バーチャルオープンガーデン〜橋本邸の豊かな植物たち〜

2020年春以降Stay Homeの時間が増えていますが、Garden Storyでは読者のみなさんに最盛期の自宅の庭をwebで公開していただく「バーチャルオープンガーデン」を企画。今回は、ガーデニング雑誌で幾度も紹介されてきた、千葉県在住の橋本景子さんの初夏の庭からお届けします。橋本さんが長年コレクションしてきたお宝植物も登場しますよ。
目次
2020年4月中旬〜6月までの庭から

今年の春は、みなさんが静かに「Stay Home」を続けた異例の年でした。
公開されなかった公共のガーデンや、各地でのオープンガーデンの中止が相次ぎ、インスタグラムなどのSNSの動画でバーチャルオープンガーデンをされた方も多かったですね。この出来事により、庭のある豊かな暮らしの素晴らしさや、植物の癒やしの力がいっそう身に沁みるものとなりました。
Garden Storyで公開している私の「バーチャルオープンガーデン」、前回のバラ編に続き、今回はバラ以外の植物にスポットを当てて、4月下旬から6月までの様子をご紹介します。
4月15〜20日 山アジサイに花芽が!

オーレア葉の山アジサイ‘ゴールデン・サンライト’に、早くも花芽が確認できました。名前に負けない、“輝くように明るい葉”なので、「この場所には派手すぎたかしら?」と思っていましたが、日が経つにつれてトーンが落ちてきて、ほっとしました。
奥に見える葉は、虫にも病気にも強く、いつどこで剪定しても大丈夫なので大好きなマホニア・コンフューサ。右の細長い葉は、ビバーナム・ティヌス(トキワガマズミ)、下の葉はクロモジです。クロモジは大きくなる樹木なのでポットのまま置いてありますが、手に負えないほど大きくなってきたら移植します。

写真は、ギボウシの中から咲き始めたミヤコワスレ。
階段庭では一段ごとの植栽スペースは、狭いのにたくさんの植物を混植してあるためか、お互いに牽制し合って、そんなに大きくなれません。
ミヤコワスレは、これくらいの控えめな咲き方が私は好きです。ここでも斑入りの山アジサイに、もうつぼみが見えています。

お友達にいただいたオダマキ‘レクレチャム・ゴールド’は、斑入り葉に紫の美しい花を咲かせます。まだ色がつかないつぼみと白い綿毛のようなシベ咲きのヤマブキとが、素敵なシーンを見せてくれました。

アスター属なのに、春に咲く常緑のトキワシオン。枝をぐんぐん伸ばし、その先に花をつけますが、放置するとかなり暴れるのです。その暴れっぷりを生かせるスペースが確保できればよいのですが……。今年は咲いたあと、小さく剪定してみました。左隣の小さなピンクの花は、ヒメフウロソウ。シオヤキソウとも呼ばれて、こぼれ種で雑草のようにあちこちから顔を出します。たまたまこの場所に出てきたので、咲かせてみましたが、かなり大株になり楽しめました。

小さなテラスのフェンス際、奥行き15cmほどのスペースにも植栽をしています。フェンスに誘引しているのは、山アジサイの‘アジアンビューティー’。とにかく狭い場所なので、奥行きを抑えて少しでも広く見えるようにと工夫しています。
株元にブルンネラや自生のニシキシダ、赤軸ナルコユリ、アスペルラ・オドラータなど日陰にも強い植物が育っています。

白くて小さい花はチゴユリ。何株も植えてあるのですが、なかなかタイミングよく咲いている様子を確認できなくて…。でも今年は毎日ゆっくり庭を見回りできたので、ラッキーなことに写真が撮れました。黄色い小さな花はルイヨウボタン。北海道のお友達の庭で毎年見て憧れていた、藍色の実が美しい植物。今年になって山野草店で出合ったので連れ帰りました。今、実がだんだんブルーに色づいていますが、残念ながら葉は日焼けしてしまいました。もっと日陰に植えたほうがよかったのかもしれません。
4月21〜30日 繊細な葉ものが美しい

落葉低木のヤマブキに似た直径3cmほどの花を咲かせることから名前がついたようですが、こちらはケシ科クサノオウ属のヤマブキソウ。春にふさわしい鮮やかな黄花と低い草丈が、小さな庭にピッタリで重宝しています。左は斑入り葉、右はセリ葉のヤマブキソウで、春に咲いた後に夏から休眠します。

雨に濡れた美しい黄金葉のオオナルコユリ。斑入りのギボウシやクリスマスローズとの相性もよく、右写真のように、白っぽいグリーンの花を咲かせます。
ゆっくりと優雅に風に揺れている姿は、まさに山野草の中でも別格の存在です。

