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住宅に庭の緑を取り込む 無意識に四季の移ろいを感じる家と庭

住宅に庭の緑を取り込む 無意識に四季の移ろいを感じる家と庭

住宅に庭の緑を取り込み、 自然を感じる「豊かな暮らし」を提案している建築家の村田淳さん。今回は、話題の建築家が実際に手がけた「日々の生活の中で無意識に四季の移ろいを感じる家と庭」をご紹介します。暮らしの中にさりげなく緑が取り入れられていて、とても素敵な住宅です。

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緑とつながる家1 北町の方形 (2009年/東京都)

立体的に庭とつながる

武蔵野の緑が残る落ち着いた住宅地に建つ家である。東西に長い敷地の中央に建物を配置して、主に東の庭側に対して開き、西は植栽を施したアプローチと駐車場を配置して、敷地を3分割する計画としている。内部はリビングを半階下げたスキップの構成として、内外の立体的なつながりと家族同士の結びつきを求めた空間構成としている。

1階はキッチンとダイニングで、建具を引き込むことでデッキを敷いた庭とひとつながりになる。南東の半階下がったところが地面に潜り込んだようなリビングで、1階と地階をつなげる大空間である。大きな窓を通じて庭とも結ばれ、四季の移り変わりを楽しむことができる。隣地との境界にはウッドフェンスを設け、板壁と配色をそろえることで一体感と空間の広がりを演出している。

どこからでも庭を眺められる設計

1階ホールより吹抜越しに主庭を眺めることができる。庭はリビング、ダイニング、 玄関など、家のいろいろな場所から、さまざまな角度で見ることができる。

デッキからも主庭を臨むことができる。LDKに面して庭を配置するとき、村田さんはこのような中間領域のデッキを配置することが多い。主木は赤い実をつけるジューンベリー。バルコニーの陰が落ちる建物側には日陰でも育つハーブ類が植えられている。

デッキから食堂を見る。料理好きの施主のために、外でも食事が楽しめるデッキテラスや、ダイニング内には来客のために手摺と一体となったベンチを設けるなど、生活を楽しむしつらえが施されている内と外をつなげる 中間領域が「境目」とならないよう、床をフラットに連続させたり、建具は引戸として壁の中に完全に隠れるなど、綿密な設計が施されている。境界部分をなるべく感じさせない建具の納まりはとても大切。

アプローチ側の外観には、車2台分のスペースが確保されおり、それぞれの駐車スペースに異なった草目地のパターンを付けている。アプローチの南側にはシンボルツリーとしてカリンの木が、また北側には黄色い花が咲くカロライナジャスミンが植えられている。

住宅プロフィール

所在地:東京都武蔵野市、家族構成:夫婦+子供2人、設計:村田淳建築研究室、構造設計:梅沢建築構造研究所、施工:幹建設、造園:高松造園、構造規模:RC造地下1階、木造地上2階建て、敷地面積:140.01m²、建築面積:54.01m²、延床面積:141.71m²(地階:39.96m²、1階:49.38m²、2階:52.37m²)

緑とつながる家2 浦和の2つの家 (2012年/埼玉県)

内と外の中間的な領域をチャームポイントに

それぞれ独立した家庭をもつ姉弟のための2つの家。敷地は約100坪の広さだが、2つの家を建てることを考えれば決して余裕のある広さではなかった。そこでひとつの庭を囲むように東西に2つの家を配置し、お互いの家をあまり意識しない中で、庭の緑を共有する計画とした。村田さんがこの家で目指したのは2つの家それぞれに内と外の中間となる領域を設けて、それをそれぞれの家のチャームポイントにするということ。西側の姉の家の中間領域は主庭とアプローチの両方の緑が楽しめる2階の「カバードデッキ」。ここは主庭、そして反対側の玄関のカツラの樹を見下ろすことができ、この空間によって内と外、そして外と外の豊かなつながりを実現している。また東側の弟の家は1階の和室が内と外の中間領域となっており、建具を引き込むことで主庭との一体感が生まれ、室内にいながら外の一部のような場所となる。

写真は、「弟の家」における内と外の中間領域として設計された1階の和室。すべての建具が壁に引き込まれ、半外部的な部屋にもなる。

「姉の家」の2階カバードデッキから主庭方向を見る。トップライトのある屋根からは空が見え、風が吹き抜ける。

「姉の家」の1階居間から主庭を見る。

「弟の家」の玄関。玄関脇にはヒメシャラが植えられている。

「弟の家」の1階和室を見通す。どの部屋からも庭が眺められる。

住宅プロフィール

所在地:埼玉県さいたま市浦和区、家族構成:姉世帯(父+夫婦)、弟世帯(夫婦)、設計:村田淳建築研究室、施工:幹建設、造園:高松造園、構造規模:木造地上2階建て、敷地面積:150.80m²・199.60m²、建築面積:80.87m²・87.45m²、延床面積:139.94m²・142.98m²(1階:76.18m²・78.98m²、2階:63.76m²・64.00m²)

 

建築家プロフィール

撮影/中川敦玲

村田淳(むらた じゅん)  一級建築士

1971年に東京都で生まれる。1995年に東京工業大学建築学科卒業し、1997年 東京工業大学大学院の建築学専攻修士課程修了後、建築研究所アーキヴィジョンに所属。2006年には村田靖夫建築研究室に所属したよく年、父・村田靖夫の逝去にともない事務所を受け継ぎ、2009 年に村田淳建築研究室に改称。2012年から、 NPO 法人家づくりの会 副代表をつとめている。

 

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村田淳さんに伺った家と庭のデザイン手法は、「建築家 村田淳にきく、庭を取り込むデザイン手法」で紹介しています。

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引用元/『HomeGarden&EXTERIOR vol.1』より

写真/特記以外は村田淳建築研究室

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