鳥取県・米子市でクリニックの庭づくりをしている面谷ひとみさん。ガーデナーの安酸友昭さんとの二人三脚で、患者さんやスタッフの癒やしにと、毎日庭を丹精しています。花の少なくなる冬、患者さんの目を楽しませるのは家族総出で飾りつけるクリスマスツリーと、いくつもの寄せ植え。面谷さんの冬の庭演出をご紹介します。

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冬は寄せ植えに最適な季節

山陰の冬は雪が多く、とにかく空は曇りがち。12月から翌年3月までの間は、一日中爽やかな青空をキープしている日はとても貴重です。だからこそクリニックの庭は華やかに美しく、通院してくる患者さんの心をパッと晴れやかにしたいと思い、たくさんの寄せ植えを作ります。庭の花は少なくなる季節ですが、冬は寄せ植えには最適です。パンジーやビオラ、ガーデンシクラメン、アリッサムなど、開花期が長く鉢植え向きの一年草がたくさん店頭に出るようになり、寄せ植えの花材にはこと欠きません。それに、この季節は蒸れて病気になったり、害虫の心配もないので、あまり気遣いなくきれいな状態が保てます。

冬の寄せ植え

私の好みは淡いソフトカラーなのですが、冬は見る人に温かさを感じてもらえるよう、オレンジや黄色、赤などの暖色を多用し、パッと華やかな寄せ植えにします。上の写真は診察室から一番よく見える場所に置いてある八角形の大鉢です。大鉢はだいたいの希望を伝えて、作成はガーデナーの安酸さんにお任せしています。

寄せ植えと庭植え、2段階で楽しめる素材チョイス

ビオラなどの冬の寄せ植え

赤紫とオレンジのビオラ、黄色のビデンス(ウィンターコスモス)、チェッカーベリー、スキミア、アリッサムを寄せ植えにしてくれました。私にはなかなか思いつかない組み合わせですが、よくみると赤紫のビオラの花心には黄色のスポットが入っていて、安酸さんらしい繊細な花選びだなあと思いました。だからこそこんな派手な色同士の花を組み合わせても、全体として調和しているのだなと感心しました。プチプチとしたツボミが可愛らしいスキミアは日陰を好む常緑低木なので、春になって寄せ植えを解体する際には庭の北側へ地植えにします。低木などはあまり寄せ植えに選ばれない素材ですが、こんなふうに寄せ植えに使った後、庭植えにすることを想定して選ぶと、楽しさも倍増します。

カラーリーフがコツのクリスマス用の赤い寄せ植え

クリスマスの赤い寄せ植え

こちらは玄関前に作ってくれた横長のプランターの寄せ植えです。ビオラ、チェッカーベリー、アリッサム、スキミアの赤色の花で統一しました。赤色のビオラだけでも4〜5品種入っているので、単調にならず目を楽しませてくれます。鉢縁からタランと垂れた葉はルブス。ナワシロイチゴとも呼ばれ、這って伸びる性質がある常緑低木です。一年を通して使えるとても使い勝手のいいカラーリーフで、冬は寒さでチョコレート色に紅葉します。こうした這って伸びる草やつる性の植物は、寄せ植えに有機的なラインを添え、繊細な美しさをプラスしてくれます。

冬の寄せ植え

こんなふうに、安酸さんが作ってくれる大鉢を見ながら勉強し、私は小さな寄せ植え作りに励みます。赤い実のチェッカーベリーは艶やかで形も愛らしく、クリスマスらしい雰囲気が出る花材です。この鉢では2品種の赤系ビオラとカルーナ、ガーデンシクラメンを合わせました。カルーナのプチプチとした小花もアクセントになってくれます。

チェッカーベリーとパンジーの寄せ植え

白い横長の鉢には、チェッカーベリーと黄色と紫のパンジーを合わせてみました。合うかな? と心配したものの、ネメシアやカルーナを間に挟んだおかげでいい感じにまとまったと自分では納得しているのですが、どうでしょうか? 安酸さんがいつも上手にカラーリーフを使うのを真似して、パンジーの色に合わせて黄色のカラーリーフ、ロータス‘ブリムストーン’も入れました。

アリッサムやイベリスなどの白い寄せ植え

こちらはアリッサム、イベリス、ダスティーミラー‘シルバーレース’など白色の植物の中に、花色だけ赤いビオラや紅葉したルブスなど、差し色として赤を少量加えた寄せ植えです。白のワントーンもクリスマスらしい雰囲気が出ます。

