これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第27回は、グラスの庭を追ってご紹介が3カ所目となる、オールドローズとグラスに注目の内田美佐恵さんの庭です。

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SNSでつながったバラ愛溢れる人の庭へ

イングリッシュローズ‘ガートルード・ジーキル’
入り口のアーチに絡まるイングリッシュローズ‘ガートルード・ジーキル’。

今回ご紹介するのは、愛知県豊橋市の内田美佐恵さんによる女性的で、きれいなグラスとオールドローズのお庭です。

「バラが好きで、イギリスに留学経験があって、写真を撮るのも好きで、雑誌『BISES(ビズ)』の愛読者さん」という内田さんからフェイスブックに友達申請をいただいたのは今から8年前のことになります。まるで趣味が一緒で、フェイスブックの中ではすぐにお友達になりました。初めてお会いしたのは、その数年後、名古屋在住の牧さん(Garden Story主催のバラのフォトコン編集長賞)のお宅で写真講座をさせていただいた時に、ご主人と参加された時でした。その後も雑誌やカレンダー撮影など、僕の仕事を通じてお付き合いが続き、2017年には内田さんのお宅でも写真講座を実現。また最近では、僕の趣味の一つである原種シクラメンやケープバルブを差し上げたりして、内田さんとはバラ以外でも仲良くしてもらっています。

内田さんが丹精する新エリアの庭

 ガリカローズ ‘シャルル・ド・ミル
ガリカローズの名花 ‘シャルル・ド・ミル’。

いつの頃からか、内田さんのフェイスブック投稿では「ポタジェ」や「オールドローズ」、「グラス」という言葉を見かけるようになりました。聞いてみると、僕の知っているご自宅の可愛いお庭とは別に、亡くなられたお婆さまの畑だった土地に6年前から野菜作りのための「ポタジェ」と、その一角にオールドローズとグラスの庭をつくり始めたというのです。「今井さんに見ていただけるようになったら連絡しますので、その時は撮影に来てください」とのこと。僕自身も長野の「ガーデンソイル」さんの影響でグラスを撮影することに興味が日に日に増していた頃なので、内田さんの「オールドローズとグラスと野菜のポタジェ」は気になるお庭でした。

ラグラスとスイートピー
春の庭では、バラのほか、ラグラス(左)やスイートピー(右)も見頃に。

それから時は経ちましたが、内田さんの新しい庭のことが気になって仕方がありませんでした。そうして、とうとう2018年5月末頃に、名古屋周辺の撮影の帰りに様子を見に行きました。内田さんのポタジェは広い駐車場の一角にあって、日当りも風通しもよすぎるほどの環境。時期的にバラは終わりかけていましたが、ナチュラルに仕立てられた宿根草が風に揺れていい感じです。「これなら来年は撮影できる」と確信して、内田さんとは来春の撮影の約束をしました。

ガリカローズ‘ベル・イシス’
僕が一番好きなガリカローズ‘ベル・イシス’もきれいに咲いていました。

2019年5月、連休が終わった頃から内田さんのフェイスブックを見続け、メールでお庭の状況を聞いたりしながら撮影日のスケジュールを立てて5月16日早朝に撮影に伺う事にしました。前日はこの企画の21回、静岡県植野さんの庭の撮影に伺って、18時過ぎに撮影を終えてから、きれいな夕焼けを見つつ東名高速で豊橋に向かいました。

早朝の庭で美しい植物たちと対面

グラスとガーゴイル
グラスは朝か夕方の反逆光で撮るのが鉄則。左は、秋の庭のワイルドオーツ。右はポタジェの守神? ガーゴイル。

16日早朝、ホテルの窓から外を見ると、まだ日の出前。空には雲一つなく完璧な撮影日和になりそうです。ホテルからポタジェまでは車で5分ほどの距離ですぐに到着。約300㎡を4分割した左前側がオールドローズのエリアで、細い道の反対側がグラスのエリア。その後ろ側は、野菜と一緒にのびのびと風に揺れる宿根草によるメドウガーデン風のエリアになっていました。

‘トリコロール・ド・フランドル’
‘トリコロール・ド・フランドル’。このガリカローズをセレクトしている内田さんのセンスに感動。

三脚にカメラをセットして、まずは左側のオールドローズのエリアに向かいます。オールドローズの雰囲気とよくマッチする、内田さんらしい草花に縁取られた中で、僕の大好きなガリカローズやダマスクローズが最高の表情を見せてくれています。「いいぞ〜」と思いながら振り向くと、反対側のグラスのエリアにもつるバラ‘ギスレーヌ・デゥ・フェリゴンド’が咲いていました。実際の庭を前に、「やっぱり内田さんはバラ使いが上手い」と納得。そうこうしていると東の空から朝陽がポタジェに差し込んできて、慌てて撮影を始めました。

ガーデンのススキ
左は、秋の庭で存在感を発揮する大型のススキ、モーニングライト。右は、美しい穂が絵になるシマイトススキ。

このポタジェは正面が東南を向いているので、右前方から光が差し込んで左側に影がでます。左のオールドローズのエリアはまだ少しの間は日陰ぎみなので、まずは全景を撮ってから、右側のグラス類の撮影をして、次にオールドローズのエリアへ。時計とは反対回りで一通り撮影をしたら、また正面にカメラをセットします。朝はわずか10分程度で表情が変わってしまうので、そのままポタジェの中を何周かしていました。すると、内田さんも来てくれて、花の名前を教えてもらったりしながら6時過ぎには撮影を終了しました。その後、内田さんのお宅にお邪魔してオシャレな朝ご飯をごちそうになりながら、Garden Storyに載せましょうねとお約束。夕方予定していた撮影地、岐阜に向かいました。

グラスの撮影を3カ所終えて

内田邸の庭
秋、再び訪れた内田さんのポタジェ。グラスの穂が優しく揺れ、ミューレンベルギアの赤が効いていた。

グラスの庭も三者三様で、2019年11月公開の北海道「大森ガーデン」さんの庭は、宿根草のナーセリーの見本園的要素が強く、グラスも圧倒的なパフォーマンスを見せていたし、2020年1月公開の「服部農場」では、グラス愛が強いガーデナー、平栗さんの「バラには頼らない」というこだわりが伝わってきて素敵だと感じました。そして一方では、今回ご紹介したように、お花好きで、フラワーアレンジもお好きな感性で、自分の好きな植物を集めた内田さんのポタジェは、彼女らしさに溢れていて、いい空間でした。

バラとポタジェ
バラが優しく色を添える春のポタジェ。

内田さんの庭はご覧の通り、メドウガーデンの風に揺れる宿根草、フェンスにはつるバラ、カラーリーフにグラス類もきれいだし……。何より、オールドローズがどれもきれいだったので、Garden Storyには何月頃に紹介するのがベストだろうと思っているうちにと、季節は過ぎました。ふと「内田さんの庭でも、グラスは秋の方がいいのかな」と、秋の内田さんのフェイスブックを拝見。すると、春とはまた違う表情をしたグラス類が写っているではないですか。これは秋、もう一度伺ってグラス類をちゃんと撮らないといけない! と思い立ったのです。そうして、2019年10月30日に2度目の撮影へ。こうして、春はオールドローズと宿根草とカラーリーフ、秋は紅葉のグラス類の2シーズンのご紹介が叶いました。

Credit

写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ローズカレンダー』も好評。

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