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「私の庭・私の暮らし」リンゴとバラが庭を彩る長野県・熊井邸

「私の庭・私の暮らし」リンゴとバラが庭を彩る長野県・熊井邸

花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。SNSで全国のガーデニング仲間とつながりながら、自身も千葉の自宅でDIYと庭づくりを楽しむ橋本景子さんが、お気に入りの庭をご案内。今回は、長野県でバラと宿根草を多種育てながら、リンゴ栽培も行う、長野県・熊井智恵子さんの春と秋の庭をご紹介します。

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ガーデニングのレベルが高い地域の庭訪問

つるバラの家
春、熊井邸の正面に立つと、‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’や‘アイスバーグ’、‘フランソワ ・ジュランビル’など、ピンクと白の優しい花色のコンビネーションを見せるバラたちが空から降るように咲き、その美しさに圧倒されます。

私と熊井智恵子さんの出会いは、8年前に遡ります、某園芸誌の取材に同行した時に、以前お庭をご紹介した山田千鶴子さんから「すぐ近くに、とてもバラを上手に育てている人がいるのよ」というご紹介をいただいて訪問しました。

バラのフェンス
山田千鶴子さんのお宅から直線距離で100mほど。小さな公園の角を曲がると右手に、すぐにそこだと分かるほどバラが溢れる、こげ茶色のフェンスが目に飛び込んできます。

智恵子さんのお宅だけでなく、お向かいにも素敵なお庭をつくっている方がいらっしゃって。こんなにすぐ近くに何軒も素晴らしいお庭があることを知り、長野市のガーデニングはレベルが高いと、とても驚いたものでした。

つるバラ‘マニントン・モーヴ・ランブラー’
駐車場の屋根を見事に覆う美しい小輪のピンクとパープルのグラデーション。いろいろな園芸誌に毎年のように登場するこの魅力的なバラの写真に魅せられて、きっと‘マニントン・モーヴ・ランブラー’を手に入れた方が全国にたくさんいらっしゃるに違いありません。

ここ数年、熊井さんのお庭には毎年のように通っていて、春に3度もお邪魔した年もありましたが、春のガーデンのみならず、リンゴが赤く色づいた頃のガーデンの素晴らしさもぜひ知っていただきたいと思いました。

バラと宿根草が混ざり、彩り豊かな庭風景に

ガーデン
‘マニントン・モーヴ・ランブラー’の屋根をくぐって、枕木のアプローチが続くフロントガーデンへ。ガーデンテーブルの上に溢れ咲く‘春霞’がお出迎え。青いワゴンはいつもこの場所でフォーカルポイントになっています。

智恵子さんがガーデニングを始めたのは、自宅を新築した15年ほど前。庭を持てた嬉しさに、フロントガーデンだけでもバラを100株以上植え込んだといいます。

その後、ピーク時には200株くらいまでバラが増えましたが、構造物を作る以前にあまり深く考えずに植え込んでしまったため、庭の整備をする度に邪魔になったりして、少しずつ数を減らしていきました。それからはグラスなどの宿根草にも興味が湧いてきたことで、今ではバラの数は100株ほどに留まっています。

バラと宿根草の庭
お義母さんの畑だった場所に園路を敷き、植物を植え込みました。写真左上にはリンゴの枝が見えます。

裏の敷地は、お義母さんが野菜畑に使っていましたが、6年前に亡くなられたのを境に、野菜の代わりに植物が植え込まれ、さらにはリンゴ畑にもバラがどんどん進出して、畑と庭が一体化。他には無いユニークなガーデンになりました。

「だって、玉ネギ植えるよりも球根を植えたいんだもの」と正直な智恵子さん(笑)。

どのシーンも真似したくなる! バラ咲く庭をご案内

バラと宿根草の植栽

左/淡いアプリコットカラーの‘フィリス・バイド’と、手前は‘エンペラー・デュ・マロック’。
右/サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’の後方の壁に伝うのは‘ヴィオレット’。この組み合わせが印象的で、サルビアをこんな風に使ってみたいと思わせる植栽でした。

クレマチス

左/濃紺のクレマチス‘ロマンチカ’をロサ・グラウカの銅葉と合わせ、背景には‘ヘリテージ’のオフホワイトが効いています。
右/コロンとピンクの花がうつむく‘ラ・レーヌ・ビクトリア’には、クレマチス‘アフロディーテ・エレガフミナ’が好相性。

ガーデニング

左/純白の‘アデレード・ドルレアン’に寄り添い咲くのは、クレマチス‘ベノサ・バイオレシア’。何気ない雑貨使いもお見事。
右/華奢な鉄のフェンスに絡むクレマチス‘ロマンチカ’と黄色の花心がチャーミングなつるバラ‘プロスペリティ’は、玄関先の定番の組み合わせ。

リンゴ畑のガーデン

左/リンゴ畑へと続く園路のパーゴラには、‘ポール・トランソン’と‘ボルチモア・ベル’が絡み、ナチュラルな雰囲気。
右/秋には赤いリンゴの実がバラの代わりに風景に彩りを添えています。

秋は真っ赤な果実が庭のアクセサリーに

リンゴの花が咲くガーデン
リンゴの花が満開の5月初旬のガーデン(*)。

智恵子さんは嫁いだのを機にリンゴの栽培を手伝い始め、お義父さんが残してくれたリンゴの木を守りながら作業をしてきました。今年からは、定年を迎えたご主人が一緒に手伝ってくれるようになりました。
智恵子さんのリンゴ畑では、多くの品種が育っています。‘つがる’、‘秋映’、‘シナノスイート’、‘シナノゴールド’、‘あいかの香り’、‘サンふじ’などは、冬に肥料を入れ、春、花が咲いたら授粉させ、さらには一年枝といわれる前年の枝にはよい実がつかないので花を摘む作業を行います。また、実がつく頃には、実を大きくさせるための摘果、日当たりを確保するための葉つみと、多い時には3回も玉回しを行います。合間には、消毒を含むたくさんの作業をしながら、10月から12月のクリスマス頃まで収穫が続きます。

秋のガーデン
10月、すっかり秋色に変わったガーデンは落ち葉と芝生のコントラストが鮮やかでした。

「『リンゴ農家とガーデニングの両立は大変でしょう?』ってよく言われるんですけど、ハサミが一丁腰にぶら下がっていれば、リンゴの作業もお花の手入れも一緒にできるし、リンゴの作業に飽きたら、ちょっと庭仕事をして大好きな植物と触れ合えば気分転換になるのよね」とガーデニングが楽しくて仕方ないという智恵子さん。

こんなにたわわに、どのバラも植物も咲かせることができるのは、きっとリンゴ栽培で培った農作業の基本がしっかりと身についているからなのでしょう。

赤いリンゴの実
真っ赤に色づいたリンゴの枝を、まるでのれんのようにかき分けて歩く楽しさは、智恵子さんのガーデンでしか体験できません。(*)

カメラマン、今井秀治さんによる庭案内『カメラマンが訪ねた感動の花の庭。フォトジェニックな庭 長野・熊井邸』もご覧ください。

Credit

写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.1万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto

写真(*)熊井智恵子
熊井智恵子さんのインスタグラム chiekuma0602

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