住宅に庭の緑を取り込み、自然を感じる「豊かな暮らし」を提案している建築家の村田淳さん。日々の生活 の中で無意識に四季の移ろいを感じる家と庭はどのようにデザインされるのか。今話題の建築家にその設計手法をお伺いしました。

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自然や緑と接する暮らしをデザインする

私は都市部を中心にさまざまな住宅の設計を手がけていますが、家づくりにおいて常に心掛けているのは、そこに住む人の「暮らしを考える」ことです。心地よい暮らしをもたらす家というのは、プランニングや使い勝手など、さまざまな要素が組み合わされて実現できるものですが、そうした要素の中でも私は特に「緑と暮らす」ということを大切にしています。

日々の忙しい暮らしの中で、ふとした瞬間に花がほころぶ姿や雲が流れているのを感じられる。ささやかなことですが、こういう「気づき」をもてることが生活に潤いを与えます。このように家で自然や緑と接するとき、生活の中で無意識に接する機会がもてるというのが、いちばん贅沢なスタイルだと私は考えています。

都市部でも緑と接する空間を実現するには・・・

では、緑と接することのできる空間を実現するにはどうすればいのでしょうか。私は「内と外のつながりを良くすること」がポイントだと考えています。都市部において、広い住宅や庭を手に入れることは金銭的にもなかなか難しいのが現状です。しかし限られた広さの空間や庭をうまく使って「内と外のつながりを良くすること」で、室内が庭の一部のような、また庭が室内の延長のような住宅をつくれます。キラキラと木漏れ日を落とす緑が室内とひとつながりに感じられれば、自然をより身近に感じられ、敷地全体が居住空間になり、広がりのある家にもなるのです。

「内と外のつながりがいい家」をつくる植栽の考え方

「内と外のつながりが良い家」をつくるために、敷地の中の建物と外部空間を同等に見て、同時に配置計画をすることが理想です。ですから私は建物だけでなく、庭のデザインも行います。 庭は基本的に板塀などを隣地との境界に配置して、お隣や道路と隔てた「閉じた空間」にします。こうして視界から周囲の余分なものを極力無くすことで、 囲われた中で内と外がひとつながりの空間と感じることができます。

植栽の方法ですが、私の父で建築家の村田靖夫が面白い言葉を残しています。「植栽はファンデーショ ンとデコレーションである。まず周囲から敷地を守ったり、周囲の見たくないものを隠すためにファンデーションを施す。次に自分の好きな花や木などをデコレー ションする。植栽計画というのはそのよ うにするべきだ」と。

最初に考えるのは周囲と隔てるための目隠しとして必要な植栽です。すると必然的にある程度高さがあるものが配置されます。次に、その庭の主木を決めます。主木を決めることで、その木に対して特別な愛着がもてますし、それが家に対す る愛着にもつながりますので、1本決めた方が良いですね。目隠しには常緑樹を、主木などのシンボルツリーには四季の移ろいを感じられる落葉樹を選ぶことが多 いです。このように目隠しの木と主木の場所を決めた後、その間にバランス良く中木な どを配置し、また足元には高木や中木の 生え際を隠すように下草や灌木を植えます。下草や灌木は、高木や中木の真下に 植えるのではなく、部屋の中から見て、手前から奥に向かって植物の高さが段階的 に高くなるように配置することが理想です。こうすることで主木を中心にして奥行きの感じられる庭ができます。 このようにして、庭と家が互いに緩やかにつながることで、住む人が心からくつろげる空間を私は心掛けています。

 

建築家プロフィール

撮影/中川敦玲

村田淳(むらた じゅん)  一級建築士

1971年に東京都で生まれる。1995年に東京工業大学建築学科卒業し、1997年 東京工業大学大学院の建築学専攻修士課程修了後、建築研究所アーキヴィジョンに所属。2006年には村田靖夫建築研究室に所属したよく年、父・村田靖夫の逝去にともない事務所を受け継ぎ、2009 年に村田淳建築研究室に改称。2012年から、 NPO 法人家づくりの会 副代表をつとめている。

 

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村田淳建築研究室が手がけた住宅は、「住宅に庭の緑を取り込む 無意識に四季の移ろいを感じる家と庭」で紹介しています。

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引用元/『HomeGarden&EXTERIOR vol.1』より

写真/特記以外は村田淳建築研究室

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