カメラマンが訪ねた感動の花の庭。雑木とバラが調和する庭 静岡・植野邸
これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第21回は、雑木の庭からバラの庭へとつくり替えたことで、美しい風景が生まれた植野史絵さんの庭です。
目次
SNSをきっかけにバラの専門家と出会う
今月ご紹介するのは、バラの庭の管理のスペシャリストとして活動されている鈴木昌博さんに教えていただいた、静岡県牧之原市の植野史絵さんの庭です。とっても洗練された、オシャレで素敵な庭です。
今回この庭を紹介してくださった鈴木昌博さんは、静岡県島田市在住の自称「バラのお庭のプロフェッショナル」。バラ好きの方ならご存じの‘ハートフル’という可愛いピンクのバラの作出者さんでもあります。
鈴木さんのお名前は、浜松や豊橋のSNS友達の投稿で存じ上げていましたが、初めてお会いしたのは3年前。
鈴木さんが千葉県君津市の「ドリーミングプレイス」でバラの販売会を行うと聞いて、出かけて行った時のことでした。
専門家推薦の庭へご案内いただく
バラの販売会の棚には、ハイブリッドティーから、つるバラやオールドローズの名花まで、いろいろなタイプのバラが揃っているのを見て、鈴木さんはバラのことなら何でも知っているバラのスペシャリストなんだなぁと、すぐに分かりました。お客さんとのやり取りを聞いていても、説明は的確で分かりやすく、その日は夕方まで楽しくバラ談義をさせていただきました。
その鈴木さんから連絡があったのが2019年の4月半ばのこと。「牧之原で管理を任されている個人邸で、バラが素晴らしいお庭がありますから、近くを通ることがあったら寄って見てください」とメールをいただきました。鈴木さんの管理されているお庭なら、是非拝見して撮影させていただきたいと思ったので、すぐに訪問の約束をしました。
5月に入って数回、鈴木さんが庭の開花状況をメッセージで知らせてくれたので、これなら撮影のタイミングも間違いがありません。
2019年のバラ最盛期に撮影
撮影日は5月15日。植野さんの庭には、午後3時に到着。いつものように撮影には少し早い時間に着くことができました。出迎えてくださった植野史絵さんにご挨拶をして、まずはお庭を拝見することに。玄関脇のバラのトンネルを潜ると、明るい色のレンガの通路を挟んで、左右にバラと宿根草がきれいに咲いていましたから、撮影にもピッタリのタイミングでした。
咲き終わって汚れた花もなければ、通路には落ち葉一つない、きちんと手入れが行き届いていて、とても気持ちのよいお庭でした。まだ日差しは強すぎるけれど、今すぐにでも撮影を始めたいくらいの気分になりました。下見を終えて、お茶をいただきながら頭の中で撮影のイメージを整理して、午後5時過ぎからイメージ通りの撮影をスムーズにすることができました。
雑木の庭からリニューアル
こちらの庭は、以前はご主人の「山の中に住んでいるような暮らしがしたい」という希望があって、雑木林が中心だったそうです。奥様がバラを15株ほど植えてはいたものの、日差しが届かず暗いために、うまく咲かなかったという時代もあったとか。
バラと草花が健やかに育つ庭を得て
そんな庭を、ご主人と、一緒に仕事をしていた奥様、2人の退職を機に、7年前に雑木を庭の隅のほうに植え替え、明るくなった庭の中央にバラを植えたのです。そうして、奥様が憧れていたバラと草花が主役となる庭のグランドデザインは、浜松の女性コーディネーターさんに相談して、今のようなモダンなデザインに生まれ変わりました。
現在は、バラの管理を鈴木さんに、そして他に2名の女性が草花や宿根草を担当。樹木の担当の方もいるという、プロフェッショナルが手入れをする素敵な庭です。植野さんご夫妻は「皆さんがよく手入れをしてくれているので、せめて草取りくらいは」と草取りが日々の楽しみになったとか。「このお庭で特にお気に入りの場所はありますか?」とお聞きしてみると、「バラの季節は朝起きるのが楽しみで、サンルームから見える庭のすべてが好きです」と史絵さんは微笑みます。
オープンガーデンの時期は、ガレージでお仲間の洋服や小物の作品展も開催しながら、たくさん訪れるお客さんとこの庭を満喫されている植野さんご夫妻でした。
Credit
写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。
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