階段庭では、形やサイズの違う緑の濃淡が春の見所の一つです。自生しているシダは、あちこちから出てくるので、時々葉を抜きながら株のボリュームの調整をしないと、あっという間にシダに覆われてしまうのです。斑入りのアマドコロや黒フウロなど、花だけでなく葉の魅力も植物セレクトの重要なポイントになります。

まだまだ緑の下草が少ない階段庭に、温室育ちのアジサイ‘てててまり’を置いてみました。アーチのバラが咲き始める頃には、さらに華やかな場所へと変貌します。
5月1〜10日 繊細な白花が咲き出しました

階段庭の隅っこにある小さなレイズドベッドでは、たくさんのエビネランが咲きました。白斑のツワブキや斑入りのシラン、ニシキシダは園芸種をいくつか植えましたが、自然に交配しているのか、植えてもいないのに庭のあちこちから出てきます。

コガクウツギ‘花笠’は、「ウツギ」という名前がついていますが、じつはアジサイの仲間だそうで、薄グリーンから純白へと変化する小さな八重の花がふんわりと美しく、小さめのツヤのある葉も魅力の一つです。病害虫にも強く、手間いらずのうえ剪定で大きさもコントロール可能なので、極小庭にぴったり。シェードガーデンにおすすめの品種です。

左は常緑のトキワウツギ‘雪姫’です。小さな白い花は、シセンウツギとそっくりですが、ツヤのある葉で区別できます。また、花の時期も違います。写真右は、ミツデイワガサ。コデマリに似た花を咲かせますが、シモツケ属の落葉低木で、柔らかい葉先が3つに分かれるため「ミツデイワガサ」という名前がついたといわれています。純白の小さく可愛い花が大人気です。

咲き始めたバラをバードバスに入れて、庭が少し華やかになりました。
5月11〜末頃 壁際の植物たち

山アジサイを庭に植えようと思って、一番初めに買ったのがこの‘舞妓’でした。手毬咲きで、薄グリーンの花がだんだんと優しい水色に変化していきます。
階段庭の上段は一番狭い場所なので、オープンガーデンの際に通りやすいようにと通路を広くするため、いつも支柱で壁面に押し付けられて、かわいそうな姿で咲いていました。ですが、今年は私一人が歩ければよいので、少し自由な姿で咲かせてみました。
対面に植えたコバノズイナは壁面に誘引しているので、頭上から降るように花が咲きます。こうした狭いがゆえの工夫の数々は、実際に見に来られた方から驚きの声が聞こえます。

我が家のように狭い庭での植栽の一番のポイントは、壁面誘引です。左側のフェンスも右側のレイズドベッドも、どちらも奥行きは30cmほどと狭い場所ですが、バラをはじめたくさんの植物を植え込んでいます。特に右側の幅3mのレイズドベッドには、バラが5株、クレマチス3種類、コバノズイナ、西洋ニワトコ‘ブラックレース’、ヨーロッパブドウ‘プルプレア’と盛りだくさんです。
春に誘引し、バラが咲いた後にはつるものが旺盛に茂るので、頻繁に剪定して密にならないようにする必要があります。

クレマチスを多用するのも狭い庭には有効ですね。
‘ベノサバイオレシア’は、今年は花が少なくて、ヒメフウロとペアでした。右写真は、名前不明の白花の山アジサイと、咲き始めたばかりの‘踊り場’。
来年はもっとたくさんクレマチスを使いたいと思っています。

5月末、バラは終盤だけれど、まだ華やかな階段庭では、主役を交代した山アジサイの白い花が浮き立っています。

そして6月初め。早朝の青い光の中、静けさを取り戻した庭で生き生きとしている緑の葉たちが印象的でした。
併せて読みたい
・ガーデニング愛好家にテレワークインタビュー①「庭づくりをスタートしたきっかけを知りたい!」
・ガーデニング愛好家にテレワークインタビュー②「庭で育てている植物が知りたい!」
・「私の庭・私の暮らし」森の中に暮らすような癒やしの庭を目指す群馬県・新井邸
Credit
写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園 【1月の様子】
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストが、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台に、いよいよスタートしました。2024年12月には、…
-
宿根草・多年草
豪華に咲く!人気の宿根草「ラナンキュラス・ラックス」2025年おすすめ品種ベスト5選PR
春の訪れを告げる植物の中でも、近年ガーデンに欠かせない花としてファンが急増中の「ラナンキュラス・ラックス」。咲き進むにつれさまざまな表情を見せてくれて、一度育てると誰しもが虜になる魅力的な花ですが、…
-
アレンジ
【春の花】ヒヤシンスはスッと垂直に活けるのがおすすめ! スクエアガラスのベースにスタイリッシュにアレ…
春の訪れを感じさせてくれる花といえば、チューリップやヒヤシンス(ヒアシンス)などの球根花! 本格的な春の到来はまだ少し先の話でも、フラワーショップには一足先にカラフルな春の花が並んでいます。明るいブル…