肥料など植栽の基本と冬の寄せ植えのコツ

寄せ植え作り

どんなに組み合わせに工夫を凝らしても、植物がいい具合に育ってくれなければ寄せ植えは美しくなりません。植物が健やかに育つための基本は土づくりです。寄せ植えの土の基本は、排水性がよく、水もち・肥料もちのよい土。硬質赤玉土などを基材とした培養土に、元肥を混ぜておきます。元肥は植物が生育するために必要な栄養分です。12月に作った寄せ植えは、来年3月いっぱいくらいまでは植え替えません。ですからその間の栄養素として最初に必要になるのがこの元肥です。元肥の効果は約1カ月くらいなので、必要に応じて追肥したり、液肥を週1回ほど水やりの際にやります。この頃の植物は寒さでほとんど生育が止まっており、分枝してわんさか花数が増えたり、草丈が大きくなったりすることはありませんが、この間に液肥を与えておくと花色や葉色が鮮やかに保たれ、春以降生育を開始してからの勢いが違います。

ただし、冬の間は植物のサイズはほとんど変わりません。ですから、キュッとつめて植えた方が見栄えがいいです。しばしば株間を10cmとか20cmとか空けてというアドバイスがなされますが、生育することを見越して株間を開けすぎると、春まで土が見えるスカスカの状態の寄せ植えになってしまいます。そこで、私は春になって植物が生育し、窮屈になってしまう前に寄せ植えをバラして庭の広い場所に植え替え、鉢には新たな寄せ植えを作ることにしています。

冬の庭の主役はクリスマスツリー

クリスマスツリー

冬はどうしても庭植えの花の彩りが寂しくなるので、待合室から一番よく見える場所にクリスマスツリーを設置します。ツリーといえばモミの木ですが、クリニックの庭にモミの木を植栽しているわけではなく、根を養生したモミの木を倒れないようにタイルの上に固定して、仮置きの状態で飾っています。周りにはクリスマスプレゼントの箱をイメージして、カラフルな寄せ植えをたくさん作って飾りました。にぎやかで楽しいクリスマスの雰囲気になりました。

クリスマスツリーのデコレーション
毎年、娘が高い脚立に登って電飾を巻きつけてくれます。

イルミネーションのお手本は、ディズニーランドや東京駅のクリスマスツリー。毎年、飾りつけに趣向が凝らされていて、見るたびに感動してしまうのですが、私もそんなふうに患者さんにアッと驚いてほしくて、電飾がどんな風に巻きつけてあるのか、根元はどんな風になっているのか、じっくり観察してクリニックのツリーに取り入れています。飾りつけは到底1人ではできないので、娘家族にも手伝ってもらいます。てっぺんの枝から細い枝の一本一本に電飾のコードを丁寧に這わせていくことでツリーの形がきれいに出るのですが、その作業はとても時間がかかります。

庭のクリスマスツリー

先日、80代の患者さんが、「毎年、クリスマスツリーが楽しみで、この時期に健康診断に来ることに決めているの」とおっしゃってくださり、苦労して飾った甲斐があったと、とても嬉しく思いました。クリニックの患者さんはご高齢の方が多いものです。お孫さんと住んでいれば別かもしれませんが、大人だけの家庭ではクリスマスツリーもクリスマス自体も次第に縁遠くなってしまいます。でも本当は、いくつになってもキラキラしたクリスマスツリーにはときめくものです。美しく華やかな空間は誰しも気持ちが明るくなり、そういう空間にいる自分は、大事にされているという安心感があると思います。家庭の庭にも同じ役目があると思いますが、患者さんのためにそういう場所を作っておくのが、私のクリニックの庭づくりのテーマでもあります。

リースとクリスマスツリー
クリニックの入り口にもリースと手作りの小さなクリマスツリーを。撮影/面谷ひとみ

ツリーを見たくて、と言ってくださった患者さんのように、なるべく何ごともないうちにクリニックを受診することで、病気の早期発見に繋がり、有効な治療が行える可能性も高いのです。私も長年看護師として働きましたが、医療に携わる者にとって一番悔しいのは、患者さんを救いたくても救えない時です。もっと早く来てくれれば、ということがないように、というのがこの庭をつくった大事な理由でもあります。だからこそ毎年、記憶に残るようなクリスマスツリー作りをしたいと思っています。

クリスマスの庭

今年も家族でワイワイ言いながら、クリスマスツリーを飾り終えました。今年はシャンパンピンクのイルミネーションとオーナメントで雰囲気を変えました。

皆様もどうぞ、楽しいクリスマスをお迎えくださいませ。

Happy Merry Christmas!

Credit

話/面谷ひとみ
ガーデニスト。鳥取県・米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。クリニック開院にあたり、自らも看護師として大学病院などで勤務してきた経験を生かし、患者にも医療従事者にも癒しとなる空間を作るために、バラと草花が調和する庭づくりを開始。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。NHK出版『趣味の園芸』テキストで安酸さんとの庭づくりの日々の連載が2020年4月よりスタート。

庭施工/安酸友昭(ラブリーガーデン) http://www.lovely-garden.jp

撮影・取材・まとめ/3and garden

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