荻野氏の要求はレベル差300㎜だった。
山採りの雑木を活かして、里山の風景を取り込む
「最初は不安でしたが、家・テラス・庭に広がる一体感を見て『これだ!』と思いました」(三渡社長)
写真の「しそう杉の家」では小石で川のイメージをつくった「川の庭」を作り、アカマツ、コナラ、ソヨゴ、ヤマツツジなど山採りの雑木が植えられている。
播磨になじむ「乙」な家を
「甲・乙・丙で言うところの『乙』な家をつくりたいんです」(三渡社長)
播磨という地域特性になじむ住まいを考えたとき、華美ではないけれども野暮でもない、例えるなら乙な家だと思い至ったという。
自社設計のモデルハウス「しそう杉の家」は、日本の家の原点ともいえる田の字型プランを現代風にアレンジした。
大きな庇の下のテラスは、第二の居間として幅広く使える。
軒を低く設定した外観は水平ラインが横に広がる姿を意識している。
また、軒の出が1間半と深く、「冬季の直射日光によるパッシブ効果は見込めませんが、OMソーラーで解決しています」(三渡社長)。
開放的な和室から眺めを楽しめる庭
家の中の薄暗さは「守られている安心感」を生み、軒下に広がる大きなテラスから明るい庭へと視界が広がる開放感。
大きな開口部から望む庭は、四季の移ろいを肌で感じる住まいを演出する。
しそう杉にこだわり、森を育て、人も育てる
製材所からスタートしたヤマヒロは、現在も地元産の〝しそう杉〞にこだわり、家づくりに生かしている。
柱や梁などの構造材だけではなく、床や家具などの造作材、さらに羽柄材までも有効活用し、一棟の家で使われる木材の90%が〝しそう杉〞という徹底ぶり。
山主や製材所らと「協同組合しそうの森の木」を設立し、川上から川下まで、地元の林業を守る取り組みを10年以上続けている。
播磨らしい暮らしの実現
今となっては、ヤマヒロの庭づくりには欠かせなくなった山採りの木。
地元で山採りができる職人は希少で、技術継承のために自社社員を弟子入りさせて育成中だという。
しそう杉に山採りの木、ただ使うだけではなく、永く使い続けるために育てる仕組みづくりにも積極的に取り組んでいる。
先人の知恵と地場の素材、伝統の技術――それらがヤマヒロの考える「播磨らしい暮らし」を支えている。
引用元/『HomeGarden&EXTERIOR vol.2』より
写真・図版提供/ヤマヒロ
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